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Disease Atlas · 神経 · 先天性疾患

Dandy-Walker奇形

Dandy-Walker malformation

臓器系
神経小児
科目
PathologyPediatrics
トピック
病理学 C/105:中枢神経系の先天奇形小児科 2-03:水頭症と頭蓋内圧亢進
鑑別疾患
Joubert症候群
合併症
水頭症

🧠 全体像:Dandy-Walker奇形は「の低形成+拡大+そのものの拡大」という三徴で定義される奇形である。⚠️ 名前から水頭症を必発と思い込みやすいが、水頭症は診断時点で必ずしも揃っておらず、多くは出生後に発症する。 同じ「低形成」を来すJoubert症候群とは紛らわしいが、が拡大するか正常大にとどまるか臼歯徴候があるかないかという2点で区別できる。

病態

、菱脳蓋(後の天蓋)の形成不全とが同時に起こることで、の無形成・低形成と、それによってに拡大したへ交通する構造ができあがる。このの拡大がテント・ラを挙上させ、全体が拡大する1

flowchart TD
    A["菱脳蓋・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cerebellar vermis'>小脳虫部</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Developmental Disorders'>発生障害</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cerebellar vermis'>小脳虫部</span>の無形成・低形成"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fourth ventricle'>第四脳室</span>天蓋の形成不全"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fourth ventricle'>第四脳室</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior fossa'>後頭蓋窩</span>へ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cystic'>嚢胞状</span>に拡大"]
    D --> E["テント・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='torque'>トルク</span>ラの挙上"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior fossa'>後頭蓋窩</span>そのものの拡大"]
    D --> G["髄液流出路の狭窄・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='malabsorption'>吸収障害</span>"]
    G --> H["水頭症(必発ではなく多くは出生後に発症)"]

三徴と画像所見

所見 内容
無形成または低形成
へ交通する拡大
テント・ラの挙上を伴い拡大

出生2.5万〜3.5万人に1人程度の頻度で、女児対男児比は約3:1とされる1

水頭症は必発ではない

⚠️ 水頭症はDandy-Walker奇形の必発所見ではなく、出生時にすでに揃っている例は一部にとどまる。 生後3か月までに水頭症を来す患者は約75%、経過を通じて最終的に水頭症に至る患者は約90%とされ1、出生直後の画像で水頭症が目立たなくても除外にはならない。乳児期はの急速な増大、が、水頭症発症の手がかりになる。

Joubert症候群との鑑別

💡 どちらも低形成を来すため紛らわしいが、の大きさと臼歯徴候の有無で分かれる。 Joubert症候群のMRI所見である臼歯徴候は、異常に深い脚間窩・肥厚し直線状の低形成の組み合わせで定義され、そのものは拡大しない。Dandy-Walker奇形はこの逆で、の拡大と拡大が主体であり、脚間窩の異常な深さやの肥厚は伴わない。まれにDandy-Walker奇形がJoubert症候群に伴う頻度の低い脳異常として観察されることもあり2、その場合は拡大が臼歯徴候の描出を妨げることがあるため、の嚢胞性拡大を見たら中脳のレベルでの臼歯徴候の有無を意識して確認する。

Dandy-Walker奇形 Joubert症候群
拡大(テント・ラ挙上) 正常大
に拡大へ交通 正常に近い形態
臼歯徴候 なし あり(深い脚間窩+肥厚した
無形成・低形成 低形成
水頭症 多くの例で経過中に発症 必発ではない

Dandy-Walker spectrumという捉え方

Dandy-Walker奇形・Dandy-Walker variant・単純な槽の拡大という3つを、の程度が連続する1つのスペクトラムとして捉える「Dandy-Walker complex/spectrum」という用語がBarkovichらにより1989年に提唱された1。⚠️ ただし、この一括りの用語は現在では混乱を招くとして支持されなくなっており、個々の低形成の程度、嚢胞の大きさ、の拡大の有無)をそれぞれ記述する方針が推奨されている1。「Dandy-Walker spectrum」という言葉を見聞きしたときは、連続的な重症度という考え方の由来として理解しつつ、実際の画像診断では個々の所見を分けて評価する現行の方針を優先する。

治療

治療は水頭症の管理が中心で、疾患そのものを根治する手段はない。 水頭症を来せばまたは嚢胞腹腔シャントを行い、一部の症例ではも選択肢になる1水頭症の合併症(シャント閉塞・感染)は独立して長期に監視する。

まとめ

  • Dandy-Walker奇形はの無形成・低形成+拡大+の拡大という三徴で定義される。
  • 水頭症は必発ではなく、生後3か月までに約75%、最終的に約90%が発症する——出生時に目立たなくても除外にならない。
  • Joubert症候群とは低形成を共有するが、の大きさ(拡大 vs 正常大)と臼歯徴候の有無(なし vs あり)で区別する。
  • Dandy-Walker spectrumという連続的な分類は1989年に提唱されたが、現在は個々のを記述する方針が優先される。
  • 治療は水頭症に対する・嚢胞腹腔シャントが中心で、一部はも選択肢になる。

出典

  1. 1.Dandy-Walker Malformation(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)Dandy-Walker奇形が小脳虫部の無形成・低形成、第四脳室の後頭蓋窩への交通性嚢胞状拡大、テント・トルクラの挙上を伴う後頭蓋窩の拡大で定義されること(Introduction節)、生後3か月までに約75%、最終的には約90%の患者が水頭症を来すこと(History and Physical節)、米国での出生25,000〜35,000人に1人の頻度で、女児対男児比が約3:1であること(Epidemiology節)、Barkovichらが1989年に提唱したDandy-Walker complex/spectrumという用語(小脳虫部発生の程度を軸にDandy-Walker奇形・variant・単純な後頭蓋窩槽拡大の3カテゴリーに分ける連続的な分類)が現在は混乱を招くとして支持されなくなっており、個々の構造異常を記述する方針が推奨されていること(Introduction節)、治療が脳室腹腔シャントまたは嚢胞腹腔シャント、一部症例では内視鏡的第三脳室開窓術であること(Treatment/Management節)を確認した閲覧 2026-08-11
  2. 2.Joubert Syndrome(GeneReviews(University of Washington, Seattle)・2026)Joubert症候群の臼歯徴候が「異常に深い脚間窩」「肥厚し直線状の上小脳脚」「小脳虫部の低形成」の組み合わせで定義されること、臼歯徴候に伴って観察されうる頻度の低い脳異常の一つとしてDandy-Walker奇形が挙げられていること(Brain Anomalies節)を確認した閲覧 2026-08-11