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Symptoms · Published

曝露性角膜症

Exposure keratopathy

別名
露出性角膜症兎眼性角膜症
臓器系
眼科
科目
ENTInternal Medicine
トピック
耳鼻咽喉科 14:中枢性・末梢性顔面神経麻痺の鑑別、末梢性麻痺の原因と鑑別診断内科学 E-02:甲状腺疾患の症状・診断・治療

🧠 全体像は、)によって角膜が持続的に外気へ晒され、が上皮のバリアを上回ることで生じるである。原因は多彩に見えるが、という一つの機能がどこで壊れるかで整理すると6群に集約できる——を動かす神経の麻痺、しても瞼が届かないほどの、瞼そのものの位置異常、鎮静・全身麻酔によるの消失、睡眠中だけ閉じきらない、そしてによるの低下である。早期所見は角膜下方3分の1に限局するで、部分布と同じ所見を指す1。⚠️ もっとも見逃されやすいのは、ICUの鎮静下患者や全身麻酔中にが保たれているか確認されないまま数日が経過する場合で、予防が可能な医原性角膜障害の代表である。

定義と用語の整理

「目が乾く」「まぶたが閉じない」という所見の背景には、閉じる力そのものの問題と、力はあっても届いていない問題が混在する。

用語 意味
眼瞼が完全に閉じない状態そのもの。原因を問わない所見名
によって角膜が持続的に外気へ晒され、によって上皮が障害された結果としての角膜症
覚醒時の随意は保たれるが、睡眠中の弛緩によりが不完全になる状態。基礎疾患が無くても一定数の人にみられる
によるそのものが上皮のターンオーバーを落とすも低下するためを合併しやすいが、機序は別である

💡 があれば必ずになるわけではない。 による代償が追いつくかどうかが分かれ目であり、回数の減少が重なる患者では、同じ程度のでもより早く上皮障害に至る。

病態生理

という機能がどこで壊れるかで、原因は6群に整理できる。

  • の麻痺を動かすが障害されると、する力そのものが失われる。時に眼球が上外側へ回転するがあっても、瞼が閉じない以上、角膜は露出したままである。
  • の眼窩病変)や眼窩腫瘍で眼球が前方へ押し出されると、の力は保たれていても瞼が物理的に届かなくなる。を伴えばさらに悪化する。
  • 眼瞼位置異常後の瘢痕性はいずれも瞼縁が眼球に添わなくなる点で共通する。手術後のは報告によって高頻度にみられる1
  • 鎮静・全身麻酔下の:鎮静薬・神経そのものを消してしまい、ICUの鎮静下患者ではが高頻度にみられる1予防が可能な医原性の代表であり、意識障害・麻酔だけを理由にの確認を省略してはならない。
  • :覚醒時は正常にできても、睡眠中の弛緩により一定数の人にが起こる1
  • の合併があるとそのものが減り、が目立たなくても曝露に近い障害が起こる。と重なるが、の「力」が保たれているか「感覚による誘発」が保たれているかという別の軸で捉える。

⚠️ 見逃してはいけないもの

危険度の高い順に並べる。

  • ⚠️ を合併した例は、疼痛を訴えないまま実質融解・穿孔まで進む。 を合併していると上皮欠損が進んでも眼痛を訴えにくく、症状を待たず角膜の外観を定期的に確認する必要がある。
  • ⚠️ ICU・全身麻酔下でのは、確認さえすれば予防できる。 鎮静薬・神経によるの消失は高頻度に起こる1が、だけで済ませてよいわけではない。ICU重症患者を対象にしたでは、眼瞼単独よりポリエチレンカバーによるが、次いで単純なが眼表面障害の発生を有意に抑えた(はそれぞれ0.06、0.19)2テープで瞼を閉じただけで安心せず、を併用する。
  • ⚠️ が急速に進行しうる。 曝露が短期間で悪化するだけでなくを合併すれば視力そのものに関わるため、活動性の評価と並行して角膜保護を進める。
  • ⚠️ 上皮欠損の遷延はを経て角膜潰瘍へ進む。 曝露そのものへの対応が遅れるほど、への進展リスクが積み上がる。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lagophthalmos'>兎眼</span>・角膜下方の曝露所見を認める"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='voluntary'>随意的</span>な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='eyelid closure'>閉瞼</span>はできるか"}
    B -->|"できない"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='facial nerve palsy'>顔面神経麻痺</span>を評価"]
    B -->|"できるが閉じきらない"| D{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='exophthalmos'>眼球突出</span>はあるか"}
    D -->|"あり"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thyroid eye disease'>甲状腺眼症</span>・眼窩腫瘍を評価"]
    D -->|"なし"| F{"眼瞼の位置異常はあるか"}
    F -->|"あり"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='eversion'>外反</span>・欠損・術後瘢痕を評価"]
    F -->|"なし"| H{"鎮静下・全身麻酔中か"}
    H -->|"あり"| I["ICU・周術期の眼ケアを確認"]
    H -->|"なし"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nocturnal lagophthalmos'>夜間兎眼</span>を疑い<br>睡眠中の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='eyelid closure'>閉瞼</span>を確認"]
    C --> K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='corneal sensation'>角膜知覚</span>を確認<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurotrophic'>神経栄養</span>性の合併を除外"]
    E --> K
    G --> K
    I --> K
    J --> K
    K --> L["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluorescein staining'>フルオレセイン染色</span>の分布と<br>上皮欠損の深さを評価"]

対応の考え方

そのものへの介入は段階的で、原因の除去と並行して進める。

  • 第一段階は無添加の頻回点眼と、夜間の潤滑である1
  • が保たれない時間が長い患者では、眼瞼テープに加えて(ポリエチレンフィルムなど)やを併用する。単独よりのほうが眼表面障害の発生を有意に抑える2
  • 難治例では、を補助する(外側、上眼瞼への手術後であれば瞼縁の再調整など)に進む1
  • が原因であれば、原疾患(など)の治療が根本的な解決になる。
  • を合併する例では対症療法だけでは進行を止めきれないことがあり、症状に頼らない定期的な診察がそのまま治療の一部になる。

まとめ

  • による角膜の持続的な外気曝露とが上皮を障害する病態で、早期は角膜下方3分の1に限局するを示す。
  • 原因はの麻痺、、眼瞼位置異常、鎮静・全身麻酔下のの合併という6群に整理できる。
  • 最優先の見逃しは合併例の無痛性進行で、次いでICU・全身麻酔下での予防不足、の急速進行、による角膜潰瘍への進展と続く。
  • ICUでの予防は単独よりのほうが有効と示されており、テープさえ巻けば安心とはいえない。
  • 対応は・潤滑を土台に、、難治例では・原疾患治療へ段階的に進める。

出典

  1. 1.Exposure Keratopathy(American Academy of Ophthalmology (EyeWiki)・2026)曝露性角膜症の原因が顔面神経麻痺による眼輪筋麻痺、甲状腺眼症などによる眼球突出、眼瞼位置異常、鎮静薬・神経筋弛緩薬による瞬目反射消失(ICU鎮静下患者の兎眼発生率21〜75%)、夜間兎眼(健常者の最大23%に何らかの程度でみられる)、神経栄養性角膜症による瞬目反射低下に大別されること、眼瞼下垂手術後の兎眼発生率が報告により47%に達すること、早期所見が角膜下方3分の1に限局する点状上皮染色で進行すると上皮欠損の融合・潰瘍化・実質浸潤を経て瘢痕・穿孔・永久的な視力低下に至ること、治療が防腐剤無添加人工涙液の頻回点眼と夜間潤滑軟膏を土台に涙点プラグ・眼瞼テーピング・湿度チャンバー(湿度チャンバーが最も高い保護効果を示した)を経て難治例では一時的・永続的な瞼板縫合や上眼瞼への金プレート植込み、外眥形成術、眼窩減圧術に進むことを確認した。閲覧 2026-08-03
  2. 2.Efficacy of Simple Eye Ointment, Polyethylene Cover, and Eyelid Taping in Prevention of Ocular Surface Disorders in Critically Ill Patients: A Randomized Clinical Trial(Critical Care Research and Practice・2020)ICU重症患者124例・248眼を対象にした二重盲検ランダム化比較試験で、眼瞼テーピング単独と比べてポリエチレンカバーによる湿度チャンバー(オッズ比0.06)および単純眼軟膏(オッズ比0.19)が眼表面障害の発生を有意に抑えたこと(p=0.0001)、重症度スコアでもカバー・軟膏がテーピング単独より有意に低かった(p<0.0001、p=0.001)ことを確認した。閲覧 2026-08-03