小児科学

小児科学 · 3-07

小児脳性麻痺

Infantile Cerebral Palsy

前提:正常
運動機能における小脳と大脳基底核の役割。皮質脊髄路(錐体路)
疾患
小児脳性麻痺

🧠 全体像:は発達中の脳の非進行性障害による、運動・姿勢の永続的障害である。脳病変は進行しなくても、や疼痛など二次障害は成長とともに変化する。

原因と分類

早産・、、、先天性、胎内・などが関与する。原因不明例もある。

💡 の定義は2007年に国際的に見直された。 国際ワークショップのはを「発達期の胎児・乳児の脳に生じた非進行性の障害に起因する、を伴う運動と姿勢の発達の永続的障害群」と再定義し、を伴わない例はに含めないこと、随伴するの発達障害・行動異常や加齢に伴うの問題も重要な要素であることを明記した1。

⚠️ 原因の大部分は分娩時仮死ではない。 西オーストラリア州で1967〜1985年に出生した全児を対象にした研究では、分娩時仮死の回避を意図した周産期医療の普及で・率が大きく低下した期間もの総はほぼ横ばいで、出生体重1,500g未満児では率がむしろ上昇しており、分娩時仮死はの主要な原因ではないことが示唆されている2。

運動型 主な障害系 特徴
錐体路 、、、
大脳基底核 、、不随意運動
小脳 平衡・、
混合型 複数 上記が併存

分布は、両麻痺、などで記載する。は小脳系、は大脳基底核・の障害と対応する。

💡 は近年低下している。 27か国41地域の登録・を統合した系統的解析では、出生前後ののは欧州・オーストラリアの14地域中11地域で有意に低下しており、高所得国の現在のは出生1,000あたり1.6と推定されている3。

診断と併存症

  • 運動発達遅滞、左右差、異常筋緊張、遺残、姿勢・歩行を反復評価する。
  • で、梗塞、出血、奇形などの病因を探す。非典型・進行性なら遺伝・代謝疾患を再検討する。
  • てんかん、知的・視聴覚障害、嚥下・、障害、疼痛、、、睡眠・を系統的に評価する。

💡 生後6か月未満でも高い精度でできる。 系統的レビューに基づく国際的な診断ガイドラインでは、修正在胎5か月未満の乳児でのリスクを予測する上でterm-age (感度86〜89%)、Prechtlの全身運動評価(感度98%)、Hammersmith乳児検査(HINE、感度90%)の組み合わせが最も予測精度が高く、これにより従来生後12〜24か月だった診断を大幅に早められることが示されている。高所得国ではのある人の3人に2人が歩行可能、4人に3人が会話可能、2人に1人が正常範囲の知能を有するとされる4。

💡 GMFCSは将来のを予測する。 児657例を19の地域リハビリテーションプログラムで最長4年間追跡したでは、5段階の能力分類システム(GMFCS)で層別すると発達の速度と到達点が明確に異なる5本の運動発達曲線が得られ、GMFCSに基づく予後説明が可能になった5。

flowchart TD
    A["運動発達遅滞・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='abnormal muscle tone'>筋緊張異常</span>"] --> B["標準化発達/神経評価"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='brain MRI'>脳MRI</span>・病因評価"]
    C --> D["運動型・分布・GMFCSなどで<span class='jp-term jp-term-diagram' title='functional classification'>機能分類</span>"]
    D --> E["目標設定型の多職種介入"]
    E --> F["成長に伴う<span class='jp-term jp-term-diagram' title='contracture'>拘縮</span>・股関節・疼痛を監視"]

管理

理学・作業・、栄養・支援、、教育・を組み合わせる。限局性には、全身性にはなど、選択例で・・を検討する。家族と本人の活動・参加目標を中心にする。

💡 への治療は組み合わせと適応の見極めが要る。 上肢のある児を対象にしたでは、A単独は・無治療と比べ効果に乏しいという中程度のエビデンスがあり、計画的なと併用した場合に限り機能障害の改善・目標達成で単独より優れるという高いレベルのエビデンスが示された6。児43例を対象にした(SDR)の単盲検では、SDR+群は単独群より24か月後の軽減が有意に大きかった一方、(GMFM)による自立移動の改善幅は両群で同程度であり、SDRは軽症の児には有効でない可能性があるとされた7。

まとめ

  • 非進行性脳障害だが臨床は成長とともに変化する。
  • 運動型だけでなく機能、分布、併存症を記載する。
  • は「正常化」ではなく機能・快適性・参加の最大化である。

出典

  1. 1.A report: the definition and classification of cerebral palsy April 2006(Developmental Medicine and Child Neurology. Supplement・2007)2004年の国際ワークショップの合意に基づく報告書で、脳性麻痺を「発達期(胎児期・乳児期)の脳に生じた非進行性の障害に起因する、活動制限を伴う運動と姿勢の発達の永続的障害群」と再定義し、活動制限を伴わない例を脳性麻痺の範疇に含めないこと、随伴する非運動性の発達障害・行動異常や加齢に伴う筋骨格系の問題も定義に明記すべきであることを確認した。閲覧 2026-08-27
  2. 3.Global prevalence of cerebral palsy: A systematic analysis(Developmental Medicine and Child Neurology・2022)27か国41地域の脳性麻痺登録・サーベイランスシステムのデータを統合した系統的解析で、出生前後(pre-/perinatal)の脳性麻痺の出生有病率は14地域中11地域(欧州・オーストラリア)で有意に低下しており、高所得国における現在の出生有病率は出生1,000あたり1.6(新生児期発症を含めると1.6)と推定されたことを確認した。閲覧 2026-08-27
  3. 4.Early, Accurate Diagnosis and Early Intervention in Cerebral Palsy: Advances in Diagnosis and Treatment(JAMA Pediatrics・2017)脳性麻痺の早期診断に関する系統的レビュー6件と2件のエビデンスに基づく診療ガイドラインを統合した報告で、修正在胎5か月未満の乳児では term-age MRI(感度86〜89%)、Prechtlの全身運動評価(感度98%)、Hammersmith乳児神経学的検査(HINE、感度90%)の組み合わせが脳性麻痺リスクの予測に最も精度が高く、これにより従来生後12〜24か月だった診断を大幅に早められること、高所得国では脳性麻痺のある人の3人に2人が歩行可能、4人に3人が会話可能、2人に1人が正常範囲の知能を有することを確認した。閲覧 2026-08-27
  4. 5.Prognosis for gross motor function in cerebral palsy: creation of motor development curves(JAMA・2002)カナダ・オンタリオ州の19の地域リハビリテーションプログラムに通う1〜13歳の脳性麻痺児657例を最長4年間追跡した縦断コホート研究(Gross Motor Function Measureによる評価2,632回)で、5段階の粗大運動能力分類システム(GMFCS)で重症度別に層別すると、発達の速度と到達点が明確に異なる5本の運動発達曲線が得られ、GMFCSに基づくエビデンスに基づいた予後説明が可能になったことを確認した。閲覧 2026-08-27
  5. 6.Botulinum toxin A as an adjunct to treatment in the management of the upper limb in children with spastic cerebral palsy(Cochrane Database of Systematic Reviews・2010)痙直型脳性麻痺児の上肢へのボツリヌス毒素A(BoNT-A)注射に関する無作為化比較試験10件を統合したコクランレビューで、BoNT-Aと計画的な作業療法の併用は作業療法単独と比べ機能障害の改善・活動レベルの向上・目標達成において高いレベルのエビデンスで優れていた一方、BoNT-A単独は偽薬・無治療と比べ効果に乏しいという中程度のエビデンスがあり、BoNT-Aは単独ではなく計画的な作業療法を伴って用いるべきであることを確認した。閲覧 2026-08-27
  6. 7.Selective dorsal rhizotomy: efficacy and safety in an investigator-masked randomized clinical trial(Developmental Medicine and Child Neurology・1998)痙性両麻痺児43例(追跡完了38例)を選択的後根切断術(SDR)+理学療法群と理学療法単独群に無作為割付けした単一施設・評価者盲検試験で、24か月時点でSDR+理学療法群は理学療法単独群より痙縮の軽減が有意に大きかった(電気機械的トルク測定で-8.2対+5.1ニュートンメートル/ラジアン、P=0.02)一方、粗大運動機能測定(GMFM)による自立移動の改善は両群で同程度であった(7.0%対7.2%、P=0.94)ことを確認した。閲覧 2026-08-27