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Drug Atlas · A9 Muscle relaxants / 筋弛緩薬 · 必修

ロクロニウム

rocuronium

分類
Muscle relaxants / 筋弛緩薬
商品名(日本)
エスラックス
商品名(EU)
Esmeron
科目
Pharmacology
トピック
A9: Centrally and peripherally acting skeletal muscle relaxants
副作用
皮疹弛緩性麻痺の遷延
解毒薬
スガマデクス

🧠 全体像の中で唯一に迫る速さで効くで、この速さのおかげで代替として定着した。にnAChRを塞ぐは本来「戻す」のが難しいのが弱点だが、という専用の拮抗薬を得たことで、深い遮断でも数分で完全に戻せるというの常識を覆す組み合わせが完成した。「RSIにはを予備で確保しておく」という発想は、が禁忌の患者へのを可能にしている。

薬効群の中での位置づけ

(-curonium)の中での立ち位置は「作用発現の速さ」と「拮抗のしやすさ」で決まる。

薬剤 作用発現 作用持続 特徴
約60〜90秒(最速) 中時間(約30〜45分) RSIの代替。sugammadexで拮抗可能
約2〜3分 中時間(約25〜40分) 標準的な麻酔維持の筋弛緩。sugammadexで拮抗可能
約2〜3分 長時間(約60〜100分) 長時間手術向け
約30〜60秒 約5〜10分 唯一の脱分極性。sugammadexでは戻せない

語尾ヒント「-curonium=で拮抗可能)」「-curium=非対応)」は暗記の軸になる。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rocuronium'>ロクロニウム</span>がnAChRの<br>αサブユニットに結合"] --> B["ACh の結合を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='competitive'>競合的</span>に阻害"]
    B --> C["受容体は開口せず脱分極が起こらない"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endplate potential'>終板電位</span>が閾値に達しない"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuromuscular transmission'>神経筋伝達</span>が遮断され<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='flaccid paralysis'>弛緩性麻痺</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='non-depolarizing'>非脱分極性</span>ブロック)"]
    F["神経終末からのACh放出を増やす<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neostigmine'>ネオスチグミン</span>等でAChE阻害)"] -.->|"ACh濃度を上げて競合に打ち勝つ"| A
    G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sugammadex'>スガマデクス</span>が血漿中の<br>遊離<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rocuronium'>ロクロニウム</span>を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inclusion complex formation'>包接</span>"] -.->|"受容体上の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rocuronium'>ロクロニウム</span>が<br>濃度勾配で引き戻される"| A

💡 であることが「2つの戻し方」を生む。 ひとつはACh側を増やして押し返す古典的な方法(などの副作用を抑えるの併用)。もうひとつは自体を血漿中で隔離してしまうで、こちらは受容体でのACh競合とはに濃度勾配だけで効く。

薬物動態

項目 値・特徴
作用発現 約60〜90秒(RSI用量ではさらに短縮)
作用持続 中時間作用(約30〜45分、に延長)
代謝 ほとんど受けない
排泄 主に肝・胆道系、一部(約10〜25%)
なし(との大きな違い)

適応

領域 使いどころ
が禁忌・使用を避けたい患者(リスク、感受性など)での代替
麻酔維持 手術中の筋弛緩全般

用法・用量

標準的な用量と、RSI用の高用量(作用発現をに近づけるためより高用量を用いる)を使い分ける。高用量ほど作用発現は速くなるがも延びるため、による速やかな拮抗を前提に運用されることが多い。実際の用量は適応・年齢・体重・腎肝機能で変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:本剤・イオンへの過敏症の既往1
  • 重症筋無力症などの伝達障害は禁忌ではなく慎重投与:感受性が著しく亢進し、少量でも遷延しうるため)下で個別に用量をする1
  • 日本の添付文書では例外的に、重症筋無力症・筋無力症候群の患者のうちに対する過敏症の既往がある患者のみを禁忌とする(拮抗薬であるが使えず、筋弛緩が遷延する恐れがあるため)。2016年の改訂以前は重症筋無力症全般が禁忌とされていたが、日本麻酔科学会からの要望を契機に、筋弛緩モニター下でのによる確実な拮抗で管理できるとの医学的知見に基づき、禁忌の対象が過敏症の既往がある患者のみへ縮小された2。英国SmPCなどEUの添付文書はもともと重症筋無力症全般を禁忌とせず、慎重投与としてきた1
  • 肥満・重症肝疾患では体重換算・の予測が難しくなるため、)での確認が重要
  • 妊娠・授乳、では患者背景に応じて調整する

副作用

頻度 内容
高頻度 注射部位痛(覚醒下投与時)
注意 の遷延後の呼吸筋力低下)
重篤・まれ アナフィラキシー(皮疹を含む。は周術期アナフィラキシーの主要な原因薬剤の一つ)

まとめ

  • 。nAChRをに遮断してを起こす。
  • の中で作用発現が最速(約60〜90秒)で、が使えないRSIの主力になる。
  • を持たず、主に肝・胆道系で排泄される(との違い)。
  • で拮抗可能。 深い遮断でも短時間で確実に戻せることが、この組み合わせが「なしのRSI」を可能にする根拠になる。
  • 周術期アナフィラキシーの主要な原因薬剤の一つであることを忘れない。

出典

  1. 1.Esmeron - Summary of Product Characteristics (SmPC)(electronic Medicines Compendium(英国、参考として引用。英国はEU離脱国)・2026)英国SmPCの禁忌は本剤・臭化物イオン・添加剤への過敏症のみで、重症筋無力症・Eaton-Lambert症候群は禁忌でなく「少量でも効果が著しいため個別に用量を滴定する」慎重投与の対象とされていること閲覧 2026-08-03
  2. 2.エスラックス静注・マスキュラックス静注用 添付文書改訂のお知らせ(2016年3月)(MSD株式会社・2016)2016年3月の改訂で、日本の禁忌が「重症筋無力症、筋無力症候群の患者」全般から「同患者のうちスガマデクスナトリウムに過敏症の既往歴がある患者」へ限定され、一般の重症筋無力症患者への注意喚起は慎重投与・重要な基本的注意へ移されたこと(改訂理由は日本麻酔科学会からの要望を受け、筋弛緩モニター下での用量調整とスガマデクスによる拮抗で管理可能との医学的知見に基づくもので、2016年3月16日の厚生労働省医薬品等安全対策部会で了承されたと記載。英米の添付文書との比較には触れていない)閲覧 2026-08-03