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Disease Atlas · 神経 · 疾患

脊髄空洞症

Syringomyelia

臓器系
神経
科目
PathologyNeurology
トピック
病理学 C/105:中枢神経系の先天奇形神経内科 G2-08:感覚障害の神経解剖学的基盤神経内科 G3-20:脊椎・脊髄の形成異常
症状
シャルコー関節解離性感覚障害側弯症
原因となる疾患
Chiari奇形

🧠 全体像は、空洞が脊髄の中心を占めることで、たまたまそこを通っている脊髄視床路の交叉線維だけが選択的に断たれるという解剖学的な巡り合わせで理解する疾患である。脊髄視床路は後根から入った痛覚・温度覚の一次ニューロンが脊髄に入ってすぐで対側へ交叉し上行するため、空洞が脊髄中心部で拡大するとちょうどこの交叉部を両側性に圧迫・破壊する。一方、後索を上行する触覚・振動覚・は脊髄の外側寄りを通るため空洞の初期には保たれる——この「痛だけがし、触覚は保たれる」解離性感覚障害が、病変に一致した分節(しばしば「肩から腕にケープをかけたような」分布)に出るのが最大の手がかりになる。原因はChiari I型奇形が最多で、神経症状の原因(多くはChiari I)を取り除くことが治療の第一選択であり、シャントは二次的な選択肢にとどまる。

病態:なぜ「解離性」感覚障害になるのか

は、脊髄実質内(周囲が多い)に脳脊髄液で満たされた空洞が形成・拡大する疾患である。拡大する空洞は、脊髄に入った痛覚・温度覚の一次が二次ニューロンへシナプスした後にを通って対側へ交叉する部位を圧迫する1。後索を通る触覚・振動覚は空洞の外側にあり温存されやすいため、この非対称な障害の組み合わせは解離性感覚障害と呼ばれる。

flowchart TD
    A["脊髄<span class='jp-term jp-term-diagram' title='central canal'>中心管</span>周囲に空洞が形成・拡大"] --> B["脊髄視床路が交叉する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior white commissure'>前白交連</span>を圧迫"]
    B --> C["病変<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spinal segment'>髄節</span>の両側で痛覚・温度覚が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='loss (of neurological function)'>脱失</span>"]
    A --> D["後索(触覚・振動覚・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='position sense (proprioception)'>位置覚</span>)は空洞の外側にあり温存されやすい"]
    C --> E["解離性感覚障害<br>(痛<span class='jp-term jp-term-diagram' title='warmth'>温覚</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='loss (of neurological function)'>脱失</span>+触覚保持)"]
    D --> E
    E --> F["病変<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spinal segment'>髄節</span>に一致した<span class='jp-term jp-term-diagram' title='segmental'>分節性</span>の分布<br>(マント状/宙吊り型)"]

💡 後索がなぜ保たれるかを構造で理解する。 後索は交叉せず脊髄の背側をに上行するため、脊髄「中心部」の空洞からは物理的に距離があり、初期には障害を免れやすい。空洞がさらに拡大し前角・・後索まで及べば、徴候(萎縮など)や、後索障害も加わってくる。

「宙吊り型」という言葉の意味。 空洞が及ぶのみで痛し、それよりでは保たれるため、体幹・上肢に限局した「宙に浮いた」分布の感覚障害になる。このの分布が、末梢神経障害(末梢神経支配領域に一致)や後索障害(病変以下すべてが障害される)とは異なる局在パターンを作る。

原因

Chiari I型奇形(の大孔を越えた下垂)が最多の原因で、Chiari I患者の23〜80%にを合併するとされる1。ほかに外傷後(くも膜下癒着)、髄膜炎後の癒着、、術後瘢痕、特発性がある。Chiari I型奇形では大孔部での脳脊髄液の流れの障害がに関与すると考えられている。

臨床像

  • 温痛覚+触覚保持の感覚障害: 上肢優位の「肩から腕にケープをかけたような」分布を取ることが多い1
  • ⚠️ 無痛性の熱傷・ 痛覚がしているため、熱傷や外傷に気づかず受傷し、慢性の皮膚潰瘍を来しうる1
  • ⚠️ (神経病性): 痛覚により関節の防御的な疼痛反応が働かず、関節の破壊的な変化(腫脹・変形・不安定性)が痛みを伴わずに進行する1
  • 萎縮: 空洞が前角に及ぶと徴候として手の内在筋が萎縮する。
  • 小児例ではの背景にが隠れていることがあり、(左凸カーブ、10歳未満発症、異常を伴う例)ではMRIでの検索対象になる。

診断

MRI(造影あり・なし)が第一選択の画像検査である1。空洞の範囲・程度に加え、原因検索としてChiari I型奇形()の有無、・くも膜癒着の有無を評価する。

治療:原因の解除が第一選択

治療の骨格は「原因を取り除く」ことであり、空洞そのものを直接ドレナージするシャントは第一選択ではない。 Chiari I型奇形が原因であれば、大孔(頭蓋)が主たる治療となる1。手術適応は症候性の患者(の有無を問わず)と、拡大するを伴う無症候例が中心である2

⚠️ 無症候・非進行性の空洞は経過観察でよい。 の証拠がない無症候の患者では保存的な経過観察についてほぼコンセンサスが得られており(国際的な合意94.1%)、Chiari I型奇形+は多くが良好で、非手術管理のまま手術に至らない例が大半である12。一方、5〜8mm程度のを有する無症候例では手術を推奨する意見が優勢(82.4%)であり、空洞の大きさ・拡大傾向が判断の分かれ目になる2

シャント(空洞シャントなど)は、特発性のや、原因治療(大孔など)に反応しない例に限られる二次的な選択肢である1。原因を取り除かずに空洞だけをドレナージしても再発しやすいため、まず原因検索と原因治療を優先する。

まとめ

  • は脊髄中心部に拡大する空洞で、を通る脊髄視床路の交叉線維が選択的に障害されるため、痛+触覚保持の解離性感覚障害を(マント状)に来す。
  • 原因はChiari I型奇形が最多で、外傷後・髄膜炎後の癒着・・特発性もある。
  • 臨床的には無痛性熱傷・萎縮・を来しうる。診断はMRI。
  • 治療は原因の解除(Chiari I型なら大孔)が第一選択で、シャントは特発性例・原因治療無効例に限る二次選択である。
  • 無症候・非進行性の空洞は経過観察でよく、全例が手術を要するわけではない。

出典

  1. 1.Syringomyelia(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)拡大するCSF充満性の空洞(syrinx)が前白交連で交叉する脊髄視床路のニューロンを圧迫し温痛覚脱失+触覚・振動覚保持の分節性解離性感覚障害を来すこと、Chiari I型奇形がCM-1患者の23〜80%にsyringo-hydromyeliaを合併し最頻の原因であること、他に腫瘍・外傷後のくも膜下癒着・くも膜炎・髄膜炎・術後瘢痕が原因となること、感覚障害は上肢優位の「マント状(cape-like)」分布を取ること、疼痛感覚の欠如が損傷・慢性皮膚潰瘍・神経病性関節症(Charcot関節)につながること、MRI(造影あり・なし)が第一選択の画像検査であること、大孔減圧術(頭蓋頸椎減圧)がChiari関連症例の主たる治療でシャントは特発性または他治療に反応しない例に限られること、CM-1+脊髄空洞症の自然経過は多くが良好で非手術管理のまま手術を要するのは一部にとどまることを確認した(Pathophysiology節・Etiology節・History and Physical節・Evaluation節・Treatment/Management節・Prognosis節)。閲覧 2026-08-11
  2. 2.Chiari Malformation Type 1(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)手術(大孔減圧術)は症候性の成人患者(脊髄空洞症の有無を問わず)および拡大する脊髄空洞症を伴う無症候例に適応されること、脊髄空洞症の証拠がない無症候の小児患者では保存的管理(経過観察)についての国際的コンセンサスが94.1%に達する一方、5〜8mmの脊髄空洞症を有する無症候例には82.4%が手術を推奨していること、扁桃下垂5mm以上が診断の目安だが5mm未満でも症候性の報告があり12mm以上でより症状を来しやすいことを確認した。閲覧 2026-08-11