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WFNS分類

WFNS grading scale

別名
WFNSグレード
臓器系
神経
科目
Neurology
トピック
神経内科 G1-20:自発性くも膜下出血の診断・治療・予後
構成:症状
意識障害運動麻痺失語
適用疾患
くも膜下出血

🧠 全体像は、動脈瘤性初期の臨床重症度〔GCS〕の有無だけでI〜Vの5段階に分ける尺度であり、1988年にWFNS委員会の報告として提案された1。同じの重症度評価として並べて語られるとは評価する軸が別であることに注意する——Fisher系はCT上の出血量という画像所見を段階分けし、は診察で得られるを段階分けする。両者は独立に併記され、片方がもう片方を代替しない。

目的と適用場面

内容
目的 の初期臨床重症度を層別化し、決定の材料にする
対象 と診断された患者
使う場面 決定前の初期評価
評価しないもの CT上の出血量(の領域)、リスクそのもの

との違い

判定に使う指標 頭痛・の程度、の記述など診察者のな判断 GCSという数値化された指標+の有無
再現性 「傾眠」「」など用語の境界があいまいで評価者間のばらつきが大きい GCSを土台にしており相対的に再現性が高い2

⭐ 両分類は現在も並記されることが多く、の初期重症度評価ではどちらか一方に統一されているわけではない。

構成要素と配点

は点数を合算するのではなく、GCSの範囲と主要な)の有無の組み合わせでグレードを直接決定する2

グレード GCS 主要な
I 15 なし
II 13〜14 なし
III 13〜14 あり
IV 7〜12 有無を問わない
V 3〜6 有無を問わない

⚠️ の有無が判定に効くのはGCS 13〜14の範囲だけである。 GCS 15(グレードI)はそもそも脱落症状なしが前提であり、GCS 12以下(グレードIV・V)は脱落症状の有無を問わずGCSだけでグレードが決まる。「脱落症状があれば常に1段階重く判定する」という理解は誤りで、脱落症状が効くのはグレードII/IIIの、すなわちGCS 13〜14のときに限られる。

解釈とカットオフ

区分 グレード 位置づけ
I〜III 早期のを前提とした方針を取りやすい
IV〜V 転帰不良の割合が高いが、個別に手術適応を検討する

グレードが上がるほど不良な転帰の割合は段階的に増える。多くの施設では(I〜III)の患者に対して動脈瘤の早期閉鎖を進める一方、(IV〜V)では手術を延期する運用が取られてきた2。ただしでも、を合併している場合はによってが改善し、グレードが1段階上がって手術適応に入ることがある2

💡 グレードは「治療するかどうか」を機械的に決める閾値ではなく、を判断する材料の一つとして他のと合わせて使う。

限界と使ってはいけない場面

⚠️ 鎮静薬・投与中、挿管中、重度の全身状態不良では正確なGCSが取れない。 これらの状態でGCSのが損なわれると、WFNSグレードも同様に不正確になる。が評価できない場合は評価不能である旨を記録し、可能であれば鎮静前の最終評価を参照する。

⚠️ のある患者ではGCSのが低く出やすく、とは別の理由でグレードが重く判定されうる。 そのものはとしてグレードIII以上の判定根拠にもなるため、意識障害由来の変化なのか由来の変化なのかを区別して記録する。

⚠️ 評価のタイミングでグレードは大きく変わる。 来院直後(蘇生前)の評価と、気道・循環を安定化させた蘇生後の評価では、同じ患者でもグレードが変わりうる。1,620例の前向きコホートでは、のWFNSグレードより後に再評価したグレード()の方が転帰の予測能が有意に高かった(予測モデルのAUC 0.87)3に対するの前後でも同様にグレードが変わりうる。どの時点で評価したグレードかを明記せずに使わない。

⚠️ 同じグレード内でも転帰の幅は広く、グレード単独での可否を決めるものではない。年齢・出血量・全身状態など他の要因と合わせて判断する。

まとめ

  • の初期臨床重症度を、GCSと主要な)の有無からI〜Vの5段階に分ける。
  • の有無が効くのはGCS 13〜14(グレードII/IIIの分岐)のときだけで、GCS 15はグレードI、GCS 12以下はグレードIV・Vに脱落症状の有無を問わず決まる。
  • が診察者のな記述に頼るのに対し、はGCSという再現性の高い指標を土台にしている。
  • (I〜III)は早期のを前提としやすく、(IV〜V)でもで改善しうる。
  • 鎮静・挿管・ではGCSが不正確になりうること、評価のタイミング(蘇生前後、前後)で大きく変わることに注意し、単独で治療可否を決めない。

出典

  1. 1.Report of World Federation of Neurological Surgeons Committee on a Universal Subarachnoid Hemorrhage Grading Scale(World Federation of Neurosurgical Societies 委員会(Drake CG, Journal of Neurosurgery)・1988)WFNS分類がGlasgow Coma Scaleを基盤として1988年にWFNS委員会の報告として提案された統一的なくも膜下出血重症度分類であること(原著の書誌情報)を確認した閲覧 2026-08-04
  2. 2.Grading and Decision-Making in (Aneurysmal) Subarachnoid Haemorrhage(Interventional Neuroradiology(Mooij JJA)・2001)WFNS分類のグレードI〜Vの定義(GCSの範囲と主要な局所神経脱落症状の有無の組み合わせ、特にGCS13〜14におけるグレードII/IIIの分岐が脱落症状の有無で決まること)、WFNS分類がHunt-Hess分類の用語のあいまいさによる評価者間ばらつきを避けるためGCSという再現性の高い指標を土台に設計されたこと、良好グレード(I〜III)では早期手術・それ以外では手術延期という運用が広い施設で取られてきたこと、水頭症を合併する不良グレード例では脳室ドレナージによりグレードが1段階改善し手術適応に入りうることを確認した閲覧 2026-08-04
  3. 3.Prediction of outcome after subarachnoid hemorrhage: timing of clinical assessment(Journal of Neurosurgery(van Donkelaar CE, et al.)・2017)くも膜下出血1,620例の前向きコホートで、来院時のWFNSグレードより神経学的蘇生後に再評価したグレード(rWFNS)の方が転帰の予測能が有意に高かったこと(rWFNSを組み込んだ予測モデルのAUCが0.87)を確認した閲覧 2026-08-04