疾患ノート一覧へ

Disease Atlas · 運動器 · 先天性疾患

Crouzon症候群

Crouzon syndrome

別名
クルーゾン症候群頭蓋顔面異骨症craniofacial dysostosis
臓器系
運動器神経小児
科目
Microscopic Anatomy and Embryology (Embryology)
トピック
発生学 9.5:骨格系:臨床
上位概念
頭蓋縫合早期癒合症
鑑別疾患
Apert症候群Pfeiffer症候群
合併症
水頭症Chiari奇形閉塞性睡眠時無呼吸
関連疾患
後鼻孔閉鎖
症状
眼球突出伝音難聴頭蓋内圧亢進乳頭浮腫曝露性角膜症

🧠 全体像:は「++、そして手足は正常」で覚える。⭐ **FGFR2 関連の3症候群のうち、四肢に手がかりが無い唯一の型である1。💡 **見つけにくいのは、生まれたときにが正常なことがあるから——顕著な・・・相対的なは生後1〜2年かけて現れてくる1。⚠️ 頭の形の問題として扱わない。 進行性水頭症30%、慢性の73%、難聴74%と、頭蓋内圧・・聴覚の問題が前面に出る1。

FGFR2 関連の3症候群の中での位置

手足 第2〜4指の軟部・() ⭐ 通常正常 幅広く内側へ偏位した母指・
の垂直方向の圧潰 大半のCrouzonより強い あり ⭐ Crouzonより強い
脳の ⭐ より多い(の異常・・・辺縁系の奇形) 少ない 記載なし
慢性の 2% ⚠️ 73% 記載なし
68%(C5-C6が多い) 約25%(C2-C3が多い) 記載なし
難聴 80%(主に) 74%(⚠️ 多くは。ただしCrouzonの行だけは・感音性の双方が挙げられている) 92%(主に)
約10% 少ない 少ない
高頻度 ⭐ 少ない(は多い) 一部にみられる

(すべて1による)

⚠️ 「脳のが少ない」と「が73%」は矛盾しない。 ・のような実質の形成異常が少ないという話と、頭蓋の容れ物が小さいためにが押し下げられるという話は別である。⭐ Crouzonでこそを見る。

疫学と遺伝学

は出生100万人あたり16.5と推定されている。この値は、の全症例に占めるの割合(およそ4.8%)に全体のを乗じるによるもので、による推定とよく一致した2。⚠️ 著者ら自身は、が容易に破られる複数の仮定に基づくため一般的な使用は勧められないと述べている2。数値を引くときはこの限定ごと引く。

は FGFR2 で、である1。原因を突き止めた原著は、血縁のない罹患者9例で FGFR2 のBエクソンに変異を同定し、3家系の多世代例で変異と疾患が完全にすること、孤発例4例では非罹患の両親に変異が無いことを示した。⭐ 9例のうち5例では、のシステインが置換されていた3。

💡 システイン置換という共通項が効く。 対をなすはずのシステインが失われると余ったシステインが分子間で架橋を作り、に受容体がして恒常的に活性化する——FGFR2 関連症候群が「機能獲得型」である理由がここにある。が第2・第3間のの2残基にほぼ限局するのと対照的に、の変異は同じ遺伝子内でより分散している。

⚠️ Crouzon症候群に固有の遺伝カウンセリング上の論点

  • ⭐ 関連のなかで、親のモザイク(生殖細胞系列および体細胞)が報告されているのはだけである1。両親の白血球で変異が検出されなくても、次子の再発率は一般集団よりわずかに高いと説明する。
  • 父の高年齢が de novo 変異と関連する1。
  • ⚠️ の変動が大きいので、一見非罹患の家族を「非罹患」と決めない。 軽い難聴や目立つ眼くらいしか所見が無く、本人が気づいていないことがある1。

黒色表皮腫を伴うCrouzon症候群は別の遺伝子

⚠️ FGFR2 ではなく FGFR3 の p.Ala391Glu が原因で、これは1つの決まった変異である1。皮膚のひだの部位に色素沈着()が生じ、から出ることも後から現れることもある。難聴は14%と通常の(74%)より少なく報告され、の報告がある1。

⭐ 検査の組み立てが変わる。 があれば FGFR3 p.Ala391Glu のへ、無ければ FGFR2 の解析へ進む。

頭蓋顔面の所見

  • を大半で認めるが、⚠️ 頭形は関与する縫合と癒合の時期で決まり、正常な頭形からまで幅がある1。「Crouzonの頭形」という決まった形は無い。
  • ⭐ を伴わない乳児では、出生時のが正常なことがある。 顕著な・・・凸型の・相対的なが生後1〜2年で現れてくる1。⚠️ に所見が無いことは否定の根拠にならない。
  • は同じ家系内でも大きく変わりうる1。
  • が多く、は少ない1。⭐ でが高頻度なのと対照的で、口蓋は両者を分ける所見の一つになる。
  • を中心とする難聴が74%1。
  • 線状の皮膚のしわ・深い皺・頭皮の余剰皮膚が、p.Ser267Pro と p.Val274_Glu275delinsLeu の症例で報告されている1。

四肢の所見

⭐ 通常正常である。 ただし非罹患の家族と比べたの短縮がX線で指摘されている1。

💡 「手足が正常」は所見が無いという意味ではなく、鑑別を進める積極的な情報である。 ならApert、幅広く内側へ偏位した母指・ならPfeiffer、目立つ異常が無ければCrouzonを考える。

頭蓋顔面以外の所見

所見 内容1
気道 無症状から(・・気管の異常)まで幅がある
進行性水頭症 ⚠️ 30%。しばしばを伴う
慢性の() ⚠️ 73%(では2%)
約25%。C2-C3が最も多い
少ない(では約10%)
知的発達 大半は正常知能。⚠️ 水頭症と頭蓋内圧亢進のある例では発達遅滞のリスクがある

⚠️ はの素因になり、はそれ自体が頭蓋内圧亢進に寄与する(の項)。気道・頭蓋内圧・視機能は切り離して扱えない。

成人期の転帰

成人31例を対象とした研究では、学歴が低く、配偶関係をもつ割合と子の数が少なかった。⭐ 一方で住居形態に差はなく、も対照と同様だった。 の使用が多くが多かったが、人生への肯定的態度は対照と同様で、が大きかった1。

⚠️ 「予後不良」とまとめない。 差が出た領域と出なかった領域を分けて記憶する。

管理

flowchart TD
    A["診断・多職種の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='craniofacial team'>頭蓋顔面チーム</span>へ"] --> B["最初の麻酔時に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='operative airway evaluation'>観血的気道評価</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tracheal cartilaginous sleeve'>気管軟骨スリーブ</span>は突然死のリスク)"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='multisuture'>多縫合性</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Craniosynostosis'>頭蓋縫合早期癒合症</span>は<br>原則として生後1年以内に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='surgical repair'>外科的修復</span>"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='syndromic'>症候群性</span>では<span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior vault expansion'>後頭蓋の拡大</span>を先に行う"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fronto-orbital advancement'>前頭眼窩前進術</span>は可能な限り遅らせる<br>(早期に行うと再発率が高い)"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='midface advancement'>中顔面前進術</span>を小児期〜思春期に<br>気道閉塞があれば早期に検討"]
    A --> G["並行して:頭蓋内圧・気道・視機能・聴覚・発達の監視"]
  • ⭐ のは原則として生後1年以内に外科的に修復する1。
  • ⚠️ では、従来の前方(前頭眼窩)前進術を早期に行うと再発率が高い。 そのため可能な限り遅らせ、代わりにを早期に行って前方の変形の進行を抑える1。💡 「まず後ろを広げ、前は後から」という順序がに固有の考え方である。
  • は小児期〜思春期に行うが、気道閉塞の治療として早期に行いうる1。
  • ⚠️ 睡眠時無呼吸に対するCPAP/BiPAPの長期使用は可能な限り避ける。 マスクの圧がを圧迫してを悪化させ、かえってを増やしうる1。
  • ⚠️ は突然死のリスクがあるため、最初の麻酔の機会に医がを行う1。
  • でが不十分なら点眼による角膜の保護を早期に始め、やのおそれがあればを行う1。

1

項目 間隔
・頭蓋内圧亢進徴候の臨床評価 生後1年は少なくとも3か月ごと
を見る眼科的診察 少なくとも毎年(気になる症状があれば随時)
視機能(視神経・・) 少なくとも毎年
少なくとも毎年
睡眠時無呼吸の臨床評価 生後1年は3か月ごと、その後毎年
発達評価 生後1年は3か月ごと、その後毎年
言語評価 生後18か月ごろから、その後毎年
の画像評価 3〜4歳で考慮
最初の麻酔時

避けるもの1

  • ⚠️ の異常がある場合、でを来しうる。 を要することがあり、頭頸部外傷のリスクがある競技には制限がかかりうる。
  • のある人は、のリスクのある活動でを要しうる。

まとめ

  • は FGFR2 の変異によるので、・・相対的を特徴とし、⭐ 手足は通常正常1。
  • は出生100万人あたり16.5と推定され、全体のおよそ4.8%を占める。⚠️ ただしこれは仮定を重ねたによる推定である2。
  • 原著は FGFR2 Bエクソンの変異を9例で同定し、うち5例ではのシステインが置換されていた3。
  • ⚠️ 出生時にが正常なことがあり、所見は生後1〜2年で現れてくる。家系内でもの変動が大きい1。
  • ⭐ 関連のなかで、親のモザイクが報告されているのはだけ。父の高年齢は de novo 変異と関連する1。
  • ⚠️ を伴う型は FGFR3 の p.Ala391Glu が原因で、難聴は14%と少なくの報告がある1。
  • 頻度:難聴74%(主に)、進行性水頭症30%、慢性の73%(Apertは2%)、約25%(C2-C3)、は少ない1。
  • 管理は生後1年以内の頭蓋形成が原則。⭐ ではを先に行い、は遅らせる。CPAP/BiPAPの長期使用はを悪化させるため避ける。最初の麻酔時にを行う1。

出典

  1. 1.FGFR Craniosynostosis Syndromes Overview(GeneReviews (University of Washington, Seattle / NCBI Bookshelf)・2020)Crouzon症候群について、大半で頭蓋縫合早期癒合症を認め頭形は関与する縫合と癒合の時期で決まり正常な頭形からクローバー葉状頭蓋まで幅があること、頭蓋縫合早期癒合症を伴わない乳児では出生時の顔貌が正常なことがあり顕著な眼球突出・外斜視・中顔面後退・凸型の鼻背・相対的な下顎前突が生後1〜2年で現れてくること、顔貌が同じ家系内でも大きく変わりうること、高口蓋が多く口蓋裂は少ないこと、難聴が74%にみられ多くは伝音性であること(本文は "Hearing loss occurs in 74% and is most often conductive." とする一方、Table 1のCrouzon症候群の行はCrouzon系の2型でのみ "CHL & SNHL" と伝音性・感音性の双方を挙げている)、気道は無症状から後鼻孔狭窄・舌根部閉塞・気管の異常を含む多層性閉塞まで幅があること、四肢は通常正常だが非罹患の家族と比べた指節骨の短縮がX線で指摘されていること、脳の構造異常は少ないがChiari I奇形と進行性水頭症(30%)が扁桃ヘルニアを伴って報告されていること、大半は正常知能だが水頭症と頭蓋内圧亢進のある例では発達遅滞のリスクがあること、成人31例の研究で学歴が低く配偶関係をもつ割合と子の数が少なかった一方で住居形態に差はなく主観的健康度も対照と同様で抗てんかん薬の使用が多く抑うつ気分が多かったが人生への肯定的態度は対照と同様であったこと、慢性の扁桃ヘルニアがCrouzon症候群の73%に報告されApert症候群の2%と際立って対照的であること、約25%に椎体癒合がありC2-C3が最も多いこと、心奇形はApert症候群の約10%に対しCrouzonとPfeifferでは少ないこと、p.Ser267Pro と p.Val274_Glu275delinsLeu の症例で線状の皮膚のしわ・深い皺・頭皮の余剰皮膚が報告されたこと、黒色表皮腫を伴うCrouzon症候群の原因が FGFR3 の p.Ala391Glu であり同型では難聴が14%と報告され黒色表皮腫が新生児期から出現することも後に現れることもあり歯原性腫瘍の報告があること、Crouzon症候群がFGFR関連頭蓋縫合早期癒合症のなかで唯一、親の(生殖細胞系列および体細胞の)モザイクが報告されている症候群であること、父の高年齢が de novo 変異と関連すること、表現度の変動が大きいため一見非罹患の家族も慎重に評価する必要があること、Crouzon・Apert・Pfeiffer症候群では出生後も縫合の癒合が進行しうること、治療として多縫合性の頭蓋縫合早期癒合症は原則として生後1年以内に外科的に修復すること、症候群性では早期の前方(前頭眼窩)前進術は再発率が高いため可能な限り遅らせ、代わりに後頭蓋の拡大を早期に行うこと、中顔面前進術は小児期〜思春期に行い気道閉塞に対しては早期に行いうること、睡眠時無呼吸に対するCPAP/BiPAPの長期使用は中顔面を圧迫して後退を悪化させるため可能な限り避けること、気管軟骨スリーブは突然死のリスクがあるため最初の麻酔時に耳鼻咽喉科医による観血的気道評価を行うこと、眼球突出には点眼による角膜の保護と場合により瞼板縫合を行うこと、サーベイランスとして頭囲と頭蓋内圧亢進徴候の評価を生後1年は少なくとも3か月ごと、乳頭浮腫を見る眼科的診察を少なくとも毎年、頸椎の画像評価を3〜4歳で考慮、聴力評価と視機能評価を少なくとも毎年、睡眠時無呼吸の臨床評価を生後1年は3か月ごとその後毎年、言語評価を生後18か月ごろからその後毎年、発達評価を生後1年は3か月ごとその後毎年行うこと、頸椎の異常がある場合は過伸展による脊髄損傷のリスクがあり気管支鏡下挿管やスポーツ制限を要しうること、眼球突出のある人は眼外傷のリスクのある活動で保護眼鏡を要しうることを確認した。あわせて対比のため、Apert症候群の難聴が80%で主に伝音性であること、頸椎・胸椎の癒合が68%(通常C5-C6)にみられること、脳の構造異常(脳梁の異常・透明中隔欠損・後頭蓋窩くも膜嚢胞・辺縁系の奇形)がApert症候群でより多いこと、Pfeiffer症候群の難聴が92%で主に伝音性であること、Pfeiffer症候群の中顔面の垂直方向の圧潰がCrouzon症候群より強いこと、Pfeiffer症候群では幅広く内側へ偏位した母指・母趾がみられ一部に口蓋裂があることも同章で確認した。なお本章の2020年4月30日改訂版には、脳の構造異常の頻度についてPfeiffer症候群をApertとCrouzonの中間と位置づける記述は見当たらなかった。2020年4月30日改訂。閲覧 2026-09-04
  2. 2.Birth prevalence studies of the Crouzon syndrome: comparison of direct and indirect methods(Clinical Genetics・1992)頭蓋縫合早期癒合症の全症例を対象とした大規模な臨床調査に占めるCrouzon症候群の割合がおよそ4.8%であること、この割合に頭蓋縫合早期癒合症全体の既知の出生有病率を乗じる間接法を用い、加重平均による推定で出生100万人あたり16.5という出生有病率が得られたこと、間接法の結果が直接法によるものとよく一致したこと、ただし間接法は容易に破られる複数の仮定に基づくため特別な状況を除いて一般的な使用は勧められないと著者らが述べていることを抄録で確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得。閲覧 2026-09-04
  3. 3.Mutations in the fibroblast growth factor receptor 2 gene cause Crouzon syndrome(Nature Genetics・1994)Crouzon症候群が常染色体顕性遺伝で頭蓋縫合の早期癒合を来す疾患であり10q25-q26にマップされること、血縁のない罹患者9例で FGFR2 のBエクソンにSSCPの変動を認めたこと、血縁のない3家系の多世代にわたる家族例でSSCPの変動と疾患が完全に共分離したこと、孤発例4例では非罹患の両親にSSCPの変動を認めなかったこと、直接塩基配列決定により孤発例・家族例のすべて(9例)でBエクソンの変異が同定され、うち5例では免疫グロブリン様ドメインのシステインが置換されていたことを抄録で確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得。閲覧 2026-09-04