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Disease Atlas · 神経 · 疾患

くも膜下出血

Subarachnoid hemorrhage

別名
SAHaSAH
臓器系
神経
科目
Neurology
トピック
神経内科 G1-20:自発性くも膜下出血の診断・治療・予後神経内科 G1-16:脳血管障害の救急対応
上位概念
脳卒中
鑑別疾患
可逆性脳血管攣縮症候群脳内出血(非外傷性)片頭痛・一次性頭痛症候群
続発疾患
水頭症
治療薬
ニモジピン
症状
悪心項部硬直動眼神経麻痺発作雷鳴頭痛嘔吐疼痛羞明
検査値
髄液検査
画像所見
CT高吸収域
スコア
WFNS分類
組織像
くも膜下出血と破綻性出血(肉眼標本)
元疾患
エーラス・ダンロス症候群
原因となる疾患
常染色体優性多発性嚢胞腎動静脈奇形脳動脈瘤
適応薬
グリセロールニモジピン

🧠 全体像(SAH)は「」と表現されるで発症する脳血管救急である。多くは(多くはの分岐部にできる)の非破裂による。診断がついたら、動脈瘤の早期閉鎖・・水頭症との反復監視という3本柱を並行させることが治療の骨格になる。片頭痛・一次性頭痛症候群)としても必ず鑑別に挙がる。

病態

の分岐部にできた(ベリー)動脈瘤が破裂すると、の「ジェット様」出血によりの圧がし、突然の激烈な頭痛を来す。までの時期は予測できない「時限爆弾」であり、の破裂が原因となることもある。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='saccular aneurysm'>嚢状動脈瘤</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arteriovenous malformation (AVM)'>動静脈奇形</span>の破裂"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subarachnoid space'>くも膜下腔</span>への<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arterial'>動脈性</span>出血"]
    B --> C["急性頭蓋内圧上昇"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thunderclap headache'>雷鳴頭痛</span>・意識障害・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='meningismus'>髄膜刺激症状</span>"]
    B --> E["再出血リスク(動脈瘤閉鎖まで持続)"]
    B --> F["髄液循環の閉塞による水頭症"]
    B --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vasospasm'>血管攣縮</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='delayed cerebral ischemia'>遅発性脳虚血</span>"]

臨床像と初期評価

、悪心・嘔吐、などの、新規発作を緊急所見として扱う。まず気道・換気・循環を安定化し、疼痛・嘔吐・興奮を治療しながら、を損なわない範囲で血圧を管理する。

診断

flowchart TD
    A["新規重度の非<span class='jp-term jp-term-diagram' title='traumatic'>外傷性</span>頭痛(alert、発症1時間以内に最大強度)"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Ottawa SAH rule'>オタワSAHルール</span>6項目が全て陰性か"}
    B -->|"はい"| Z["SAHの追加検索は不要(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='medical doctor'>医師</span>の裁量)"]
    B -->|"いいえ、または適用対象外"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='unenhanced imaging'>非造影</span>頭部CT"]
    C --> D{"SAHを確認できるか"}
    D -->|"はい"| E["CTAで出血源(動脈瘤・AVM)を検索"]
    D -->|"陰性、発症6時間超または新規神経脱落あり"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='CSF analysis'>髄液検査</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='xanthochromia'>キサントクロミー</span>)を追加"]
    E --> G["不明確ならDSAで詳細評価・治療計画に利用"]
    F -->|"陽性"| G
    G --> H["再破裂予防のため可能な限り発症24時間以内に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coil embolization'>コイル塞栓術</span>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Clipping'>クリッピング</span>で閉鎖"]
段階 内容
除外の可否 Alert(GCS15)で新規重度の非頭痛が発症1時間以内に最大強度に達した患者では、(年齢40歳以上・・労作中の発症・・診察上の制限の6項目)が全て陰性ならSAHの追加検索は不要と判断してよい(検証コホートで感度100%、特異度13.6%)1。神経脱落所見・動脈瘤/SAHの既往・の既往・慢性反復性頭痛のある患者には適用しない
出血の確認 を行う。第3世代以降の高性能CTを発症6時間以内に撮影すれば感度・特異度とも100%で、この時間内であれば陰性のCTのみでSAHを除外できるとする報告がある2。発症6時間を超える、または新規の所見がある場合は、CTが陰性でも)を追加する
出血源の検索 CTAまたはMRAで動脈瘤・AVMを探す。不明確ならDSAで詳細に評価し、治療計画にも用いる
重症度評価 下表を参照。Hunt–Hess分類またはによる初期重症度評価は現行ガイドラインでも推奨されている3

重症度分類

分類 何を表すか グレードの定義
Hunt–Hess分類 臨床的重症度 1:無症状または軽度の頭痛・軽い/2:中等度〜重度の頭痛・以外の欠損なし/3:傾眠・または軽度の/4:、中等度〜重度のの初期像を伴うこともある/5:状態4
GCSとの有無による重症度 I:GCS15・なし/II:GCS13-14・なし/III:GCS13-14・あり/IV:GCS7-12(の有無を問わない)/V:GCS3-6(の有無を問わない)4
(原版) 初回CT上の出血の分布 1:出血なし/2:びまん性で1 mm未満の薄い出血/3:1 mm以上の局所的な血腫または厚い出血/4:はびまん性または認めないが内・脳室内に血腫がある4
の厚さとの有無 0:出血なし/1:菲薄ななし/2:菲薄なあり/3:厚いなし/4:厚いあり4

⚠️ 原版は数字が大きいほどリスクが高い、という並びになっていない。 グレード4は「の血液は少ないが脳内・脳室内に血腫がある」型を指すので、リスクが最も高いのはグレード4ではなく、に厚い血液が溜まるグレード3である。この不自然さを解消するために、の厚さとの有無を直交する2軸として組み直したのがであり、こちらは0から4へにリスクが上がる。

⭐ いずれの分類も単独で予後を決めるものではなく、初期重症度評価とリスクの推定に用いる標準的な尺度である。

💡 CT・CTA/MRAが陰性でSAHを除外できても、の評価はそこで終わらない。 特に反復するではを考慮する——RCVSでも脳表を来しうるが、によるSAHとは出血の機序・分布、がまったく異なる。

治療

  1. 原因の早期閉鎖: 動脈瘤閉鎖前は再出血を避けつつを保つよう血圧を個別に管理し、再破裂予防のため可能な限り発症後24時間以内にまたはで閉鎖する3。両術式が技術的に選択可能な例、およびの動脈瘤では、機能予後の観点からに優先される3は開頭を要するが、コイル塞栓が技術的に困難な形態(広頸部など)で確実な閉鎖を狙える利点がある。最終的な選択は動脈瘤の形態・部位・患者背景を踏まえ、医と医が共同で判断する。
  2. 対策: をできるだけ早期に開始し3を保つ。資料に見られる「」(予防的高血圧・)は現行では行うべきでない(かえって医原性合併症を増やすとされる)3の維持を基本とし、症候性のが実際に生じたときに限り血圧を上げる。悪化時はだけでなく、低酸素、感染、水頭症、再出血、代謝異常も再評価する。
  3. 水頭症・頭蓋内圧管理: にはを、頭蓋内圧亢進には頭位・鎮静・などを病態に応じて用いる。
  4. 発作管理: 発作は治療するが、全例への長期予防的の一律投与はせず、利益と副作用を個別に比較する。

⚠️ 再出血は動脈瘤が閉鎖されるまで、特に発症早期に危険性が高い。 ・鎮痛・早期閉鎖を含むで対応する。

合併症と予後

合併症 要点
再出血 動脈瘤閉鎖までが最も危険。血圧・鎮痛管理と早期閉鎖で予防する
水頭症 血液による髄液循環閉塞。急性期は、慢性化例はシャントを考慮する
反復診察・必要に応じなどで監視し、維持と個別化されたを行う

には記憶・、身体障害、不安・抑うつが残ることがある。年齢、初期、出血量、再出血・水頭症・の有無が予後を左右する。

まとめ

  • 、嘔吐、意識障害を見たらSAHを迅速に検索する。多くはの非破裂による。
  • と、発症6時間以内の高性能CTを組み合わせて評価し、CTA/MRA/DSAで出血源を検索する。破裂動脈瘤はできれば発症24時間以内に(技術的に可能なら優先)またはで閉鎖する。
  • の早期開始と維持でに備え、水頭症・再出血を反復監視する。予防的なは現行では行うべきでない。
  • 予後は初期重症度(Hunt–Hess/、Fisher/)、再出血、、水頭症に左右される。

出典

  1. 1.2023 Guideline for the Management of Patients With Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage: A Guideline From the American Heart Association/American Stroke Association(American Heart Association / American Stroke Association (Stroke誌)・2023)破裂動脈瘤の治療(クリッピングまたはコイル塞栓)は再破裂予防のため可能な限り発症後24時間以内に行うことが推奨(Class 1)されていること、両術式が技術的に選択可能な前方循環の良好グレード例ではコイル塞栓がクリッピングに優先すること(Class 1)、後方循環の動脈瘤ではコイル塞栓が優先されること(Class 1)、早期の経腸ニモジピン投与(60 mgを1日6回)がDCI予防・機能予後改善に有益であること(Class 1)、予防的な循環血液量増加・血液希釈(いわゆるTriple-H療法の予防的実施)はむしろ医原性有害事象を減らすため行うべきでないこと(Class 3: Harm)、抗線溶薬(トラネキサム酸等)のルーチン使用はULTRA試験の結果から機能予後を改善せず有用でないこと(Class 3: No benefit)、Hunt-Hess分類またはWFNS分類の使用が初期重症度判定・予後予測に推奨されること(Class 1)を確認した閲覧 2026-08-04
  2. 2.Sensitivity of computed tomography performed within six hours of onset of headache for diagnosis of subarachnoid haemorrhage: prospective cohort study(BMJ(Perry JJ, et al.)・2011)Alert(GCS15)で発症1時間以内に最大強度に達した非外傷性急性頭痛の患者953例(うちSAH121例)を対象に、第3世代CTを発症6時間以内に撮影した場合の感度・特異度がいずれも100%だったことを確認した閲覧 2026-08-04
  3. 3.Validation of the Ottawa Subarachnoid Hemorrhage Rule in patients with acute headache(Canadian Medical Association Journal (CMAJ)(Perry JJ, et al.)・2017)オタワSAHルールの対象は15歳超・発症1時間以内に最大強度に達した非外傷性の新規重度頭痛患者で、神経脱落所見・動脈瘤やSAHの既往・脳腫瘍の既往・慢性反復性頭痛のある患者には適用しないこと、この多施設検証コホートで感度100%(95%CI 94.6–100%)・特異度13.6%だったことを確認した閲覧 2026-08-04
  4. 4.Grading the severity of subarachnoid haemorrhage(Deranged Physiology(オーストラリア集中治療専門医による教育用リファレンス))Hunt and Hess分類(グレード1〜5)、WFNS分類(GCSと運動麻痺の有無によるグレードI〜V)、Fisher分類原版(CT出血量によるグレード1〜4)、modified Fisher分類(くも膜下出血の厚さと脳室内出血の有無によるグレード0〜4)の各グレードの定義を確認した閲覧 2026-08-04