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Disease Atlas · 神経 · 症候群

進行性脳脊髄炎、硬直とミオクローヌスを伴う

Progressive encephalomyelitis with rigidity and myoclonus

別名
PERM
臓器系
神経免疫・膠原病
科目
Neurology
トピック
神経内科 G2-07:筋緊張の調節と障害神経内科 G3-09:神経系の傍腫瘍症候群(ニューロパチー・小脳変性・ランバート・イートン症候群)神経内科 G3-27:代謝性・自己免疫性・その他の全身疾患に伴う神経症状
上位概念
スティッフパーソン症候群
鑑別疾患
自己免疫性脳炎
治療薬
メチルプレドニゾロンプレドニゾロン免疫グロブリン静注療法リツキシマブジアゼパムバクロフェン
症状
筋強直ミオクローヌス眼筋麻痺構音障害
検査値
GAD65抗体髄液検査

🧠 全体像:(、硬直とを伴う)は、スペクトラムの最重症・進行性型である。⭐ classic SPSとの違いは「脳幹・自律神経・呼吸器へ症状が及ぶこと」の一点に尽きる——硬直とに加え、・嚥下障害・・呼吸不全という、生命に直結する症状群を伴う1。⚠️ 未治療なら2〜3年で死に至りうる一方、免疫療法への反応は良好で、修正Rankinスケールの中央値は最大障害時5から最終時1へ改善する1。⚠️ 診断名としての位置づけはまだ固まっていない——2025年のでさえ、は「SPSDスペクトラムへの包含に合意が無い」という理由で統計解析そのものから除外されている2。

臨床像——脳幹・自律神経・呼吸器まで及ぶ

779検体から陽性52例を同定した前向きコホートのうち、45例(7例を除く)を解析した研究で、33例がに分類された。臨床像は発症のまで追えた45例中30例で記録されており、その頻度は次のとおりである1。

症状 頻度
硬直・ 80%(24/30)
過剰な 57%(17/30)
53%(16/30)
(顔面・嚥下障害を含むなど) 57%(17/30)
43%(13/30)
呼吸不全 27%(8/30)

⚠️ 呼吸不全・という項目そのものが、classic SPSとの決定的な違いである。 硬直とだけを見ればSPSスペクトラムの他の型と重なるが、この2つが揃ったときに初めてという重症型を積極的に考える。

抗体——グリシン受容体抗体がPERMの標識

⭐ (GlyR)抗体は、もともと患者で最初に報告された抗体である。 脊髄・脳幹の抑制性神経伝達を障害することで、運動ニューロンの興奮性が制御を失い、硬直・・を来すと考えられている。

  • 45例中4例(9%)が高力価(1000 U/ml超)のを合併していた1。⚠️ 陽性だからといってを除外しない。 とは併存しうる。
  • 血清抗体(1:20希釈)での測定が大半の症例で診断に十分だが、が低い稀な症例ではが有用である。ペア検体が得られた6例全例で合成が確認され、抗体indexは8〜400(正常1.4未満)であった1。

悪性腫瘍の合併

45例中4例(9%)に新規診断の悪性腫瘍(3例、B細胞1例)を認め、別に5例(11%)が治療済みの腫瘍の既往を有していた。両者を合わせると9例(20%)に腫瘍の関与がみられた1。💡 classic SPSの傍腫瘍型が・乳癌という組み合わせで語られるのに対し、ではを軸に、・リンパ系腫瘍という別のパターンが見える。 悪性腫瘍検索は診断時にルーチンで行う。

治療と転帰

⭐ 治療反応は良好——ただし急性期の死亡率もできない。 45例中37例が治療を受け、高用量(1 mg/kg程度)を、しばしば静注で先行させたうえで、またはを後続させる方針が一般的であった1。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='progressive encephalomyelitis with rigidity and myoclonus'>PERM</span>を疑う<br>(硬直・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myoclonus'>ミオクローヌス</span>+脳幹/自律神経/呼吸器症状)"] --> B["血清<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-glycine receptor antibody'>グリシン受容体抗体</span>を測定<br>陰性/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='low-potency'>低力価</span>なら髄液も検査"]
    B --> C["悪性腫瘍検索(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thymoma'>胸腺腫</span>・リンパ系腫瘍を含む)"]
    C --> D["高用量ステロイド<br>(静注<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methylprednisolone'>メチルプレドニゾロン</span>→経口<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prednisolone'>プレドニゾロン</span>)"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='therapeutic plasma exchange, TPE'>血漿交換</span>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intravenous immunoglobulin, IVIG'>免疫グロブリン静注療法</span>を後続"]
    E --> F{"再発するか"}
    F -->|"再発する"| G["長期の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='maintenance immunotherapy'>維持免疫療法</span>を検討<br>(リツキシマブなど)"]
    F -->|"再発しない"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tapering'>漸減</span>しつつ経過観察"]

スペクトラムの中の位置づけ

⚠️ を「の一亜型」と単純化しすぎない。 2025年のは、がclassic SPS・・・・・・など多様な表現型と関連することを認めつつも、を標本サイズの小ささとSPSDスペクトラムへの包含についての合意の欠如を理由に、統計解析そのものから除外している2。💡 これは「がSPSと」という意味ではなく、「重症型として連続的につながっているのか、独立した症候群として扱うべきかが、まだ決着していない」という研究上の現在地を示している。

鑑別

鑑別 分ける点
・・呼吸不全を欠く。はこれらを伴う重症型
意識障害・精神症状が前景に立つことが多く、硬直・が主座ではない

まとめ

  • は、硬直・に加えて・・呼吸不全を伴う、スペクトラムの最重症型である。
  • (GlyR)抗体がを特徴づける抗体で、との併存もありうる。血清で不十分ならを追加する。
  • 悪性腫瘍(・リンパ系腫瘍)の関与が新規診断・既往を合わせて約2割にみられ、診断時に腫瘍検索を行う。
  • ⭐ 治療反応は良好(修正Rankinスケール中央値5→1)だが、⚠️ 急性期死亡率は9%であり、早期の高用量ステロイド+/が重要になる。再発例には長期のを検討する。
  • ⚠️ のSPSDスペクトラムへの包含は、いまだ研究者間で合意されていない。 最新のも統計解析からを除外している。

出典

  1. 1.Glycine receptor antibodies in PERM and related syndromes: characteristics, clinical features and outcomes(Brain(Carvajal-González A, Leite MI, Vincent A, et al.)・2014)Europe PMC経由でPMC4107739の全文を取得して確認した。前向きコホートで779検体中グリシン受容体抗体陽性52例を同定し低力価7例を除いた45例を主解析としたこと、そのうち33例がPERMに分類されたこと、臨床像を発症の頂点(peak)まで追えた45例中30例における症状頻度が硬直・ミオクローヌス80%(24/30)、過剰な驚愕反応57%(17/30)、眼球運動障害53%(16/30)、脳幹・顔面/嚥下障害57%(17/30)、自律神経障害43%(13/30)、呼吸不全27%(8/30)であったこと、45例中4例(9%)に新規診断の悪性腫瘍(胸腺腫3例・B細胞辺縁帯リンパ腫1例)を認め、別に5例(11%)が治療済みの腫瘍の既往を有し、両者を合わせると9例(20%)であったこと(原文:"Five patients had previous successfully-treated tumours...and four tumours were first identified during the neurological illness")、45例中4例が高力価(1000 U/ml超)のGAD抗体を合併したこと(原文:"Four patients also had high glutamic acid decarboxylase antibodies (>1000 U/ml)")、治療は45例中37例に行われ高用量プレドニゾロン(1 mg/kg程度)としばしばその前に静注メチルプレドニゾロンを用い血漿交換または免疫グロブリン静注療法を後続させる方針が一般的であったこと(原文:"high dose (e.g. 1 mg/kg) prednisolone, often preceded by intravenous methyl-prednisolone, and followed by plasma exchange or intravenous immunoglobulin")、修正Rankinスケールの中央値が最大障害時5から最終フォローアップ時1へ改善したこと(P<0.0001、死亡4例を除く)、5例(11%)が免疫療法後に再発し長期の維持免疫療法を要する例があったこと、45例中4例(9%)が急性期に死亡したこと(原文:"Four patients (9%) died during the acute disease")、血清抗体(1:20希釈)での測定が大半の症例で診断に十分である一方、髄液検査は血清抗体価が低い稀な症例で有用でありペア検体が得られた6例全例で髄腔内合成が確認され抗体indexが8〜400(正常1.4未満)であったことを確認した。閲覧 2026-09-07
  2. 2.Core diagnostic features of stiff person syndrome: insights from a case-control study(Journal of Neurology (Roy S, Newsome SD, et al.)・2025)PMC12053319の全文を取得して確認した。GAD65抗体が古典型スティッフパーソン症候群・SPS-plus・小脳失調・stiff-limb症候群・PERM・難治性てんかん・自己免疫性脳炎など多様な臨床表現型と関連すること、しかしPERMおよびGAD65抗体関連小脳失調は標本サイズが小さいことと「stiff person症候群スペクトラム障害(SPSD)への包含について合意が無い」ことを理由に本研究の感度・特異度分析からは除外されたこと(原文:"patients with PERM and GAD65-antibody-associated cerebellar ataxia were excluded from the sensitivity and specificity analyses due to small sample sizes and lack of consensus regarding their inclusion in the SPSD spectrum")を確認した。閲覧 2026-09-07