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Symptoms · Published

上輪部角結膜炎

Superior limbic keratoconjunctivitis

別名
SLKTheodore上輪部角結膜炎
臓器系
眼科
科目
Internal Medicine
トピック
内科学 E-02:甲状腺疾患の症状・診断・治療
関連疾患
バセドウ病

🧠 全体像は、・上方球・上輪部という上方だけに限局する慢性の炎症で、が上方に分布する代表的な原因の1つである。この分布には理由がある——の弛緩を背景に、のたびにと上方球がこすれ合う機械的な微小外傷が土台にあり、上眼瞼をして初めて充血・肥厚・・上輪部染色・が見つかる。下方ばかり診ていると存在に気づかれない。実用上の価値は2つの関連を取りこぼさないことにある——甲状腺機能異常が最大30%の患者に合併すること、そしてコンタクトレンズ関連SLKは古典的なTheodore型とは機序そのものが異なりレンズ保存液のへの過敏反応が関わることである。

定義と用語の整理

上方の充血や点状染色を見たとき、「上方に何かある」という所見を一括りにすると、機序も対応もまったく違う病態を混同する。

用語 所見の性状 本ノートとの関係
上輪部(Theodore型) と上方球の反復摩擦による慢性炎症。上輪部の充血・肥厚、、しばしばを伴う 本ノートの主題
コンタクトレンズ関連SLK 臨床像はTheodore型に似るが、機序はレンズ保存液中のなど)への過敏反応であり機械的摩擦が主体ではない1 装用中止が対応の軸になる、機序が別の病態
した異物による直線状の点状角膜染色 びまん性の上輪部と異なり、線状の痕という所見で区別する

いずれも上眼瞼をしなければ見つからないという一点だけは共通する。

病態生理

  • 機械的な微小外傷(Theodore型)の弛緩を背景に、のたびにと上方球がこすれ合う。といった組織学的変化が生じ、摩擦により誘導されるTGF-β2やの上昇が報告されている2。慢性・再発性の経過を取りやすい。
  • コンタクトレンズ関連:機序が異なり、レンズ保存液中のなどのに対する過敏反応であるとされる1。機械的摩擦ではなくへの過敏反応が主体である点が、Theodore型との本質的な違いである。
  • 甲状腺機能異常との関連:SLK患者の最大30%に甲状腺機能異常の合併が報告されている2。機序そのものは機械的微小外傷とは別に論じられているが、SLKを診断したら甲状腺機能を確認するという結びつきに実用的な価値がある。

⚠️ 見逃してはいけないもの

危険度の高い順に並べる。

  • ⚠️ 上眼瞼をしなければ診断できない。 所見は上方の球・上輪部・に限局するため、下方だけを見る通常の診察では見逃される。上方の充血や点状染色に気づいたら、必ず上眼瞼をして上輪部・を確認する2
  • ⚠️ 甲状腺機能異常の見落とし。 SLKはをはじめとする甲状腺機能異常に最大30%の頻度で合併する2。SLKを診断したらの測定を検討する。
  • ⚠️ コンタクトレンズ関連SLKを、装用を続けたまま点眼だけで治療しようとすること。 原因が保存液のへの過敏反応である以上、装用を中止しなければを繰り返す1
  • ⚠️ との取り違え。 直線状の点状染色をびまん性の上輪部と混同すると、除去すべき異物を見逃したまま点眼治療を続けることになる。分布の形状(びまん性か直線状か)で切り分ける。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["上方の球<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conjunctival injection (hyperemia)'>結膜充血</span>・点状染色を認める"] --> B["上眼瞼を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='eversion (of foreskin)'>翻転</span>する<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='eversion (of foreskin)'>翻転</span>しなければ見逃す)"]
    B --> C{"染色・炎症の分布は<br>びまん性か直線状か"}
    C -->|"直線状の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stroke/scratch (stimulus)'>擦過</span>痕"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subtarsal foreign body'>瞼板下異物</span>を疑い<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='superior palpebral conjunctiva'>上眼瞼結膜</span>を精査"]
    C -->|"びまん性"| E["上輪部染色・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='superior palpebral conjunctiva'>上眼瞼結膜</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='papillary hypertrophy'>乳頭増殖</span>・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='filamentary keratitis'>糸状角膜炎</span>の有無を確認"]
    E --> F{"コンタクトレンズ<br>装用歴はあるか"}
    F -->|"あり"| G["保存液の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='preservative'>防腐剤</span>への<br>過敏反応を疑い装用中止を検討"]
    F -->|"なし"| H["Theodore型上輪部<span class='jp-term jp-term-diagram' title='keratoconjunctivitis'>角結膜炎</span><br>と判断"]
    G --> I["甲状腺機能を確認する"]
    H --> I

対応の考え方

上輪部そのものを標的にした治療は段階的で、標準治療は確立されておらず部分寛解と再発が一般的である2

  • コンタクトレンズ関連では、装用中止との頻回使用が第一歩であり、病変が消退した後にレンズを再開する場合は無添加と頻回のレンズ洗浄を指導する1
  • Theodore型の保存的治療は、局所ステロイド・局所・局所0.5%点眼、まで幅がある2
  • 難治例では、液体窒素によるや、を併用することもあるといった手術療法に進む2
  • いずれの治療を選ぶ場合も、甲状腺機能異常を並行して確認することが実用上の抜け漏れを防ぐ。

まとめ

  • 上輪部・上方球・上輪部という上方だけに限局する慢性炎症で、が上方に分布する代表的原因の1つである。
  • 機序はの弛緩を背景とした反復摩擦(Theodore型)と、レンズ保存液のへの過敏反応(コンタクトレンズ関連SLK)の2群に分かれ、臨床像は似ていても機序と対応が異なる。
  • 最大の診断の勘所は上眼瞼をしなければ見つからないことで、下方ばかり診ていると存在に気づかれない。
  • 見逃してはいけないのは診断そのものの見逃し、甲状腺機能異常(最大30%に合併)の見落とし、コンタクトレンズ関連例での装用継続、との取り違えである。はびまん性ではなく直線状の痕という所見で区別する。
  • 対応は装用中止・を起点に、局所0.5%・という保存的治療、難治例では切除という手術療法まで段階的で、標準治療は確立されていない。

出典

  1. 1.Superior Limbic Keratoconjunctivitis(American Academy of Ophthalmology (EyeWiki)・2026)上輪部角結膜炎(Theodore型)の病態が結膜の過度な弛緩を背景とした上眼瞼結膜と上方球結膜の反復摩擦であり角化上皮細胞・異角化・棘層肥厚などの組織学的変化とTGF-β2やテネイシンの上昇が報告されていること、所見が上方球結膜の毛様充血・上方角膜のびらん・上眼瞼結膜の乳頭増殖でありフルオレセイン・ローズベンガル・リサミングリーンで染色陽性となること、甲状腺機能異常の合併が最大30%の患者で報告されていること、治療が局所ステロイド・局所ビタミンA・局所シクロスポリン0.5%・治療用ソフトコンタクトレンズ/強膜レンズ・涙点閉塞という保存的治療から、液体窒素による凍結療法や上方結膜切除(温熱焼灼併用の場合あり)という手術療法まで段階的であり標準治療は確立されておらず部分寛解と再発が一般的であることを確認した。閲覧 2026-08-03
  2. 2.Contact Lens-Related Complications(StatPearls / NCBI Bookshelf・2023)コンタクトレンズ関連の上輪部角結膜炎がチメロサールまたはレンズ保存液中の防腐剤への過敏反応であること、対応がレンズ装用の中止と人工涙液の頻回使用であり、病変が消退した後に新しいレンズへ交換し防腐剤無添加生理食塩水の使用と頻回のレンズ洗浄を指導することを確認した。閲覧 2026-08-03