小児科学

小児科学 · 3-06

新生児脳障害と新生児けいれん

Brain Injury in Neonates and Neonatal Seizures

前提:病態
脳血管障害(低酸素・虚血・梗塞)
前提:正常
酸化的リン酸化によるATP合成;終末酸化の酸化還元反応;電子伝達系の酵素複合体
疾患
ビタミンB6依存性てんかん大田原症候群非ケトン性高グリシン血症

🧠 全体像:は後の潜伏期に治療介入する。新生児の異常運動はだけでは判定しにくく、で発作を確認する。

新生児脳症と低酸素虚血性脳症

新生児脳症は出生早期の意識変容、けいれん、呼吸開始・維持困難、、反射低下を示す症候群で、()が重要な原因である。胎盤・臍帯異常、・酸素化障害、先天感染、胎児心肺異常などを評価する。

flowchart TD
    A["低酸素・虚血"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary energy failure'>一次エネルギー不全</span><br>アシドーシス・細胞浮腫"]
    B --> C["潜伏期<br>一時的回復"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='secondary energy failure'>二次エネルギー不全</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='excitotoxicity'>興奮毒性</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oxidative stress'>酸化ストレス</span>・炎症"]
    D --> E["持続炎症・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myelination'>髄鞘化</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurodevelopmental disorder'>神経発達障害</span>"]

意識、筋緊張、呼吸、反射、けいれん、多臓器障害、血液ガス、、を総合して重症度を判断する。

治療的低体温療法

  • 一般に在胎36週以上で中等度〜重度など規定基準を満たす新生児に、出生6時間以内から約33〜34℃で72時間行う。
  • 呼吸循環、血糖・電解質、凝固、腎肝機能、けいれんを厳密に管理する。
  • は目的の標準治療ではない。

新生児けいれん

原因は、、髄膜炎・脳炎・先天感染、低血糖・低Ca・低Mg、、遺伝性てんかん、である1。局所反復運動、、、自律神経変化を示すが、相関のない運動も多い。

💡 原因の中でもは独立した重要な脳障害である。 Papileの分類ではgrade Iを限局、grade IIをを伴わない、grade IIIをを伴う、grade IVを脳室周囲実質への出血と定義しており、grade IVの実質病変はそのものの単純な進展というより、出血によるが引き起こす別個のとして理解されている2。在胎22〜31週の早産児44,028例を対象とした米国カリフォルニア州のコホートではが7.7%に生じ、頻度は2005年の9.7%から2015年の5.9%へ低下し、投与の増加がその低下の一部を説明した3。とを比較した在胎23〜31週の早産児474例の無作為化試験では、ミルキング群の方が遅延群より重症が多く(8%対3%、在胎23〜27週では22%対6%)、児への一律のミルキングは推奨されないとづけられた4。

診断

  • またはで電気臨床発作・電気的発作を確認する。(ILAE)は2021年、の多くはを伴わない電気的発作のみであるため所見を中心に分類すべきだとする新生児専用の分類枠組みを公表した5。
  • 血糖、Na、Ca、Mg、血液ガス、乳酸、アンモニア、感染検査、髄液、尿培養・毒物、を原因に応じて選ぶ。

💡 だけでの判断は当てにならない。 新生児をビデオで連続モニタリングした単一施設研究では、526件の電気的発作のうちを伴ったのは34%(179件)にとどまり、医療スタッフがから実際に発作と認識・記録できたのは電気的発作全体のわずか9%(48/526)だった。一方、医療スタッフが臨床的に発作と疑った177件のうちで確認できたのは27%(48件)にとどまり、残りは電気的発作を伴わない過剰診断だった。6

治療

  1. ABC、血糖・電解質、感染など可逆原因を直ちに治療する。
  2. 第一選択は多くの急性誘発性発作で。を対象にとを比較した多施設(第IIb相、NEOLEV2試験)では、24時間の完全な率が群80%(24/30例)、群28%(15/53例)で、の方が有効性が高かった7。
  3. 反応不十分なら病因・心機能等を考慮し、フェニトイン/、、、を専門管理下で選ぶ。
  4. 急性誘発性発作が消失し新生児てんかんの根拠がなければ、退院前の中止を検討する。

💡 投与後は電気臨床解離に注意する。 またはフェニトインを投与された59例の前向き研究で、投与後も発作が持続した26例のうち15例(58%)はを伴わない電気的発作のみに変化しており(電気臨床解離)、の消失だけでは治療効果を判定できないことを確認した8。

まとめ

  • では6時間以内の適格性評価を逃さない。
  • はで診断し、基礎原因の治療を同時に進める。
  • ももNICU・小児神経専門チームで行う。

出典

  1. 1.Contemporary Profile of Seizures in Neonates: A Prospective Cohort Study(The Journal of Pediatrics・2016)米国7施設で連続ビデオ脳波モニタリングを受けた臨床的疑い・電気的発作のある新生児426例の前向きコホートで、発作の原因は低酸素虚血性脳症が38%と最多で、虚血性脳卒中18%、頭蓋内出血11%と続いたこと、59%が高い発作負荷(電気的発作7回以上)を示したことを確認した。閲覧 2026-08-27
  2. 2.Germinal Matrix-Intraventricular Hemorrhage: A Tale of Preterm Infants(International Journal of Pediatrics・2021)早産児の胚基質・脳室内出血(GM-IVH)に関するレビューで、Papileらの分類はgrade Iを胚基質限局、grade IIを脳室拡大を伴わない脳室内出血、grade IIIを脳室拡大を伴う脳室内出血、grade IVを実質内出血と定義していること、grade IVの出血性実質病変(出血性梗塞)は出血による静脈うっ滞が周脳室白質の灌流を障害することで生じると考えられ、脳室内出血そのものの単純な進展とは区別されることを確認した。閲覧 2026-08-27
  3. 3.Incidence Trends and Risk Factor Variation in Severe Intraventricular Hemorrhage across a Population Based Cohort(The Journal of Pediatrics・2018)在胎22週0日〜31週6日の早産児44,028例を対象とした米国カリフォルニア州の集団ベースコホート(2005〜2015年)で、重症(grade III/IV)脳室内出血の頻度は7.7%(3,371例)で、2005年の9.7%から2015年の5.9%へ有意に低下したこと、出生前ステロイド投与はすべての在胎週数区分で重症脳室内出血のオッズ低下と関連する唯一の因子であり、その増加が低下の19.4%を媒介したことを確認した。閲覧 2026-08-27
  4. 4.Association of Umbilical Cord Milking vs Delayed Umbilical Cord Clamping With Death or Severe Intraventricular Hemorrhage Among Preterm Infants(JAMA・2019)在胎23〜31週の早産児474例(臍帯ミルキング群236例・遅延臍帯結紮群238例)を対象とした無作為化試験(安全性シグナルのため早期中止)で、重症脳室内出血の頻度はミルキング群8%(20/236)に対し遅延結紮群3%(8/238)と有意に高く、特に在胎23〜27週では22%(20/93)対6%(5/89)とさらに顕著な差がみられ、極早産児への一律の臍帯ミルキングは推奨されないことを確認した。閲覧 2026-08-27
  5. 5.The ILAE classification of seizures and the epilepsies: Modification for seizures in the neonate. Position paper by the ILAE Task Force on Neonatal Seizures(Epilepsia・2021)国際抗てんかん連盟(ILAE)の新生児発作タスクフォースが2017年ILAE分類を新生児向けに修正した提言で、新生児発作の多くは臨床症状を伴わない電気的発作のみであるため脳波所見を診断・分類の中心に据えるべきであること、発作型は主要な臨床的特徴(運動性・非運動性など)で分類し、焦点性・全般性の区分は用いないことを確認した。閲覧 2026-08-27
  6. 6.Defining the gap between electrographic seizure burden, clinical expression and staff recognition of neonatal seizures(Archives of Disease in Childhood. Fetal and Neonatal Edition・2008)新生児51例を対象とした連続ビデオ脳波モニタリング研究で、記録された526件の電気的発作のうち臨床症状を伴ったのは34%(179件)、医療スタッフが実際に発作として認識・記録できたのは電気的発作全体のわずか9%(48/526)にとどまったこと、逆に医療スタッフが臨床的に発作と疑った177件のうち脳波で確認できたのは27%(48件)にとどまり、臨床所見のみでの新生児発作の診断は不十分であることを確認した。閲覧 2026-08-27
  7. 7.Levetiracetam Versus Phenobarbital for Neonatal Seizures: A Randomized Controlled Trial(Pediatrics・2020)新生児発作を対象にフェノバルビタールとレベチラセタムを第一選択薬として比較した多施設・盲検・無作為化第IIb相試験(NEOLEV2試験)で、24時間の完全な発作消失率はフェノバルビタール群80%(24/30例)、レベチラセタム群28%(15/53例)と、フェノバルビタールの方が有効性が高く、有害事象もフェノバルビタール群で多かったことを確認した。閲覧 2026-08-27
  8. 8.Uncoupling of EEG-clinical neonatal seizures after antiepileptic drug use(Pediatric Neurology・2003)在胎25〜43週の電気的に確認された発作を持つ新生児59例を対象にフェノバルビタールまたはフェニトインを投与した前向き研究で、投与後も発作が持続した26例のうち15例(58%)で臨床症状を伴わない電気的発作のみへの変化(電気臨床解離)がみられ、抗てんかん薬投与後は臨床症状の消失だけで治療効果を判定できないことを確認した。閲覧 2026-08-27