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Disease Atlas · 神経 · 病態

小児脳性麻痺

Infantile cerebral palsy

別名
CP脳性麻痺
臓器系
神経
科目
Pediatrics
トピック
小児科 3-07:小児脳性麻痺
続発疾患
てんかん
関連疾患
水頭症全般的発達遅滞知的発達症
治療薬
バクロフェンボツリヌス毒素
症状
嚥下障害疼痛痙性麻痺側弯症
原因となる疾患
先天性TORCH感染症多胎妊娠低酸素性虚血性脳症(周産期仮死)

🧠 全体像は、発達途上の脳に生じた非進行性の障害によって永続的な運動・姿勢の障害を来す病態群である。脳そのものの病変は進行しないが、・疼痛・変形といった二次的な問題は成長とともに変化しうるため、臨床像は「固定」ではなく年齢に応じて再評価が必要である。運動障害だけでなく、てんかん・知的障害・摂食嚥下障害・感覚障害などの併存症を系統的に評価し、多職種で機能・快適性・を最大化することが治療の目標になる。

定義

は、から乳児期という脳の発達期に生じた非進行性の病変・障害に起因する、運動と姿勢の発達の異常の総称である。原因病変自体は進行しないが、が持続することで・変形・疼痛などの二次的障害が成長とともに進行しうるため、「非進行性の脳病変」と「変化しうる臨床像」を区別して理解する必要がある。しばしば感覚、知覚、認知、、行動の障害、てんかん、二次的なの問題を伴う。

病因

原因は周産期を中心に多岐にわたり、複数の要因が重なることも多い。原因が同定できない症例も一定数存在する。

時期 代表的な原因
出生前 先天性脳形成異常、(TORCH等)、胎盤機能不全、遺伝的要因・遺伝子異常、母体の重症疾患
周産期 早産・のリスクが特に高い)、、分娩時の合併症、の重症
出生後 ・乳児期の中枢神経感染(髄膜炎・脳炎)、エピソード

早産児では(脳室周囲の白質が虚血・低酸素により障害される病態)が特に重要な原因であり、下肢優位の両麻痺型と関連しやすい。ではの関与が相対的に大きくなる。原因を一つに特定できない、あるいは複数の要因が重なっている症例も少なくない。

flowchart TD
    A["脳の発達期(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fetal period'>胎児期</span>〜乳児期早期)の脳障害"] --> B["出生前:形成異常・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intrauterine (congenital) infection'>胎内感染</span>・遺伝要因"]
    A --> C["周産期:早産に伴う<span class='jp-term jp-term-diagram' title='periventricular leukomalacia'>脳室周囲白質軟化症</span>、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypoxic-ischemic encephalopathy (HIE)'>低酸素性虚血性脳症</span>"]
    A --> D["出生後:中枢神経感染、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intracranial hemorrhage (intracranial bleeding)'>頭蓋内出血</span>、外傷"]
    B --> E["非進行性の脳病変"]
    C --> E
    D --> E
    E --> F["持続する運動・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='abnormal muscle tone'>筋緊張異常</span>"]
    F --> G["成長に伴う<span class='jp-term jp-term-diagram' title='contracture'>拘縮</span>・変形・疼痛などの二次的障害"]

病型分類

運動障害の型

障害される中枢神経系の部位によって、運動症状の性質が異なる。

運動型 主に障害される系 特徴
錐体路(皮質脊髄路) 最も頻度が高い。、放置するとが進行しやすい
型を含む) 大脳基底核( などの不が主体。筋緊張は変動しやすい
失調型 小脳 平衡感覚・協調運動の障害、、歩行の不安定さ
混合型 複数系の障害が併存 痙直となど、複数の型の特徴が同時に見られる

分布と重症度分類

運動障害の分布は上下肢)、両麻痺(両側の下肢優位)、(体幹・四肢すべて)などで記載する。重症度・機能レベルの評価にはGMFCS(Gross Motor Function Classification System:運動能力分類システム)が広く用いられ、レベルI(制限のない)からレベルV(自力移動が極めて困難で電動等での介助を要する)までの段階で、年齢に応じた実際のな移動機能に基づいて分類する。GMFCSは重症度そのものだけでなく、リハビリテーション目標の設定や将来予後の説明にも用いられる。

臨床像と併存症

運動障害そのものに加えて、多彩な併存症を伴うことが多く、の管理はだけに着目してはならない。

領域 代表的な問題
運動発達 定頸・座位・歩行などの運動発達の遅れ、左右差、異常な筋緊張、の遺残
てんかん 特に・重症例で頻度が高い併存症
認知・発達 知的障害を伴うことがあるが、運動障害の重症度と知的能力は必ずしも相関しない
摂食・嚥下 摂食嚥下障害によるのリスク
、言語発達の遅れ
感覚器 、屈折異常など)、聴覚障害
(二次的) 、疼痛
その他 睡眠障害、、心理問題

⚠️ 運動症状のみに注目すると、てんかん・摂食嚥下障害・視覚聴覚障害・疼痛などの見逃しやすい併存症への対応が遅れる。定期的な多面的評価が必須である。

診断

の診断は基本的に臨床診断であり、運動発達の遅れ・左右差・異常な筋緊張・の遺残などを標準化された発達評価・で反復して確認することにより行う。画像検査(頭部MRI)は診断そのものよりも病因の検索に用いられ、、梗塞、出血、脳形成異常などの所見が原因の手掛かりになる。臨床経過が(進行性の悪化を示す等)な場合は、の定義(非進行性)に反するため、遺伝性・代謝性疾患など他の進行性疾患を再検討する必要がある。

flowchart TD
    A["運動発達の遅れ・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='abnormal muscle tone'>筋緊張異常</span>に気づく"] --> B["標準化された発達評価・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurological patient examination'>神経学的診察</span>を反復"]
    B --> C{"経過は非進行性か"}
    C -->|"典型的(非進行性)"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='brain MRI'>脳MRI</span>で病因を検索(白質軟化症・奇形・出血等)"]
    C -->|"非典型(進行性の悪化)"| E["遺伝性・代謝性疾患など他疾患を再検討"]
    D --> F["運動型・分布・GMFCSで機能を分類"]
    F --> G["てんかん・知的障害・摂食嚥下・視聴覚障害を系統的に評価"]
    G --> H["目標設定に基づく多職種介入を開始"]
    H --> I["成長に伴う<span class='jp-term jp-term-diagram' title='contracture'>拘縮</span>・股関節・脊柱・疼痛を定期的に監視"]

治療

そのものの原因病変を治すことはできないため、は「正常化」ではなく、機能・快適性・の最大化に置かれる。による継続的な介入が基本となる。

領域 内容
リハビリテーション 、言語聴覚療法を中心に、、移動補助具(歩行器、等)を組み合わせる
に対する治療 限局したにはの局所注射、全身性のには等の内服、重症例ではを検討する
整形外科的介入 に対する予防的モニタリングと治療。は、体幹コントロールが良好で抗位での下肢筋力が保たれた両麻痺(目安としてGMFCS II〜III、または歩行獲得の可能性がある例)が主な適応で、GMFCS IV〜V等の非歩行例では機能的な利益が乏しく適応は慎重に判断する
摂食・栄養支援 嚥下評価、食形態の調整、必要に応じた
併存症管理 てんかんの薬物治療、視覚・聴覚障害への対応、、睡眠・呼吸の評価(てんかんは特に頻度の高い併存症であり、脳室周囲の病変が拡大した場合などには水頭症の合併にも注意する)
教育・ 特別支援教育、支援機器、家族支援、社会資源の活用

支持療法・リハビリテーションの目標は、患者本人と家族の生活・参加目標を中心に据えて個別に設定する。

まとめ

  • は発達期の脳に生じた非進行性の障害による永続的な運動・姿勢障害だが、・変形などの二次的な臨床像は成長とともに変化しうる。
  • 病因は(特に早産児)、、遺伝要因など多岐にわたり、原因不明例もある。
  • 運動型(・失調型・混合型)と分布に加え、GMFCSのような機能に基づくで記載する。
  • 運動障害だけでなく、てんかん、知的障害、摂食嚥下障害、視覚・聴覚障害などの併存症を系統的に評価することが不可欠である。
  • 診断は臨床診断であり、MRIは主に病因検索に用いる。経過が進行性であればの定義に反するため他疾患を再検討する。
  • 治療は多職種による機能・快適性・の最大化を目標とし、治療・整形外科的介入・支持療法を組み合わせる。