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Disease Atlas · 運動器 · 先天性疾患

Pfeiffer症候群

Pfeiffer syndrome

別名
ファイファー症候群尖頭合指症V型acrocephalosyndactyly type V
臓器系
運動器神経小児
科目
Microscopic Anatomy and Embryology (Embryology)
トピック
発生学 9.5:骨格系:臨床
上位概念
頭蓋縫合早期癒合症
鑑別疾患
Apert症候群Crouzon症候群
合併症
水頭症Chiari奇形閉塞性睡眠時無呼吸中枢性睡眠時無呼吸・肥満低換気症候群
関連疾患
後鼻孔閉鎖
症状
眼球突出伝音難聴頭蓋内圧亢進発作

🧠 全体像:は「+幅広く内側へ偏位した母指・」で覚える。⭐ 母指・を見る——のでも、の正常な手足でもない、第三の型である1。⚠️ との重なりは非常に大きく、同じをもつ人がPfeifferともCrouzonとも診断されてきた1。💡 臨床の重心は「1型か、2型・3型か」にある——1型は正常知能で概ね良好、2型・3型は重度の障害と早期死亡を伴い、いずれも孤発例として報告されてきた2。

FGFR 関連の3症候群の中での位置

手足 第2〜4指の軟部・() 通常正常 ⭐ 幅広く内側へ偏位した母指・(の程度は様々)
の垂直方向の圧潰 大半のCrouzonより強い あり ⭐ Crouzonより強い
難聴 80%(主に) 74% ⚠️ 92%(主に)
高頻度 少ない 一部にみられる
上肢の ⭐ が最も多い — 一部にみられる(とくに p.Trp290Cys)

(1による)

⚠️ 難聴の頻度はが3つのなかで最も高い(92%)。 外耳道の狭窄・閉鎖に伴うことがある1。⭐ 言語を知的障害と読み替える前に聴力を確認するという原則は、この群のなかでもPfeifferでとりわけ重い。

臨床亜型(Cohen分類)

1993年の総説が提唱した3亜型である2。

亜型 頭蓋 特徴 転帰
1型 なし 古典的な ⭐ 正常知能・概ね良好。一部の家系で遺伝を示す
2型 ⚠️ の手足の所見+肘の ⚠️ 経過不良・早期死亡。報告例はすべて孤発
3型 を欠く 2型に類似。高度のと著明に短い ⚠️ 経過不良・早期死亡。報告例はすべて孤発

⚠️ 著者自身が「この3亜型は別個の疾患単位としての地位をもたない」と述べている2。それでも診断上・予後上の意味は大きいとして提唱された分類である。⭐ 「別の病気」ではなく「重症度と遺伝様式の目安」として使う。

💡 3型の認識がとくに重要である理由。 という目立つ手掛かりを欠き、高度のと各種の内臓奇形が前面に出るため、と診断されないまま別の疾患と扱われうる2。

⚠️ 1型でも「遺伝性、2型・3型は孤発」と機械的に対応づけない。 1993年の総説の時点で記録されていたのは7家系(3世代3家系・2世代4家系)と少なくとも十数例の孤発例であり、ではのが特徴的で、の変動は主にの有無と程度に及んでいた2。

遺伝学

遺伝子 割合1
FGFR2 ⭐ 95%超
FGFR1 5%未満
FGFR3(p.Ala391Glu) 1例の報告

いずれもである。遺伝学的検査は**まず FGFR2 の**を行い、陰性なら欠失・重複解析へ進む1。

  • ⚠️ FGFR1 によるは過少診断されている可能性がある。 重症度の幅が大きく、頭蓋顔面の症状を欠く人もいる1。
  • 軽症の表現型では、罹患した親からの遺伝がしばしばみられる1。
  • 父の高年齢が de novo 変異と関連する1。
  • ⭐ 同胞の再発リスクの説明が症候群で変わる。 のが両親の白血球で検出されない場合、親のの可能性から同胞のリスクは一般集団よりわずかに高くなる。両親が未検査で臨床的に非罹患の場合も、の低下・の変動、または親のの可能性から同胞は依然リスクが高いと想定されるが、⭐ このリスクはApert・Beare-Stevenson cutis gyrata・bent bone dysplasia・では低いとみられている1。⚠️ は親の(生殖細胞系列および体細胞の)モザイクが報告されている唯一の関連症候群であり、かつの変動が大きいため一見非罹患の家族も慎重に評価すべきとされる——説明の組み立てがPfeifferとは逆になる1。
  • 同じをもつ家族内では表現型の類型は概ね一定だが、まれにPfeifferとJackson-Weiss・Crouzonの所見が家族内で混在する家系が報告されている1。

頭蓋顔面の所見

  • 大半でのを認めるが、⚠️ 頭形は正常な頭形からまで幅があり、を伴わない症例も記載されている1。
  • は中等度〜重度で、⭐ 垂直方向の圧潰はより強い1。
  • ⚠️ 眼窩が浅い重症例では眼球が著しく突出し、のリスクがある1。の管理が整容ではなく眼球そのものを守る処置になる。
  • 難聴92%(多くは)。⭐ 外耳道の狭窄・閉鎖に伴うことがある1。
  • 一部にがある1。

四肢の所見

⭐ 母指とが幅広く、内側へ偏位する。 の程度は様々である1。

  • が一部にみられ、⚠️ とくに FGFR2 p.Trp290Cys で多い1。
  • 膝のも報告されている1。
  • ⚠️ 足の所見のみが唯一のであった家系がある1。⭐ 頭蓋の所見が無くても、の形で気づかれることがある。

神経学的所見と気道

所見 内容1
知能 正常から重度知的障害まで幅がある
けいれん・早期死亡 ⚠️ リスクの増加が報告されている
水頭症 約28%が外科的介入を要する
⚠️ の約50%にみられる
気道 ・閉鎖、を含むの異常、の閉塞による

⚠️ **FGFR2 p.Trp290Cys の小児はとくにを来しやすく、報告された生存例の100%が一定期間の睡眠時のを要した1。💡 **だけを想定して気道を評価すると見落とす。 があればの評価のため頭部MRIを考慮する。

⚠️ 遺伝型で手術方針を変えるという考え方

⭐ FGFR2 W290C は「最も転帰が悪い」として知られてきた。 死亡率が高く、報告された生存例の全例で重度のが記載されていた3。

これがバリアントによる不可避の帰結なのか、で変えられるのかを問うた単施設の報告がある。W290C をもつ3例はいずれも早期の頭蓋・脳の不均衡に基づく、同施設の他の例より積極的な手術方針を要した。3例とも生存し、神経は正常であった3。

⚠️ これは単施設3例の後ろ向き症例集積である。 対照群もも無く、著者らのも「大きく改善しうる」という可能性の提示にとどまる3。⭐ それでもな意味は大きい——「このだから予後不良」という記述が、介入の時期と強度をとして抱えている可能性を示した点である。GeneReviewsも、重症例では頭蓋・脳の不均衡を防ぐと睡眠時無呼吸への介入が認知の転帰を改善しうると記している1。

管理

管理の骨格は・と共通で、関連として同じ枠組みで行う(術式の順序との間隔はの項)。で重みが変わるのは次の点である。

flowchart TD
    A["出生・診断"] --> B["多層性の気道閉塞の評価<br>最初の麻酔時に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='operative airway evaluation'>観血的気道評価</span>"]
    A --> C["眼窩の深さと<span class='jp-term jp-term-diagram' title='exophthalmos'>眼球突出</span>の程度を評価<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='globe subluxation'>眼球亜脱臼</span>のリスクなら早期に保護"]
    A --> D["重症例では頭蓋・脳の不均衡に対する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='early surgery'>早期手術</span>"]
    D --> E["睡眠時無呼吸への介入<br>(閉塞性だけでなく中枢性も評価)"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='central apnea'>中枢性無呼吸</span>があれば<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Chiari I malformation'>Chiari I奇形</span>の評価"]
    A --> G["難聴92%:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hearing assessment'>聴力評価</span>と外耳道の評価"]
  • ⚠️ の診断がありうる。 がやのの診断にしばしば用いられ、・水頭症・を検出しうる1。
  • の・付属物やprune bellyの報告がある1。

まとめ

  • は幅広く内側へ偏位した母指・を手掛かりとする、FGFR2(95%超)・FGFR1(5%未満)によるの1。
  • ⚠️ と表現型が大きく重なり、同じでどちらとも診断されてきた1。
  • Cohen分類の1型は正常知能で概ね良好、2型は+肘の、3型はを欠き高度のと著明に短いを示す。2型・3型は重度の障害・早期死亡を伴い報告例はすべて孤発だった2。⚠️ 著者自身は3亜型を別個の疾患単位ではないとしている。
  • 難聴92%(3症候群のなかで最多、外耳道の狭窄・閉鎖に伴うことがある)、水頭症の外科的介入約28%、の約50%に1。
  • ⚠️ 眼窩が浅い重症例ではのリスクがある1。
  • ⚠️ FGFR2 p.Trp290Cys はとに結びつき、報告された生存例の100%が睡眠時のを要した1。
  • ⭐ その W290C について、早期の積極的な手術方針をとった単施設3例が全例生存し神経も正常であったという報告がある。⚠️ 対照のない3例の後ろ向き集積であることを添えて覚える3。
  • ⭐ 両親が未検査で臨床的に非罹患のときの同胞のリスクは、Apert・Beare-Stevenson・bent bone dysplasia・では低いとみられる。親のモザイクが報告されているとは説明の組み立てが異なる1。

出典

  1. 1.FGFR Craniosynostosis Syndromes Overview(GeneReviews (University of Washington, Seattle / NCBI Bookshelf)・2020)Pfeiffer症候群がCrouzon症候群と表現型の重なりが大きく、同じ病的バリアントをもつ人がPfeifferともCrouzonとも診断されてきた一方で、Pfeiffer症候群でのみ報告されているFGFRの病的バリアントもあること、大半で多縫合性の頭蓋縫合早期癒合症を認め頭形は関与する縫合と癒合の時期で決まり正常な頭形からクローバー葉状頭蓋まで幅があり頭蓋縫合早期癒合症を伴わない症例も記載されていること、中顔面後退が中等度〜重度でCrouzon症候群より垂直方向の圧潰が強いこと、眼窩が浅い重症例では眼球が著しく突出し眼球亜脱臼のリスクがあること、難聴が92%にみられ多くは伝音性で外耳道の狭窄・閉鎖に伴うことがあること、一部に口蓋裂があること、後鼻孔狭窄・閉鎖、気管軟骨スリーブを含む喉頭気管の異常、舌根部の閉塞といった多層性の気道閉塞を来しうること、母指と母趾が幅広く内側へ偏位し短指症の程度は様々であること、橈骨上腕骨癒合が一部(とくに FGFR2 p.Trp290Cys)にみられ膝の強直も報告されていること、足の所見のみが唯一の臨床所見であった家系があること、知能は正常から重度知的障害まで幅がありけいれんと早期死亡のリスクの増加が報告されていること、重症例では頭蓋・脳の不均衡を防ぐ早期手術と睡眠時無呼吸への介入が認知の転帰を改善しうること、約28%が水頭症に対する外科的介入を要すること、クローバー葉状頭蓋の約50%にChiari I奇形がみられること、仙尾部の外反・付属物やprune bellyの報告があること、原因遺伝子の内訳が FGFR2 が95%超・FGFR1 が5%未満・FGFR3 p.Ala391Glu が1例で常染色体顕性遺伝であること、FGFR1 によるPfeiffer症候群は重症度の幅が大きく頭蓋顔面の症状を欠く人もいるため過少診断されている可能性があること、遺伝学的検査はまず FGFR2 の塩基配列解析を行い陰性なら欠失・重複解析へ進むこと、FGFR2 p.Trp290Cys の小児はとくに中枢性睡眠時無呼吸を来しやすく報告された生存例の100%が一定期間の睡眠時の人工換気を要したこと、軽症の表現型では罹患した親からの遺伝がしばしばみられること、両親が未検査で臨床的に非罹患である場合の同胞のリスク(浸透率低下・表現度の変動、または親の生殖細胞系列モザイクの可能性による)がApert・Beare-Stevenson cutis gyrata・bent bone dysplasia・Pfeiffer症候群では低いとみられること、橈骨上腕骨癒合がApert症候群で最も多くPfeiffer症候群では時にみられること、同じ病的バリアントをもつ家族内では表現型の類型は概ね一定だがまれに家族内でPfeifferとJackson-Weiss・Crouzonの所見が混在する家系が報告されていること、父の高年齢が de novo 変異と関連すること、胎児期のMRIがPfeiffer症候群やApert症候群の疑い例の診断にしばしば用いられ脳梁欠損・水頭症・クローバー葉状頭蓋を検出しうることを確認した。あわせて対比のため、Apert症候群では第2〜4指を中心とする軟部・骨性の合指症(ミトン手)と難聴80%(主に伝音性)と口蓋裂が高頻度であること、橈骨上腕骨癒合がApert症候群で最も多いこと、Crouzon症候群では四肢が通常正常で難聴74%・口蓋裂は少ないこと、Apert症候群とPfeiffer症候群の中顔面の垂直方向の圧潰が大半のCrouzon症候群より強いことも同章で確認した。2020年4月30日改訂。閲覧 2026-09-04
  2. 2.Pfeiffer syndrome update, clinical subtypes, and guidelines for differential diagnosis(American Journal of Medical Genetics・1993)1993年時点で7家系(3世代にわたるもの3家系、2世代にわたるもの4家系)と少なくとも十数例の孤発例が記録されていたこと、7つの家族例では完全浸透の常染色体顕性遺伝が特徴的であり、表現度の変動は主として合指症の有無とその程度に及んでいたこと、古典的なPfeiffer症候群を1型とすること、2型がクローバー葉状頭蓋にPfeiffer症候群の手足の所見と肘の強直を伴うもので経過が不良で早期に死亡し報告例はすべて孤発例であったこと、3型が2型に類似するがクローバー葉状頭蓋を欠くもので眼球突出が高度で前頭蓋底が著明に短く同じく経過不良で早期死亡の傾向があり報告例はすべて孤発例であったこと、著者が3つの臨床亜型は別個の疾患単位としての地位をもたないとしつつ診断上・予後上の意味は重要だと述べていること、1型は正常知能と概ね良好な転帰を伴い一部の家系では顕性遺伝を示すのに対し2型・3型は一般に重度の神経学的障害・予後不良・早期死亡・孤発発生を示すこと、3型の認識がとくに重要でクローバー葉状頭蓋を欠く高度の眼球突出と各種の内臓奇形がPfeiffer症候群の診断の見落としにつながりうることを抄録で確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得。閲覧 2026-09-04
  3. 3.A genotype-specific surgical approach for patients with Pfeiffer syndrome due to W290C pathogenic variant in FGFR2 is associated with improved developmental outcomes and reduced mortality(Genetics in Medicine(American College of Medical Genetics and Genomics)・2019)FGFR2 関連Pfeiffer症候群のうち W290C 病的バリアントをもつ小児は臨床転帰が最も不良と報告されており死亡率が高く生存例の全例で重度の神経認知障害が報告されてきたこと、著者らはこれがバリアント自体による不可避の帰結なのか遺伝型に応じた治療方針で改善しうるのかは不明であるとしたこと、自施設の W290C をもつ3例について診療録の後ろ向き調査を行ったこと、同施設の他のPfeiffer症候群例と異なりこの3例はいずれも早期の頭蓋・脳の不均衡に基づく同様のより積極的な手術方針を要したこと、既報の W290C 症例と対照的に3例とも生存し神経認知機能が正常であること、したがって W290C をもつ小児に対する個別化された積極的な手術方針は臨床転帰を大きく改善しうると著者らが結論したことを抄録で確認した。本報告は単施設3例の後ろ向き症例集積である。抄録のみを閲覧しており全文は未取得。閲覧 2026-09-04