薬剤ノート一覧へ

Drug Atlas · C1 Antiseptics & disinfectants / 消毒・防腐薬

プロパミジン

propamidine

分類
Antiseptics & disinfectants / 消毒・防腐薬
商品名(EU)
Brolene
科目
Pharmacology
トピック
C1: Disinfectants and antiseptics
承認適応
結膜炎
標的微生物
Acanthamoeba castellanii
副作用
眼痛
対象疾患
角膜炎

🧠 全体像:は系ので、単独では軽症の・眼瞼炎のという地味な立ち位置にとどまるが、臨床的な重みは別のところにある——Acanthamoeba角膜炎に対する古典的な併用療法の一角として、()やと並び、正式な承認の裏づけがないまま数十年にわたり世界の事実上の標準治療を支えてきた薬である。⚠️ 本剤単独でAcanthamoeba角膜炎に承認されている国は無く、英国のSmPC上の適応も「軽症の結膜炎・眼瞼炎」にとどまる——角膜炎への使用は文献に基づくである。

位置づけ

はので、広範な微生物に対して静菌作用を示すに分類される1。されている点眼液(Brolene、イセチオン酸塩0.1%)としての正式な適応は結膜炎・眼瞼炎などの軽症の症であり、Acanthamoeba角膜炎は含まれない1。

⭐ 臨床的に重要なのは、(など)と(・)の併用が、Acanthamoeba角膜炎の治療で最も多く使われてきた組み合わせであるという歴史的経緯である。は栄養型・嚢子のいずれにも一定の効果を持つが、単剤ではなくまたはとの併用でのみ用いられる。

機序

のは、のによる膜構造の変化に基づき、細胞膜の透過性を変化させることで発揮される1。グラム陽性の菌に強く働く一方、グラム陰性菌やへの効果は弱い。Acanthamoebaに対しては栄養型・嚢子の両方に作用するが、ほどの嚢子殺滅力は無いとされ、ではなく併用療法の一員として使われてきた背景がある。

適応

  • 正式な適応(英国SmPC):結膜炎・眼瞼炎などの軽症の1
  • として確立している用途:Acanthamoeba角膜炎の治療。またはとの併用で用いる23

用法・用量

  • 軽症症(英国SmPC承認用量):1回1〜2滴を1日4回まで点眼。2日間で明らかな改善が無ければ受診を勧める1
  • Acanthamoeba角膜炎():文献上は0.1%を 0.02%と併用する頻回点眼レジメンで用いられ、治療期間は臨床経過で調整される23。標準化されたの用量レジメンは存在しない

禁忌・注意

  • 禁忌:本剤成分への過敏症1
  • ハード・ソフトいずれのコンタクトレンズにも不適合1
  • ⚠️ 長期使用でを来しうる。 Acanthamoeba角膜炎の治療では数週〜数か月におよぶ頻回点眼が必要になるため、を経過観察しながら投与を続ける必要がある
  • 視力障害や症状悪化時は中止して受診する1
  • 開封後は家庭用28日以内・病院用7日以内に廃棄する(塩化物を含有)1

副作用

過敏反応のほか、刺激感・灼熱感を伴う眼痛がSmPC上の副作用として挙げられている1。

Acanthamoeba角膜炎治療の文脈では、Brolene Study Groupの多施設(87眼登録、解析対象60眼中50眼〔83%〕で治療成功)で重篤な有害事象は特記されておらず、プロトコルからの逸脱(治療の中断)が増悪につながった例が報告されている2。⚠️ ・に至った症例は、感染制圧前に穿孔を行った例に限られており、著者らは穿孔を視力回復目的に限定し、の減量目的には行うべきでないとしている2。

まとめ

  • は系ので、正式な適応は結膜炎・眼瞼炎など軽症の症にとどまる。
  • Acanthamoeba角膜炎への使用は適応外でありながら、・との併用療法として数十年にわたり世界の事実上の標準治療を支えてきた。
  • ODAK試験では、0.02%+0.1%の併用療法が、高濃度(0.08%)単剤に対してを示された(調整後治癒率86.6% vs 86.7%)。
  • Brolene Study Group(1999年)のでは、+併用でAcanthamoeba角膜炎の83%が治療成功に至った。
  • ⚠️ 長期の頻回点眼により毒性角膜症を来しうるため、経過観察を要する。

出典

  1. 1.Brolene Eye Drops (propamidine isethionate 0.1%) — Summary of Product Characteristics(Thornton & Ross Ltd(STADA)・2021)適応症が「minor eye infections such as conjunctivitis and blepharitis(結膜炎・眼瞼炎などの軽症の眼感染症)」であること(**Acanthamoeba角膜炎は正式な適応に含まれない**)、用法・用量が「1回1〜2滴を1日4回まで」で2日間で明らかな改善が無ければ受診を勧めること、禁忌が本剤成分への過敏症のみであること、警告として視力障害や症状悪化時は中止して受診すること・ハード/ソフトコンタクトレンズへの使用は不適合であること・開封後は家庭用28日/病院用7日以内に廃棄すること、薬理学的特徴が「bacteriostatic properties against a wide range of organisms(広範な微生物に対する静菌作用)」を持つ芳香族ジアミジン系に属すること、副作用として過敏反応や刺激感・灼熱感を伴う眼痛が挙げられていること、改訂日が2021年11月1日であることを確認した。閲覧 2026-09-16
  2. 2.Results of a trial of combined propamidine isethionate and neomycin therapy for Acanthamoeba keratitis. Brolene Study Group(Ophthalmology(Hargrave SL, McCulley JP, Husseini Z)・1999)eutils(PMID 10328395)で全文抄録を確認した。多施設・非対照・非盲検の前向き試験で、Acanthamoeba角膜炎87眼(患者83例)が登録され、有効性・安全性を解析できた60眼のうち50眼(83%)で治療成功が得られたこと、プロトコル遵守群30例(60%)は良好に推移した一方でプロトコルを逸脱した患者では維持療法期に増悪がみられたこと、眼球摘出・眼球癆に至ったのは角膜移植を感染制圧前に行った17眼中7眼のみであったこと、結論として「プロパミジンイセチオン酸塩とネオマイシンの併用はAcanthamoeba角膜炎の有効な治療である」とし、**穿孔角膜移植は視力回復目的に限定し、活動性感染の減量目的に行うべきではない**と述べていることを確認した。閲覧 2026-09-16
  3. 3.The Orphan Drug for Acanthamoeba Keratitis (ODAK) Trial: PHMB 0.08% (Polihexanide) and Placebo versus PHMB 0.02% and Propamidine 0.1%(Ophthalmology(米国眼科学会)・2024)抄録で確認した(全文は出版社サイト・ScienceDirect・Southamptonリポジトリのいずれも403で取得できなかった)。欧州6施設で135例を組み入れた前向き無作為化二重遮蔽実薬対照の第III相試験で、対照群を「0.02%ポリヘキサニド+0.1%プロパミジンの併用療法」とし、事前規定の多変量調整後の12か月以内の治癒率が併用群86.6%(未調整88.5%)・0.08%ポリヘキサニド単剤群86.7%(未調整84.9%)で、単剤の非劣性要件は満たされた(調整後の差0.1ポイント、片側95%信頼限界の下限 -8.3ポイント)こと、結論が「単剤は併用療法と同等か、悪くても8ポイント劣る程度でありうる」という条件付きの言い方であることを確認した。閲覧 2026-09-16