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Fisher分類

Fisher grading scale

別名
modified Fisher分類
臓器系
神経
科目
Neurology
トピック
神経内科 G1-20:自発性くも膜下出血の診断・治療・予後

🧠 全体像は、動脈瘤性初回CT上の出血の見え方だけから)のリスクを推定する画像ベースの分類である。1980年の原版(グレード1〜4)と2006年のmodified版(グレード0〜4)の2種類が並存し、同じ名前で数字の意味が異なる。原版はグレード4が「の血液は少ないが脳室内・内に血腫がある」型を指すため数字が大きいほどリスクが高いとは限らない特殊な並びになっており、この歪みを解消するために作られたのがmodified版で、こちらはの厚さとの有無を直交する2軸として組み直し、0から4へにリスクが上がる。

目的と適用場面

内容
目的 の初回CT所見から)のリスクを層別化する
対象 と診断された患者
使う場面 発症直後の初回評価時
評価しないもの 臨床的重症度(Hunt–Hess分類の領域)、、転帰そのもの

もとは1980年にFisherらが破裂47例をに検討し、の血液の厚さ・分布と重度の発生に強い相関があることを報告したのが原版の起源である1。2006年にFronteraらが、1,355例のプール解析から、の厚さとの有無を組み合わせたmodified版の方が症候性の予測能に優れることを示し2、以後はmodified版が臨床・研究の両方で広く使われている。

構成要素と配点

は点数を合算するのではなく、初回所見からグレードを直接決定する。

原版

グレード CT所見
1 出血なし
2 びまん性で1 mm未満の薄い
3 1 mm以上の局所的な血腫または厚い
4 はびまん性または認めないが、内・脳室内に血腫がある

原版はグレード3(局所的または厚い)で重度がほぼ必発したのに対し、血液を認めないかびまん性で薄い分布にとどまる場合は重度がまれだったという知見に基づく1

グレード の厚さ
0 出血なし なし
1 菲薄(びまん性または局所) なし
2 菲薄(びまん性または局所) あり
3 厚い なし
4 厚い あり

の厚さ(菲薄/厚い)との有無(なし/あり)という2つの独立した軸の組み合わせでグレードが決まる3

解釈とカットオフ

分類 リスクの並び方 使い方
原版 ではない。 グレード3でリスクが最も高く、グレード4はグレード3より低い 歴史的な位置づけとして知っておく。新規の臨床判断には原則modified版を使う
グレード0から4へ症候性リスクが上がる リスクの層別化に用いる標準的な尺度

補正後の解析では、が症候性の有意な予測因子であり続けた(補正1.28)のに対し、原版は補正後には有意な予測因子ではなくなった2

💡 グレードが高い(modified版で3〜4)ほどの監視を強める根拠になるが、グレード単独でを決めるものではなく、Hunt–Hess分類による臨床的重症度評価と合わせて用いる。

限界と使ってはいけない場面

⚠️ 原版は数字の大小とリスクの高低が対応しない。 グレード4は「の血液は少ないが脳内・脳室内に血腫がある」型を指すため、リスクが最も高いのはグレード4ではなくグレード3である。「グレードが上がるほどリスクが上がる」という前提で原版を読むと誤る。

⚠️ は評価者間の一致度が低い。 32施設の神経フェローシップ修了者46名を対象とした調査では、評価者間一致度は中等度にとどまり(Kendallの一致係数W=0.586)、菲薄と厚いの境界基準を正しく理解していた回答者は30%、の採点規則を正しく理解していた回答者は42%にとどまった4。「厚い」「菲薄」の境界は判定であり、施設・評価者間でグレードがぶれうることを踏まえて使う。

⚠️ はいずれもCT上の出血量という画像所見のみを評価し、所見といったは評価しない。臨床的重症度評価にはHunt–Hess分類を別に用いる。

⚠️ グレードはリスクの層別化に使うものであり、単独で転帰を予測したり治療の可否を決めたりするものではない。

まとめ

  • の初回CT所見から)リスクを推定する画像ベースの分類で、原版(グレード1〜4)とmodified版(グレード0〜4)の2種類がある。
  • 原版はグレード3でリスクが最も高く、グレード4はそれより低いという非な並びを持つ。
  • modified版はの厚さとの有無という2軸を組み直し、グレード0から4へにリスクが上がる。補正後の解析でも有意な予測因子であり続けたのはmodified版のみだった。
  • は評価者間の一致度が中等度にとどまり、「菲薄」「厚い」の境界判定は評価者間でぶれうる。
  • いずれも画像所見のみを評価する尺度であり、臨床的重症度評価(・Hunt–Hess分類)とは別軸として併用する。

出典

  1. 1.Relation of cerebral vasospasm to subarachnoid hemorrhage visualized by computerized tomographic scanning(Neurosurgery(Fisher CM, Kistler JP, Davis JM)・1980)破裂脳動脈瘤47例の検討で、くも膜下腔の血液が厚さ1 mm以上または5×3 mm超の局所血腫として写る群では重度血管攣縮がほぼ必発(24例中23例)だった一方、血液を認めないか、びまん性で薄い分布にとどまる群では重度血管攣縮がまれ(18例中1例)だったこと(原版Fisher分類の元になった知見)を確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.Prediction of symptomatic vasospasm after subarachnoid hemorrhage: the modified Fisher scale(Neurosurgery(Frontera JA, Claassen J, Schmidt JM, et al.)・2006)くも膜下出血1,355例の解析で、くも膜下出血の厚さと脳室内出血の有無を組み合わせたmodified Fisher分類が、補正後も症候性血管攣縮の有意な予測因子であり続けた(補正オッズ比1.28)のに対し、原版Fisher分類は補正後には有意な予測因子でなくなったこと(modified Fisher分類が原版より予測能で優れるという知見の出典)を確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.The Modified Fisher Scale Lacks Interrater Reliability(Neurocritical Care(Melinosky C, Kincaid H, Claassen J, Parikh G, Badjatia N, Morris NA)・2021)32施設46名の神経集中治療フェローシップ修了者を対象とした調査で、modified Fisher分類の評価者間一致度が中等度にとどまり(Kendallの一致係数W=0.586)、菲薄と厚いの境界基準を正しく理解していた回答者が30%、脳室内出血の採点規則を正しく理解していた回答者が42%にとどまったこと(modified Fisher分類の評価者間信頼性が低いという知見の出典)を確認した閲覧 2026-08-10
  4. 4.Grading the severity of subarachnoid haemorrhage(Deranged Physiology(オーストラリア集中治療専門医による教育用リファレンス))原版Fisher分類(グレード1〜4)とmodified Fisher分類(グレード0〜4)それぞれの定義、および原版でグレード4が「くも膜下腔の血液は少ないが脳室内・脳実質内に血腫がある」型を指すためグレードの大小と血管攣縮リスクが単調に対応しないことを確認した閲覧 2026-08-10