脳神経内科学

脳神経内科学 · G1-16

脳血管障害の救急対応

G1-16: Emergency in cerebrovascular disorders

疾患
くも膜下出血動静脈奇形脳卒中
スコア
NIHSS

🧠 全体像:急性では、、、、、を迅速に分ける。救急対応は、症候認識、発症/最終健常時刻の確認、ABC、血糖、を同時並行で進め、再灌流・止血/血圧・脳圧・を病型ごとに選ぶ。

初動と診断の流れ

flowchart TD
    A["突然の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='focal neurological signs'>局在神経症候</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thunderclap headache'>雷鳴頭痛</span>"] --> B["FASTで認識し脳卒中対応可能施設へ迅速搬送"]
    B --> C["ABC・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Glasgow Coma Scale'>GCS</span>・血糖・体温・血圧<br>最終健常時刻、抗凝固薬、既往を確認"]
    C --> D["緊急<span class='jp-term jp-term-diagram' title='unenhanced imaging'>非造影</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='head CT'>頭部CT</span><br>必要時<span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography angiography'>CTA</span>/CTPまたは<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>/MRA"]
    D --> E{"出血か、虚血か、静脈血栓か"}
    E -->|"虚血"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intravenous thrombolysis'>静注血栓溶解</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thrombectomy'>血栓回収</span>の適格性を画像・時間・禁忌で判断"]
    E -->|"出血/SAH"| G["血圧・抗凝固作用・ICPを管理し、脳外科/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endovascular treatment'>血管内治療</span>へ連携"]
    E -->|"CVT"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography'>CT</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='MR venography'>MR静脈造影</span>で確認し、治療量ヘパリンを基本に管理"]

FAST(Face:顔面のゆがみ、Arms:腕の脱力、Speech:、Time:発症時刻と緊急通報)は市民・救急段階での認識を助ける。意識低下なら気道を保護し、低酸素、低血圧、低/高血糖、発熱を是正する。は出血の迅速な鑑別に有用で、/は閉塞血管/動脈瘤、またはは選択例でを評価する。

虚血性脳卒中

は血栓または塞栓による局所遮断で、突然の片側脱力/、、、、失調を呈する。は発症/最終健常時刻からの時間、画像、出血リスク、禁忌を満たす患者で時間依存的に検討する。の大血管閉塞などでは術を、標準時間枠内および選択された遅発来院例で画像適格性に基づき検討する。

💡 時間枠は数値まで押さえる。 は発症/最終健常時刻から4.5時間以内が標準の時間枠で、とは同等に選択できる1。術に先立つとしては、対象があり発症4.5時間以内の202例を対象とした試験で、はに比べ時の再灌流率が高く(22% 対 10%)、90日時点のも良好で、の代替になりうる2。術の時間枠は、臨床重症度と梗塞体積の不釣り合いを基準とした6〜24時間の試験(206例、DAWN)3や、上の虚血組織/梗塞体積比を基準とした6〜16時間の試験(182例、DEFUSE-3)4での改善が示され、6時間から24時間へ広がった。が大きい症例( 3〜5または梗塞コア体積50mL以上)でも、352例の試験(SELECT2)で術群の転帰が内科治療単独群より良好であり、適応が広がった5。発症時刻不明例では、で梗塞巣がありに明瞭な高信号がないを基準に選べば、503例の試験(WAKE-UP)で群の90日良好転帰が対照群より多かった(53.3% 対 41.8%)6。はの大血管閉塞とは別枠の試験で検証されており、発症12時間以内の340例を対象とした試験(ATTENTION)では術群で90日時点の機能良好例が多かった(46% 対 23%)が、の増加を伴った7。

血圧はと再出血/治療安全性の両方に関わる。資料の「収縮期220 mmHgまでは許容」は、を行わない一部のにおける目安であり、血栓溶解・、併存大動脈疾患、心不全などでは別の目標を用いる。病型と治療手順に従い、低血圧も避ける。

出血性脳卒中とくも膜下出血

では突然の局在症候、頭痛、嘔吐、意識障害、けいれんを来す。血圧を制御し、抗凝固薬があれば速やかに拮抗し、血腫量、部位、水頭症、脳圧、神経悪化から外科的血腫除去/減圧の適応を脳外科と判断する。またははや脳浮腫の橋渡しに用いるが、根本的な血腫/水頭症治療を遅らせない。

は動脈瘤または破裂によることがあり、「人生最悪」の突然の、悪心/嘔吐、、意識障害を呈する。直ちにを行い、陰性でも臨床的疑いが高ければ発症時刻と施設手順によりまたは血管画像を追加する。動脈瘤は早期またはで再出血を防ぎ、で/リスクを下げる。のため動脈瘤閉鎖は可能な限り発症後24時間以内に行い、両術式が技術的に選択可能なの例および動脈瘤ではが優先される8。は経口60 mgを1日6回で用いることが推奨される一方、・による予防的な、いわゆるtriple-H療法は医原性有害事象を増やすため行うべきでないとされる8。

TIAと脳静脈血栓症

は局所脳・による一過性症候で、を伴わない病態である9。資料の「24時間以内に回復」は旧来の時間定義であり、症候が完全に消えても脳卒中高リスクとして即時評価する。、心房細動など、血圧、糖尿病、脂質を調べ、原因に応じて、抗凝固薬、頸動脈治療、危険因子管理を行う。非の高リスク(4以上)または軽症( 3以下)では、発症24時間以内にアスピリン+の21日間投与を行い、その後単剤へ切り替えることが強く推奨される(エビデンスの質は高)10。300mgの単回負荷はこの推奨文の一部ではなく、提案として付されているものである。⚠️ はここでは2剤併用の適応を決める閾値として使っているだけで、のとして使うものではない。 上の推奨は2剤併用に関する別立てので、ESOの診療ガイドライン本体のほうは、予測ツールを単独で用いて高リスク例の同定・・治療判断を行わないことを提案している(介入に反対する弱い推奨、エビデンスの質は非常に低い)——感度が限られるため3点以下にも早期の評価と治療を要する高リスク例が相当数含まれうること、およびや抗凝固の対象となる患者の評価を不必要に遅らせる懸念が理由である11。英国のガイドラインはより強く、その後のの評価と紹介のの判断の両方にABCD2などのスコアを用いないよう定めている12。いずれにせよ、スコアが低いことは専門医評価を遅らせる理由にならない(詳細は)。

は静脈洞の血栓で静脈還流が障害され、頭痛、、けいれん、局在徴候、ICP亢進、出血を来す。またはで確認し、禁忌がなければ出血を伴っていても治療量ヘパリン/による抗凝固を基本とする。重症脳浮腫・では脳圧治療やを検討する。

痙攣、二次予防、医療安全

脳卒中に伴う臨床発作やてんかん重積は直ちに治療する。一方、出血/の全例に予防的を一律投与するのではなく、発作、、病変、意識状態に基づき選ぶ。安定化後は、病型に応じた、心房細動などのへの抗凝固、スタチン、血圧・血糖・脂質・喫煙の管理、リハビリテーションを開始して再発を予防する。

まとめ

  • 急性脳卒中ではFAST、最終健常時刻、ABC、血糖、を遅らせず並行する。
  • は画像・時間・禁忌に基づき/を、は血圧、抗凝固作用、ICP、外科適応を管理する。
  • は症候消失後も救急、CVTはで診断し、通常は出血を伴っても抗凝固を検討する。

出典

  1. 1.2026 Guideline for the Early Management of Patients With Acute Ischemic Stroke(American Heart Association / American Stroke Association・2026)静注血栓溶解療法はアルテプラーゼ・テネクテプラーゼを同等に選択できる4.5時間の時間枠を維持していること閲覧 2026-08-27
  2. 2.Tenecteplase versus Alteplase before Thrombectomy for Ischemic Stroke(The New England Journal of Medicine・2018)内頸動脈・脳底動脈・中大脳動脈閉塞で血栓回収術の適応があり発症4.5時間以内の202例を対象とした試験で、テネクテプラーゼ群はアルテプラーゼ群に比べ血管撮影時の再灌流率が高く(22% 対 10%)、90日時点のmodified Rankin Scale中央値も良好だった(2 対 3)こと閲覧 2026-08-27
  3. 3.Thrombectomy 6 to 24 Hours after Stroke with a Mismatch between Deficit and Infarct(New England Journal of Medicine・2018)内頸動脈頭蓋内部または中大脳動脈近位部閉塞で最終健常時刻から6〜24時間、臨床的な神経脱落症状の重症度に比して梗塞体積が小さいという不釣り合い(年齢別基準)を満たす206例を対象とした試験で、血栓回収術群は対照群より90日時点の機能的自立の割合が高かった(49% 対 13%)こと閲覧 2026-08-27
  4. 4.Thrombectomy for Stroke at 6 to 16 Hours with Selection by Perfusion Imaging(New England Journal of Medicine・2018)中大脳動脈近位部/内頸動脈閉塞で最終健常時刻から6〜16時間、初期梗塞体積70mL未満かつ灌流画像上の虚血組織/梗塞体積比1.8以上の182例を対象とした試験で、血栓回収術群は内科治療単独群より90日時点のmodified Rankin Scaleの転帰分布が良好だったこと閲覧 2026-08-27
  5. 5.Trial of Endovascular Thrombectomy for Large Ischemic Strokes(The New England Journal of Medicine・2023)内頸動脈または中大脳動脈M1部閉塞でASPECTS 3〜5、またはCT灌流画像/拡散強調MRIで梗塞コア体積50mL以上という大きな虚血コアを持つ352例を対象とした24時間以内の試験で、血栓回収術群は内科治療単独群よりmodified Rankin Scaleの転帰分布が良好だった(一般化オッズ比1.51)こと閲覧 2026-08-27
  6. 6.MRI-Guided Thrombolysis for Stroke with Unknown Time of Onset(New England Journal of Medicine・2018)発症時刻不明の脳卒中で拡散強調画像に虚血病変を認めるがFLAIRに実質性高信号を認めない(発症からおおむね4.5時間以内を示唆する)ミスマッチを基準に選んだ503例を対象とした試験で、アルテプラーゼ群は90日時点の機能良好例(mRS 0-1)がプラセボ群より多かった(53.3% 対 41.8%)が、症候性頭蓋内出血もやや多かった(2.0% 対 0.4%)こと閲覧 2026-08-27
  7. 7.Trial of Endovascular Treatment of Acute Basilar-Artery Occlusion(The New England Journal of Medicine・2022)脳底動脈閉塞から12時間以内の中国人患者340例を対象とした試験で、血栓回収術群は最良の内科治療群より90日時点の機能良好例(mRS 0-3)が多かった(46% 対 23%)が、手技合併症・頭蓋内出血を伴ったこと。前方循環の大血管閉塞を対象とした試験とは別枠で検証されたこと閲覧 2026-08-27
  8. 8.2023 Guideline for the Management of Patients With Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage: A Guideline From the American Heart Association/American Stroke Association(American Heart Association / American Stroke Association (Stroke誌)・2023)破裂動脈瘤の治療(クリッピングまたはコイル塞栓)は再破裂予防のため可能な限り発症後24時間以内に行うべきとされ、両術式が技術的に選択可能な前方循環の良好グレード例および後方循環の動脈瘤ではコイル塞栓が優先されること、早期の経腸ニモジピン投与(60 mgを1日6回)が推奨されること、循環血液量増加・血液希釈を予防的に行う、いわゆるtriple-H療法はむしろ医原性有害事象を増やすため行うべきでない(推奨クラス3、Harm)とされていること閲覧 2026-08-27
  9. 9.Definition and Evaluation of Transient Ischemic Attack: A Scientific Statement for Healthcare Professionals From the American Heart Association/American Stroke Association(American Heart Association / American Stroke Association・2009)症状持続時間(24時間以内)による旧来の時間依存性の定義を廃し、急性梗塞を伴わない一過性の局所脳・脊髄・網膜虚血という組織診断に基づく新定義を提唱したこと閲覧 2026-08-27
  10. 10.European Stroke Organisation expedited recommendation for the use of short-term dual antiplatelet therapy early after minor stroke and high-risk TIA(European Stroke Organisation・2021)推奨1として、発症24時間以内の非心原性の軽症脳梗塞(NIHSS 3以下)または高リスクTIA(ABCD2スコア4以上)にアスピリン+クロピドグレルの21日間投与を強く推奨(エビデンスの質は高)し以降は単剤の抗血小板薬へ切り替えるとしていること、クロピドグレル300mg単回負荷は推奨文ではなく提案として付されていること、推奨2として非心原性の軽症〜中等症脳梗塞(NIHSS 5以下)または高リスクTIA(ABCD2スコア6以上、もしくは頭蓋内動脈硬化性病変か症状を説明しうる内頸動脈50%以上の狭窄)にアスピリン+チカグレロルの30日間併用を弱く推奨(同じく中)していること、低リスクTIAまたはTIAの診断が不確実な例では専門家11名全員が2剤併用に反対票を投じたことを全文(PMC8370083)で確認した。閲覧 2026-09-08
  11. 11.European Stroke Organisation (ESO) guidelines on management of transient ischaemic attack(European Stroke Organisation・2021)TIA疑い例では予測ツールを単独で用いて高リスク例の同定・トリアージ・治療判断を行わないことを提案し(介入に反対する弱い推奨、エビデンスの質は非常に低い)、その理由として感度が限られるため3点以下にも早期の評価と治療を要する高リスク例が相当数含まれうること、予測ツールの使用が内膜剥離術や抗凝固の対象となる患者の評価を不必要に遅らせる懸念を挙げていること、一方で非心原性の高リスクTIA(ABCD2スコア4以上)にはアスピリン+クロピドグレルの短期併用を強く推奨(質は高)していること、TIA例の専門医評価を発症24時間以内に行うことを強く推奨(質は低)していること、34研究35,867例のプール解析で7日以内の脳卒中が4点以上5.3%(1257/23942)対3点以下1.8%(212/11925)でオッズ比2.97(95%CI 2.23〜3.96)であったこと、画像を組み込んだABCD2-I・ABCD3-Iは神経画像が使える場面で高リスク群の同定に有用な可能性があるとしつつ一次医療での使用を想定した設計でないため今回の解析から除いたとしていることを全文(PMC8370080)で確認した。閲覧 2026-09-08
  12. 12.Stroke and transient ischaemic attack in over 16s: diagnosis and initial management(National Institute for Health and Care Excellence (NICE), guideline NG128・2022)推奨1.1.6が、TIAが疑われるか確定した人について、その後の脳卒中リスクの評価や紹介の緊急度の判断にABCD2などのスコアリングシステムを用いないこと(原文は「Do not use scoring systems, such as ABCD2, to assess risk of subsequent stroke or to inform urgency of referral for people who have had a suspected or confirmed TIA.」)と定めていること、代わりに推奨1.1.4が禁忌がなければアスピリン300mg日量を直ちに開始すること、推奨1.1.5が発症から24時間以内に専門医の評価と検査を受けられるよう直ちに紹介することを定めていることを本文で確認した。ガイドラインは2019年5月1日公開・2022年4月13日最終更新で、1.1.6には2019と付記されている。閲覧 2026-09-08