薬剤ノート一覧へ

Drug Atlas · A9 Muscle relaxants / 筋弛緩薬 · 必修

バクロフェン

baclofen

分類
Muscle relaxants / 筋弛緩薬
商品名(日本)
リオレサールギャバロン
商品名(EU)
Lioresal
科目
Pharmacology
トピック
A9: Centrally and peripherally acting skeletal muscle relaxants
副作用
傾眠めまい脱力
監視検査値
クレアチニン
対象疾患
ジストニア外傷性脊椎・脊髄損傷三叉神経痛小児脳性麻痺多発性硬化症

🧠 全体像脊髄のGABA-B受容体を作動させてそのものを鈍らせるで、治療のになる薬である。脳由来のなど)より脊髄由来の)でよく効くという選択性を持つ。もう一つの顔は「急に切ると危険」という薬であること。ポンプの電池切れ・カテーテル閉塞は、の悪化どころか致死的なを起こしうる救急疾患になる。

薬効群の中での位置づけ

は「どの神経伝達物質・チャネルに効くか」で分かれ、鎮静の強さと副作用プロファイルが使い分けの軸になる。

薬剤 標的 特徴 使いどころ
GABA-B受容体 脊髄性に強い。内服・とも可能 MS・の第一選択
中枢α2受容体 半減期が短く効果が変動しやすい。肝機能モニタが要る に次ぐ選択肢、日中の眠気を避けたいとき夜間投与
Na⁺/遮断( 鎮静がほとんど出ない 有痛性。EUでは過敏症リスクから適応が限定
GABA-A受容体(ベンゾジアゼピン) 鎮静・依存性が強い 急性期のとの合併時

末梢性(・筋そのもの)に効く薬(系、)とはが根本的に違う。 は意識下の患者に使う内服・慢性期治療薬で、で使う(後述の末梢群)とは臨床の文脈がまったく別。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='baclofen'>バクロフェン</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dorsal horn'>脊髄後角</span>のGABA-B受容体に結合"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='presynaptic terminal'>シナプス前終末</span><br>(Ia群<span class='jp-term jp-term-diagram' title='afferent fiber'>求心性線維</span>)"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='postsynaptic membrane'>シナプス後膜</span><br>(運動ニューロン)"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='voltage-gated calcium channel'>電位依存性Ca²⁺チャネル</span>の抑制"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='excitatory neurotransmitter'>興奮性伝達物質</span><br>(グルタミン酸・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='substance P'>サブスタンスP</span>)の放出↓"]
    C --> F["K⁺チャネル開口 → 過分極"]
    E --> G["単シナプス・多シナプス<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='spinal reflex'>脊髄反射</span>の抑制"]
    F --> G
    G --> H["筋緊張・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spasticity'>痙縮</span>の軽減"]

💡 GABA-A()とGABA-B()は同じ「抑制性」でも回路が別。 GABA-AはCl⁻チャネル型で速いを作るのに対し、GABA-Bは(Gタンパク質共役)でK⁺チャネル開口・抑制という遅い抑制をかける。に強く発現しているため、は「反射そのものを起こりにくくする」薬になる。

薬物動態

項目 値・特徴
約70〜80%
血液脳関門透過 限定的(内服では脊髄まで届く量が少ない)
代謝 ほとんど受けない
排泄 が主体(未変化体)。腎機能低下で蓄積・過量のリスク
半減期 約3〜4時間(内服は1日3〜4回投与が基本)

血液脳関門を通過しにくいことが、という選択肢を生む。 へ直接すれば、全身の血中濃度・副作用を抑えたまま脊髄局所の濃度を上げられる。内服で眠気・脱力が強すぎる重症には、ポンプへ切り替える。

適応

領域 使いどころ
脊髄性 によるの第一選択
脳性 ・脳卒中後の(内服の効果は脊髄性より限定的。重症例ではポンプを検討)
適応外だが臨床で使われる用途 軽減、GERDにおける一過性弛緩の抑制

用法・用量

内服は少量から開始し、効果と眠気を見ながら漸増する(例:1回5 mgを1日2〜3回から開始し、数日〜1週間ごとに増量)。重症例・内服で副作用が強い例ではポンプによるを検討する。いずれも中止するときは数週間かけてする(下記参照)。実際の用量・増量ペースは適応・年齢・腎機能・製剤で変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 腎機能低下:未変化体でされるため蓄積しやすい。減量・の延長を要する
  • ⚠️ 絶対に急な中止をしない。 内服・のどちらも、突然の中断は重篤なを招く(下記副作用参照)。ポンプでは電池切れ・カテーテル閉塞・薬液切れが同じ機序で起こりうるため、定期点検が禁忌回避そのものになる
  • 妊娠・授乳、、けいれん性疾患(を下げうる)では慎重投与

副作用

頻度 内容
高頻度 傾眠めまい脱力
注意 悪心、便秘、高齢者での
重篤・まれ 急な中止によるの急激なリバウンド、、けいれん、——特にポンプ)、過量による呼吸抑制・昏睡

まとめ

  • GABA-B受容体作動薬。・後膜に働き、の放出とニューロンの興奮性を下げる。
  • 脊髄性(MS・)に強く、脳性には効果が限定的。
  • が主体で半減期が短いため1日複数回投与になる。血液脳関門通過が限定的なため、重症例ではで局所濃度を上げる。
  • 急な中止は禁忌に準じる。 の急激な悪化・・けいれん・を起こしうる救急疾患。
  • 末梢性の系、)とはも臨床文脈も別物。