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Symptoms · Published

眼瞼内反

Entropion

別名
眼瞼内反症
臓器系
眼科
科目
Anatomy
トピック
解剖学 7.2:頭部:頭皮と顔面

🧠 全体像は、睫毛の向き(睫毛乱生)や生える位置()ではなく、眼瞼縁そのものの位置が眼球側へ反転する状態である。眼瞼縁がすれば付随する睫毛はすべて乱生するため、実地では両者が併存して見える。臨床の核心は2つ——①加齢性は下眼瞼を支える4つの構造(牽引筋・水平方向の支持・)のどれがどれだけ壊れているかで術式が決まること、②瘢痕性という進行性の背景疾患を抱えていることが多く、睫毛だけを処置しても解決しないことである。

定義と用語の整理

「まつげが刺さる」という訴えの背景には、少なくとも4つの異なる異常があり得る。

用語 異常の種類 との関係
眼瞼縁そのものの位置の異常。眼球側へ反転する 本ノートの主題
睫毛乱生 眼瞼縁の位置は正常、睫毛の向きだけがする があれば付随する睫毛はすべて乱生する。ただし睫毛乱生単独では眼瞼縁自体は正常
開口部から生えるもう一列の睫毛の異常(位置の異常) 眼瞼縁の位置とはに生じる別系統の異常
眼瞼皮膚のひだが睫毛を押し上げて向きを変える 眼瞼縁自体は正常。東アジアの小児に多く成長とともに自然軽快しやすい先天性の状態で、の発育不全による先天性とは別
眼瞼縁が反対方向(皮膚側)へ反転する の対称語。加齢性の支持組織弛緩という原因が共通することもあるが、向きが逆で瞼が露出し乾燥・を来す

⚠️ と睫毛乱生は表裏の関係にある。 があれば付随する睫毛はすべて眼球側を向くが、睫毛乱生単独では眼瞼縁自体は正常な位置にとどまる1

病態生理

加齢性(退行性、最多)の病態は、下眼瞼を支える4つの構造のどれがどれだけ壊れているかで説明され、この「4要素評価」がそのまま術式選択に直結する1

  • ①牽引筋の弛緩・への停止部で弛緩・し、下眼瞼が支持を失って上方へ回転する。
  • ②水平方向の弛緩:内・外眼角と瞼板自体が加齢とともに弛緩し、眼瞼縁の安定性が失われる。で眼瞼を前方に大きく引き出せることが目安になる。
  • の瞼板前への騎乗:加齢によりの眼瞼前部分が瞼板前方へずり上がり、のたびに眼瞼縁を眼球側へ押し込む力として働く。💡 は顔面神経()支配のであり(解剖学 7.2)、この筋のの主因にもなる。
  • の萎縮による:加齢でが萎縮しが進むと、下眼瞼が眼球を追って内転しやすくなる。

💡 4要素のうちどれが優位かで手術が変わる。 牽引筋が主体なら牽引筋前転術、水平方向の弛緩が主体ならというように、実際の術式は複数の要素を組み合わせて選ばれる1

病型分類

病型 機序 代表 特徴
加齢性(退行性) 上記4要素の複合 高齢者の下眼瞼 最多。通常は下眼瞼のみで、上眼瞼にはまれ
瘢痕性 ・瞼板の瘢痕収縮がを短縮させ牽引する 上眼瞼にも起こる。背景疾患が進行性のことが多い
痙攣性 ・眼表面刺激による 、慢性の眼表面刺激 一過性・間欠性のこともある
先天性 の発育不全 まれ とは別の病態

⚠️ 見逃してはいけないもの

危険度の高い順に並べる。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["眼瞼縁が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inversion'>内反</span>している"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='snap-back test'>スナップバックテスト</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='distraction test'>牽引試験</span>で<br>水平方向の弛緩を評価"]
    B --> C{"下方視・強い<span class='jp-term jp-term-diagram' title='eyelid closure'>閉瞼</span>で<br>誘発すると悪化するか"}
    C -->|"誘発時のみ悪化<br>普段は目立たない"| D["痙攣性を疑う"]
    C -->|"常時<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inversion'>内反</span>している"| E{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conjunctival fornix'>結膜円蓋</span>の短縮・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='symblepharon'>瞼球癒着</span>があるか"}
    E -->|"あり"| F["瘢痕性を疑う<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='trachoma'>トラコーマ</span>・SJS/TEN・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='ocular pemphigoid'>眼類天疱瘡</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chemical burn'>化学熱傷</span>歴を聴取"]
    E -->|"なし"| G{"乳児期からの発症か"}
    G -->|"はい"| H["先天性を疑う<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epiblepharon'>睫毛内反</span>と鑑別)"]
    G -->|"いいえ・高齢者"| I["加齢性と判断<br>(4要素の関与を評価)"]
    D --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluorescein staining'>フルオレセイン染色</span>で<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='corneal epithelial damage'>角膜上皮障害</span>の範囲を評価"]
    F --> J
    H --> J
    I --> J

対応の考え方

睫毛乱生と同様、一時的処置根治術を分けて考え、病型によって選ぶ術式が変わる。

  • 一時的処置:眼瞼を頬部側へ引き下げる系の液体絆創膏、潤滑点眼・で角膜を保護する。痙攣性ではへの注射が有効1
  • 加齢性の根治術:水平方向の短縮()とを組み合わせる。どちらを主体にするかは4要素評価で決める1
  • 瘢痕性の根治術に加え、で短縮したを延長する。原疾患()への対応を並行しなければ再発する1
  • 先天性:多くは経過観察でよいが、角膜障害を伴えば早期の手術介入を検討する。

まとめ

  • は眼瞼縁そのものの位置が眼球側へ反転する状態で、向きだけが異常な睫毛乱生、生える位置が異常な、皮膚のひだが原因のとは区別する。は向きが逆の対称語。
  • 加齢性は牽引筋の弛緩・、水平方向の弛緩、の瞼板前への騎乗、萎縮によるという4要素の複合で生じ、どれが優位かが術式選択に直結する。
  • 病型は加齢性(退行性、最多)・瘢痕性(・SJS/TEN・、上眼瞼にも起こる)・痙攣性(、一過性のこともある)・先天性(まれ、とは別)の4群に整理する。
  • 最も見逃してはいけないのは性瘢痕性からの失明への連鎖で、WHOののSはこの段階を対象にした手術を指す。の背景進行性、角膜潰瘍への進展、片側難治例での眼瞼腫瘍の除外も欠かせない。
  • 対応は一時的処置(・潤滑点眼・)と根治術に分かれ、加齢性は水平短縮+牽引筋前転、瘢痕性はによる延長というように病型で術式が変わる。

出典

  1. 1.Entropion(American Academy of Ophthalmology (EyeWiki)・2026)加齢性眼瞼内反が下眼瞼牽引筋腱膜の瞼板下縁からの平均1.4mm延長・断裂、内外眼角靱帯を含む水平方向の弛緩、眼輪筋眼瞼前部の瞼板前方への騎乗、眼窩脂肪萎縮による眼球陥凹という4要素の複合で生じること、瘢痕性眼瞼内反はトラコーマ・Stevens-Johnson症候群・眼類天疱瘡・化学熱傷・外傷を原因とし上眼瞼にも生じうること、痙攣性は眼輪筋の過収縮による一過性のこともあること、先天性は下眼瞼牽引筋の発育不全でまれであること、診察はスナップバックテスト・牽引試験(6〜15mm)・強制瞬目による誘発で進めること、治療はテーピング・シアノアクリレート・ボツリヌス毒素などの一時的処置と、Quickert縫合・外側眼角靱帯短縮・牽引筋前転・瘢痕性への前葉短縮/粘膜移植/瞼板切開といった術式に分かれることを確認した閲覧 2026-08-03
  2. 2.Trachoma(World Health Organization・2026)トラコーマが世界の失明の主要な感染性原因(全失明の約1.4%)であり、反復感染による結膜瘢痕化がトラコーマ性睫毛乱生を経て角膜を擦過し失明に至ること、WHOのSAFE戦略のSが失明段階である睫毛乱生(瘢痕性眼瞼内反に伴う)に対する手術を指すことを確認した閲覧 2026-08-03