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Disease Atlas · 神経 · 症候群

大田原症候群

Ohtahara syndrome

別名
早期乳児てんかん性脳症EIEE
臓器系
神経小児
科目
PediatricsNeurology
トピック
小児科 3-06:新生児脳障害と新生児けいれん神経内科 G2-29:てんかん発作とてんかん(鑑別診断・分類・原因)
上位概念
てんかん性脳症
鑑別疾患
ビタミンB6依存性てんかん低酸素性虚血性脳症(周産期仮死)
続発疾患
乳児てんかん性スパズム症候群知的発達症
治療薬
ビタミンB6カルバマゼピンフェニトイン
症状
発作痙攣ミオクローヌス
検査値
α-アミノアジピン酸セミアルデヒド
スコア
ILAE分類
原因となる疾患
非ケトン性高グリシン血症

🧠 全体像:は生後3か月未満、多くは生後数週以内に発症する、最も早いてんかん性脳症であり、とのを二本柱とする。ただしこの病名自体が2022年のILAE改訂で単独の症候群としての座を降りており、重なりの大きかったとともに(EIDEE)という1つの症候群へ統合された1。名称の変遷よりも実務で効くのは、この電気臨床像は診断のではなく原因検索の入口だという理解である——約8割で病因が特定でき、そのごく一部は治療で発達転帰が変わる代謝性疾患だからである。

名称の整理:大田原症候群からEIDEEへ

旧来の名称 電気臨床像の特徴 現行のILAE用語
(、EIEE) が主体。が覚醒時・睡眠時の双方に出る EIDEEに統合1
(EME) が主体。または他の高度な異常 EIDEEに統合1

旧来「」として記載されてきた例では、が最も多い基礎疾患とされてきた2。名称が1つにまとまった後も、が優位な例でこの代謝異常を探す手順は残る。

💡 なぜ統合されたのか。 ILAEは、両者の電気臨床的特徴の重なりが大きく、しかも背景にある病因も共通しているため、EIDEEをとEMEに分けることは臨床判断にも予後判定にも有用な情報をもたらさないと判断した1。旧来の記述に価値が無かったのではなく、「どちらの名前で呼ぶか」を決める作業がを1つも変えなかった、という整理である。

⚠️ 旧称のまま書かれた資料を読むときは、発作型が優位()か優位(EME)かという区別が、現在は診断名を分ける根拠にならないことを踏まえる。分けるべきは発作型ではなく病因である。

診断の枠組み

EIDEEの必須項目は次の4点で構成される1。

項目 内容
発症年齢 出生〜生後3か月(早産児はで判断)。多くは生後数週以内
発作型 ・・・(・・自律神経症状・が順に連なる)のいずれか1つ以上
またはの、加えて
発達 発作の発症前またはその直後から発達の障害が存在する

とは、150〜300 µVのが1〜5秒続き、著明に平坦化したと交代する像を指す1。として記載されてきた古典像では、この所見が覚醒時にも睡眠時にも現れる点が特徴とされてきた2。

⭐ 発症率は出生10万人あたり約10人1。数字としては稀だが、新生児の難治性発作という限られた母集団の中では常に候補に挙がる。

病因を突き止める

flowchart TD
    A["生後3か月未満の難治性発作+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='burst suppression'>爆発抑制</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='electroencephalography, EEG'>脳波</span>"] --> B["急性の誘因を除外<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypoxic-ischemic encephalopathy (HIE)'>低酸素性虚血性脳症</span>・感染・代謝異常・脳卒中・出血"]
    B --> C["EIDEEとして病因検索を並行して進める"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuroimaging'>神経画像</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='structural aberration'>構造異常</span>を探す<br>全例で行う"]
    C --> E["代謝検査<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='structural aberration'>構造異常</span>が明らかでないときはとくに強く考慮"]
    C --> F["遺伝学的検査<br>パネル・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='exome'>エクソーム</span>"]
    D --> G["約80%で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='etiologic classification'>病因分類</span>に到達"]
    E --> G
    F --> G
    E --> H["治療可能な病因が見つかれば<br>症候群の確定を待たずに是正"]

はEIDEEの重要かつ高頻度の原因であり、全例で探索する。画像で明らかなが見つからない場合はとくに代謝検査を強く考慮し、・アミノ酸、尿中、、乳酸、尿酸、・、アンモニア、、、、および髄液の糖・乳酸・ピルビン酸・アミノ酸・神経伝達物質を提出する1。

遺伝子と発作型の対応には、検査結果を読むときの手がかりになる程度の傾向がある1。

遺伝子 対応しやすい発作型
KCNQ2 成分をもつ
SCN2A ・自律神経症状を伴う
STXBP1 非対称性のまたは
CDKL5 過運動から・スパズムへ連なる型の
SCN8A
KCNT1 自律神経症状を伴う焦点性
UBA5 が優位

💡 急性の誘因による発作はEIDEEに含めない。 ()・感染・代謝性の急性変動・脳卒中・出血によって誘発された発作はにあたる1。新生児ではそのものが重症脳症の非特異的な指標にもなるため、まず「今まさに進行している急性の脳障害ではないか」を先に片づける。

⚠️ 除外の順序

同じ電気臨床像を示す原因のうち、是正すれば転帰が変わるものを先に外すという順序は動かさない。

  1. 急性の誘因(、感染、電解質・血糖の急性異常)——これがあればEIDEEと呼ばない。
  2. ——診断が付く前でも投与を試みられる唯一の群であり、待つ理由が無い。
  3. その他の治療可能な代謝性疾患——欠損症候群など、髄液検体を採るついでに拾える項目を取りこぼさない。
  4. ・遺伝子変異の同定——ここまで来て初めて、と外科の適応が議論できる。

治療

⚠️ であることが原則である。 の標的になる代謝性・遺伝性の病因、あるいは外科的に対処できるが同定されない限り、発作は通常のでは抑えにくい1。裏を返せば、治療反応性を得る唯一の道筋が病因の同定にあるという点が、この症候群のそのものになっている。

  • に良好に反応する例が少なくなく、しばしば高用量で用いる1。⭐ とくにKCNQ2-DEEでは・といったが効きにくく、カルバマゼピン・フェニトインをこの臨床像では早い段階で検討する1。SCN2Aの変異例も同じ方向で扱われる。⚠️ 同じチャネル遺伝子でも(SCN1A)ではが発作を増悪させる1——対で覚える。
  • 原因不明例を含め、ビタミンB6(または)の投与は早い段階で試みる価値がある。
  • 性のが発作の起源であれば、の適応を早期に検討する。

経過と予後

が初発の発作型であったかどうかによらず、EIDEEはへ移行しうる1。「からへ、さらにへ」という古典的なの移行像は、現行の用語でもこの経路として残っている。

ほぼ全例が中等度から最重度のに至る。例外は、病因に対する有効な治療を早期に開始できた場合であり、とPNPO欠損症()がその代表として明示されている1。、運動障害、整形外科的問題、行動上の問題、摂食障害が併存しやすく、死亡率の上昇も知られた併存事項である1。旧来のとしての記述では、少なくとも半数が1歳までに死亡するとされてきた2。

まとめ

  • は生後3か月未満に発症し、とを特徴とする最早期のてんかん性脳症で、ILAE 2022ではとともにEIDEEへ統合された。両者を分けても臨床判断・予後判定が変わらないことが統合の理由である。
  • 必須項目は発症年齢(出生〜生後3か月)・発作型(///)・(または+)・発作前後からの発達障害の4点。発症率は出生10万人あたり約10人。
  • など急性の誘因による発作はであり、まずそこを片づける。
  • ・代謝・遺伝学的検査で約80%が病因に到達する。が見えなければ代謝検査を強く考慮し、髄液の糖・乳酸・アミノ酸・神経伝達物質まで含めて提出する。
  • が原則で、治療反応性を得る道筋は病因の同定にある。とPNPO欠損症だけが、早期治療で予後の例外になりうる。
  • の有無によらずへ移行しうる。ほぼ全例が中等度〜最重度のに至り、死亡率も高い。

出典

  1. 1.ILAE classification and definition of epilepsy syndromes with onset in neonates and infants: Position statement by the ILAE Task Force on Nosology and Definitions(Epilepsia(International League Against Epilepsy Task Force on Nosology and Definitions)・2022)早期乳児発達性てんかん性脳症(EIDEE)の項で、EIDEEが従来「大田原症候群」「早期ミオクロニー脳症」と分類されていた児を含むこと、両者は電気臨床的特徴の重なりが大きく病因も共通するため分けても臨床判断・予後判定に有用な情報をもたらさないと判断されたこと、発症年齢が出生〜生後3か月(早産児は修正)で必須の発作型が強直・ミオクロニー・てんかん性スパズム・連続性発作であること、発作間欠期脳波が爆発抑制または多焦点性突発波とびまん性徐波化であること、爆発抑制のバーストが150〜300 µV・1〜5秒であること、発症率が出生10万あたり約10人であること、神経画像・代謝・遺伝学的検査で約80%が病因分類に到達すること、遺伝子ごとの発作型の対応(KCNQ2・SCN2A・SCN8A・STXBP1・CDKL5・KCNT1・UBA5)、経過の節で多くの患者がナトリウムチャネル薬にしばしば高用量で良好に反応すること(引かれている参考文献84〜86はKCNQ2とSCN2Aの報告で、SCN8Aの報告は含まれない)、KCNQ2-DEEの節で発作がフェノバルビタールやレベチラセタムなど第一選択薬に反応しにくくカルバマゼピン・フェニトインなどのナトリウムチャネル遮断薬をこの臨床像では早期に考慮すべきこと、Dravet症候群の節でナトリウムチャネル遮断薬が典型的に発作を増悪させること、推奨される代謝検査項目、精密医療の標的や手術可能な構造異常が見つからない限り薬剤抵抗性であること、てんかん性スパズムが初発でなくてもIESSへ移行しうること、ほぼ全例が中等度〜最重度の知的障害に至るが病因への早期治療が可能なピリドキシン依存性てんかん・ピリドキサミン5′-リン酸オキシダーゼ(PNPO)欠損症は例外になりうることを確認した閲覧 2026-08-20
  2. 2.Neonatal Seizures and Neonatal Epilepsy(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)病因の節で、大田原症候群の発作が胎内または生後数日以内に始まり強直発作を呈し脳波が覚醒時・睡眠時とも爆発抑制パターンを示すこと、早期ミオクロニー脳症が生後数時間から生後1か月までに発症し非ケトン性高グリシン血症が最も多い基礎疾患であること、予後の節で大田原症候群では少なくとも半数が1歳までに死亡すること、治療の節でピリドキシン静注試験を100 mgで脳波監視下・無呼吸の危険があるため心肺の厳重な観察下に行い最大累積500 mgまで反復できることを確認した閲覧 2026-08-20