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Disease Atlas · 運動器 · 疾患

Dupuytren拘縮

Dupuytren contracture

別名
デュピュイトラン拘縮Dupuytren病手掌腱膜拘縮
臓器系
運動器
科目
PathologyPathology (Histopathology)
トピック
病理学 C/97:線維芽細胞・筋線維芽細胞分化軟部腫瘍組織病理 H2-120A:デスモイド型線維腫症(表在型との鑑別編)
上位概念
表在型線維腫症
鑑別疾患
弾発指腱鞘巨細胞腫
合併症
複合性局所疼痛症候群
関連疾患
Peyronie病手腕振動症候群Ledderhose病
治療薬
コラゲナーゼ・クロストリジウム・ヒストリチカム
症状
拘縮皮膚結節
適応薬
コラゲナーゼ・クロストリジウム・ヒストリチカム

🧠 全体像:は「がによって線維化し、太い索になって指を引き込む」病気である。名前に「」とあるので関節や腱の病気に見えるが、病変は腱ではなくそのものにある——この一点を押さえると、なぜ腱の走行と一致しない皮下の索が触れるのか、なぜ索を切るだけで指が伸びるのかが同時に説明できる。手掌の・足底の・陰茎のはという同じの3つの顔であり、1つを見たら残り2つを尋ねる価値がある。

定義と位置づけ

  • (および)に生じる良性ので、皮下に結節と索を作り、・小指を中心に・の屈曲を来す。
  • 病理学的にはに分類される。深部のとは別群で、との関連は乏しく、大型化・もしない。治療もや局所注射など保存的な選択肢が中心になる。
  • の、の、のは、いずれも結合組織の異常を特徴とする関連したとして位置づけられている1。
場
主な障害 指の を伴う結節(はまれ) 勃起時の
典型的な訴え 手が平らに置けない 土踏まずに硬いしこりがあり、体重をかけると痛い ・

⭐ オランダ北部でと診断された男性730例の調査では、のが外科医報告16.1%・患者自己申告22.0%、が7.8%・8.8%であった。著者らはの値をむしろ文献値より低いとし、形成外科医による過少報告を指摘している1。

病態

⚠️ 腱の病気ではない。 病変の主座は(の組織)であり、屈筋腱そのものは正常である。索はの縦走線維が肥厚したもので、指を的に伸ばそうとすると索が浮き上がって触れる。

線維芽細胞から分化したが増殖し、のあるを発現しながらコラーゲンを産生する。の比率が上がり、組織が縮んでいく。経過は3つの相に整理される。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='palmar aponeurosis'>手掌腱膜</span>の線維芽細胞が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myofibroblast'>筋線維芽細胞</span>へ分化"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proliferative phase'>増殖期</span>:細胞密度の高い結節が形成される"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='involution phase'>退縮期</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myofibroblast'>筋線維芽細胞</span>が収縮しコラーゲンが沈着"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='residual phase'>残存期</span>:細胞成分に乏しい<span class='jp-term jp-term-diagram' title='collagen fiber'>膠原線維</span>の索が残る"]
    D --> E["索が短縮し指が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='palmar (side)'>掌側</span>へ引き込まれる"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='metacarpophalangeal joint, MP joint'>MP関節</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proximal interphalangeal joint, PIP joint'>PIP関節</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='flexion contracture'>屈曲拘縮</span>"]

💡 結節と索は経過の別の段階である。 初期に触れる硬い結節は細胞成分に富み、痛みを伴うことがある。時間とともに細胞が減り、伸ばしても緩まないの索へ置き換わる——痛みが引いたころに指が伸びなくなるのはこのためで、「よくなった」と誤解されやすい。

疫学と危険因子

  • 中高年の男性に多く、加齢とともに増える。北欧系の家系に多いことが古くから知られ、家族歴のある例では発症が若く進行が速い傾向がある。
  • との関連はで定量されている2。
(95%CI) 備考
糖尿病 3.06(2.69〜3.48、年齢調整) 1型のほうが2型より強い傾向だが有意差なし(p=0.24)
肝疾患 2.92(2.08〜4.12、性調整) 肝硬変・
てんかん 2.80(2.49〜3.15) との関連が古くから論じられてきた

⚠️ これらは関連であって因果ではない。 著者ら自身、関連を生む経路の解明には前向きのが必要だとしている2。「糖尿病がを作る」と説明しない。喫煙・飲酒()も従来から危険因子として挙げられるが、肝疾患とのが避けがたい。

臨床像

  1. 結節:手掌の遠位、・小指の基部に硬い皮下結節として始まる。多くは無痛だが、初期には圧痛を伴うことがある。
  2. 皮膚の変化:結節が皮膚と癒着し、や皮膚のつっぱりが生じる。
  3. 索:結節から指へ向かう索が触知でき、指を伸展させると索が張って浮き上がる。
  4. :が先に、次いでが屈曲位に引き込まれる。⭐ と小指が最も侵されやすい。は通常侵されない。
  5. 他部位の病変:背側の、足底の、陰茎の。これらを伴う例はが強く、Dupuytren diathesisと呼ばれる。

tabletop test

⭐ 手掌を机の上に平らに置けるかを見る。指が浮いて手掌が机につかなければ陽性で、手術・介入の適応を検討する目安として広く用いられている。数値の測定を要さず、患者自身が変化をできるため、経過観察の指標にもなる。

💡 のとのは同じ重みではない。 のはが伸びた位置で緩むため矯正に反応しやすい。のは・の二次的な短縮を伴い、長く放置するほど索を切っても伸びなくなる。PIPの存在は介入を急ぐ理由になる。

鑑別

鑑別 手がかり
(指) 病変は屈筋腱と()。引っ掛かりとが主で、皮下の索は触れない
・ 境界明瞭な腫瘤で、や索を作らない。超音波・で区別する
瘢痕 熱傷・の既往と瘢痕そのものが見える
糖尿病に伴う手の可動域制限 指が伸びないが索は触れず、両手のPIP・MPが対称に硬くなる(合掌して掌が合わない)
による の萎縮と知覚障害を伴い、的には伸展できる

治療

進行しない例・機能障害の無い例は経過観察でよい。 介入の適応は「変形の程度」ではなく手の機能障害で決める(tabletop test陽性、PIPの出現、の支障)。

治療 内容 位置づけ
注射 索へ酵素を注射して索を化学的に弱め、翌日にに破断させる 外来で行える非選択肢
針の刃で索を経皮的に切離する 低侵襲だが再発が早い傾向
罹患したをに切除する 標準的な手術。再発が少ない
+ 皮膚ごと切除してする 再発例・重症例

コラゲナーゼ注射の成績

20度以上のを有する308例の(CORD I)では、索へ1回0.58 mgを30日間隔で最大3回注射し翌日にを行った。最終注射30日後にが0〜5度まで改善した割合は群64.0%対プラセボ群6.8%(P<0.001)、は43.9度から80.7度へ改善した(は45.3度から49.5度、P<0.001)3。

⚠️ 有害事象は局所に集中する。 頻度が高いのは局所の腫脹・疼痛・皮下出血・掻痒と一過性の・圧痛である。同試験で報告された治療関連の重篤な有害事象は3件で、内訳は2件と1件であった。全身性アレルギー反応と神経損傷はみられなかった3。

経過と合併症

  • 再発する疾患である。 若年発症、家族歴、両手罹患、、・の合併といったDupuytren diathesisの要素が揃うほど再発しやすい。「治す」ではなく「機能を戻し、必要になったらまた介入する」という枠組みで説明する。
  • 手術の合併症は指神経・指動脈の損傷、血腫、創部の壊死、感染、、。
  • 長期に放置したPIPは、索を切除しても関節側のが残る。

まとめ

  • はのによる線維増殖であり、腱の病気ではない。
  • の結節が・を経て索となり、・小指の・を屈曲位へ引き込む。は通常侵されない。
  • 危険因子として糖尿病(3.06)、肝疾患(2.92)、てんかん(2.80)との関連が示されているが、因果ではない。北欧系の家系に多い。
  • tabletop test(手掌を机に平らに置けるか)が介入適応の実用的な目安。のは放置するほど戻らなくなる。
  • 治療は注射、、、+。適応は変形の角度ではなく機能障害で決める。
  • 注射では64.0%が伸展制限0〜5度まで改善しの6.8%を上回ったが、重篤な有害事象としてが報告されている。
  • 足底の・陰茎のと同じであり、1つを見たら残りを尋ねる。

出典

  1. 1.Prevalence of Peyronie and Ledderhose Diseases in a Series of 730 Patients with Dupuytren Disease(Plastic and Reconstructive Surgery・2020)Dupuytren病・Peyronie病・Ledderhose病を、それぞれ手掌腱膜・陰茎白膜・足底腱膜の結合組織異常を特徴とする関連した線維増殖性疾患と位置づけていること。オランダ北部の外来で2007〜2016年に集めたDupuytren病の男性730例で、Peyronie病の併存率は外科医報告7.8%・患者自己申告8.8%、Ledderhose病は同16.1%・22.0%であったこと。Peyronie病の併存率は文献値より低く、形成外科医による過少報告があると考察されていること閲覧 2026-09-02
  2. 2.A Systematic Review and Meta-Analysis on the Strength and Consistency of the Associations between Dupuytren Disease and Diabetes Mellitus, Liver Disease, and Epilepsy(Plastic and Reconstructive Surgery・2018)2016年9月26日までに発表された文献1,260件から32件を用いたメタ解析で、Dupuytren病と糖尿病の関連(年齢調整オッズ比3.06、95%CI 2.69〜3.48)、肝疾患との関連(性調整オッズ比2.92、95%CI 2.08〜4.12)、てんかんとの関連(オッズ比2.80、95%CI 2.49〜3.15)が認められたこと。1型糖尿病のほうが2型糖尿病より関連が強かったが統計学的に有意ではなかったこと(p=0.24)。研究間の異質性は中等度から低度であったこと。関連を生む経路の解明には前向きの縦断研究が必要であると結論していること(抄録のみを閲覧しており全文は未取得)閲覧 2026-09-02
  3. 3.Injectable collagenase clostridium histolyticum for Dupuytren's contracture(The New England Journal of Medicine・2009)20度以上の関節拘縮を有するDupuytren病308例を対象とした前向き・無作為化・二重盲検・プラセボ対照多施設試験(CORD I)で、拘縮したコラーゲン索へ1回0.58 mgのコラゲナーゼ・クロストリジウム・ヒストリチカムまたはプラセボを30日間隔で最大3回注射し、注射の翌日に関節を用手的に伸展したこと。主要評価項目は最終注射30日後に拘縮が完全伸展から0〜5度まで軽減することで、コラゲナーゼ群64.0%対プラセボ群6.8%(P<0.001)であり、26項目の副次評価項目もすべてコラゲナーゼが優ったこと(P≦0.002)。関節可動域は43.9度から80.7度へ改善し、プラセボの45.3度から49.5度を有意に上回ったこと(P<0.001)。頻度の高い有害事象は局所の腫脹・疼痛・皮下出血・掻痒と一過性の所属リンパ節腫大および圧痛であったこと。治療関連の重篤な有害事象は3件で、腱断裂2件と複合性局所疼痛症候群1件であったこと。屈曲力・握力の有意な変化、全身性アレルギー反応、神経損傷はみられなかったこと(抄録のみを閲覧しており全文は未取得)閲覧 2026-09-02