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Microbe Atlas · 細菌

Neisseria gonorrhoeae

淋菌

分類
G− 球菌 / Gram− cocciNeisseria
性状
Gram陰性 (G−)球菌 Cocci
科目
Medical Microbiology
トピック
2/8: Neisseria gonorrhoeae. Moraxella genus2/7: Neisseria meningitidis. Apathogenic Neisseria species5/3: Bacteria and viruses causing ophthalmic (eye) infections (list) and their diagnosis
原因となる疾患
化膿性関節炎(敗血症性関節炎)結膜炎骨盤内炎症性疾患精巣上体炎・精巣炎前立腺炎尿道狭窄尿路感染症卵巣炎淋菌感染症
作用する薬剤
セフィキシムセフォペラゾンセフトリアキソン

🧠 全体像:淋菌は、莢膜を持つ髄膜炎菌とは正反対の戦略をとる菌として読む。莢膜がない(=が作れない)ぶん、好中球などの中に侵入して生き延びる(という戦略で貪食から逃れ、性的接触+上行性の直接進展という経路依存的な広がり方をする。莢膜という防御を持たない代償として、本菌はの獲得に活路を見出してきた菌でもあり、治療の歴史はほぼそのまま耐性拡大の歴史と重なる。

微生物学的な特徴

に共通する/での培養は髄膜炎菌のページにまとめてある。

項目 内容 髄膜炎菌との対比
莢膜 なし 髄膜炎菌はあり(が作れる)
陰性 髄膜炎菌は陽性——鑑別点
細胞内寄生 (好中球など)内で生存する 髄膜炎菌は主に細胞外
βラクタマーゼ産生 一般的 髄膜炎菌ではまれ
性器 髄膜炎菌は呼吸器

病原性の仕組み

  • 線毛()と表面蛋白()で尿道・頸管上皮に付着・侵入する
  • 細胞壁の(内毒素)が局所の炎症を引き起こす
  • を減弱させる
  • 莢膜を持たないためワクチンという選択肢がなく、これが後述する耐性化との関連で長年ワクチン開発を難しくしてきた
flowchart TD
    A["N. gonorrhoeaeが性的接触で感染"] --> B["線毛・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Opacity (Opa) protein'>Opacity蛋白</span>で尿道/頸管上皮に付着"]
    B --> C["男性:尿道炎"]
    B --> D["女性:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cervicitis'>頸管炎</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vaginitis'>腟炎</span>"]
    C --> E["前立腺炎・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epididymitis'>精巣上体炎</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proctitis'>直腸炎</span>へ上行"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='PID'>骨盤内炎症性疾患</span>へ上行"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='scarring'>瘢痕化</span>→不妊・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ectopic pregnancy'>異所性妊娠</span>"]
    F --> H["腹膜への進展<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Fitz-Hugh-Curtis syndrome'>Fitz-Hugh-Curtis症候群</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='violin string adhesions'>バイオリン線様癒着</span>)"]

感染経路と疫学

  • 性的接触による直接感染が主体。分娩時の産道通過による母子感染もある
  • 若年層・複数パートナーがいる集団でが高い
  • クラミジア(Chlamydia trachomatis)との合併感染頻度が高い

起こす疾患

男性:線毛により尿道上皮へ付着して急性尿道炎を起こし、上行すると前立腺炎、に至る。

女性:尿道・頸管を上行してを起こす。により不妊・に至りうる。

疾患 特徴
濃厚な(“bonjour drop”)——水様性のクラミジア感染との鑑別点
尿路感染症(尿道炎) 男性の急性尿道炎の代表的原因
尿道炎の上行性進展
前立腺炎 同上
(バイオリン線様の肝周囲癒着)に進展しうる

新生児は分娩時の産道感染で生後5日以内にを発症し、重症例では失明に至る。播種例では膿性関節炎(非対称性、膝に多い)、発熱・発疹・髄膜炎・敗血症を起こしうる。

診断

  • (VPN寒天)での培養、
  • 液のグラム染色またはによる
  • 治療前に(培養)を可能な限り併用する——後述する耐性の進行のため、地域のデータだけに頼らない判断が求められる

治療と予防

淋菌はを段階的に獲得してきた菌である。 ペニシリン・が広がったのち、が急速に拡大して2007年に推奨から外れ、その後アジスロマイシン・への感受性低下も進んだ。近年はセフトリアキソン耐性株(FC428系統など)が複数国で報告されており、WHOがの優先度が高い病原体に指定している。

  • 現行の第一選択はセフトリアキソンの単回投与(用量は体重により調整)。は地域差があり、米国CDC・英国BASHHは筋注、日本の添付文書は静注・に限定され筋注の記載はない1。耐性拡大を受けてなどは第一選択から外れつつある
  • クラミジア感染が除外できない場合はドキシサイクリンを追加する——アジスロマイシンの併用は淋菌への薬剤圧を強め耐性選択を助長するため、現在はクラミジアでも推奨されない(かつてのアジスロマイシン併用は撤回されている)
  • 新生児炎の予防には1%(旧)または抗菌薬点眼を用いる
  • パートナーの防止に重要

⚠️ はもはや第一選択ではない。 耐性率が高いため、感受性が確認できない限りなどのを経験的に用いない。

まとめ

  • 淋菌は莢膜を持たずワクチンが存在しない点で髄膜炎菌と対照的で、内で生存するという戦略で貪食を回避する。
  • 男性は尿道炎から前立腺炎・、女性はからPID・不妊・へと上行性に進展する。
  • 産道感染は新生児の(失明の危険)を起こしうる。
  • が段階的に進行しておりの拡大を経て現在はセフトリアキソン耐性株の出現が課題。
  • 治療の第一選択はセフトリアキソン単回投与(は地域差があり、米国CDC・英国BASHHは筋注、日本の添付文書は静注・)。クラミジア合併が除外できなければドキシサイクリンを追加し、アジスロマイシンの併用は耐性選択を助長するため避ける。

出典

  1. 1.セフトリアキソンナトリウム静注用・点滴用バッグ 添付文書(KEGG MEDICUS(JAPIC添付文書情報)・2026)日本の添付文書では淋菌感染症への投与経路が静脈内注射・点滴静注に限定され筋肉内注射の記載はないことを確認した閲覧 2026-08-03