スコア体系ノート一覧へ

Scores · Published

ABCD2スコア

ABCD2 score

臓器系
神経循環器
科目
Neurology
トピック
神経内科 G2-26:TIA
構成:症状
脱力失語
適用疾患
一過性脳虚血発作

🧠 全体像:ABCD2スコアは、TIA後2日以内のを5項目で層別化する簡便なである。名前自体が採点項目の頭文字(Age・Blood pressure・Clinical features・Duration・Diabetes)で、DがDurationとDiabetesの2つに使われるため「2乗(²)」を付けてABCD²と呼ぶ——この語呂がそのまま構成要素の暗記になる。ただし症候(など)を採点項目に一切含まないという構造的な弱点があり、低スコアだからといってのTIAやを安心して除外してはならない。

目的と適用場面

内容
目的 TIA後2日以内の層別化
対象 TIAと診断された(または疑われる)患者
使う場面 救急外来・初診時の、緊急評価と外来経過観察の振り分け
評価しないもの 画像所見、症候、の特異的所見、確定診断そのもの

原型は独立に開発されたCalifornia score(90日)とABCD score(7日)で、2007年にJohnstonらがこの2つを統合し、2日に最適化した単一の指標としてABCD2スコアを導出した1

構成要素と配点

項目 基準
A: 60歳以上 1
B: 初回評価時に収縮期140mmHg以上または拡張期90mmHg以上 1
C: 片側の脱力 2
C: 脱力を伴わない 1
C: それ以外の症状 0
D: 60分以上 2
D: 10〜59分 1
D: 10分未満 0
D²: あり 1

合計0〜7点1。⭐ はそれぞれ3段階(0/1/2点)を持つ唯一の項目で、片側脱力(2点)と60分以上の持続(2点)が最も重みの大きい所見である。

flowchart TD
    A["TIAを疑う患者"] --> B["ABCD2スコアを算出"]
    B --> C{"スコアの範囲"}
    C -->|"0〜3点"| D["低リスク"]
    C -->|"4〜5点"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intermediate risk (PE)'>中間リスク</span>"]
    C -->|"6〜7点"| F["高リスク"]
    D --> G["低スコアでも緊急評価・専門医紹介は省略しない"]
    E --> G
    F --> G

解釈とカットオフ

リスク 点数 2日以内 7日以内 90日以内
低リスク 0〜3点 1.0% 1.2% 3.1%
4〜5点 4.1% 5.9% 9.8%
高リスク 6〜7点 8.1% 11.7% 17.8%

(統合検証コホート4809例の1

💡 4点というは治療判断にも使われる。発症24時間以内の非高リスクTIA(ABCD2スコア4以上)または軽症非では、アスピリンとの21日間二剤併用療法(DAPT)が推奨される2。詳細な用量・切り替えのタイミングはTIA側の治療節を参照する。

限界と使ってはいけない場面

⚠️ 症候を採点項目に含まない。 めまいなどのTIAに特徴的な症候は5項目のどこにも反映されず、のTIAやを十分に捉えられない構造的な弱点がある3。MRI所見を組み込んだABCD3-Iのような改良版でも、この弱点を完全には解消しない。

⚠️ 画像所見・心電図所見・頸動脈評価の結果を反映しない。これらはABCD2スコアとは独立に、すべてのTIAで評価する。

⚠️ 低スコアを理由に、緊急評価・専門医紹介・の開始を先送りしない。 TIA後90日以内のは最大17.8%に達し、その約半数は発症後2日以内という短期間に生じる1。スコアはの補助であり、単独で経過観察の可否を決める指示ではない。

⚠️ TIAの診断そのものが不確実な場合がある。片頭痛・てんかん・失神などのはスコアの対象外であり、ABCD2スコアは臨床診断を代替しない。

まとめ

  • ABCD2スコアは年齢・血圧・・糖尿病の5項目、合計0〜7点でTIA後2日以内のを層別化する。
  • 低リスク(0〜3点)・(4〜5点)・高リスク(6〜7点)に分け、2日リスクはそれぞれ1.0%・4.1%・8.1%。
  • ABCD2スコア4以上は、非高リスクTIAへの2剤併用療法の適応判断にも使われる。
  • 症候を採点項目に含まないため、低スコアでもTIAやを除外できない。
  • 画像・心電図・頸動脈評価を代替せず、低スコアを理由に緊急評価を先送りしない。

出典

  1. 1.Validation and refinement of scores to predict very early stroke risk after transient ischaemic attack(The Lancet(Johnston SC, Rothwell PM, Nguyen-Huynh MN, et al.)・2007)年齢60歳以上1点・血圧140/90mmHg以上1点・臨床症状(片側脱力2点、脱力を伴わない言語障害1点)・持続時間(60分以上2点、10〜59分1点)・糖尿病1点の5因子で合計0〜7点のABCD2スコアを導出し、4809例の統合検証コホートで低リスク(0〜3点:2日リスク1.0%・7日1.2%・90日3.1%)・中間リスク(4〜5点:4.1%・5.9%・9.8%)・高リスク(6〜7点:8.1%・11.7%・17.8%)に層別化できることを示したこと閲覧 2026-08-11
  2. 2.Diagnosis, Workup, Risk Reduction of Transient Ischemic Attack in the Emergency Department Setting: A Scientific Statement From the American Heart Association(American Heart Association・2023)ABCD2スコアが運動失調・同名半盲などの後方循環症候を採点項目に含まず、椎骨脳底動脈系のTIAや心原性塞栓を十分に捉えられない構造的な限界を指摘していること閲覧 2026-08-11
  3. 3.European Stroke Organisation expedited recommendation for the use of short-term dual antiplatelet therapy early after minor stroke and high-risk TIA(European Stroke Organisation・2021)発症24時間以内の非心原性高リスクTIA(ABCD2スコア4以上)または軽症非心原性脳梗塞に対し、アスピリン+クロピドグレルの21日間併用療法を強く推奨していること閲覧 2026-08-11