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Symptoms · Published

点状表層角膜症

Superficial punctate keratitis

別名
点状表層角膜炎SPK
臓器系
眼科
科目
Medical Microbiology
トピック
微生物学 5/3:眼感染を起こす細菌とウイルス(一覧)とその診断微生物学 5/37:眼感染を起こす原虫と蠕虫(一覧)とその診断
関連疾患
シェーグレン症候群ベル麻痺(末梢性顔面神経麻痺)角膜炎乾燥性角結膜炎急性出血性結膜炎流行性角結膜炎

🧠 全体像:は、とで見えるの点状微小欠損の集合であり、それ自体が病名ではなくカスケードの入り口である——放置すれば面としての上皮欠損であるを経て、を伴えば角膜潰瘍へ進む。このノートの実用価値は一点に尽きる。染色の分布を見れば原因の見当がつく——下方なら乾燥・機械的、部の水平帯なら露出、上方ならや上輪部の炎症、びまん性なら毒性・ウイルス・外傷を疑う。⚠️ 唯一の例外が樹枝状に分岐する染色で、これは点状ではなくの所見であり、と誤ってステロイドを処方すると増悪する。

定義と用語の整理

「目がゴロゴロする」「充血する」という訴えの背景でを行うと、程度の異なるに出会う。3つを同じ「角膜が傷んでいる」で一括りにすると、可逆的な所見との高い病態を混同する。

用語 上皮欠損の性状 次の段階との関係
点状・微小な上皮欠損が多発し、で点在性に染まる 本ノートの主題。多くは可逆的
点状の欠損が融合し、面としての上皮欠損になる が進行・融合した状態
角膜潰瘍 上皮を越えて実質まで及ぶ欠損。多くは感染を伴う びらんにが加わった状態で、視力を左右する

⭐ そのものは診断名ではなく所見名である。 「なぜここで上皮が壊れているか」を問うことが診療の本体であり、次節の分布診断がその手がかりになる。

染色分布と原因の対応

でどこが染まるかを見るだけで、原因の見当を大きく絞り込める1。

分布 想定される原因 特記事項
下方(下部) による、睫毛乱生・・による機械的、・ もっとも頻度が高い分布
部(水平帯状、露出域) ・(など)による 早期は角膜下方3分の1に限局する2
上方 上輪部、コンタクトレンズ、 直線状のはにした異物を示唆し、上眼瞼をしなければ見つからない1
びまん性 薬剤毒性(、点眼の頻回使用)、、、 点眼薬による毒性・アレルギー反応はに限局して染まることもある(排出経路に沿ったの影響)1
樹枝状(点状ではない) 分岐し先端がに腫れる特徴的な形態を示し、と混同してはならない1

病態生理

原因は多彩だが、経路は少数の機序に集約される。

  • の破綻:は・・の3層構造を持ち、どの層が壊れても上皮は乾燥に晒される。の異常は、の異常は、の異常はの障害による。
  • 機械的な反復:向きの異常な睫毛やした眼瞼縁がのたびに角膜をこすり続ける。睫毛乱生・で角膜潰瘍に至る連鎖の入口として繰り返し登場するのが、この機序によるである。
  • 性:があるとが落ちるだけでなく、上皮のそのものが低下する。があるため痛みをしにくく、他の機序より発見が遅れやすい。
  • 毒性:や頻回の点眼そのものが上皮を直接傷害する。緑内障治療などで点眼が長期・多剤にわたる患者ほど蓄積しやすい。

⚠️ 見逃してはいけないもの

危険度の高い順に並べる。

  • ⚠️ をとし、ステロイド点眼を処方すること。 典型的な樹枝状潰瘍を欠く例では他の角膜症と区別しにくく、角膜炎はしばしばされる3。ステロイド単独で治療した群の42%が上皮角膜炎を発症したのに対し、抗ウイルス薬を併用した群では15%にとどまった3。で樹枝状病変を除外しないまま、角膜病変にステロイド点眼を処方しない。
  • ⚠️ 者の+眼痛+。 はの最大の危険因子であり、終日装用・でリスクがさらに上がる4。アカントアメーバ角膜炎の初期像でもありうる。装用者のにやを用いると二次的なのリスクが上がるため避ける4。
  • ⚠️ は痛みを訴えないまま進行する。 そのものが落ちているため、上皮欠損が進んでいても患者は眼痛を訴えにくい。症状の乏しさこそがであり、症状を待たず角膜の外観を定期的に確認する。
  • ⚠️ 上方のを見たら、必ず上眼瞼をしてを探す。 しなければ見つからない所見であり、を省くと原因を除去しないまま点眼だけを続けることになる1。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='superficial punctate keratopathy'>点状表層角膜症</span>を認める"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluorescein staining'>フルオレセイン染色</span>の分布を確認"]
    B --> C{"上方に染色があるか"}
    C -->|"あり"| D["上眼瞼を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='eversion'>翻転</span>し<br>異物・乳頭・上輪部の炎症を探す"]
    C -->|"なし・他部位が主体"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tear film break-up time, TBUT'>涙液層破壊時間</span>・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Schirmer test'>シルマー試験</span>を行う"]
    D --> E
    E --> F["眼瞼縁と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Meibomian gland'>マイボーム腺</span>の<br>状態を診察"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='corneal sensation'>角膜知覚</span>を確認<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurotrophic'>神経栄養</span>性を除外)"]
    G --> H["点眼歴・コンタクトレンズ歴を聴取"]
    H --> I{"樹枝状の分岐病変はあるか"}
    I -->|"あり"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='herpes simplex keratitis'>単純ヘルペス角膜炎</span>を疑う<br>ステロイド開始前に必ず除外"]
    I -->|"なし"| K["分布から想定される<br>原因へ個別に対応"]

対応の考え方

そのものを標的にした治療は、・点眼・程度しかない。本体は原因の除去であり、対症療法はそれまでの橋渡しにすぎない。

  • 下方の機械的には、睫毛乱生・の項で述べた・・眼瞼縁手術など、原因側の処置を優先する。
  • 部の露出には、の頻回点眼、夜間の潤滑、、が第一段階で、難治例ではを補助するに進む2。
  • 薬剤毒性には、点眼の減量・フリー製剤への切り替えを行う。緑内障治療など点眼を中止できない場合ほど、フリー化の優先度が上がる。
  • コンタクトレンズ関連には、装用中止がもっとも確実な対応であり、装用を続けたまま点眼だけを足しても再発する。
  • いずれの原因でも、樹枝状病変を除外しないままステロイド点眼で対症的に治療しないという一点だけは共通する。

まとめ

  • はの点状微小欠損の集合という所見であり、進行すれば、を伴えば角膜潰瘍へ至るカスケードの入口である。
  • 最大の実用価値はの分布が原因を教えること——下方は・機械的・眼瞼炎、部は曝露、上方は上輪部の炎症・コンタクトレンズ・、びまん性は薬剤毒性・ウイルス性・・、樹枝状は点状ではなくを示す。
  • 機序は3層構造のいずれかの破綻、機械的な反復、性、毒性の4群に整理できる。
  • 最優先の見逃しはのによるステロイド処方で、次いでコンタクトレンズ関連の細菌性・、症状に乏しい、しなければ見つからないと続く。
  • 対応の本体は原因の除去(睫毛の処置、補助、点眼の減量・フリー化、レンズ中止)であり、そのものへの治療は・という橋渡しにとどまる。

出典

  1. 1.Patterns of Staining(American Academy of Ophthalmology・2026)フルオレセイン染色パターンが分布によって原因を示唆すること——樹枝状染色は上方から中央にかけて分岐し先端が球状に腫れる単純ヘルペス角膜炎の所見であること、瞼裂部下方の染色は乾性角結膜炎に典型的でローズベンガル染色がより顕著に出ること、上方角膜の直線状点状染色は上眼瞼結膜に嵌入した異物を示すこと、下鼻側結膜に限局する染色は点眼薬が涙液排出経路に沿って重力の影響を受けた結果としてのアレルギー・毒性反応を示唆することを確認した。閲覧 2026-08-03
  2. 2.Exposure Keratopathy(American Academy of Ophthalmology (EyeWiki)・2026)曝露性角膜症の早期所見が角膜下方3分の1領域のフルオレセイン染色による点状上皮欠損であること、原因が顔面神経麻痺・眼瞼手術後・夜間兎眼・鎮静薬/筋弛緩薬、甲状腺眼症などによる眼球突出、三叉神経障害や神経疾患による角膜知覚低下、外反症・内反症・眼瞼欠損などの眼瞼位置異常に大別されること、治療は防腐剤無添加人工涙液の頻回点眼・夜間の潤滑軟膏・涙点プラグ・湿度チャンバーを軸とし難治例では眼瞼形成術に進むことを確認した。閲覧 2026-08-03
  3. 3.Herpes Simplex Virus Keratitis: A Treatment Guideline(American Academy of Ophthalmology (Ocular Microbiology and Immunology Group)・2014)単純ヘルペス角膜炎の診断はほぼ臨床的外観のみに基づくため典型的な樹枝状潰瘍を欠く例では他の角膜症と区別しにくく実際にしばしば誤診されること、ステロイド単独治療群の42%がHSV上皮角膜炎を発症したのに対し抗ウイルス薬併用群では15%にとどまったこと、ステロイドが免疫応答を広範に抑制しウイルス再活性化を促進しうるため未診断の角膜病変への使用は上皮潰瘍を悪化させる危険があることを確認した。閲覧 2026-08-03
  4. 4.Bacterial Keratitis Preferred Practice Pattern(American Academy of Ophthalmology・2023)コンタクトレンズ装用が米国における微生物性角膜炎の最大の危険因子であり終日装用・オルソケラトロジーでリスクがさらに高いこと、コンタクトレンズ装用者・外傷例の角膜擦過傷に対して早期の眼帯装用は二次的な細菌性角膜炎のリスクを高めるため推奨されないことを確認した。閲覧 2026-08-03