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Disease Atlas · 腫瘍 · 腫瘍

後頭蓋窩腫瘍・脳幹腫瘍

Posterior fossa and brainstem tumors

別名
後頭蓋窩腫瘍脳幹腫瘍テント下腫瘍
臓器系
腫瘍神経小児
科目
NeurologyPediatricsPathology (Histopathology)
トピック
神経内科 G1-24:頭蓋内腫瘍の症候小児科 3-03:小児脳腫瘍と網膜芽細胞腫神経内科 G3-06:脳腫瘍の病理学的分類組織病理 H2-123A:内水頭症
上位概念
中枢神経系腫瘍(成人・小児)
鑑別疾患
Chiari奇形Dandy-Walker奇形
続発疾患
水頭症
治療薬
デキサメタゾン
症状
小脳性運動失調斜頸眼振頭痛嘔吐乳頭浮腫複視外転神経麻痺頭部動揺吃逆ミオキミア球麻痺嚥下障害片麻痺
画像所見
脳室拡大
下位分類
びまん性内在性橋グリオーマ髄芽腫

🧠 全体像:は骨とに囲まれた逃げ場のない小さな区画で、そこに橋・延髄・小脳・が詰まっている。だからの腫瘍は、腫瘍の種類より先に「どこを圧すか」で症候が決まる——を塞げば水頭症、小脳を侵せば失調、脳幹に食い込めばとの症候が出る。⭐ 1歳を超える小児では、はの最も多い発生部位である1。成人では逆に大脳半球が主で、は小児に偏る。⚠️ 「頭痛と嘔吐で朝に強い」「まっすぐ歩けない」「頭を傾けている」が並んだら、良性の経過観察に倒す前に画像を撮る。

後頭蓋窩という区画が症候を決める

小児のは小児がん全体のおよそ25%を占め、その半数超がに位置する2。この部位に腫瘍ができると、次の3つが重なって現れる。

  1. 頭蓋内圧亢進:あるいは・が塞がれ、になる。頭痛(起床時に強い)・嘔吐・が典型で、乳児ではとになる。は閉塞部位より上流に限局する。
  2. :、眼振、。が主座ならと、半球が主座なら患側の四肢のが前面に出る。
  3. :との障害。と、、・嚥下障害、。

💡 はの重要な入口症状である。 を避けるとしても、の下垂に対する防御としても起こる。のに頭痛・嘔吐・・が伴えば、「」で経過観察にせず画像検索を急ぐ。

⚠️ にがあるとき、はを誘発しうる。 画像評価を先に行う。

小児の4大腫瘍

小児のとして繰り返し挙がるのは・・・の4つで、これに稀なが加わる1。

腫瘍 好発部位 画像の手掛かり 位置づけ
大きな嚢胞と造影される。は高い 低悪性度。全摘できれば予後は良い
・ 細胞密度が高く拡散が制限されが低い。を来す 悪性。分子群で層別化される
(から外側へ張り出す) 石灰化・出血を伴いやすい が予後を左右する
橋 橋の腫大。造影に乏しい が大半

⭐ に張り付いた腫瘍でとを迷ったらを見る。 は細胞密度が高いため比が・・のいずれよりも有意に低く、比1.115以下というでを他から感度95.8%・特異度81%で区別できたと報告されている1。比が低いほど gradeが高いという相関も同じ研究で示された。

脳幹の腫瘍

はの最大18%、の25%を占めるとされ、好発年齢は5〜10歳、成人では30〜40歳に第2のピークがある3。

4類型で予後がまったく違う

⭐ 「」を一括りにしないことが、この主題の核心である。 Chouxらの分類では次の4型に分ける3。

型 名称 性格 治療と予後
I びまん性 の最大80%。多数の核と経路を同時に侵し、両側の第VI・第VIIから・へ急速に進む。大半が grade III〜IV 切除できない。大多数が診断後2年以内に死亡し、への播種が5〜30%に生じる
II 限局性 または嚢胞性で境界が明瞭。浮腫に乏しく緩徐に進む。大半が低悪性度 表在性なら手術。深部なら保存的
III 外方発育性 脳幹の外へ大きく張り出す。しばしば嚢胞成分を伴う。大半が低悪性度星細胞腫 到達しやすく切除の余地が大きい
IV 外方へ伸びるため脳幹を切開せずに到達できる 側へ伸びれば早期に水頭症、脊髄側へ伸びればを生じうる

💡 均一なはを強く示唆する3。の腫瘍は通常は限局性で、その大半がである。

⚠️ IV型は「到達しやすい」が「安全」ではない。 術後に呼吸と嚥下の障害が残り、長期の・・を要しうる3。

脳幹病変を疑わせる症状

成人の脳幹膠腫は別の病気に近い

成人のは成人の膠腫の2%未満とまれで、診断時年齢中央値は30歳代半ばである4。小児のが造影されにくいのに対し、成人例は約40%がを示す。約60%が橋を主座とするが、中脳・延髄からも生じる。

⭐ 顔面の症候と四肢の症候が反対側に出る「」の脱落は、の特徴的な印である4。

生存期間中央値は30〜40か月と報告され、小児のよりは長い4。腫瘍gradeが高いこととがあることは、いずれも生存の短縮と関連する。⚠️ の膠腫だけは別扱いする。 低悪性度・で進行しないことが多く、水頭症への対応以外は経過観察が妥当な場面が多い。

診断の進め方

flowchart TD
    A["頭痛・嘔吐・失調・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='torticollis'>斜頸</span>などで<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior fossa'>後頭蓋窩</span>病変を疑う"] --> B["造影MRI(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diffusion-weighted imaging'>拡散強調像</span>を含む)"]
    B --> C{"主座はどこか"}
    C -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cerebellar hemispheres'>小脳半球</span>(嚢胞+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mural nodule'>壁在結節</span>)"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pilocytic astrocytoma'>毛様細胞性星細胞腫</span>を第一に考える"]
    C -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vermis'>虫部</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fourth ventricle'>第四脳室</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='apparent diffusion coefficient'>ADC</span>が低い)"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Medulloblastoma'>髄芽腫</span>を第一に考える<br>全脊髄<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cerebrospinal fluid cytology'>髄液細胞診</span>で播種を評価"]
    C -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fourth ventricle'>第四脳室</span>(外側孔へ張り出す)"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Ependymoma'>上衣腫</span>を第一に考える"]
    C -->|"橋のびまん性腫大"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='brainstem glioma'>脳幹膠腫</span>。Choux分類で型を決める"]
    B --> H{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='obstructive hydrocephalus'>閉塞性水頭症</span>があるか"}
    H -->|"あり"| I["髄液路の確保を先行させる"]
    H -->|"なし"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='elective'>待機的</span>に手術計画"]
    G --> K["びまん性か限局性か外方発育性か<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='cervicomedullary junction'>頸髄延髄接合部</span>か"]

⚠️ とを疑う段階で、全脊髄のとによる播種評価を治療前に済ませる。 手術後に髄液所見が修飾されると病期が決められなくなる。

治療の原則

⚠️ 小脳性無言症症候群(後頭蓋窩症候群)

の手術で最も特徴的な合併症である。小脳またはの腫瘍手術のあとに生じる一過性の・失調・・の症候の集合を指す2。

  • 機序:とそのの両側性の障害が原因と考えられており、小脳から脳幹を通る経路が損なわれることで、大脳側にも二次的な機能低下()が及ぶ2。
  • 危険因子:脳幹への腫瘍の及び方、正中局在、腫瘍型。での頻度は星細胞腫・の2〜3倍である2。
  • ⚠️ 報告される発症率は定義によって大きく振れる。 全体では8〜32%、より厳密な定義を用いたでは24〜39%という値が引かれており、148例の研究では全体28%・40%・星細胞腫16%・20%と報告されている2。
  • ⚠️ 「一過性」という語に安心しない。 回復は不完全なことが多く、・の緩慢さ・失調が残りうる2。
  • 性別・水頭症・術後の中枢神経感染・小脳の浮腫は有意な相関が示されておらず、危険因子とは考えにくい2。周術期のステロイドは広く投与されているが、この症候群の経過への影響は定まっていない。

鑑別

まとめ

  • は狭い区画で、頭蓋内圧亢進・・の3つが重なって現れる。1歳を超える小児ではの最も多い発生部位である。
  • 小児のは小児がん全体の25%を占め、半数超がに位置する。
  • 4大腫瘍は・・・。の腫瘍で迷ったらを見る(はが低い)。
  • はChoux分類のI〜IV型で予後がまったく違う。I型(びまん性)が最大80%を占め切除できない。II〜IV型は低悪性度が主体で手術の余地がある。
  • 成人のは成人膠腫の2%未満で、造影されやすく生存期間も小児より長い。の脱落がの印になる。
  • はとそのの両側性障害によると考えられ、で頻度が高く、回復は不完全なことが多い。
  • ⚠️ の・持続する・難治性の・小児の後天性は、いずれもと脳幹の画像検索の理由になる。

出典

  1. 1.Diffusion MRI in Evaluation of Pediatric Posterior Fossa Tumors(Asian Pacific Journal of Cancer Prevention・2021)中枢神経系腫瘍が小児の全腫瘍の20%を占め1歳を超える小児では後頭蓋窩が最も多い発生部位である一方で成人では大脳半球が多いこと、小児の後頭蓋窩腫瘍として一般に挙がるのが毛様細胞性星細胞腫・髄芽腫・上衣腫・びまん性内在性橋グリオーマと稀な非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍であること、髄芽腫は細胞密度が高くADC比が上衣腫・毛様細胞性星細胞腫・びまん性内在性橋グリオーマより有意に低いこと、ADC比1.115以下というカットオフで髄芽腫を他の後頭蓋窩腫瘍から感度95.8%・特異度81%で区別できたこと、ADC比が低いほどWHO gradeが高いという相関を認めたことを、Abstract および Introduction・Results で確認した。閲覧 2026-09-03
  2. 2.Cerebellar mutism syndrome in children with brain tumours of the posterior fossa(BMC Cancer・2017)小児の中枢神経系腫瘍が小児がん全体の25%を占め、その半数超が後頭蓋窩に位置すること、小脳性無言症症候群が小脳または第四脳室の腫瘍手術後に生じる一過性の無言・失調・筋緊張低下・易刺激性という症候の集合を指すこと、回復は不完全なことが多く構音障害・発話の緩慢さ・失調が残存しうること、歯状核とその遠心路の両側性の障害が機序と考えられており小脳から脳幹を通る経路の損傷が大脳側の二次的な機能低下(遠隔機能解離)を生じうること、確立した危険因子が脳幹への腫瘍の及び方・正中局在・腫瘍型であり髄芽腫での頻度が星細胞腫・上衣腫の2〜3倍であること、性別・水頭症・術後感染・小脳の浮腫は有意な相関が示されておらず危険因子とは考えにくいこと、ステロイドが周術期に広く投与されるが小脳性無言症症候群の経過への影響は未確定であることを、Background 節で確認した。なお同節が挙げる発症率(定義により小脳腫瘍全体で8〜32%、より厳密な定義を用いた髄芽腫で24〜39%、148例の研究で全体28%・髄芽腫40%・星細胞腫16%・上衣腫20%)は本論文自身の測定値ではなく既報の引用である。閲覧 2026-09-03
  3. 3.Surgical approaches for brainstem tumors in pediatric patients(Child's Nervous System・2015)脳幹腫瘍が小児脳腫瘍の最大18%・後頭蓋窩腫瘍の25%を占めるとされ好発年齢が5〜10歳で成人の30〜40歳に第2のピークがあること、Chouxらの分類がI型びまん性・II型限局性内在性(充実性または嚢胞性)・III型外方発育性・IV型頸髄延髄接合部の4型からなること、I型が脳幹腫瘍の最大80%を占め両側の第VI・第VII脳神経麻痺から片麻痺・四肢麻痺へ進行する急速な経過をとり組織学的には大半がWHO grade III〜IVの星細胞腫であること、I型が橋の腫大と脳底動脈の埋没を示しT1低信号・T2およびFLAIR高信号で造影効果に乏しく大多数が診断後2年以内に死亡し神経軸への播種が5〜30%に生じること、II型が緩徐発育で境界明瞭・浮腫が乏しく大半が低悪性度膠腫であり均一な造影は毛様細胞性星細胞腫を強く示唆すること、四丘体板の腫瘍が通常は限局性で大半が毛様細胞性星細胞腫であること、III型が脳幹外に大きな成分を持ち外科的に到達しやすく大半が低悪性度星細胞腫であること、IV型が第四脳室側へ伸びると早期に水頭症を来し脊髄側へ伸びると髄液動態の変化から脊髄空洞症を生じうること、IV型は術後に呼吸・嚥下の障害から長期の人工呼吸・気管切開・胃瘻を要しうる重い合併症の頻度が高いことを、Introduction および Classification 節で確認した。なお疫学の数値(小児脳腫瘍の18%・後頭蓋窩腫瘍の25%・好発年齢5〜10歳・成人の第2ピーク30〜40歳)と神経軸播種5〜30%は、本論文自身の測定値ではなく同節が引用する既報の値である。閲覧 2026-09-03
  4. 4.Brainstem Glioma in Adults(Frontiers in Oncology・2016)成人の脳幹膠腫が成人の膠腫の2%未満であるのに対し小児のびまん性内在性橋グリオーマは小児原発性脳腫瘍の約20%を占めること、成人例の診断時年齢中央値が30歳代半ばで男性にわずかに多いこと、約40%が造影効果を示し小児のびまん性内在性橋グリオーマでは造影が目立たないのと対照的であること、脳幹膠腫の約60%が橋を主座とすること、顔面の症候と四肢の症候が反対側に出る交代性の脱落が脳幹病変の特徴であること、中脳蓋の膠腫は低悪性度・非造影で進行しないことが多く水頭症への対応以外は経過観察が妥当で他の脳幹膠腫とは別に扱われること、成人の脳幹膠腫の生存期間中央値が30〜40か月と報告され腫瘍grade上昇と造影効果が生存の短縮と関連すること、標準的な初期治療が総線量54〜60 Gyの局所放射線療法であることを、Clinical Features・Prognostic Considerations・Treatment Options 各節で確認した。生存期間・造影率などの具体的な数値は本総説自身の測定値ではなく引用された後方視的研究の値である。閲覧 2026-09-03