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Disease Atlas · 耳鼻咽喉科 · 先天性疾患

後鼻孔閉鎖

Choanal atresia

別名
後鼻孔閉鎖症後鼻孔閉塞
臓器系
耳鼻咽喉科小児呼吸器
科目
Otorhinolaryngology
トピック
耳鼻咽喉科 25:鼻の機能、鼻・副鼻腔の解剖と生理耳鼻咽喉科 33:内視鏡下鼻内手術の拡大応用
鑑別疾患
梨状口狭窄
関連疾患
CHARGE症候群Crouzon症候群Pfeiffer症候群Treacher Collins症候群
症状
チアノーゼ鼻汁呼吸困難

🧠 全体像:同じ奇形が、両側ならの窒息で、片側なら学童の「片方だけ鼻が詰まる」で現れる。 新生児は時を除いてに依存しているため、両側のが塞がっているとができない1。⭐ 教科書的な所見は——泣くと口呼吸になって色がよくなり、泣きやむとまた紫になる。片側例はで呼吸できてしまうので、患側のだけが残り、何年も「」として扱われる。⚠️ そして本症を見つけたときの本当の仕事は、約半数に潜んでいる症候群、とりわけを探しに行くことである1。

なぜ新生児だけが窒息するのか

は鼻腔の後端で上咽頭へ開く出口である。ここが膜性・骨性、あるいは両者の混在で閉鎖する。

新生児は時を除いてに依存する(obligate nasal breather)。吸気のたびに舌を後方へ引き、上咽頭を陰圧で密閉する動きをするため、鼻からの気流が無いと口からも空気が入らない1。

flowchart TD
    A["両側<span class='jp-term jp-term-diagram' title='choanal atresia'>後鼻孔閉鎖</span>"] --> B["安静時は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nasal breathing'>鼻呼吸</span>に依存<br>鼻からの気流がゼロ"]
    B --> C["吸気時に舌が後方へ引かれ<br>上咽頭が陰圧で密閉される"]
    C --> D["口からも空気が入らない<br>=<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tidal breathing'>安静呼吸</span>で窒息・呼吸窮迫"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='crying (infant cry, clinical sign)'>啼泣</span>すると口が開き<br>口呼吸に切り替わる"]
    E --> F["チアノーゼが消える"]
    F --> G["泣きやむと再びチアノーゼ<br>=<span class='jp-term jp-term-diagram' title='paradoxical cyanosis'>奇異性チアノーゼ</span>"]
    G --> D

💡 「泣くと良くなる」は本症をほぼ名指しする。 通常の新生児の(肺・心・敗血症)は、で改善しない。と安静で色が往復する所見は、閉塞が鼻腔から上咽頭までに限局していることを示している。

発生——4つの説

は胎生3〜7週にがすることで作られる。閉鎖の成り立ちには次の4説がある1。

説 内容
の遺残 3〜7週の破裂が不完全に終わる(経路の異常が関与)
(Hochstetter膜)の遺残 6週以降もこの膜が破れない
中胚葉の 4〜11週にの吸収が起こらない
の移動異常 4週の移動が誤った方向へ進み異常な骨を作る

疫学と病型

項目 値
出生5,000〜8,000に1人(カリフォルニアの集計では1万出生あたり0.82)1
側性 従来は片側60%・両側40%とされる。⚠️ 近年のデータは1対1に近いことを示唆する1
性差 無い。歴史的にいわれた女児2対1の優位は否定されている1
症候群の併存 約50%1

背後にある症候群と薬剤

約半数に症候群が併存する。 最多は(CHD7)で、ほかに(FGFR2)、DiGeorge 症候群(22q11.2 欠失)、(TCOF1)、(FGFR1/FGFR2)、(は明らかでない)が挙げられる1。

⚠️ の頭字語の「A」はだが、CHARGE側から見れば45%にすぎない。 が無いことは CHARGE の除外根拠にならない(の項を参照)。⭐ 向きが逆になっていることに注意する——を見つけたら CHARGE を疑うが、CHARGE を疑うときにを必須条件にしてはいけない。

薬剤性の関連もある。 はいずれも胎盤を通過し、()とそのであるは第1三半期の(・・・など)と関連する。このため第1三半期はを用い、が終わってから肝毒性を避けるためへ切り替えるという運用になっている2。

臨床像——両側と片側は別の病気のように見える

両側 片側
時期 出生直後 小児期〜成人期に持ち越す
主症状 呼吸窮迫、、周期的チアノーゼ 患側の1
新生児の気道緊急
落とし穴 見逃せば窒息 ⚠️ 片側性の慢性として何年も見逃される1

💡 「片側だけの、いつまでも治らない」は年齢を問わずを思い出す合図である。両側性のはありふれているが、片側性は構造の問題を示唆する。

診断

  • が診断のgold standardである1。
  • が第一の画像検査で、骨性成分と軟部組織成分の区別ができ、併存奇形も同時に評価できる1。
  • は頭蓋底欠損が疑われるときに用いる1。
  • (鼻孔の下に鏡を当てて曇るかを見る)はベッドサイドの初期評価に役立つ1。

IPOG の合意推奨もまたはとを診断に推奨している3。

⚠️ 鑑別は「新生児の鼻が通らない」を作る他のである。 、、、、、、、腫瘍、、血腫1。⭐ とくには前方の狭窄で、症状がとほぼ同じになるため画像で分ける。

治療

両側例はまず気道である。

flowchart TD
    A["出生直後の呼吸窮迫<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='crying (infant cry, clinical sign)'>啼泣</span>で改善し安静で悪化"] --> B["両側<span class='jp-term jp-term-diagram' title='choanal atresia'>後鼻孔閉鎖</span>を疑う"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oral airway'>口腔エアウェイ</span>、または<br>先端を切った<span class='jp-term jp-term-diagram' title='McGovern nipple'>McGovern乳首</span>を装着"]
    C --> D{"気道は安定したか"}
    D -->|"安定しない"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endotracheal intubation'>気管挿管</span>で確実な気道確保"]
    D -->|"安定した"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nasal endoscope'>鼻内視鏡</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography'>CT</span>で確定<br>併存奇形を探す"]
    E --> F
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endoscopic endonasal approach'>経鼻内視鏡</span>的<span class='jp-term jp-term-diagram' title='choana'>後鼻孔</span>開放術"]
  • 急性期の気道確保:、または先端を切った McGovern 乳首(哺乳瓶の乳首の先を切り落とし、口を開かせたまま口呼吸の通路にする)。安定しなければ1。
  • :がほぼ全例で標準治療になっている。に操作でき、合併症が少なく成績がよい1。IPOG もを推奨術式としている3。
  • 手術時期:可能な限り生後6か月以降まで延期するが、⚠️ 重症の両側例ではより早い介入を要しうる1。片側例は緊急性が低く、⭐ 解剖が成人に近づく学童期まで待ちうるとされる1。IPOGの合意推奨は片側例について「可能な限り生後6か月以降まで延期する」としている3。
  • と:強い裏づけを欠き、なお議論が続いている1。に対するの長期成績も不確実である1。

💡 なぜ片側は待てるのか。 片側ならで呼吸ができるので手術は緊急でない。一方、1歳未満での初回手術はの危険因子でもあるため、待てるなら待つほうがを減らす方向に働く1。

合併症と経過観察

が20〜30%に起こり、を要する。 危険因子は両側性・初回手術時1歳未満・基礎に症候群があることである1。

そのほかの合併症として、頭蓋底損傷、出血、感染がある。ではと上顎のが問題になる1。

IPOG は最低1年の長期経過観察を鼻またはで行い、な画像検査は行わないことを推奨している3。

予後

症候群を伴わなければ予後は良好で、正常な生命予後と発達が期待できる。両側例では緊急の認識と処置が要る1。

まとめ

  • 胎生3〜7週のの不全によるの閉鎖。膜性・骨性・混在があり、は出生5,000〜8,000に1人。
  • ⚠️ 新生児は時を除いてに依存するため、両側例はで窒息する。で消え安静で戻るが手掛かり。
  • 片側例は患側のだけを呈し、小児期から成人期まで見逃される。⭐ 「片側だけの慢性」で思い出す。
  • 側性は片側60%・両側40%とされてきたが、近年のデータは1対1に近いことを示唆する。性差は無い。
  • ⚠️ 約50%に症候群が併存し、が最多。の第1三半期曝露によるでも生じる。
  • 診断はがgold standardで、が骨性・軟部組織成分を分ける。IPOGも内視鏡+を推奨。
  • 両側例はまずまたは先端を切った、必要なら挿管。根治はで、片側例は生後6か月以降まで待つ。
  • は20〜30%。両側性・1歳未満での手術・症候群併存が危険因子で、最低1年の内視鏡による経過観察を行う。

出典

  1. 1.Choanal Atresia(StatPearls Publishing(NCBI Bookshelf、Andaloro C, Winters R, La Mantia I)・2025)全文を閲覧。後鼻孔が胎生3〜7週の鼻咽腔の再開通によって形成されること、病因として頬咽頭膜の遺残、Hochstetterの鼻頬膜の遺残、中胚葉の吸収不全、神経堤細胞の移動異常の4説があること、発生率が出生5,000〜8,000に1人(カリフォルニアの集計では1万出生あたり0.82)であること、片側60%・両側40%とされてきたが近年のデータは1対1に近いことを示唆すること、性差は無く従来の女児2対1の優位は否定されていること、約50%に症候群が併存しCHARGE症候群が最多で、ほかにCrouzon症候群・DiGeorge症候群・Treacher Collins症候群・Pfeiffer症候群・羊膜索症候群があること、新生児が啼泣時を除いて鼻呼吸に依存し吸気時に舌を後方へ引いて上咽頭を陰圧で閉じるため両側閉鎖では安静呼吸時に窒息と重度の呼吸窮迫を来し、啼泣で消えて安静で戻る奇異性チアノーゼを呈すること、片側例は患側の粘液膿性鼻漏を主訴として小児期から成人期まで診断が遅れうること、鼻内視鏡が診断のgold standardでCTが骨性成分と軟部組織成分の区別に適した第一の画像検査であり、頭蓋底欠損が疑われるときにMRIを用い、歯鏡の曇り試験が初期評価に有用であること、両側例の急性期には口腔エアウェイまたは先端を切ったMcGovern乳首を用い、確実な気道確保には気管挿管を行うこと、根治術は経鼻内視鏡的手技がほぼ全例で標準治療となっており、ステント留置とマイトマイシンCは強いエビデンスを欠き議論が続いていること、膜性閉鎖に対するバルーン拡張の長期成績はなお不確実であること、手術は可能な限り生後6か月以降まで延期するが重症の両側例ではより早い介入を要しうること、片側例は緊急性が低く解剖が成人に近づく学童期まで待ちうること、再狭窄が20〜30%に生じて再手術を要し、両側例・初回手術時1歳未満・基礎症候群があることが危険因子であること、眼窩損傷・頭蓋底損傷・出血・感染が合併症で、経口蓋到達法では口鼻瘻と上顎の成長障害が問題になること、鑑別として後鼻孔ポリープ・脊索腫・鼻中隔弯曲・梨状口狭窄・鼻部類皮嚢腫・鼻涙管嚢胞・鼻甲介肥大・腫瘍・脳瘤・血腫が挙がること、症候群を伴わなければ予後は良好で正常な生命予後と発達が期待されることを確認した。⚠️ 抗甲状腺薬など催奇形因子との関連は本章には記載が無い閲覧 2026-09-08
  2. 2.Hyperthyroidism in Pregnancy(StatPearls Publishing・2025)抗甲状腺薬はいずれも胎盤を通過し、メチマゾール(チアマゾール)およびそのプロドラッグであるカルビマゾールが第1三半期の胚病(aplasia cutis・腹壁欠損・食道閉鎖・後鼻孔閉鎖など)と関連するため、第1三半期にはプロピルチオウラシルを用い、器官形成が終わる第1三半期以降は肝毒性を避けるためメチマゾールへ切り替えることを確認した閲覧 2026-09-08
  3. 3.International Pediatric Otolaryngology Group (IPOG) consensus recommendations: Diagnosis, pre-operative, operative and post-operative pediatric choanal atresia care(International Journal of Pediatric Otorhinolaryngology(International Pediatric Otolaryngology Group)・2019)2巡のDelphi法による質問票で、8か国22の三次医療機関に所属する28名の回答から合意推奨を作成したこと、主要な合意事項が「診断には鼻内視鏡またはファイバースコープとCTを推奨する」「片側後鼻孔閉鎖の手術は可能な限り生後6か月以降まで延期する」「経鼻内視鏡的修復が推奨される術式である」「最低1年の長期経過観察を鼻ファイバースコープまたは硬性内視鏡で行い、定型的な画像検査は行わない」であることを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得閲覧 2026-09-08