微生物学

微生物学 · 5/3

眼感染を起こす細菌とウイルス(一覧)とその診断

Bacteria and viruses causing ophthalmic (eye) infections (list) and their diagnosis

微生物
Chlamydia trachomatis A, B, CChlamydia trachomatis D–KFrancisella tularensisMoraxella lacunataNeisseria gonorrhoeaeRubella virusStaphylococcus aureus
疾患
Parinaud眼腺症候群トラコーマ咽頭結膜熱角膜炎眼内炎急性出血性結膜炎結膜炎新生児眼炎流行性角結膜炎緑内障
症状
角膜潰瘍眼痛結膜充血硝子体炎前房蓄膿点状表層角膜症脈絡網膜炎毛様充血睫毛乱生

🧠 は「分泌物の性状」と「かどうか」の2点で起因菌を絞り込む。 は粘稠で黄色〜の膿性を、は水様での強いを特徴とし、この分泌物の性状の違いがベッドサイドでの鑑別の第一歩になる。さらに新生児のは産道通過時のという特殊な経路を持ち、原因菌(N. gonorrhoeae・C. trachomatis・T. pallidum)も成人のとは別建てで覚える必要がある。

細菌性眼感染症

起因菌 疾患
Moraxella lacunata 結膜炎(Moraxella属)
S. aureus 結膜炎
S. pneumoniae ulcus serpens corneae()
P. aeruginosa コンタクトレンズ関連感染
Chlamydia trachomatis 血清型A・B・C
Francisella tularensis

💡 は「感染症としては」世界最大の失明原因である。 による慢性結膜炎が・角膜をさせ、睫毛が眼球側へする症を経て角膜を不可逆的に損傷する。2026年3月時点で約9200万人が流行地に居住し失明のリスクにさらされており、対策の骨格はの(Surgery手術・Antibiotics抗菌薬・Facial cleanliness洗顔・Environmental improvement環境改善)である1(ただし失明原因全体の第1位はであり、あくまで感染症の中での第1位という限定がつく)。

先天性・新生児感染

起因菌 疾患
Chlamydia trachomatis 血清型D-K 新生児
Neisseria gonorrhoeae
Treponema pallidum 先天性実質性角膜炎

💡 は発症時期で鑑別できる。 淋菌性は分娩後2〜5日と発症が早く(過急性・膿性)、クラミジア性は5〜14日とやや遅れて発症する(軽度〜中等度の)——出生後の日数を聞くだけで原因菌の見当がつく。

⚠️ 新生児への予防点眼は、使う薬剤も「するかどうか」も国で違う。 1881年にCredéが導入した2%点眼が起源だが、は淋菌性新生児症を効果的に予防する一方で一過性の化学性結膜炎を起こすため使用が制限され、現在のガイドラインはテトラサイクリン・や溶液なども選択肢に挙げている。デンマーク・オランダ・ノルウェー・スウェーデン・フランス・ベルギー・英国・カナダ・オーストラリアなど出生前ケアが整備された国々は数十年前に点眼予防そのものを廃止したが、廃止後に淋菌性症や関連する失明のは報告されていない2。一方、米国はが出生10万件あたり0.4件と低いにもかかわらず、無予防では母子率が30〜50%に達し得るとして、が2019年に全新生児への点眼予防をグレードA(強い推奨)で再確認している3。

細菌性の臨床像と診断

  • 粘稠で黄色〜の
  • 性(手指・物品との直接接触)

診断:でを採取/生検(手術検体、)

ウイルス性眼感染症

ウイルス性の臨床像と診断

  • 水様・の強い眼、()を伴う——いわゆる「pinkeye」
  • 強い性:咳・くしゃみでも伝播しうる

診断:でを採取/生検(手術検体、)

まとめ

  • は粘稠で黄色〜の膿性、は水様での強いという分泌物の性状の違いで鑑別する。
  • 主な細菌性起因菌はMoraxella lacunata・S. aureus(結膜炎)、S. pneumoniae(角膜潰瘍)、P. aeruginosa(コンタクトレンズ関連)、C. trachomatis A-C()、Francisella tularensis()。
  • はC. trachomatis D-K()、N. gonorrhoeae()、T. pallidum(先天性実質性角膜炎)と成人とは別に覚える。発症時期(生後2-5日=淋菌、5-14日=クラミジア)が鑑別の手がかり。
  • 主なウイルス性起因菌は・・・A(後天性)、・風疹・Zika(先天性)。
  • 診断はいずれもによる採取、必要に応じて手術検体・の生検で行う。

出典

  1. 1.Trachoma(World Health Organization・2026)トラコーマは反復感染による慢性結膜炎が結膜・角膜を瘢痕化させ睫毛の内反から角膜の不可逆的損傷に至る、感染症としては世界最大の失明原因であり、2026年3月時点で約9200万人が流行地に居住し失明のリスクにさらされている。対策の骨格はWHOのSAFE戦略である。閲覧 2026-08-26
  2. 2.Intersociety Position Statement on the Prevention of Ophthalmia Neonatorum in Italy(Microorganisms (MDPI)・2023)WHOガイドラインは新生児への眼科的予防としてテトラサイクリン1%眼軟膏・エリスロマイシン0.5%眼軟膏・ポビドンヨード2.5%水性溶液・硝酸銀1%溶液・クロラムフェニコール1%眼軟膏のいずれかを推奨しており、硝酸銀は淋菌性新生児眼感染症を効果的に予防する一方、一過性の化学性結膜炎を起こすため使用が制限されてきた。デンマーク・オランダ・ノルウェー・スウェーデン・フランス・ベルギー・英国・カナダ・オーストラリアなど出生前ケアが整備された国々は数十年前に点眼予防そのものを廃止したが、廃止後に淋菌性新生児眼感染症や関連する失明の再燃は報告されていない。閲覧 2026-08-26
  3. 3.Ocular Prophylaxis for Gonococcal Ophthalmia Neonatorum: US Preventive Services Task Force Reaffirmation Recommendation Statement(US Preventive Services Task Force / JAMA・2019)米国における淋菌性新生児眼感染症の推定罹患率は2013〜2017年で出生10万件あたり0.4件と低いが、予防なしでは母体からの淋菌垂直伝播率が30〜50%に達し得ると評価した上で、USPSTFは2019年の再確認で全新生児への局所点眼予防をグレードA(有効性を裏付ける確信度の高い証拠)で推奨し続けている。閲覧 2026-08-26