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Disease Atlas · 運動器 · 疾患

Blount病

Blount disease

別名
脛骨内反症Tibia vara
臓器系
運動器小児
科目
Pediatrics
トピック
小児科 1-07:小児・思春期の肥満小児科 3-59:ビタミンD欠乏症とくる病
鑑別疾患
Ollier病くる病・骨軟化症
症状
O脚・X脚骨変形跛行
スコア
骨幹端骨幹角Langenskiöld分類

🧠 全体像:()は、内側のが圧迫で壊れて起こる後天性のO脚である。このノートの主題は治療ではなく鑑別にある——ありふれたは脛骨との全体が緩やかに弯曲するのに対し、はの内側だけがにする。どこが曲がっているかを見る、そしてという1つの角度を測る——判断はこの2つで大きく前に進む。

病態

正常なは適度な力学的負荷のもとで規則正しくを進める。圧迫は長軸成長を抑制する()ため、内側に過剰な圧がかかり続けると、その部分の軟骨が損傷し骨化が遅れる。圧はの後内側で最大になるので、膝の内側の成長だけが選択的に抑えられ、が進んでいく1。

⚠️ 変形は単なるではない。 進行するとに加えて、脛骨の、が重なり、3次元の変形になる1。「O脚が強い」という平面的な捉え方では手術計画が立たない。

危険因子は肥満・早期の歩行開始・アフリカ系の出自である。ただしの乳児にも生じ、特定の民族に多いことから、力学的だけでなくも関与するの病態と考えられている1。米国でのは1%未満1。

2つの型

乳児型() 若年型()
発症年齢 1〜5歳(診断は1〜3歳が典型) 学童期後半〜思春期
側性 80%が両側性 片側性が多い
歩行開始との関係 歩き始めてから増悪する —
疼痛 まれ 内側を伴うことが多い
変形の程度 より高度になりやすい 一般に軽い
併存 の変形を伴うことがある

いずれも1。⚠️ 乳児型では6〜8歳ごろに内側のが不可逆的に閉じてしまい、それ以降は保存療法が効かなくなる1。 介入の窓は早い。

⚠️ 生理的O脚との鑑別

は出生時の(約15〜20度)から生後2歳頃に、3〜4歳でのピーク(約10〜15度)を経て、7歳頃に軽度(約3〜5度)で安定するという生理的な往復をたどる2。2歳までのO脚は正常所見であり、この時期に鑑別を急ぐこと自体が難しい。手がかりは2つある。

① 曲がっている場所を見る。 は脛骨との全体がなだらかに弓なりになる。ではにな角状の折れがあり、内側のに触れる嘴状の隆起が触知できることがある1。荷重時にが外側へ偏位するは、機械的な破綻が始まった徴候として重要である。

② ()を測る。 のを通る線と、の長軸に垂直な線がなす角である3。撮影は股関節からまでを含むで、両側を同一フィルムに投影する必要がある1。

角度 意味
10度未満 生理的である可能性が高く、95%が自然軽快する
11度超 を示唆する
11〜16度 進行しうるため厳重に経過観察する
16度超 95%が変形の進行をたどる

(いずれも1)

💡 11度という閾値の出どころは1982年のLevineとDrennanの報告である。初回のが11.0度を超えた30肢のうち29肢で後にの画像変化が現れ、11.0度以下の58肢では3肢にとどまった。同じ報告は、では変形のおよそ60%が近位に由来するのに対し、では約20%にすぎないことも示している3。「に局在する変形か、下肢全体に分散した変形か」というの印象が、この比率として数値化されている。

画像所見と病期分類

単純X線でみられるのは、内側の、内側の開大と不整、骨化の不整、との内側への傾斜である1。は軟骨・・・の血流の評価に優れ、X線より軟骨変化を捉えやすいため、診断が遅れた例や4歳以降の例で有用である1。

は単純X線に基づく6段階で、乳児型に適用する。段階が上がるほど内側の破綻が進む。

段階 所見
I 領域の不整
II 内側の
III 嘴状部にが生じる
IV が嘴状となり内側の窪みに入り込む
V が二重に見える
VI の形成

⚠️ どの分類を使うかに注意する。 に基づくなど新しい分類も現れているが、現在も最も広く使われているのは単純X線に基づく(6段階)である1。V度以降はを伴い、の一部が骨で橋渡しされるためとが進む。

flowchart TD
    A["歩行開始後もO脚が残る/進行する"] --> B["股関節から<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ankle joint'>足関節</span>までを含む<br>立位下肢全長正面X線"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='metaphyseal-diaphyseal angle'>骨幹端骨幹角</span>を測る"]
    C --> D{"11度を超えるか"}
    D -->|"10度未満"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='physiological bowing'>生理的O脚</span>として経過観察"]
    D -->|"11〜16度"| F["厳重に経過観察し<br>間隔をあけて再撮影"]
    D -->|"16度超"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Blount disease'>Blount病</span>として扱う"]
    F --> G
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Langenskiöld classification'>Langenskiöld分類</span>で病期を決める"]
    H --> I["年齢・病期・肥満の有無で<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='orthosis'>装具</span>か手術かを選ぶ"]

治療

方針は年齢・病期・変形の程度で決まる。の時期と矯正量に影響するため、術前にを評価する1。

  • ():4歳未満かつLangenskiöld I〜II度が対象で、膝に方向の力をかける。3歳未満の非肥満児に、主として夜間装用で開始したときに最も成功しやすく、1年間続ける。⚠️ 3歳以下の活発な子どもにを装着させ続けること自体が大きなになる1。
  • :が無効なら4歳未満のうちに検討する。⚠️ 乳児型は再発率が高いため、まっすぐに戻すのではなく5〜15度のへする。外側への平行移動と10〜15度のも同時に行う。急速矯正は即座に変形を直せるがとの危険があり、緩徐矯正()は正確だがを伴う1。
  • ():外側のを一時的に止めて内側の成長で弯曲を戻す方法で、より低侵襲である。乳児型では少なくとも4年のが必要で2歳以下は適応外。(若年型)では15度未満・1 cm以内・2年以上が目安になる。では病んだ内側が関与するため、他の原因によるO脚に比べ結果が予測しにくい1。
  • の切除・は、より進んだ病期に対する追加手術として位置づけられる1。

💡 危険因子である肥満を是正しても、既にできたは自然には戻らない。 減量は進行と再発を抑えるうえで意味があるが、変形そのものへの対応はか手術という力学的介入になる。

鑑別

  • ——最も多い相手。上のとおり弯曲の場所とで分ける。
  • くる病——手関節の膨隆・・を伴い、に特徴的な非対称なと鋭いを欠く1。
  • ——多発するの存在で区別する1。
  • 外傷・放射線・感染(骨髄炎)によるの障害——既往で区別する。
  • 、——全身の骨格所見・血液所見を伴う。

まとめ

  • は内側のが過剰な圧迫で障害される後天性ので、圧迫が長軸成長を抑えるで説明される。危険因子は肥満・早期歩行開始・アフリカ系の出自。
  • 乳児型(1〜5歳、80%が両側性、疼痛はまれ)と若年型(学童期後半〜思春期、片側性が多く内側を伴う)に分かれる。
  • との鑑別が主題で、下肢全体の緩やかな弯曲か、内側のなかを見る。11度超がを示唆し、16度超では95%が進行、10度未満では95%が自然軽快する。この閾値はLevineとDrennanの1982年の報告に由来する。
  • は単純X線に基づくの6段階(乳児型に適用)で、V度以降はを伴う。に基づく分類も出てきたがX線に基づく分類が今も主流である。
  • 治療は4歳未満・Langenskiöld I〜II度の非肥満児への、無効例への4歳未満の(再発が多いため5〜15度のへ)、4年以上の例へのが柱になる。
  • 変形はだけでなく・・を伴う3次元の変形である。肥満の是正だけでは既存の変形は戻らない。

出典

  1. 1.Blount Disease(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)Blount病が近位脛骨内側骨幹端の軟骨成長の障害による後天性の内反膝変形であり、内側成長板への過剰な圧迫が内軟骨性骨化を変化させて生じること、乳児型(1〜5歳、80%が両側性、歩行開始後に増悪)と若年型(学童期後半〜思春期、片側性が多く内側膝痛を伴い遠位大腿骨の異常を伴うことがある)に分かれること、危険因子が肥満・早期歩行開始・アフリカ系の出自であること、米国での有病率が1%未満であること、圧迫が後内側で最大となるため内側の成長抑制が進み内反が進行すること(Hueter-Volkmann原理)、画像所見が内側骨幹端の嘴状変化・内側成長板の開大と不整・骨化の不整であること、骨幹端骨幹角(Levine-Drennan角)が11度を超えるとBlount病を示唆し16度超では95%が進行、10度未満では95%が自然軽快、11〜16度は経過観察を要すること、Langenskiöld分類が単純X線に基づく6段階で乳児型に適用されV度以降は骨性架橋を伴うこと、MRIに基づくFort-de-France分類も出てきたがX線に基づく分類が最も広く使われていること、装具(長下肢装具)は4歳未満かつLangenskiöld I〜II度が対象で3歳未満の非肥満児に夜間装用で開始したときに成功しやすく1年間続けること、装具無効例には4歳未満での骨切り術を検討し乳児型は再発率が高いため5〜15度の外反へ過矯正すること、成長誘導(片側骨端固定術)には少なくとも4年の残存成長が必要で2歳以下は適応外であること、急速矯正は腓骨神経麻痺とコンパートメント症候群の危険があり緩徐矯正は正確だがピン刺入部感染を伴うこと、生理的O脚が脛骨と大腿骨全体の緩やかな弯曲であるのに対しBlount病の近位脛骨の弯曲は急峻であることを確認した。閲覧 2026-09-03
  2. 2.Genu Valgum(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)生理的な下肢アライメントは出生時に内反位約15〜20度、生後2歳頃までに中間位、3〜4歳で外反位が約10〜15度でピークとなり、7歳までに軽度の外反位(約3〜5度)へ落ち着き以降ほぼ不変であること、大腿脛骨角(脛骨と大腿骨の長軸がなす角)と下肢機能軸(大腿骨頭中心と足関節中心を結ぶ線)の定義、非対称性・年齢相応を超えて残る変形・10パーセンタイルを下回る身長・外傷や感染の既往・内果間距離8cm超が病的変形を疑う根拠となることを確認した。閲覧 2026-09-03
  3. 3.Physiological bowing and tibia vara. The metaphyseal-diaphyseal angle in the measurement of bowleg deformities(The Journal of Bone and Joint Surgery (American Volume)・1982)骨幹端骨幹角を「近位脛骨骨幹端の横断面を通る線」と「脛骨骨幹の長軸に垂直な線」の交角として定義した原著であること、初回の骨幹端骨幹角が11.0度を超えた罹患肢30肢のうち29肢で後に脛骨内反症の画像変化が生じ、11.0度以下の58肢では3肢にしか診断的変化がみられなかったこと、脛骨内反症では変形のおよそ60%が近位骨幹端に由来するのに対し生理的弯曲ではおよそ20%にとどまること、本角度により脛骨内反症の画像変化が現れる前に生理的弯曲との早期鑑別が可能になることを確認した(抄録のみを閲覧しており全文は未取得)。閲覧 2026-09-03