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Microbe Atlas · 原虫

Acanthamoeba castellanii

分類
アメーバ / AmoebaeAcanthamoeba
科目
Medical Microbiology
トピック
4/14: Acanthamoeba and Naegleria genus
原因となる疾患
角膜炎
作用する薬剤
プロパミジンポリヘキサニド

🧠 全体像:Acanthamoebaは・土壌にすむで、Naegleria fowleriと並んで「鼻から脳を狙う」点は共通するが、進行の速さが対照的である。Naegleriaが健常な若者を数日で死に至らしめる劇症型なのに対し、Acanthamoebaは主に免疫不全者にゆっくり進行するを起こす。さらにAcanthamoebaにはコンタクトレンズ関連角膜炎というもう一つの顔があり、こちらは免疫状態とに健常者にも起こる。

微生物学的な特徴

  • 感染型の栄養型(で運動)と、環境ストレス下で形成される二重壁の多角形嚢子を持つ。嚢子は塩素・乾燥・多くのに対する抵抗性が高い。
  • ・土壌・水道水・空調系・コンタクトレンズケースなど、ほぼどこにでも生息する。
  • ヒト病原種はA. castellanii・A. polyphagaなど複数にまたがる。

生活環

flowchart TD
  A["環境中の栄養型<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fresh water'>淡水</span>・土壌・水道水)"] --> B["ストレス下で嚢子化<br>(乾燥・栄養枯渇に抵抗)"]
  B --> A
  A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nasal mucosa'>鼻粘膜</span>から侵入"]
  A --> D["眼表面から侵入<br>(コンタクトレンズ汚染)"]
  A --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ulceration'>潰瘍化</span>・損傷した皮膚から侵入"]
  C --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cribriform plate'>篩板</span>を通過し中枢神経系へ<br>(緩徐進行)"]
  F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='granulomatous amebic encephalitis (GAE)'>肉芽腫性アメーバ性脳炎</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='granulomatous amebic encephalitis'>GAE</span>)"]
  D --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='corneal stroma'>角膜実質</span>に定着<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='amoebic keratitis'>アメーバ性角膜炎</span>"]
  E --> I["血行性に播種<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='disseminated disease'>播種性疾患</span>"]

病原性の仕組み

栄養型・嚢子の両方が感染性を持つ点がNaegleria fowleri(栄養型のみ)との大きな違いで、これが進行の緩徐さと診断像の違いにつながる。

  • GAE:主に免疫不全患者に発症し、単発または多発性のと脳浮腫を来す。Naegleriaと異なり進行は緩徐で、免疫不全者では他臓器へ播種しを形成することもある。
    • ⚠️ 潜伏期を「約10日」と日数で覚えない。 経過は亜急性〜慢性で、潜伏期は数週間から数か月に及ぶ。初発症状は頭痛・・悪心・めまい・・軽微な行動変化といった非特異的なもので、細菌性・ウイルス性のと区別しにくい1。米国はさらに踏み込み、曝露の時期が通常分からないため発症までの期間そのものが不明だとしている2。数日単位の潜伏期を想定すると、月単位で進む症例を鑑別から外してしまう。
  • 角膜炎:栄養型がのバリアを直接破壊して実質へ侵入する。免疫状態に関係なく発症し、強い眼痛(神経への浸潤に見合わない激痛)が特徴。
  • :免疫不全患者で多発性の軟部組織結節を来す。

感染経路と疫学

  • コンタクトレンズの保存液・洗浄液の汚染、水道水での調製した保存液の使用、レンズを装着したままの遊泳・シャワーが角膜炎の主な契機。
  • 夏季の湖水浴・水上スポーツへの参加がからの侵入経路になる。
  • ・は主に、臓器移植後、悪性腫瘍治療中などの免疫不全者に発症する。

起こす疾患

病型 宿主 特徴
主に免疫不全者 亜急性〜慢性の経過(潜伏期は数週間〜数か月)、緩徐進行の・脳浮腫
アメーバ性角膜炎 免疫状態を問わない(コンタクトレンズ使用者) 角膜潰瘍、所見に不釣り合いな強い眼痛
免疫不全者 多発性の軟部組織結節

診断

項目 内容
検体 、
検出法 +、(角膜炎)
検出される形態 栄養型と嚢子の両方——Naegleria fowleri(運動性栄養型のみ)との鑑別点
培養 グラム陰性菌を撒いた培地で培養——アメーバが移動した跡(トラック)が残る

治療と予防

中枢神経系・播種性感染(角膜炎以外)

有効性が確立された治療法は無い。 の推奨は生存例の少数の症例報告に基づくもので、治療期間も確立されていない(生存例の報告では数か月から数年に及ぶことが多い)。中止の判断は臨床状態と検査・画像所見を見て症例ごとに決める。予後は不良なままだが、推奨されるレジメンの中身は入れ替わっている。は角膜炎以外のすべての病型(・皮膚・・)に同一のを推奨している3。

薬剤 用法
静注 4 mg/kg/日。⚠️ 毒性が強く、健常な血液脳関門をよく通らないため、使うかどうかは臨床判断になる
経口、成人1.5 gを6時間ごと(小児は200 mg/kg/日を4〜6回に分け、上限6 g/日)
経口 37.5 mg/kgを6時間ごと(上限150 mg/kg/日)
カビに活性のある ・・のいずれか。用量は薬剤と患者で変わる
経口。体重45 kg未満は100 mg/日、45 kg以上は150 mg/日(小児は2.5 mg/kg/日、上限100 mg/日)
ニトロキソリン の経由の(米国では未承認。用量はへ照会する)

⚠️ とは、in vitroの効果が乏しいため推奨されない。 「なら何でもよい」という置き換えはできず、カビに活性のある薬に限られる3。かつて併用薬として挙げられていたは現在のレジメンには含まれない。

角膜炎

  • 局所を数か月から1年単位で続ける。 従来は(など)と(など)の点眼併用が標準だったが、第III相のODAK試験の(12か月以内に外科的介入もの変更も要さない治癒、多変量調整後)で0.08%単剤86.7%が0.02%+86.6%に対する要件を満たし、では0.08%点眼液が成人および12歳以上の小児の適応で承認された45。
  • 承認された用法は19日間の(昼間のみ、1時間間隔で1日16回を5日間→2時間間隔で1日8回を7日間→3時間間隔で1日6回を7日間)に続く(4時間間隔で1日4回を治癒まで、最長12か月)で、12か月以内に治癒しなければ中止する5。点眼回数と治療期間そのものが治療の負担になる点を患者へ最初に説明しておく必要がある。
  • 同試験では127例中17例(13.4%)が治療に失敗し、8例(6.3%)がを要した4。・早期治療開始が視力予後を左右する。

予防

  • コンタクトレンズは水道水に触れさせず、専用の消毒液で管理する。装着したままの遊泳・シャワーを避ける。報告例は世界的に増加しており、その大部分が者である6。
  • ⚠️ ただしコンタクトレンズを使っていない人の症例も報告されている6。レンズ装用歴が無いことを本症を除外する理由にしない。

まとめ

  • Acanthamoebaは・土壌にすむで、栄養型・嚢子の両方が感染性を持つ。
  • 免疫不全者に緩徐進行の(・脳浮腫)を、免疫状態を問わずコンタクトレンズ使用者に角膜炎を起こす二面性を持つ。の経過は亜急性〜慢性で、潜伏期は数週間から数か月に及ぶ(日数で言い切れる潜伏期は無い)12。
  • ・では栄養型と嚢子の両方が検出される——運動性栄養型のみが検出されるNaegleria fowleriとの鑑別点。
  • に比較対照試験で確立された治療法はなく予後不良だが、現在推奨されるレジメンは+++カビに活性のある+ので、・は推奨されない3。
  • 角膜炎は局所の早期投与が視力予後を左右し、投与は数か月から最長12か月に及ぶ。0.08%単剤が従来の併用療法に対してを示している45。
  • 予防の中心はコンタクトレンズの適切な管理(水道水との接触回避、専用消毒液の使用)。

出典

  1. 1.Neuroinvasive Free-Living Amoebae Pathogenesis, Neuroinflammation and Therapeutic Challenges(International Journal of Molecular Sciences・2026)Europe PMC の fullTextXML(PMC13361060。doi.org からの mdpi.com 本体は403)で本文を確認した。肉芽腫性アメーバ性脳炎の節が「The disease usually follows a subacute to chronic course, with an incubation period ranging from several weeks to several months」と述べ、経過が亜急性〜慢性で潜伏期が数週間から数か月に及ぶとすること。同じ節が初発症状を非特異的とし「Patients commonly present with headache, low-grade fever, nausea, dizziness, irritability, or subtle behavioral changes」「may mimic bacterial or viral meningoencephalitis」と記すこと。⚠️ 「潜伏期は約10日」に相当する記載はこの総説には無い。Naegleria fowleri については「Clinical symptoms usually develop within 1–7 days」としており、CDCの1〜12日とは幅が違う——本文はCDCを採り、この値は記録に留める。閲覧 2026-09-28
  2. 2.Clinical Signs of Non-keratitis Acanthamoeba Infections(Centers for Disease Control and Prevention・2025)Wayback Machine の2026年7月25日保存版(2026-09-28に `curl --compressed` で取得。cdc.gov 本体は403)で本文を確認した。ページの更新表示は2025年3月27日。医療者向けの本文が「The amount of time it takes to get sick from an Acanthamoeba infection is unknown since exposure to the ameba is usually unknown」と明記し、曝露の時期が通常分からないため発症までの期間そのものが不明だとすること。⚠️ 潜伏期を日数で示す記載はこのページには無い。閲覧 2026-09-28
  3. 3.Clinical Treatment of Non-keratitis Acanthamoeba Infections(Centers for Disease Control and Prevention・2025)角膜炎以外のすべてのAcanthamoeba感染(肉芽腫性アメーバ性脳炎、皮膚アメーバ症、鼻副鼻腔炎、播種性感染)に同一の多剤併用レジメンが推奨されており、その内容がペンタミジン静注4 mg/kg/日、スルファジアジン経口(成人1.5 gを6時間ごと)、フルシトシン経口37.5 mg/kgを6時間ごと、カビに活性のあるアゾール(ボリコナゾール・ポサコナゾール・イサブコナゾールのいずれか)、ミルテフォシン経口(体重45 kg未満は100 mg/日、45 kg以上は150 mg/日、小児は2.5 mg/kg/日で上限100 mg/日)であること、ニトロキソリンはCDCの拡大アクセスプログラムを通じて入手する治験薬であること、フルコナゾールとイトラコナゾールはin vitroの効果が乏しいため推奨されないと明記されていること、ミルテフォシンは現在市販されていること、脳炎は皮膚アメーバ症より生存率が低いことを確認した。あわせて「Acanthamoeba による感染に有効な治療法は確立されていない」「以下の推奨は少数の生存例の症例報告に基づく」「治療期間も確立されておらず、生存例の報告では数か月から数年に及ぶことが多い」「中止の判断は症例ごとに臨床状態と検査・画像所見を踏まえて行う」とすること、ペンタミジンについて「毒性が強く、健常で無傷の血液脳関門をよく通らないため、使用は臨床判断でなければならない」と注記していること、スルファジアジンの小児用量が200 mg/kg/日を4〜6回に分け上限6 g/日、フルシトシンの上限が150 mg/kg/日であることを確認した。ケトコナゾールはこの文書に一度も登場しない。ページ末尾の更新表示は2025年11月20日である(2026-09-27 に Wayback の 2026-09-13 保存版を curl で再取得して同内容を確認)。閲覧 2026-09-27
  4. 4.The Orphan Drug for Acanthamoeba Keratitis (ODAK) Trial: PHMB 0.08% (Polihexanide) and Placebo versus PHMB 0.02% and Propamidine 0.1%(Ophthalmology(米国眼科学会)・2024)抄録で確認した(全文は出版社サイトが403のため未取得)。欧州6施設で135例を組み入れた前向き無作為化二重遮蔽実薬対照の第III相試験で、主要評価項目が12か月以内に外科的介入も抗アメーバ薬の変更も要さない治癒率であること、事前規定の多変量調整後の治癒率が0.02%ポリヘキサニド+プロパミジン86.6%・0.08%ポリヘキサニド単剤86.7%で単剤の非劣性要件が満たされたこと、全体の治療失敗が127例中17例(13.4%)・治療的角膜移植を要したのが127例中8例(6.3%)であったことを確認した。結論は「単剤は併用療法と同等か、悪くても8ポイント劣る程度でありうる」という条件付きの言い方である。閲覧 2026-09-27
  5. 5.AKANTIOR 0.8 mg/mL eye drops, solution — Summary of Product Characteristics(European Medicines Agency・2024)0.08%ポリヘキサニド点眼液がEUで成人および12歳以上の小児のAcanthamoeba角膜炎に承認されていること、用法が19日間の強化期(昼間のみ、1時間間隔で1日16回を5日間、2時間間隔で1日8回をさらに7日間、3時間間隔で1日6回をさらに7日間)に続く継続期(4時間間隔で1日4回を治癒まで、最長12か月)であること、12か月以内に治癒しない場合は中止することを確認した。治療が数か月から1年に及ぶ根拠として引いている。閲覧 2026-09-27
  6. 6.An update on Acanthamoeba keratitis: diagnosis, pathogenesis and treatment(Parasite・2015)Europe PMC の抄録(PMID 25687209)で確認した。Acanthamoeba角膜炎の報告例が世界的に年々増加しており、その大部分はコンタクトレンズ装用者に生じるが、「非装用者の症例も報告されている(cases have also been reported in non-contact lens wearers)」と明記されていること。書誌は2026-09-27にCrossref(DOI 10.1051/parasite/2015010)で照合し、著者が Jacob Lorenzo-Morales・Naveed A. Khan・Julia Walochnik の3名、掲載誌 Parasite 第22巻論文番号10、2015年であることを確認した。Siddiqui は著者に含まれないため、以前の `siddiqui-` を含む出典 id をこの3ファイルで付け替えた。閲覧 2026-09-27