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Disease Atlas · 神経 · 先天性疾患

Dravet症候群

Dravet syndrome

別名
ドラベ症候群乳児重症ミオクロニーてんかんSMEI
臓器系
神経小児
科目
NeurologyPediatrics
トピック
神経内科 G2-29:てんかん発作とてんかん(鑑別診断・分類・原因)小児科 2-23:痙攣・てんかん重積状態の救急治療
上位概念
てんかん
鑑別疾患
Lennox-Gastaut症候群熱性けいれん
治療薬
バルプロ酸クロバザム大麻(カンナビジオール/Epidiolex)
症状
痙攣発作焦点性発作小脳性運動失調
スコア
ILAE分類
適応薬
スティリペントールフェンフルラミン
禁忌薬
オクスカルバゼピンカルバマゼピンフェニトインラコサミドラモトリギンルフィナミド

🧠 全体像は**SCN1A遺伝子の変異による乳児期発症の性脳症であり、発熱や入浴などで誘発される遷延性のけいれんで発症することが臨床像の入口になる。しかし本症候群を理解するうえで最も重要なのは治療の落とし穴にある——カルバマゼピン・フェニトインなどの遮断薬は、通常のてんかん治療とは逆に発作を悪化させるため禁忌**である。発熱誘発性の発作という見た目だけで「」と片付けず、この禁忌を踏まえた薬剤選択に進めるかどうかが臨床上の分かれ目になる。

概要

(ドラベ症候群、旧称:乳児重症てんかん)は、SCN1A遺伝子の変異を原因とする乳児期発症のてんかん性脳症である。患者の80%超がSCN1Aの新生突然変異を持ち、同遺伝子はのNav1.1をコードする1

病態

SCN1Aは主に抑制性のに発現するNav1.1をコードする。変異によりこのチャネルの機能が低下すると、の興奮性そのものが低下し、結果として脳全体の興奮・抑制バランスが崩れて発作が起こりやすくなる。

flowchart TD
    A["SCN1A遺伝子のde novo<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pathogenic variant'>病的バリアント</span>"] --> B["抑制性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='GABAergic interneuron'>GABA作動性介在ニューロン</span>の<br>Nav1.1機能低下"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inhibitory neuron'>抑制性ニューロン</span>の興奮性低下"]
    C --> D["脳全体の興奮・抑制バランスが破綻"]
    D --> E["発熱・入浴などを契機とする<br>遷延性けいれんで発症"]
    E --> F["多彩な発作型が反復し<br>発達の停滞・退行を来す"]

⚠️ 遮断薬は、このの機能をさらに低下させる方向に働くため、発作を悪化させる。 これがにおける薬剤選択の中心的な論点になる(詳細は後述)。

臨床像

多くは生後1年以内、しばしば発熱に伴う痙攣性発作で発症し、約半数はと区別しにくい1。感染症、入浴を含む環境温の上昇、、光刺激、運動、興奮などが発作の誘因になる1

病期 臨床像
発症期(生後1年前後) 発熱・入浴などで誘発される遷延性の痙攣。半側性・など発作型は多彩
(幼児期) 、非定型など多彩な発作型が反復。発達の停滞または退行が明らかになる
慢性期(学童期以降) 発作頻度は年齢とともに減ることがあるが、、知的障害、行動上の問題が持続する

診断

臨床像(発熱・入浴誘発性の遷延性けいれんで発症し、多彩な発作型と発達停滞を伴う)から本症候群を疑い、SCN1Aの遺伝学的検査で確認する。の枠組みでは、発作型・・年齢・画像を統合した「」の段階でとして同定される代表例の一つに位置づけられる。

flowchart TD
    A["生後1年以内、発熱・入浴を契機とする<br>遷延性けいれんで発症"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='simple'>単純型</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='febrile seizure'>熱性けいれん</span>の基準<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='generalized'>全般性</span>・15分未満・24時間内1回)を満たすか"}
    B -->|"満たさない・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='non-conventional'>非典型的</span>に長い・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurological'>神経学的</span>異常を伴う"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Dravet syndrome'>Dravet症候群</span>・GEFS+など<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='epilepsy syndrome'>てんかん症候群</span>を疑う"]
    B -->|"満たす・その後は健常"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='simple'>単純型</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='febrile seizure'>熱性けいれん</span>として経過観察"]
    C --> E["SCN1A遺伝学的検査で確認"]
    E --> F["発達の停滞・退行、多彩な発作型の<br>反復を確認しながら診断を固める"]

治療

禁忌:ナトリウムチャネル遮断薬を避ける

⚠️ カルバマゼピン・フェニトインをはじめとする遮断薬(カルバマゼピンフェニトインなど)は、通常のてんかん治療における位置づけとは逆に発作を悪化させるため通常禁忌である。 これらの長期使用継続は、さらなる発作増加と認知転帰の悪化に関連する1の救急治療でも、フェニトインは他のてんかんでは主要なだが、では避ける1

推奨される薬物療法

バルプロ酸とされ、反応不十分な場合はを併用する第二選択治療へ進む。フェンフルラミンは代替のとして位置づけられる1

CBD(Epidiolex)は、2018年にFDAが承認した由来の初のてんかん治療薬であり、・Lennox-Gastaut症候群に伴う発作を適応とする2。詳細な薬理・の項を参照する。

⚠️ CBD・・バルプロ酸の3剤併用には薬物相互作用と肝毒性の注意が必要である。 CBDは濃度を約3倍に上昇させ傾眠を増強しうるほか、CBD・・バルプロ酸を3剤併用するとALTが上限の3倍を超える頻度が30%に達する3。バルプロ酸・・CBDという頻用の組合せを処方する際は、肝機能を定期的に確認する。

発作時対応と長期管理

遷延性けいれんに対する初期対応は他のてんかんと同様にベンゾジアゼピンを中心とするが、の選択ではフェニトインを避ける点がに固有の注意点になる(詳細はてんかんの項を参照)。発熱時の速やかな・冷却、入浴時の水温管理など、既知の誘因を避けるも長期管理の一部である。発達支援、リハビリテーション、行動面の支援を含む多職種でのを継続する。

まとめ

  • SCN1A遺伝子のde novoによる乳児期発症のてんかん性脳症で、発熱・入浴などで誘発される遷延性けいれんで発症する。
  • SCN1Aは抑制性Nav1.1をコードし、機能低下が脳全体の興奮・抑制バランスを崩す。
  • カルバマゼピン・フェニトイン・などの遮断薬は発作を悪化させるため通常禁忌であり、この点がの最である。
  • 第一選択はバルプロ酸で、第二選択は併用またはカンナビジオール・フェンフルラミン。CBD(Epidiolex)は2018年にFDA承認された由来の初のてんかん治療薬である。
  • CBD・・バルプロ酸の3剤併用は肝が上昇するため、肝機能の定期監視を要する。
  • 発作型は多彩で、進行に伴い発達の停滞・退行、などの慢性症状が持続する。

出典

  1. 1.Guidance on Dravet syndrome from infant to adult care: Road map for treatment planning in Europe(Epilepsia Open(Cardenal-Muñoz E, et al.)・2022)患者の80%超が`SCN1A`遺伝子のde novo病的バリアントを持ち電位依存性ナトリウムチャネルNav1.1をコードすること、最初の症状の多くが生後1年以内に生じる痙攣性発作で約半数は発熱に伴い単純型熱性けいれんと区別しにくいこと、感染・入浴を含む環境の熱・予防接種・光刺激・運動・興奮などが発作の誘因になること、ラモトリギン・フェニトイン・カルバマゼピン・オクスカルバゼピン・ラコサミド・ルフィナミドなどのナトリウムチャネル遮断薬は発作頻度を増やすため通常禁忌であり長期の使用継続はさらなる発作増加と認知転帰の悪化に関連すること、バルプロ酸が第一選択薬でありスティリペントール・クロバザムとの併用が第二選択とされ、カンナビジオール・フェンフルラミンが代替の第二選択薬に位置づけられることを確認した閲覧 2026-08-11
  2. 2.FDA Approves First Drug Comprised of an Active Ingredient Derived from Marijuana to Treat Rare, Severe Forms of Epilepsy(U.S. FDA(GW Pharmaceuticals発表、PR Newswire配信)・2018)2018年6月25日、FDAが大麻由来の精製カンナビジオール(CBD、Epidiolex)を2歳以上のLennox-Gastaut症候群・Dravet症候群に伴うてんかん発作の治療薬として承認したことを確認した閲覧 2026-08-11
  3. 3.Safety and Tolerability | EPIDIOLEX (cannabidiol)(Jazz Pharmaceuticals(EPIDIOLEX処方者向け情報サイト、添付文書に基づく安全性情報)・2024)CBD(Epidiolex)がクロバザムの活性代謝物濃度を約3倍に上昇させること、ALTが基準値上限の3倍を超える頻度がバルプロ酸・クロバザム併用例で30%に達することを確認した閲覧 2026-08-11