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Drug Atlas · C3 Antiparasitics / 抗寄生虫薬 · 必修

サルファジアジン

sulfadiazine

分類
Antiparasitics / 抗寄生虫薬Antibiotics / 抗菌薬
科目
Pharmacology
トピック
C3: Antiprotozoal and antihelminthic drugsCore51: Drug-induced adverse reaction: sulfonamide allergy and its characterization
承認適応
トキソプラズマ症
禁忌疾患
遺伝性・後天性溶血性貧血(G6PD欠乏症を含む)
副作用
皮疹黄疸
監視検査値
クレアチニン
影響検査値
ビリルビン

🧠 全体像:を理解する軸は「とセットでしか語れない薬」という一点に尽きる。単剤では抗活性が弱く、の上流()をが、下流()をが同時に叩く「」によって初めてな抗原虫効果が生まれる。この組み合わせ自体は/(ST合剤)と同じ発想だが、標的が細菌ではなく原虫であり、相方がではなくである点が違う。

薬効群の中での位置づけ

をする抗菌薬・のグループの一員として理解する。

薬剤 阻害する酵素 相方 主な標的
(上流) Toxoplasma gondii
(上流) 細菌、Pneumocystis jirovecii
(上流、腸内で分解後) — 腸管の炎症(ではなく抗炎症作用が主)

⭐ 「上流と下流を別の薬で同時に叩く」という発想が、単剤より併用の方が効く理由。 単独ではを阻害しても迂回経路や不完全な阻害で原虫が生き残りうるが、が下流のを同時に阻害することで葉酸依存性の合成が完全に止まり、が生まれる。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sulfadiazine'>サルファジアジン</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='para-aminobenzoic acid, PABA'>PABA</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='para-aminobenzoic acid (PABA)'>p-アミノ安息香酸</span>)と構造類似"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dihydropteroate synthase'>ジヒドロプテロ酸合成酵素</span>を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='para-aminobenzoic acid, PABA'>PABA</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='competitive'>競合的</span>に阻害"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='para-aminobenzoic acid, PABA'>PABA</span>→ジヒドロプテロ酸の合成が止まり<br>その先の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dihydrofolate (DHF)'>ジヒドロ葉酸</span>も作れない"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='folate pathway'>葉酸経路</span>の上流が遮断される"]
    E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pyrimethamine'>ピリメタミン</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dihydrofolate reductase (DHFR)'>ジヒドロ葉酸還元酵素</span>を阻害(下流)"] --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dihydrofolate (DHF)'>ジヒドロ葉酸</span>→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tetrahydrofolate (THF)'>テトラヒドロ葉酸</span>の再生も止まる"]
    D --> G["上流・下流の二重遮断で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tetrahydrofolate (THF)'>テトラヒドロ葉酸</span>が枯渇"]
    F --> G
    G --> H["プリン・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pyrimidine synthesis'>ピリミジン合成</span>が止まり<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deoxyribonucleic acid'>DNA</span>複製ができない"]
    H --> I["Toxoplasma gondiiの増殖が抑制される"]

💡 ヒト細胞が影響を受けにくい理由は「材料を作る酵素を持たないから」。 ヒトは葉酸を食事から取り込むため、を持たずの標的にならない。一方ではヒトにも存在するため、の方が骨髄抑制などヒトへの影響が出やすく、これが(物そのものを補充し、ヒトの酵素を迂回させる薬)を必ず併用する理由になる。

薬物動態

項目 値・特徴
吸収 経口で良好に吸収される
分布 血液脳関門を通過し中枢神経系に移行(の治療に必須の性質)
溶解度 中で溶解度が低くしやすい——用法・用量の項で述べる対策の根拠
排泄 主に(未変化体・アセチル化代謝物)

適応

領域 使いどころ
感染症・産科 +との併用によるの治療(先天性・を含む)、および胎児感染確定後の母体治療
感染症(補助的) 、、・、尿路感染症、の(ペニシリンの代替)、熱帯熱マラリアのなど、他のが使えない場面の代替12

⚠️ の「予防投与」は、限定を落とすと逆に危ない。 米国添付文書が予防投与の適応としているのは感受性のA群株が優勢であると分かっている家族内・閉鎖集団に限られ、同じ文に「B群・C群が優勢な状況での予防的有用性は証明されておらず、閉鎖集団ではかえって有害となりうる」と書かれている。治療として使う場合も、菌の感受性が確認されていることが条件である1。

💡 で第一選択になるのはではなくST合剤である。 適応として並んでいることと、現在の第一選択であることは別である(→)。

用法・用量

では・(薬剤)と必ず併用する。この3剤併用が標準レジメンであり、はに伴う骨髄抑制を補う目的で加える3。

米国添付文書が示す一般感染症の用量は次のとおりで、のレジメンはこれとは別に組む(用量は年齢・体重・妊娠の有無・免疫状態で大きく異なるため、施設のプロトコルで確認する)1。

対象 用量
成人 初回2〜4 g、維持2〜4 gを1日3〜6回に分割
生後2か月以上の小児 初回は24時間量の半量、維持150 mg/kg または4 g/m²/日を1日4〜6回に分割(最大6 g/日)
の再発予防 体重30 kg未満で500 mg/日、30 kg以上で1 g/日

⚠️ ・結石・腎障害を防ぐため、十分なを行う。 米国添付文書は1回の服用ごとにコップ1杯(約240 mL)の水を飲み、日中も頻回に水分を摂るよう患者指導することを求めている1。尿量としては1日1,200〜1,500 mL程度が目安とされる(この数値は文書ではなくMSDマニュアル プロフェッショナル版の記述である)4。は中で溶解度が低いという上の性質が、この指導の根拠である。

禁忌・注意

禁忌欄の中身は国によって違う。 な総説を根拠に禁忌を並べると、実際の文書にある除外規定が落ちる。

文書 禁忌欄(そのまま)
スペインの4.3(2025年5月改訂) ①・添加剤への過敏症 ②他の・・・への過敏症 ③重度の腎障害または肝障害 ④ ⑤生後2か月未満(のおそれ) ⑥欠乏症(溶血のおそれ)。あわせてでは安全と考えられないと記載5
①への過敏症 ②生後2か月未満の乳児——ただし併用によるの治療は除く ③妊娠末期および(のおそれ)1

⚠️ 「生後2か月未満は禁忌」だけを覚えると、の治療機会を失う。 米国添付文書は禁忌の項でも用法の項でも、併用によるの治療を明示的に除外している1——本ノートの適応の項が挙げているが、まさにその除外の中身である。スペインの4.3には同じ除外規定が置かれていないので、どちらの文書に依拠しているかを言わずに「生後2か月未満は禁忌」と断定しない。

💡 の機序は、相互作用の機序とまったく同じである。 はアルブミン上の結合部位を奪う。新生児ではその相手がなのでが増え、血液脳関門を越えて(脳症)になり5、成人では相手がワルファリンやメトトレキサートなのでそれらの遊離型が増えて作用が増強される1。

⚠️ 欠乏症の位置づけは文書で割れている。 スペインのは4.3の禁忌に置き5、米国添付文書は PRECAUTIONS に置いたうえで「この反応はである」と明記している1。どちらにせよ欠乏症の患者では溶血のリスクを織り込む。

  • ⚠️ 一度でも重篤な過敏反応(・症候群など)を経験したら再投与しない。 として記録し、他の薬剤も避けるよう患者に説明する2。スペインのはSJS・の発現リスクが最も高い時期は治療開始後の最初の数週間だとし、水疱を伴う進行性の皮疹や粘膜病変が出たら直ちに中止するよう求めている(早期の中止が予後の改善と結びつく)5
  • 単独では抗活性が不十分なため、必ずと併用する(単剤での使用は想定されていない)
  • ⚠️ の感染症の治療には使わない。 米国添付文書は、成立した感染では菌を排除できず・糸球体腎炎といったを防げないと明記している1——の再発予防に使えることと混同しない

相互作用

は血漿アルブミンの結合部位をめぐって他剤と競合する。方向は2通りある1。

向き 起きること 代表例
が相手を追い出す 相手の遊離型が増えて作用が増強 経口抗凝固薬(ワルファリン)、メトトレキサート、、、
相手がを追い出す の遊離型が増えて毒性が出やすくなる 、、

副作用

頻度 内容
比較的高頻度 皮疹・発熱・悪心・下痢
注意 ・結石・(水分不足時)、黄疸を伴うの肝障害2
重篤・まれ ・・症候群、、・2、欠乏症での溶血

⚠️ 「」であって「特発性」ではない。 LiverToxは全文を通じて idiosyncratic liver injury と書き、idiopathic は一度も使っていない2。特発性は「原因不明」を意味するが、ここは薬剤アレルギー・過敏症の性質をもつ、宿主側の体質に規定された反応という意味で、原因薬はだと分かっている(LiverToxは機序として、毒性・反応性・をもつ代謝物を介した薬剤アレルギーないし過敏反応を示唆している)。典型的な経過は突然の発熱と皮疹に続いて数日〜数週で黄疸が生じるもので、好酸球増多やを伴えば症候群の一部とみなされる。再投与では発現までの期間が短くなり、1日で出ることもある2。

まとめ

  • はとセットで初めて機能する抗薬。の上流()を阻害し、下流を阻害するとでを生む。
  • ヒトはこの酵素を持たないためが成り立つ一方、中でしやすいため十分なが必須の注意点になる。
  • 禁忌は国で違う。 妊娠末期(スペインのでは)・・生後2か月未満はのため禁忌だが、米国添付文書は併用によるの治療をこの禁忌から除外している1。欠乏症はスペインのでは禁忌、米国添付文書ではの注意である5。
  • ・症候群などの既往があれば再投与しない。肝障害は特発性ではなくである2。

出典

  1. 1.Sulfadiazine Tablets, USP 500 mg — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration(DailyMed。Chartwell RX, LLC)・2024)「Rev. 09/2024」と印字された米国添付文書で、CONTRAINDICATIONS が3項目(サルホンアミドへの過敏症/生後2か月未満の乳児——ただしピリメタミン併用による先天性トキソプラズマ症の治療は除く/妊娠末期および授乳期。核黄疸のおそれ)であること、適応に軟性下疳・トラコーマ・封入体結膜炎・ノカルジア症・尿路感染症・トキソプラズマ脳症(ピリメタミン併用の補助療法)・クロロキン耐性熱帯熱マラリアの補助療法・サルホンアミド感受性のA群株が優勢な場合の髄膜炎菌性髄膜炎の予防・感受性が確認された髄膜炎菌性髄膜炎の治療・インフルエンザ菌による急性中耳炎(ペニシリン併用)・リウマチ熱再発予防(ペニシリンの代替)・インフルエンザ菌髄膜炎(ストレプトマイシン併用の補助)が並ぶこと、G6PD欠乏症での溶血は PRECAUTIONS に置かれ用量依存であると明記されていること、結晶尿と結石の予防に十分な水分摂取(1回ごとに約240 mLの水)を求めていること、成人用量が初回2〜4 g・維持2〜4 gを3〜6分割、生後2か月以上の小児が維持150 mg/kg または4 g/m2を4〜6分割で最大6 g/日、リウマチ熱予防が30 kg未満500 mg/日・30 kg以上1 g/日であること、アルブミン結合の置換を介して経口抗凝固薬・メトトレキサート・スルホニル尿素薬などの作用を増強しうることを確認した閲覧 2026-09-16
  2. 2.Sulfadiazine(LiverTox(NIDDK / NCBI Bookshelf)・2026)サルファジアジンの機序(葉酸合成阻害)、適応(尿路感染症・中耳炎・リウマチ熱予防・髄膜炎菌性髄膜炎予防に加え、ピリメタミンと併用したトキソプラズマ症の治療・予防、ノカルジア症・軟性下疳・トラコーマにも有効)、重篤な副作用(過敏反応・DRESS症候群・Stevens-Johnson症候群・中毒性表皮壊死症・再生不良性貧血・無顆粒球症・血小板減少症)を確認した。肝障害は原文が一貫して idiosyncratic(特異体質性)と書いており idiopathic は全文0件である。典型的な経過は発熱と皮疹が突然生じ数日〜数週で黄疸が続くもので、再投与は行わずサルホンアミドアレルギーとして記録すべきとしている閲覧 2026-08-10
  3. 3.Toxoplasmosis(StatPearls Publishing (NCBI Bookshelf)・2024)トキソプラズマ症治療の標準レジメンがピリメタミン+サルファジアジンであり、サルファジアジンによる葉酸合成阻害を補うために葉酸系薬剤(ロイコボリン)を併用することを確認した閲覧 2026-08-10
  4. 4.Sulfonamides(MSD Manual Professional Edition・2026)サルホンアミド系薬の機序(PABAからジヒドロ葉酸への変換を競合阻害)、結晶尿を防ぐための十分な水分補給(尿量1200〜1500 mL/日を目安)、G6PD欠乏症での溶血リスク、妊娠後期・授乳中・生後2か月未満での使用が禁忌であること(ビリルビン非抱合分画の上昇による核黄疸リスクのため)を確認した閲覧 2026-08-10
  5. 5.Ficha técnica Sulfadiazina Reig Jofre 500 mg comprimidos(Agencia Española de Medicamentos y Productos Sanitarios(CIMA。Laboratorio Reig Jofre)・2025)2025年5月改訂のスペインの製品概要で、4.3の禁忌が6項目(有効成分・添加剤への過敏症/他のサルホンアミド・スルホニル尿素系血糖降下薬・チアジド系利尿薬・炭酸脱水酵素阻害薬への過敏症/重度の腎障害または肝障害/妊娠第3三半期/生後2か月未満——サルホンアミドがアルブミンからビリルビンを置換し核黄疸を起こしうるため/G6PD欠乏症——溶血のおそれ。あわせてポルフィリン症では安全と考えられないと記載)であること、米国添付文書と違って先天性トキソプラズマ症の除外規定が置かれていないこと、4.4がStevens-Johnson症候群・中毒性表皮壊死症の発現時期を治療開始後最初の数週間とし直ちに投与を中止するよう求めていることを確認した閲覧 2026-09-16