病理学

病理学 · C/97

線維芽細胞・筋線維芽細胞分化軟部腫瘍

Fibroblast-myofibroblast differentiated soft tissue tumors

薬剤
コラゲナーゼ・クロストリジウム・ヒストリチカム
疾患
Dupuytren拘縮Peyronie病足底線維腫症軟部肉腫表在型線維腫症

🧠 全体像:(良性、急速増大でも自然軽快する)と(だがはない)は、いずれも組織像だけを見ると肉腫を疑わせる「肉腫もどき」の良性〜病変であり、臨床経過(自然軽快 vs 浸潤性の再発)で真の悪性腫瘍と区別する。

結節性筋膜炎

定義

  • 良性の非癌性軟部組織増殖。
  • とも呼ばれる(顕微鏡的に肉腫を模倣)。
  • 若年成人(20〜40歳)に発生。
  • 部位:四肢、体幹、頭頸部。

発生機序

  • 大多数でUSP6再構成を認め、USP6を含む融合遺伝子をもつ。48例の検討ではUSP6遺伝子座の再構成が44例(92%)にみられ、融合相手としてMYH9が同定された(MYH9::USP6)1。MYH9::USP6は最も多い融合とされる。
  • 💡 自然に退縮する病変が反復性の融合遺伝子をもつことから、本症は「一過性の腫瘍」のモデルとも考えられている1。

形態

  • 通常小さい(< 3 cm)、より大きいことも。
  • 波状の(線維芽細胞・)。
  • 「組織培養様」パターン。
  • 細胞密度の高い、疎な粘液様・膠原性基質。
  • 漏出した赤血球。
  • (高い — 肉腫を模倣する理由)。

臨床像

  • 自然軽快性の疾患 → 退縮・消失。
  • 無症状または軽度の疼痛。
  • 急速な増殖が悪性を疑わせる。
  • 単純切除で治癒。

線維腫症(デスモイド型)

定義

  • に生じる(・非転移性)の線維芽細胞・腫瘍。
  • 浸潤性増殖を伴う。
  • なし。
  • 良性腫瘍のように遠隔転移しない一方、周囲組織へ浸潤して機能障害や再発を生じうる2。

部位

  • 腹部領域(腹腔内、腸間膜、結腸近傍)。
  • 胸壁+乳房。
  • 四肢、。

型

関連

形態

  • 高分化の線維芽細胞+。
  • の長い束状配列。
  • 淡い質。
  • しばしば筋膜に生じる。
  • 組織像はを模倣しうるが異型を欠く。

臨床像

  • 浸潤性パターンで局所的に非常に侵襲性。
  • 切除後の頻回の再発。
  • なし。
  • 診断直後から一律に切除せず、無症状例では専門施設の監視下でを第一段階とする。自然安定化・退縮もある2。
  • 持続的な増大、症状悪化、重要臓器への切迫があれば部位と予想される機能障害に応じて治療する。
    • 観察中に進行したの腹壁病変では、合併症・再発リスクが限られるため手術をとして検討する2。
    • それ以外の部位や家族性(FAP関連)例では薬物療法がで、切除による重大な機能・整容障害が予想される部位では手術以外の方法を優先する2。
    • 全身治療を要する進行性成人例ではなどを選択肢とする。第3相試験(DeFi試験)で・・症状負担の有意な改善が示された4。かつて用いられたなどの抗+は、2020年の国際合意で「用いる根拠がない」とされている2。

まとめ表

腫瘍 挙動 部位 主な特徴
良性、自然軽快 四肢、体幹、頭頸部 偽肉腫性、若年成人、USP6融合(MYH9::USP6)、組織培養様の、漏出赤血球、単純切除で治癒
線維腫症() 、転移なし 腹部、胸壁(乳房)、四肢 CTNNB1(β-カテニン)変異またはAPC変異()、(FAP+骨腫+)、なの長い束、を第一段階とし進行・症状時に部位別治療

💡 ポイント: = 若年成人の良性偽肉腫、USP6融合(MYH9::USP6)、疎な中の「組織培養様」+漏出赤血球、自然軽快 — 単純切除で治癒。線維腫症 = β-カテニンまたはAPC変異、・浸潤性、転移なし、腹部/胸壁/乳房、 = FAP+骨腫+。診断直後の一律切除ではなくから開始し、持続的進行や症状時に部位・機能を踏まえて治療する。

まとめ

  • は若年成人に好発する良性の偽肉腫性病変で、USP6再構成(MYH9::USP6融合が最多)を認め、単純切除で治癒し自然軽快することもある。
  • はβ-カテニンまたはAPC変異による・浸潤性の腫瘍で、はないが切除後の再発が多い。
  • はFAP+線維腫症()+骨腫を合併する症候群で、APC遺伝子変異による。
  • は診断直後に一律切除するのではなく、無症状・非進行例ではを第一段階とし、進行時に部位に応じた治療を選ぶ。

出典

  1. 1.Nodular fasciitis: a novel model of transient neoplasia induced by MYH9-USP6 gene fusion(Laboratory Investigation・2011)結節性筋膜炎48例の解析でUSP6遺伝子座の再構成が44例(92%)に認められたこと、融合パートナーがMYH9でMYH9プロモーター領域にUSP6の全コード領域が結合する融合であること、対照腫瘍・対照組織はこの融合を欠いたこと、自己限定性という性質から本症が反復性の体細胞性遺伝子融合を特徴とする「一過性腫瘍(transient neoplasia)」のモデルたりうると結論したことを確認した閲覧 2026-08-27
  2. 2.The management of desmoid tumours: A joint global consensus-based guideline approach for adult and paediatric patients(European Journal of Cancer(Desmoid Tumor Working Group:EURACAN・EORTC STBSG・SPAEN・DTRF)・2020)全文(Internet Archive の誌上版HTML)で、デスモイド腫瘍(デスモイド型線維腫症、侵襲性線維腫症)が局所侵襲性の単クローン性線維芽細胞増殖で、WHO分類(第4版)の定義として浸潤性増殖と局所再発傾向をもつが転移能を欠く(「an inability to metastasise」)とされること、無症状例では部位・大きさによらず専門施設の監視下で経過観察から始める「積極的監視」が診断後の第一段階とされ、観察で進行した場合に手術が二次治療として受け入れられるのは腹壁の孤発例に限られ、他部位や家族性の例では薬物療法が二次治療とされること、CTNNB1変異とAPC変異は相互排他的でCTNNB1野生型(とくに腹腔内)ではFAPを疑うこと、抗ホルモン療法とNSAIDsについては「there is no evidence to consider antihormonal therapies and NSAIDs in patients with DT」と結論していることを確認した閲覧 2026-08-27
  3. 3.Specific mutations in the beta-catenin gene (CTNNB1) correlate with local recurrence in sporadic desmoid tumors(The American Journal of Pathology・2008)孤発性デスモイド138例の遺伝子型判定でCTNNB1変異が117例(85%)に認められ、その内訳がexon 3の2コドンに集中する41A(59%)・45F(33%)・45P(8%)であったこと、45F変異例の5年無再発生存率が23%と41A(57%)や非変異例(65%)より有意に低かったことを確認した閲覧 2026-08-27
  4. 4.Nirogacestat, a γ-Secretase Inhibitor for Desmoid Tumors(The New England Journal of Medicine・2023)進行性デスモイド腫瘍の成人142例を対象とした国際二重盲検無作為化第3相試験(DeFi試験)で、γセクレターゼ阻害薬ニロガセスタットがプラセボに比べ無増悪生存期間を有意に改善したこと(ハザード比0.29、95%信頼区間0.15〜0.55)、奏効率・疼痛・症状負担・身体機能・QOLでも有意な改善を認めたことを確認した閲覧 2026-08-27