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Disease Atlas · 運動器 · 疾患

Brodie膿瘍

Brodie abscess

別名
Brodie's abscess
臓器系
運動器感染症
科目
Pathology
トピック
病理学 C/92:骨髄炎/Paget病病理学 C/93:骨腫瘍・腫瘍様病変
上位概念
骨髄炎
鑑別疾患
骨肉腫・ユーイング肉腫単純性骨嚢腫類骨骨腫
治療薬
フルクロキサシリンジクロキサシリンクリンダマイシン
原因微生物
Staphylococcus aureus
症状
疼痛圧痛
検査値
C反応性蛋白(CRP)赤沈

🧠 全体像:は、骨髄炎のうち宿主の抵抗性と病原体の毒性のバランスにより炎症が一局所に封じ込められたのである。のような発熱・を欠くことが多く、緩徐に進行する局所痛だけをに受診することが少なくない。この「症状の乏しさ」こそが診断を難しくする要因であり、画像所見が・良性・といった腫瘍性病変と紛らわしいため、感染と腫瘍を鑑別する視点が診療の中心になる。

位置づけと疫学

は病原体の毒性が低い、あるいは宿主の免疫応答がある程度保たれている状況で生じるで、によるを受けて亜急性〜慢性の経過をとる骨髄炎の病理の一亜型である。小児・青年に多く、性差としては男児にやや偏る1。好発部位はので、近位・遠位いずれにも生じるが、なかでも脛骨が最も多い1。膝周囲(・)の症例に絞った報告もある2。ある小児コホートでは、が全体の約9%を占めたと報告されている2。

起因菌はと同様にStaphylococcus aureusが中心で、膝周囲病変を対象とした報告では約半数の症例で同定されている2。ただし培養陰性に終わる例も少なくない。

臨床像

⭐ とは対照的に、全身症状・炎症反応の欠如が特徴である。 訴えは局所の鈍い疼痛・圧痛やにとどまり、数週間の経過を経て受診することが多い。発熱を欠き、CRP・・が正常範囲にとどまる例が珍しくない3。また急性型に比べて発熱・全身症状そのものが軽度である傾向が示されている2。

⚠️ この「症状に乏しい局所痛」という組み合わせは、感染症としての警戒感を鈍らせ、良性・悪性いずれの骨腫瘍とも見分けがつきにくい状況を生む。血液検査が正常だからといって骨髄炎を除外してはならない。

画像診断

単純X線

に境界明瞭なを認め、周囲にを伴うことが多い。病変周囲にや様の変化を伴うこともある3。ただし早期には所見に乏しいことがあり、単純X線だけで除外はできない。

MRIとペナンブラサイン

⭐ は、造影前でを裏打ちする薄い層が、膿瘍本体(膿汁)より高信号に描出される所見である。この層は血流に富むを反映しており、を含むを示唆する所見として知られる3。

💡 の価値は「あれば感染らしい」という一点にある。Afsharらの症例報告が整理した先行研究の値として、骨・軟部組織感染に対する特異度96%(範囲94〜99%)に対し感度は27%(21〜34%)とする報告や、感度75%・特異度と陽性/がいずれも90%を超えるとする報告が引用されている3。つまり陽性なら感染を強く示唆するが、陰性でもは否定できない。

⚠️ は感染に特異的な所見ではない。(の)、、良性、など腫瘍・でも同様の所見が報告されており、単独で確定診断とはしない3。

鑑別

症状に乏しい局所という提示のしかたゆえに、は良性・悪性の骨腫瘍と双方向に紛らわしい。

鑑別 好発 画像の要点 鑑別のポイント
25歳未満、皮質 に囲まれた小さな(中心の病変) がアスピリン・で軽快しやすい。画像だけでは除外しきれず外科的確認を要することがある1
良性(など) 小児の 境界明瞭な〜の を契機に発見されることが多く、炎症所見を欠く
小児・青年の 破壊的な+反応性 逆に発熱・貧血・を伴い骨髄炎を模倣することがある。とは症状の出方が対照的な鑑別として意識する

⭐ 画像所見だけで腫瘍を確信をもって除外できない、あるいはな経過をとる場合は、外科的な・生検で組織診断と培養を確定させる方針をとる1。

flowchart TD
    A["小児・青年の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='metaphysis of a long bone'>長管骨骨幹端</span>に緩徐発症の局所痛<br>発熱・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='elevated inflammatory markers'>炎症反応上昇</span>を欠くことが多い"] --> B["単純X線:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='radiolucency'>骨透亮像</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sclerotic rim'>硬化縁</span>を確認"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>で病変範囲を評価<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='T1-weighted image'>T1強調像</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='penumbra sign'>ペナンブラサイン</span>の有無を確認"]
    C --> D{"画像所見だけで<br>腫瘍性病変を除外できるか"}
    D -->|"できない・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='non-conventional'>非典型的</span>"| E["外科的<span class='jp-term jp-term-diagram' title='curettage'>掻爬</span>・生検で<br>組織診断と培養を確定"]
    D -->|"典型的な感染像"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='curettage'>掻爬</span>+抗菌薬による治療"]
    E --> F

治療

治療の柱は外科的()と抗菌薬の併用であり、単独の抗菌薬治療のみで完結させることは少ない。により・膿瘍内容を除去し、同時に採取した検体で起因菌を確認する。S. aureusを想定したとしてやなどの、ペニシリンアレルギーやが疑われる場合はクリンダマイシンなどを選択し、で狭域化する。抗菌薬投与期間は静注・内服を通じて4〜6週間程度を目安とすることが多い21。

💡 に近い病変では、そのものがを刺激し、のをきたしうることが報告されている2。小児例のでは治癒後のにも注意を払う。

まとめ

  • はので、小児・青年の(近位・遠位とも)、なかでも脛骨に好発する。
  • と対照的に発熱・を欠くことが多く、症状に乏しい局所痛が主体となる。
  • の(でを裏打ちする高信号の層)は感染を示唆する特異度の高い所見だが、感度は低く、腫瘍性病変でも陽性となりうるため単独で確定診断としない。
  • 画像・症状ともに・良性・と紛らわしく、非典型例では外科的・生検による組織診断と培養が確定診断の柱になる。
  • 治療は外科的と、S. aureusを標的とした抗菌薬(4〜6週間程度)の併用が基本である。

出典

  1. 1.Challenges in the Diagnosis of Brodie's Abscess in Subacute Osteomyelitis(Journal of Orthopaedic Case Reports・2020)PMCで全文を読んだ。Brodie膿瘍が小児男性に多く長骨骨幹端(特に脛骨)に好発すること、急性膿瘍形成に伴うような全身症状を欠くこと、ペナンブラサインがBrodie膿瘍の特徴的所見とされる一方でこの症例では欠如していたこと、画像検査だけでは類骨骨腫を除外できず外科的な確認(掻爬・組織採取)を要したこと、治療は外科的掻爬と6週間のセファレキシン内服で行われたことを確認した。閲覧 2026-08-20
  2. 2.Brodie's Abscesses Can Stimulate the Growth Plate in Children(Journal of Bone and Joint Infection・2019)PMCで全文を読んだ。対象施設の小児骨関節感染症全体の9%をBrodie膿瘍が占めたこと、膝周囲(遠位大腿骨・近位脛骨)に集中する症例群での平均年齢が3.5歳(範囲1〜12歳)であったこと、急性型に比べ発熱・全身症状が軽度であること、膝部病変の50%でStaphylococcus aureusが同定されたこと、治療は静注抗菌薬4〜6週間と外科的排膿を組み合わせたこと、成長板を刺激し過成長をきたしうるという知見を確認した。閲覧 2026-08-20
  3. 3.The 'Penumbra Sign' on Magnetic Resonance Images of Brodie's Abscess: A Case Report(Iranian Journal of Radiology・2011)PMCで全文を読んだ。Brodie膿瘍が骨髄炎の場で肉芽組織に被包化された膿瘍であること、MRI T1強調像のペナンブラサインが膿瘍腔を裏打ちする高信号の肉芽組織層であること、McGuinnessらの報告として特異度96%(範囲94〜99%)・感度27%(21〜34%)、Greyらの報告として感度75%・特異度と陽性/陰性的中率がいずれも90%超であったこと、ペナンブラサインは好酸球性肉芽腫・軟骨肉腫・良性嚢胞性骨病変・骨内ガングリオンでもみられうる非特異的所見であることを確認した。X線所見として骨内の境界明瞭な硬化縁を伴う病変と周囲の骨膜反応・骨粗鬆化変化の記載も確認した。閲覧 2026-08-20