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Disease Atlas · 神経 · 症候群

Lennox-Gastaut症候群

Lennox-Gastaut syndrome

別名
LGS
臓器系
神経小児
科目
NeurologyPharmacology
トピック
神経内科 G2-29:てんかん発作とてんかん(鑑別診断・分類・原因)薬理学 A21:抗てんかん薬・鎮痛補助薬
上位概念
てんかん
鑑別疾患
Dravet症候群
続発疾患
全般的発達遅滞
治療薬
バルプロ酸ラモトリギンルフィナミドトピラマートクロバザム大麻(カンナビジオール)
症状
発作痙攣
スコア
ILAE分類
原因となる疾患
乳児てんかん性スパズム症候群

🧠 全体像:Lennox-Gastaut症候群(LGS)はてんかん性脳症の代表例で、①複数の発作型(が必須)②の遅速律動③知的障害・発達の停滞という三徴が揃って初めて診断が成立する症候群である。三徴のどれか一つだけでは診断しない。もう一つの核心は、発作の中でも)による転倒外傷が生活の質を最も損なうという臨床上の重みづけで、治療の優先順位はここからされる。単剤で発作が抑えきれないのが常態であり、複数のを積み上げながら、悪化させる薬を避けるという「足し算と引き算の両方」が必要になる。

三徴:診断の骨格

flowchart TD
    A["複数の発作型<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='tonic seizure'>強直発作</span>が必須(特に睡眠時)"] --> D["3つが揃って<br>Lennox-Gastaut症候群と診断"]
    B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='electroencephalography, EEG'>脳波</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='generalized'>全般性</span>遅<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spike-and-wave complex'>棘徐波複合</span>(2.5Hz以下)<br>+睡眠時の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='generalized seizure'>全般性発作</span>間欠期速律動"] --> D
    C["知的障害・発達の停滞"] --> D
    D --> E["治療抵抗性てんかん"]

(特に睡眠中)の存在は診断の必須条件である。 これになどの追加の発作型を伴い、複数の発作型が混在するのがLGSの臨床像の特徴である1では2.5Hz以下の(覚醒時)と、睡眠中の間欠期速律動(10〜30Hz)という2つの特徴的パターンを確認する1。そして、治療抵抗性の発作軽度〜重度の知的障害を伴うことが診断要件に含まれる1。ただしこの認知・行動障害は発症時には現れていないこともあり、経過とともに顕在化して最終的には90%超が中等度〜重度の知的障害・に至る2。てんかん性の活動そのものが発達障害に寄与するという「てんかん性脳症」の一般的な考え方はてんかん性脳症に譲り、本ノートではLGSに固有の三徴・発作型・治療を扱う。

⚠️ LGSは初発時に診断されることはまれで、多くは先行する・病因から発展する。 を含む概念)や早期乳児てんかん性脳症から移行する例が、LGS症例のおよそ10〜30%を占める2。より限定した集団(LGSに至った小児)でみても、約25%に乳児期スパズムの既往があり、この群は特に予後不良・死亡率が高いとされる1。発症年齢は幼児期(1〜8歳、ピーク3〜5歳)で、からの移行例では先行するヒプスアリスミアの像が、より広汎な遅パターンへ置き換わっていく経過をたどる。

病因・疫学

続発性LGS(約60%)は、中枢神経感染症(脳炎・髄膜炎)、損傷、出生時外傷、代謝異常、脳形成異常など特定可能な脳病理を背景に生じる。残る約40%は原因不明()で、近年の研究ではSCN1AGABRB3などの遺伝子変異が背景にある例が見つかりつつある1。LGSは全てんかんの1〜2%、小児てんかんの2〜5%、5歳以下の小児てんかんに限れば10%を占める、比較的まれだが小児期にはできない割合を占める症候群である1

⚠️ 予後は軽くない。 診断後8〜10年以内の死亡率は3〜7%とされる一方、50歳代以降まで生存する例もある。乳児期スパズムの既往がある群ほど転帰不良になりやすく、発作型・パターンは経過とともに変化しながら、多くは成人期まで発作が持続する1

臨床像:複数の発作型が混在する

LGSでは1種類の発作型だけで経過することはまれで、を軸に複数の発作型が同一患者に混在する。

発作型 特徴
診断に必須。特に睡眠中に出現しやすい
突然の姿勢筋緊張消失により転倒する。⚠️ 最もが高い発作型
定型より開始・終了が緩徐で、の程度に幅がある
一部の患者で混在する

⚠️ による転倒外傷は、LGSの生活の質を最も損なう問題である。 突然の姿勢筋緊張消失で頭部・顔面を含む反復性の外傷を来しやすく、のコントロールは治療の最優先事項として位置づけられる1保護用(面ガード付きを含む)の装用は、治療と並行して外傷予防のために広く用いられる実地の対応である。

治療:単剤で抑えきれないのが常態

LGSは単剤治療で発作が完全に抑制されることがまれで、複数のを組み合わせるが前提となる。

flowchart TD
    A["LGSと診断"] --> B["バルプロ酸を基本薬として開始"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lamotrigine'>ラモトリギン</span>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clobazam'>クロバザム</span>を併用<br>(第一選択の組み合わせ)"]
    C --> D{"発作が残存するか"}
    D -->|"あり"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rufinamide'>ルフィナミド</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='topiramate'>トピラマート</span>・<br>カンナビジオールを追加検討"]
    E --> F{"難治性が持続するか"}
    F -->|"あり"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='corpus callosum'>脳梁</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='avulsion'>離断</span>術・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vagal stimulation (vagal maneuver)'>迷走神経刺激</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ketogenic diet'>ケトン食</span>"]
    D -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ankylosis'>強直</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myoclonic'>ミオクロニー</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cataplexy'>脱力発作</span>が悪化"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sodium-channel blocker'>Naチャネル遮断薬</span><br>(カルバマゼピン・フェニトイン)の関与を疑う"]

難治例では非薬物治療を検討する。

  • ある症例集積では、開始6か月後に約半数の患児で発作が50%以上減少した1
  • 約50%の発作頻度減少が得られ、効果は時間とともに増していく傾向がある1
  • 術: 特に脱力・の制御に有効である1

鑑別

疾患 LGSとの違い
発症は生後1年以内で、発熱・入浴で誘発される遷延性けいれんが初発。SCN1A変異が大半を占め、遮断薬は禁忌。LGSより発症が早く、が診断必須ではない
を含む) 生後1〜24か月に発症する痙攣性スパズムとヒプスアリスミアが特徴で、LGSへ移行しうる先行病態の一つ
睡眠時spike-wave活性化を伴う/てんかん性脳症(DEE-SWAS) 中のspike-wave活動増加が主体で、発作自体は目立たないこともある。が必須ではない点でLGSと異なる

まとめ

  • LGSは①を含む複数の発作型②2.5Hz以下の+睡眠時速律動③知的障害・発達の停滞という三徴が揃って診断する。
  • LGS症例の10〜30%程度はを含む)など先行するから移行し、この群は予後不良になりやすい。
  • による転倒外傷が生活の質を最も損なう問題で、装用など外傷予防と、のコントロールが治療の優先事項になる。
  • 単剤で発作を抑えきれないのが常態で、バルプロ酸を基本に・カンナビジオールを組み合わせる。カルバマゼピン・フェニトインなどを悪化させうるため避ける。
  • 難治例では術・を検討する。

出典

  1. 1.Lennox-Gastaut Syndrome(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)LGS診断に強直発作の存在が必須であり、それに加えて非定型欠神・脱力発作などの追加発作型を要すること(Evaluation節)、脳波診断基準が2.5Hz以下の全般性徐棘徐波複合と睡眠時10〜30Hzの全般性発作間欠期速律動であること(Evaluation節)、治療抵抗性てんかんに軽度〜重度の知的障害を伴うことが診断要件であること(Evaluation節)、LGSに至る小児の約25%に乳児期スパズムの既往歴がありその群は予後不良・死亡率が高いこと(Etiology節)、バルプロ酸をラモトリギンまたはクロバザムと併用するのが第一選択治療で、ラモトリギン・クロバザム(非定型欠神に特に有効)・ルフィナミド(脱力・強直間代発作に有効で他の発作型を悪化させにくい)・トピラマート・カンナビジオール(脱力発作に特に有効)が承認された補助療法であること(Treatment/Management節)、フェニトイン・カルバマゼピンなどNaチャネル遮断薬が強直・ミオクロニー・脱力発作を悪化させうること(Treatment/Management節)、ケトン食療法で6か月後に約半数の患児で発作が50%減少したこと、迷走神経刺激で約50%の発作頻度減少が得られ効果が経時的に増大すること、脳梁離断術が脱力・強直・強直間代発作の制御に特に有効であること(Treatment/Management節)、脱力発作による転倒が反復する外傷につながり脱力発作の制御が治療の最優先事項であること(History and Physical節)、続発性LGSが約60%を占め結節性硬化症・中枢神経感染症・前頭葉損傷・出生時外傷・代謝異常・脳形成異常などが原因となる一方、約40%は原因不明(潜因性)であること(Etiology節)、LGSが全てんかんの1〜2%・小児てんかんの2〜5%・5歳以下の小児てんかんの10%を占めること(Epidemiology節)、診断後8〜10年以内の死亡率が3〜7%である一方50歳代以降まで生存する例もあり乳児期スパズムの既往がある群ほど転帰不良であること(Prognosis節)を確認した閲覧 2026-08-11
  2. 2.Lennox-Gastaut Syndrome (LGS)(epilepsydiagnosis.org(International League Against Epilepsy)・2024)LGSの必須要素が薬剤抵抗性の複数発作型(特に睡眠時の強直発作)・脳波の全般性徐棘徐波複合と全般性発作間欠期速律動・認知行動障害(発症時には無いこともある)の3つであり、最終的に90%超が中等度〜重度の知的障害に至ること、LGS症例の約10〜30%が乳児てんかん性スパズム症候群(IESS)や早期乳児発達性てんかん性脳症(EIDEE)など先行するてんかん症候群から移行すること、LGSは初発時にてんかんが診断されることはまれで、先行する症候群・病因から発展する点を確認した閲覧 2026-08-11