脳神経内科学

脳神経内科学 · G1-12

外傷性頭蓋内出血

G1-12: Traumatic intracranial bleedings

前提:病態
頭蓋内出血
前提:正常
頭部:頭蓋腔と髄膜
疾患
外傷性脳損傷
症状
意識障害
画像所見
CT高吸収域

🧠 全体像:では意識が一時的に良くても、血腫の拡大やでしうる。反復とを軸に、血腫の部位・形・から緊急手術の要否を判断する。

出血型の比較

型 部位・損傷血管 と典型経過
(EDH) 頭蓋骨と硬膜の間。に伴う損傷が典型 レンズ状()1。lucid intervalは古典的だが必須ではない2
(SDH) 硬膜とくも膜の間。の牽引/ 1、縫合線を越えうる。急性〜慢性で経過が異なる
の小血管損傷 ・の。頭痛、、意識障害を伴いうる
・ 内の・小血管損傷 前頭/側頭底部に多く、に増大しうる
急による が正常でも重篤な昏睡。が・により感度が高い

各病変の時間経過と症候

は、頭蓋骨と硬膜の間に出血する。と損傷が典型だが、出血もある。短時間のの後に頭痛、嘔吐、意識低下、同側、が進む古典像は重要である一方、がない例も少なくない。💡 「がない例も少なくない」は実測でどの程度か。 1〜16歳の手術例146例の連続症例では、を認めたのは37%にとどまり多数派ではなかった。同じ146例中30例(約2割)には頭蓋骨骨折すら無かった2。のとを確認し、神経悪化または大きな血腫では緊急血腫除去を行う。⚠️ 手術適応には具体的な閾値がある。 体積30 cm³を超えるはにかかわらず血腫除去の適応とされ、30 cm³未満・厚さ15 mm未満・5 mm未満で 8超・のない例に限り、連続と厳重な観察のもとでのが許容される3。

はの牽引・で、硬膜とくも膜の間に広がる。で縫合線を越えうる所見が基本で、急性(外傷直後から数日)、亜急性、慢性(数週以降)に分ける。急性例は・脳損傷を伴い意識障害、頭痛、局在徴候を来し、慢性例は高齢者、飲酒、抗凝固薬使用、軽微な外傷後に歩行低下、認知変化、頭痛、として緩徐に現れる。症候性/圧迫性慢性血腫はドレナージ等を検討する。

(traumatic subarachnoid hemorrhage)は・にを示し、頭痛、、嘔吐、意識障害を伴う。・は・底面などの衝撃/部に多く、初回より後に出血や浮腫が増大することがあるため、症候変化では再画像が必要である。

(diffuse axonal injury:DAI)は急激な加・回転による白質軸索ので、、深部白質、上部脳幹にを伴いうる。外傷直後から長い昏睡・を示してもが目立たないことがあり、の感度が高い。治療はを防ぐ酸素化、循環、ICP管理を中心とし、局所血腫のような単純な手術標的はない。

初期評価と処置

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='head injury (head trauma)'>頭部外傷</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cervical spine protection'>頸椎保護</span>・ABC・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Glasgow Coma Scale'>GCS</span>/瞳孔を反復評価"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='unenhanced imaging'>非造影</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='head CT'>頭部CT</span>"]
    C --> D["血腫量、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='midline shift'>正中偏位</span>、圧迫、悪化を評価"]
    D --> E["脳外科へ連絡:手術/ドレナージの適応を判断"]
    D --> F["小血腫でも入院観察・再画像を検討"]

⚠️ 抗凝固薬・、年齢、、悪化する頭痛/意識、局在徴候はリスクを上げる。抗凝固薬服用中の患者では、・・・ヘパリン類・など薬剤の種類ごとに異なる拮抗療法が推奨されている4。やはなどにおける橋渡しで、根本治療(血腫の除去)を遅らせない。⚠️ 副腎皮質ステロイドはには用いない。 患者10,008例の無作為化試験(CRASH試験)で投与群の死亡が有意に増えており(21.1%対17.9%)、これは腫瘍周囲のにステロイドが有効であることとは別の話である5。💡 のがある。 受傷3時間以内の患者12,737例を対象にした(CRASH-3)では、軽症〜中等症ので関連死亡のが0.78と有意に低下した一方、重症例では有意な減少を示さず、性イベントの増加も見られなかった6。

まとめ

  • EDHは、SDHはというの形と、を結びつける。
  • DAIではが非特異的でも重い意識障害を示しうる。
  • の悪化は緊急再評価・脳外科連絡の適応である。

出典

  1. 1.Imaging of Intracranial Hemorrhage(Journal of Stroke・2017)全文で、急性硬膜外血腫が頭蓋骨内板と硬膜の間の硬膜外腔の高吸収域として同定されること、出血が頭蓋骨と硬膜のあいだに介在するために、その広がりが隣接する頭蓋骨どうしの縫合によって制限されること、出血量が増えるとまず内板に沿って最も近い縫合の境界まで側方へ広がり、側方への進展が縫合縁で行き止まりになると今度は表層から深部の方向へ厚みを増すため、硬膜外血腫に特徴的な「両凸レンズ状」の形になることを確認した閲覧 2026-08-27
  2. 2.Extradural hematoma: analysis of 146 cases(Child's Nervous System・1993)抄録で、1〜16歳の硬膜外血腫手術例146例の連続症例において意識清明期を認めたのは37%にとどまったこと、146例中30例には頭蓋骨骨折が無かったこと、全体死亡率が10%(CT導入後6%、単純X線時代16%)であったこと、死亡例のGCSはすべて8未満で、散瞳・手術時昏睡・意識清明期の存在が予後不良の徴候であったことを確認した閲覧 2026-08-27
  3. 3.Surgical management of acute epidural hematomas(Neurosurgery・2006)抄録で、硬膜外血腫は体積30cm3を超えればGCSにかかわらず外科的に除去すべきこと、30cm3未満かつ厚さ15mm未満かつ正中偏位5mm未満でGCS 8超・巣症状のない例では連続CTと厳重な神経学的観察のもとに非手術的管理が可能であること、昏睡例の手術は可及的速やかに行うべきこと、術式のエビデンスは不十分だが開頭術のほうが血腫をより完全に除去できることを確認した閲覧 2026-08-27
  4. 4.Guideline for Reversal of Antithrombotics in Intracranial Hemorrhage: A Statement for Healthcare Professionals from the Neurocritical Care Society and Society of Critical Care Medicine(Neurocritical Care Society / Society of Critical Care Medicine・2016)頭蓋内出血における抗血栓薬の是正について、ビタミンK拮抗薬・直接作用型第Xa因子阻害薬・直接トロンビン阻害薬・未分画ヘパリン・低分子ヘパリン・ヘパリノイド・ペンタサッカリド・血栓溶解薬・抗血小板薬のそれぞれについて、薬剤の種類ごとに異なる是正戦略をGRADE方式で推奨したこと閲覧 2026-08-27
  5. 5.Effect of intravenous corticosteroids on death within 14 days in 10008 adults with clinically significant head injury (MRC CRASH trial): randomised placebo-controlled trial(The Lancet・2004)GCS14以下の頭部外傷患者10,008例を対象にした無作為化プラセボ対照試験で、48時間のメチルプレドニゾロン投与群は受傷2週間以内の全死亡がプラセボ群より有意に多く(21.1%対17.9%、相対リスク1.18、95%CI 1.09〜1.27)、この死亡増加は受傷重症度や投与までの時間では説明できなかったこと閲覧 2026-08-27
  6. 6.Effects of tranexamic acid on death, disability, vascular occlusive events and other morbidities in patients with acute traumatic brain injury (CRASH-3): a randomised, placebo-controlled trial(The Lancet・2019)受傷3時間以内の外傷性脳損傷患者12,737例を対象にした無作為化プラセボ対照試験(175施設、29か国)で、受傷3時間以内に治療された患者ではトラネキサム酸群の頭部外傷関連死亡率がプラセボ群よりわずかに低く(18.5%対19.8%、リスク比0.94)、軽症〜中等症の患者に限るとリスク比0.78(95%CI 0.64〜0.95)と有意な減少を示した一方、重症例では有意差が無かったこと(不均一性のP値0.030)。血管閉塞性イベント・けいれんの発生率は両群で同程度だったこと閲覧 2026-08-27