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Disease Atlas · 神経 · 先天性疾患

Chiari奇形

Chiari malformation

臓器系
神経小児
科目
PathologyNeurology
トピック
病理学 C/105:中枢神経系の先天奇形神経内科 G3-20:脊椎・脊髄の形成異常
上位概念
先天奇形(分類の枠組み)
続発疾患
脊髄空洞症水頭症
関連疾患
中脳水道狭窄
症状
頭痛小脳性運動失調嚥下障害吸気性喘鳴

🧠 全体像は「が窮屈になり、の一部がから側へはみ出す」という一つの構造的な破綻を核に持つが、I型とII型はまったく別の臨床像を作る。I型はだけが5mm以上下垂する比較的軽症の型で、成人になってから咳で増悪する後頭部痛で見つかることが多く、の合併が診療の中心になる。II型はそのものが小さく・脳幹・第4脳室まで尾側へ引き込まれる重症型で、にほぼ必発し、水頭症の致死的な脳幹機能障害を伴いうる。から何が、どれだけ、どんな背景で下垂しているか」で型を区別するのが読み方の軸である。

病態と分類

病態 下垂する構造 との関連 強く関連する疾患
Chiari I型 のみ(5mm以上)1 通常伴わない (23〜80%に合併)2
Chiari II型 ・脳幹・第4脳室3 ほぼ必発3 水頭症3

⚠️ I型・II型を分けるのは「が正常か縮小しているか」ではない。 どちらもの発生が狭小・過密になりの下垂を来す点は共通しており、I型でもの成長制限が扁桃圧迫の一因になる1。型を分けるのはから何が下垂するか(のみか、・脳幹・第4脳室までか)」と「を伴うか」の2点である。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior fossa'>後頭蓋窩</span>の発生が狭小・過密になり<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='metencephalon'>後脳</span>の一部が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='foramen magnum'>大後頭孔</span>から下垂"] --> B{"下垂する構造は何か"}
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cerebellar tonsil'>小脳扁桃</span>のみ"| C["Chiari I型"]
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cerebellar vermis'>小脳虫部</span>・脳幹・第4脳室も<br>尾側偏位"| D["Chiari II型"]
    C --> E["咳嗽時後頭部痛・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='syringomyelia'>脊髄空洞症</span>"]
    D --> F["ほぼ必発で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myelomeningocele'>脊髄髄膜瘤</span>を合併"]
    F --> G["水頭症・脳幹機能障害"]

💡 「Arnold-」という古い呼び名は、多くの場合II型を指して使われてきた歴史的な名称である。 現行の教育資料でもI型・II型を包括して「」と呼ぶ運用が一般的であり、本ノートもこれに従う。

Chiari I型:臨床像

I型はのみが下垂し、を通常伴わない、しばしば成人になってから診断される比較的軽症の型である。

  • 後頭部・ 症候性患者の最大88%にみられる代表的症候で、バルサルバ手技(咳嗽・など)で増悪するのが特徴である1
  • その他: 脳神経症状、による解離性感覚障害嚥下障害などを来しうる。
  • の合併が診療上最も重要である。 Chiari I型患者の23〜80%にを合併し、の原因としても最多である2(詳細はの項)。

Chiari II型:臨床像

II型はそのものが小さく・脳幹・第4脳室が尾側へ引き込まれる、より重症の型である。

診断

MRIが第一選択の画像検査で、の程度(I型)またはの大きさと・脳幹の下方偏位の程度(II型)を評価し、・水頭症の有無を確認する。II型では出生前の超音波・MRIでとともに指摘されることが多い。

治療

⚠️ 無症候の画像所見だけで手術を決めない。 は型・症状・の有無で判断する。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Chiari malformation'>Chiari奇形</span>の診断"] --> B{"I型かII型か"}
    B -->|"I型"| C{"症候性か、拡大する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='syringomyelia'>脊髄空洞症</span>を伴うか"}
    C -->|"はい"| D["大孔<span class='jp-term jp-term-diagram' title='decompression surgery'>減圧術</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior fossa'>後頭蓋窩</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='decompression surgery'>減圧術</span>)"]
    C -->|"いいえ(無症候・空洞なし)"| E["経過観察"]
    B -->|"II型"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cystica'>開放性</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='neural tube defect (NTD)'>神経管欠損</span>の修復"]
    F --> G["水頭症に対する髄液シャントなどのCSF流路確保"]
    G --> H{"脳幹機能障害が進行性か"}
    H -->|"はい"| I["早期の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior fossa'>後頭蓋窩</span>減圧を検討"]
  • I型: 症候性患者(の有無を問わず)と、拡大するを伴う無症候例が大孔)の適応となる1の証拠がない無症候の小児では保存的な経過観察についてほぼ国際的コンセンサスが得られている(94.1%)一方、5〜8mm程度のを有する無症候の小児では手術を推奨する意見が優勢である(82.4%)1
  • II型: 治療の軸は)の修復と、水頭症に対する髄液シャントなどのCSF流路確保である。脳幹機能障害が進行性の症候性例では、早期のも検討される3

⚠️ II型で症状が悪化したら、まずシャント機能不全・水頭症の増悪を確認する。 の適応判断より先に、既存のCSF流路確保が破綻していないかを評価する。

まとめ

  • Chiari I型はのみが5mm以上下垂する比較的軽症の型で、咳嗽で増悪する後頭部痛との合併(23〜80%)が診療の中心になる。
  • Chiari II型はそのものが小さく・脳幹・第4脳室まで尾側偏位する重症型で、にほぼ必発し水頭症を高頻度に合併する。
  • 症候性新生児のII型は数日単位で急速に脳幹機能障害が進行しうる(喘鳴・無呼吸・嚥下障害)。
  • 治療はI型では症候性・進行するを伴う例に大孔、II型ではの修復とCSF流路確保(シャント)が軸になる。
  • 無症候の画像所見だけで手術を決めず、型・症状・の有無で適応を判断する。

出典

  1. 1.Chiari Malformation Type 1(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)Chiari I型奇形が小脳扁桃の大後頭孔を越えた5mm以上の下垂で特徴づけられること、後頭蓋窩の発生が狭小・過密(小さな後頭蓋窩、大後頭孔部の混雑)となり後頭蓋窩内での成長制限が圧迫・扁桃下垂を来すこと(Introduction節)、症候性患者の最大88%で後頭部・頸部の疼痛または頭痛を認めバルサルバ手技(咳嗽など)で増悪しやすいこと(History and Physical節)、大孔減圧術の適応が症候性患者(脊髄空洞症の有無を問わず)と拡大する脊髄空洞症を伴う無症候例であること、脊髄空洞症の証拠がない無症候の小児では保存的経過観察についての国際的コンセンサスが94.1%に達する一方、5〜8mmの脊髄空洞症を有する無症候の小児には82.4%が手術を推奨していること(Treatment/Management節)を確認した閲覧 2026-08-11
  2. 2.Chiari Malformation Type 2(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)Chiari II型奇形が小さな後頭蓋窩と小脳虫部・脳幹・第4脳室の尾側偏位で特徴づけられ脊髄髄膜瘤とほぼ必発の関連を持つこと、水頭症・脊髄空洞症を高頻度に合併すること(Introduction節)、症候性新生児では数日の経過で急速に神経学的に悪化し高度な脳幹機能障害(呼吸停止に進行しうる一過性喘鳴、換気ドライブ障害による無呼吸発作、嚥下障害・咽頭反射低下による哺乳不良・誤嚥リスク)を来しうること(History and Physical節)、治療は開放性神経管欠損の修復と水頭症に対する髄液シャントなどのCSF流路確保が中心で、症候性例では早期の減圧術も検討されること(Treatment/Management節)、脊髄髄膜瘤との関連から周産期葉酸補充が発症率を下げうること(Epidemiology節)を確認した閲覧 2026-08-11
  3. 3.Syringomyelia(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)Chiari I型奇形がCM-1患者の23〜80%にsyringo-hydromyeliaを合併し脊髄空洞症の最頻の原因であること、大孔減圧術(頭蓋頸椎減圧)がChiari関連脊髄空洞症の主たる治療でシャントは特発性または他治療に反応しない例に限られることを確認した閲覧 2026-08-11