組織病理学

組織病理学 · H2-123A

内水頭症

Internal hydrocephalus

描出疾患
水頭症
疾患
後頭蓋窩腫瘍・脳幹腫瘍
画像所見
経上衣性浸出脳室拡大

🧠 全体像:内水頭症(internal hydrocephalus)は、そのものが拡大する型の水頭症であり、臨床で単に「水頭症」と呼ぶ場合の多くはこれを指す。髄液の産生・循環・吸収のと、(脳外)が主体で拡大する外水頭症との対比はH2-122A:外水頭症で扱った。本項目ではそのものの原因と、それに伴う側の変化を中心に整理する。

内水頭症を来す代表的な原因(部位別)

のどこで髄液の流れが妨げられるかにより、拡大する脳室の範囲が決まる。

閉塞部位 代表的な原因 拡大する脳室
嚢胞、脳室内腫瘍 片側または両側の
(Sylvius水道) 先天性水道狭窄、による 両側・
・/ (など)、 ・・の全体
(交) 髄膜炎後の癒着・線維化、後 全体(より均等な拡大)
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ventricular system'>脳室系</span>のいずれかの部位で髄液流出が障害"] --> B["閉塞部より上流の脳室が選択的に拡大"]
    B --> C["脳室内圧の上昇"]
    C --> D["脳室壁を介した周囲白質への<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mass effect'>圧排</span>"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='periventricular white matter'>脳室周囲白質</span>の菲薄化・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='brain parenchyma'>脳実質</span>の萎縮性変化"]
    C --> F["頭蓋内圧亢進の徴候"]

標本で一般に想定される所見

このような標本では、の高度な拡大と、それにされた周囲の変化が典型像として対応づけられる。ただし、個々の標本の詳細な分布や程度は写真を参照しなければ確認できない。

所見 解釈
の高度な拡大 長期間にわたる脳室内圧上昇を反映する内水頭症の中心的所見
大脳半球の萎縮 拡大した脳室が周囲白質をし続けた結果としての二次的な実質減少
脳幹の相対的な目立ち 脳幹自体が腫大しているというより、周囲の大脳半球が萎縮することで脳幹が相対的に大きく・目立って見える現象を指すことが多い

臨床像と年齢による違い

乳児ではが未閉鎖のため・として現れやすく、進行すれば「」などのを伴う。年長児・成人では頭蓋が拡大できないため頭蓋内圧亢進の徴候(頭痛、嘔吐、、意識障害)が前面に出る。急性のは生命を脅かす緊急病態になりうる。

は、を示しながら髄液圧が正常域にとどまるの特殊な型で、・・尿失禁のいわゆるHakim三徴を呈し、高齢者の可逆的なの原因として重要である。特発性の画像診断では、の指標としてEvans index>0.3が広く用いられ、これに加えて・の開大と・正中部でのを組み合わせたDESHという所見の組が中心的な役割を果たす1。

💡 では「脳室が大きい」だけでは足りない。 高齢者ではに伴う(hydrocephalus ex vacuo)でも脳室は広がるため、Evans index>0.3という数値のうえに、が上下で不均一に変化するというDESHの所見をあわせて見る1。「+のが狭い」という組み合わせが、萎縮との分かれ目になる。

治療

急性・症候性のは神経外科的な減圧を要する緊急性の高い病態であり、によるの後、原因に応じて(VPシャント)や内視鏡下(endoscopic third ventriculostomy:ETV、とくになど限局性閉塞に有効)を検討する。・でも症状進行例ではが主体になる。

ETVの成績と危険性は数字で押さえておくとよい。368件のでは全体成功率は68.5%で、乳幼児、成人の出血後水頭症・慢性水頭症が成績不良の因子であった2。合併症は2,985件の系統的レビューで全体8.5%、永続的2.38%(永続的1.44%、内分泌合併症0.94%)、術中出血3.7%(重症0.6%、損傷0.21%)、中枢神経感染1.81%、1.61%、術後早期死亡0.21%であり、全体としては低合併症の手技と評価されている3。

⚠️ ETVは「シャントが要らなくなる手術」ではあっても、通院終了にはならない。 同レビューでは、開窓部が閉塞してをきたし、術後25か月・60か月という遅い時期に突然死した小児が2例(0.07%)報告されている3。VPシャントの閉塞・感染と同様に、ETV後も長期の経過観察と、頭痛・嘔吐・意識障害が出たときの再評価が要る。

という所見単独で真の内水頭症とを鑑別する視点は内水頭症(の標本)で扱う。水頭症全体の病態生理・頭蓋内圧亢進との関係は頭蓋内圧亢進の病理(浮腫・ヘルニア・水頭症)、臨床的な分類・症候・診断・治療はG3-16:障害(水頭症)を参照する。

まとめ

  • 内水頭症はそのものが拡大する型で、閉塞部位により拡大する脳室の範囲が決まる。
  • 高度なはの・菲薄化を伴いうる。
  • 乳児では、年長児・成人では頭蓋内圧亢進徴候が前面に出る。
  • はHakim三徴を呈するの特殊型で、高齢者の可逆的なの原因として重要である。画像ではEvans index>0.3とDESHが診断の軸になる1。
  • 急性・症候性例は神経外科的緊急性が高く、、ETV、VPシャントを状況に応じて選択する。ETVの成功率は約68.5%2、8.5%・永続的2.38%で、遅発性の開窓部閉塞による突然死も報告があるため長期経過観察を要する3。外水頭症との対比はH2-122A:外水頭症を参照する。

出典

  1. 1.Guidelines for Management of Idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus (Third Edition)(Japanese Society of Normal Pressure Hydrocephalus / Neurologia medico-chirurgica・2021)DESHはiNPHの画像診断で中心的役割を持ち、脳室拡大・シルビウス裂/脳底槽の開大・高位円蓋部/正中部でのくも膜下腔狭小化という3所見の組み合わせで定義され、脳室拡大の指標としてEvans Index>0.3が広く用いられることを確認した。閲覧 2026-08-24
  2. 2.Endoscopic third ventriculostomy: outcome analysis in 368 procedures(Journal of Neurosurgery. Pediatrics・2010)抄録で、1999〜2007年に350例へ施行された内視鏡下第三脳室底開窓術368件の後ろ向きコホートにおいて、水頭症の原因は腫瘍53%・原発性中脳水道狭窄18%・頭蓋内出血13%の順で、中央値47か月の追跡で全体成功率が68.5%(252/368)であったこと、ETVが安全で有効な治療選択肢である一方、乳幼児、成人の出血後水頭症・慢性水頭症が成績不良の因子と考えられたことを確認した閲覧 2026-08-24
  3. 3.Complications of endoscopic third ventriculostomy(Journal of Neurosurgery. Pediatrics・2011)抄録で、内視鏡下第三脳室底開窓術2,985件(2,884例)を集めた系統的レビューにおいて全体合併症率が8.5%、永続的罹病率2.38%(永続的神経合併症1.44%、内分泌合併症0.94%)、術中出血3.7%(重症0.6%、脳底動脈損傷0.21%)、中枢神経感染1.81%、髄液漏1.61%、術後早期死亡0.21%であったこと、開窓部閉塞による急性水頭症で25か月後・60か月後に遅発性の突然死をきたした小児が2例(0.07%)あったことを確認した閲覧 2026-08-24