脳神経内科学

脳神経内科学 · G1-15

椎骨脳底動脈系循環障害の臨床症候群

G1-15: Clinical syndromes of impaired circulation of the vertebrobasilar system

前提:病態
脳血管障害(低酸素・虚血・梗塞)
前提:正常
中枢神経・神経解剖:血液供給脳幹の伝導路
疾患
閉じ込め症候群
症状
偽性球麻痺

🧠 全体像:は延髄、橋、中脳、小脳、視床、を養う。そのため、めまいだけでなく、、構音・嚥下障害、神経徴候、意識障害、を伴う急性症候は脳卒中として扱う。

血管支配と局在

は延髄と小脳下面に枝を出した後に合流してとなる。は延髄から橋・中脳までの脳幹を養い、終末でとへ分岐する。したがっては小脳、橋、延髄、中脳、視床、後頭皮質の機能を支える。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vertebral artery'>椎骨動脈</span>"] --> B["延髄・小脳下面<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior inferior cerebellar artery / PICA'>後下小脳動脈</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior inferior cerebellar artery'>PICA</span>)"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='basilar artery'>脳底動脈</span>"]
    C --> D["橋・脳幹"]
    C --> E["小脳枝(SCAなど)"]
    C --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior cerebral artery, PCA'>後大脳動脈</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior cerebral artery'>PCA</span>)"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='occipital lobe'>後頭葉</span>・視床"]

椎骨脳底動脈不全と脳幹梗塞

はまたは狭窄などでの血流が低下する状態で、としてめまい/回転性めまい、、両側性(、)、悪心・嘔吐、失神を来し得る。ただし孤立した非特異的めまいだけでは診断せず、脳神経症候、、、四肢の局在徴候を積極的に探す。

では、またはその枝の閉塞により、嚥下障害、、などの、両側(皮質脊髄路)、意識障害、呼吸異常を生じる。病変と同側のと対側の/感覚障害が組み合わさる徴候は脳幹局在の重要な手がかりである。

小脳、橋、延髄、後頭葉の症候群

症候群/病変 血管・解剖 主要症候 臨床上の要点
小 または(SCA)閉塞が代表 同側四肢/、めまい、悪心・嘔吐、突然の強い頭痛。は同側に出る の浮腫は・急性水頭症を来すため、や意識悪化では緊急画像と脳外科評価を要する
の両側梗塞、しばしば 、発声不能、意識は保たれる。やで意思疎通できることがある に見えても意識を評価し、眼球運動を用いる意思疎通を試みる。眼球運動の変動・のため急性期の評価は難しく、診断まで平均2.5か月以上を要したとする報告があり、遷延性意識障害と誤認しないことが特に重要である1
脳幹・小脳への広範な血流低下 意識障害/昏睡、、、両側運動・感覚障害 急速に致死的となり得る大血管閉塞で、脳卒中センターでの再灌流適格性評価が必要
閉塞による梗塞 対側の痛覚・温度覚低下、同側、嚥下障害、、めまい・悪心 の、交感路、、脊髄視床路の障害を結ぶ。顔面の感覚障害も同側に伴い得る。では「症候群」の通称に反し孤立性病変(10%)より自体の病変(67%)の方が高頻度で、錐体路は延髄内側にあるためは典型例では目立たない2
/梗塞 による後頭皮質虚血 対側、、、視覚性 視覚症候が主であっても急性脳卒中として評価する。優位-病変ではを来し得る

急性めまいへの注意

梗塞は障害と似たを呈する。新規難聴、、構音/嚥下障害、顔面/四肢の・脱力、または眼振、強い、、頭頸部痛は中枢性である。急性持続性前庭症候群を評価する訓練済み診察者による・眼振・は補助となるが、病歴、、必要時の画像を代替しない。

⚠️ 梗塞は梗塞より診断・治療が遅れやすい。 オーストリアの脳卒中ユニット登録71010例(11924例・59086例)では、発症から来院までの時間中央値が170分、110分と有意に長く、を受けた症例に限っても発症-間・来院-投与時間のいずれもで有意に長かった3。めまいなど非特異的訴えが前面に出やすいことが、この遅れの一因と考えられる。

まとめ

  • は脳幹・小脳・を養い、めまいに脳神経徴候、徴候、意識/、が加わればを疑う。
  • は浮腫による、はや昏睡を来し得るため、緊急再灌流・減圧評価を要する。
  • の梗塞では同側Horner・と対側低下の組合せを覚える。

出典

  1. 1.The locked-in syndrome: what is it like to be conscious but paralyzed and voiceless?(Progress in Brain Research・2005)閉じ込め症候群の急性期は眼球運動の変動や消耗のため評価が難しく、意識があるにもかかわらず診断まで平均2.5か月以上を要し、症例によっては4〜6年かかったとする既報を紹介したこと閲覧 2026-08-27
  2. 2.Lateral Medullary Syndrome (Wallenberg Syndrome)(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)責任血管が後下小脳動脈(PICA)または椎骨動脈であり、血管撮影では椎骨動脈病変(67%)が孤立性PICA病変(10%)より高頻度であること、錐体路(皮質脊髄路)が延髄内側に位置し外側の梗塞巣の外にあるため四肢麻痺が典型例では目立たないことを確認した閲覧 2026-08-27
  3. 3.Prehospital and intra-hospital time delays in posterior circulation stroke: results from the Austrian Stroke Unit Registry(Journal of Neurology・2017)オーストリア脳卒中ユニット登録の71010例(後方循環11924例・前方循環59086例)で、発症から来院までの時間中央値は後方循環170分、前方循環110分と後方循環で有意に長く(p<0.001)、血栓溶解療法を受けた10535例に限っても発症-来院時間(80分 対 72分)・来院-投与時間(57分 対 45分)とも後方循環で有意に長かったこと閲覧 2026-08-27