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Disease Atlas · 運動器 · 腫瘍

Ollier病

Ollier disease

別名
多発性内軟骨腫症Enchondromatosis
臓器系
運動器腫瘍
科目
PathologyOncology and Reconstructive Oncoplastic Surgery
トピック
病理学 C/93:骨腫瘍・腫瘍様病変腫瘍学 II-35:骨腫瘍の疫学・病因・組織型・病期・症状・診断
鑑別疾患
Blount病
続発疾患
軟骨肉腫
症状
O脚・X脚骨変形
画像所見
骨溶解性病変石灰化

🧠 全体像:は、「生まれつきの病気」ではなく発生の途中で生じたにより、四肢の骨に非対称にが多発する疾患である。1つのから生じた細胞の一部だけがIDH1・IDH2変異を持つため、病変は左右非対称かつ手足の特定の骨に偏って分布する。⭐ 単発のはほぼ良性では1%未満だが、では約30%まで上昇する——この病気を診るときの主眼は、変形の整形外科的な管理と同じくらい、への転化を見逃さない経過観察にある。

病態——体細胞モザイクという成り立ち

は遺伝性疾患ではなく、発生の初期段階で生じたIDH1・IDH2のに由来する1。IDH1・IDH2はイソクエン酸をへ変換する酵素をコードし、酵素は異常な(2-ヒドロキシグルタル酸)を産生してな制御を乱し、軟骨組織のを促すと考えられている。

なでは、症例の81%(43例中35例)、Maffucci症候群症例の77%(13例中10例)の腫瘍でIDH1(98%)またはIDH2(2%)のが同定され、全体では87%、血管腫では70%に変異が検出された。同一患者の複数病変で同じ変異パターンが観察されており、単一の体細胞クローンに由来することを裏づける2。

💡 「モザイク」だから非対称になる。 生殖細胞系列の変異ではなく発生途中に生じた変異なので、変異を持つ細胞の分布に偏りが生じ、病変は左右非対称・特定の四肢優位という分布を取る。この非対称性こそが、対称性の変形を来す他のとの重要な鑑別点になる。

Maffucci症候群との違い

と同じIDH1・IDH2モザイク変異を背景に持つ近縁疾患がMaffucci症候群である。Maffucci症候群はに加え、軟部組織の血管腫・(による皮膚病変)を合併する点でと区別される13。

flowchart TD
    A["発生初期のIDH1/IDH2<span class='jp-term jp-term-diagram' title='somatic mosaic mutation'>体細胞モザイク変異</span>"] --> B["変異細胞クローンが特定の四肢に偏って分布"]
    B --> C["多発性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Enchondroma'>内軟骨腫</span>が非対称に出現"]
    C --> D{"血管腫・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Lymphangioma'>リンパ管腫</span>を伴うか"}
    D -->|"伴わない"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Ollier disease'>Ollier病</span>"]
    D -->|"伴う"| F["Maffucci症候群"]
    C --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chondrosarcoma'>軟骨肉腫</span>への<span class='jp-term jp-term-diagram' title='malignant transformation'>悪性転化</span>(約30%)"]

臨床像

推定は10万人に1人で性差はない3。1〜4歳で四肢の異常な成長が気づかれることが多く、片側性または両側性に、による浸潤・拡大・の弯曲を通じて・・・を来す13。骨盤が侵されることもあり、を繰り返しやすいが、骨折自体の治癒は良好である3。

⚠️ 膝周囲の変形を来しうる点でと紛らわしいが、成り立ちがまったく異なる。 は内側の力学的な圧迫による後天性のであるのに対し、は多発するの存在そのものが変形の原因であり、画像で四肢の骨に多発すると石灰化を伴う点で区別できる1。

悪性転化とフォローアップ

⭐ 単発のは1%未満だが、では約30%まで上昇する13。・のがへ転化するリスクが高まるため、⚠️ 骨・関節の悪性変化を定期的に経過観察する必要がある3。のリスク増加も報告されている1。

まとめ

  • は、発生初期のIDH1・IDH2により四肢骨に非対称に多発する症で、遺伝性ではない。
  • 血管腫・を合併するとMaffucci症候群と呼ばれる。
  • 1〜4歳で気づかれる・・が主症状で、など他の下肢変形疾患との鑑別では、多発するの存在が決め手になる。
  • ⭐ は単発の1%未満からでは約30%まで上昇し、への定期的な経過観察が必須である。

出典

  1. 1.Enchondroma(StatPearls (NCBI Bookshelf)(Biondi NL, Tiwari V, Varacallo MA)・2024)Ollier病が四肢骨格に非対称に分布する多発内軟骨腫症であり遺伝性ではなく体細胞モザイク変異によること、原因がIDH1・IDH2の体細胞モザイク変異であること、Maffucci症候群がOllier病の内軟骨腫に加え軟部組織の血管腫・リンパ管腫を合併する点で区別されること、いずれも軟骨肉腫・内臓悪性腫瘍のリスク増加を伴い単発内軟骨腫での悪性転化が1%未満であるのに対しこれらの症候群では大幅に上昇すること、内軟骨腫が骨端・骨幹端・骨幹に及び骨端浸潤・骨幹端拡大・長管骨の弯曲により骨成長を妨げ四肢短縮を来しうることを確認した。閲覧 2026-09-06
  2. 2.Somatic mosaic IDH1 and IDH2 mutations are associated with enchondroma and spindle cell hemangioma in Ollier disease and Maffucci syndrome(Nature Genetics・2011)Europe PMC経由で書誌・抄録情報を確認した。Ollier病・Maffucci症候群がいずれも非遺伝性の骨格疾患であり内軟骨腫(Ollier病)と紡錘細胞血管腫(Maffucci症候群)を特徴とすること、Ollier病症例の81%(43例中35例)・Maffucci症候群症例の77%(13例中10例)の腫瘍でIDH1(98%)またはIDH2(2%)の体細胞モザイク変異が同定されたこと、内軟骨腫の87%・紡錘細胞血管腫の70%に変異が検出され複数病変で同一の変異パターンが観察されたことを確認した。閲覧 2026-09-06
  3. 3.Ollier Disease(National Organization for Rare Disorders (NORD)・2020)Ollier病の推定有病率が10万人に1人であり性差がないこと、1〜4歳で四肢の異常な成長が観察されることが多く片側性または両側性に脚長差・低身長・跛行を来しうること、長骨の弯曲変形や骨盤の罹患もあり病的骨折を繰り返しうるが治癒は良好であること、患者の約30%で軟骨腫が悪性転化し軟骨肉腫などを来しうるため骨・関節の悪性変化を定期的に経過観察する必要があること、Maffucci症候群は内軟骨腫に加え血管奇形による皮膚病変を特徴とする点でOllier病と区別されることを確認した。閲覧 2026-09-06