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Symptoms · Published

紫外線角膜炎

Ultraviolet keratitis

別名
電気性眼炎雪眼炎光線性角膜炎
臓器系
眼科
科目
Histology
トピック
組織学 17.1:感覚器:眼
関連疾患
角膜炎

🧠 全体像)は、がびまん性・両眼性に生じる代表的な急性原因であり、本ノートの価値は所見そのものよりにある。曝露直後は無症状で、6〜12時間のをおいて激しい眼痛・が両眼性に出現するため、患者自身は前日の行動と症状を結びつけられない。診断は「昨日何をしていたか」を聞かなければ立たない。経過は良好で、は通常24〜72時間で瘢痕を残さず治癒する——この予後の良さを伝えること自体が対応の一部になる。

定義と用語の整理

「目が痛い」「涙が止まらない」という訴えの背景に、曝露から発症までの時間差という手がかりを持つ疾患は多くない。紛らわしい隣接概念との違いはこの一点に集約される。

隣接概念 発症のタイミング 片眼性・両眼性 との違い
曝露と同時に症状が出現する 曝露形態によるが多くは両眼 が無い。曝露歴が曖昧ならとして洗眼・pH確認を優先する1
数日かけて緩徐に進行する 片眼から両眼へ広がることが多い 激しいより充血・眼脂・眼瞼腫脹が前面に立つ2
装用中〜装用後に出現する 装用眼に一致 装用歴の有無で区別する2
異物混入と同時に症状が出現する 片眼性 が無く片眼性である点でと区別される2

片眼性の所見はに合わない。 びまん性のが片眼だけに見られるなら、など別の原因を優先して検索する。

病態生理

は、波長の短い紫外線がに吸収されて生じる光化学的傷害である。

  • 吸収と遅延した細胞死は290nm未満の紫外線(UVC域)をほぼすべて吸収する2。この波長域を含む光源——溶接アーク、殺菌灯、雪面・水面・砂浜での太陽光の反射、日焼けサロン——に無防備な角膜がさらされると上皮細胞が損傷を受けるが、細胞はただちに脱落するのではなく数時間かけて死滅・脱落する。
  • の説明:この時間差が、曝露直後は無症状で6〜12時間後に発症するという特徴的なを生む3
  • 激痛の説明で、知覚神経終末を豊富に含む(組織学 17.1)。上皮が脱落すると、その下にあるが露出し、これが突然の激しい眼痛の原因になる2
  • 急速な治癒の説明が高くターンオーバーが速いため、露出した神経叢の上を新しい上皮が覆えば症状は急速に消退する。これが24〜72時間という速い治癒経過の背景である3

⚠️ 見逃してはいけないもの

危険度の高い順に並べる。

  • ⚠️ 点眼を治療として処方・持ち帰らせない。 点眼麻酔は診察時の疼痛評価には使えるが、治癒を遅延・妨害しうるためそのものの治療として使ってはならない3。角膜表面の感覚を麻痺させたまま帰宅させると、悪化に本人が気づけないまま点眼を反復しがちで、救急の現場でとくに起こりやすい誤りである。
  • ⚠️ 曝露状況が曖昧ならを先に除外する。 は真の眼科緊急であり、よりも洗眼を優先し、洗眼開始後少なくとも5分待ってからpHを確認して生理的pHへの回復を確かめる1。溶接・雪山・殺菌灯など曝露源がはっきりしているときに限り、として経過観察してよい。
  • ⚠️ 溶接曝露ではの合併を必ず除外する。 はハンマー・金属切断・チゼル/ドリル作業のような金属同士の高速衝突で生じやすく、些細な外傷歴は見過ごされやすい4。溶接現場ではグラインダーやハンマーを併用する作業がしばしば同時に行われるため、これらの作業歴を伴う溶接曝露では、両眼性のの所見に紛れて片眼のを見逃さないよう注意する。
  • ⚠️ 反復曝露は不可逆的な長期リスクにつながる。 生涯を通じた紫外線曝露の蓄積はや皮膚がんのリスクを高めるため2性の高い保護・溶接用防護面の指導こそが再発・晩期障害を防ぐ本体である。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["両眼性の急性眼痛・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='photophobia'>羞明</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimation'>流涙</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blepharospasm'>眼瞼痙攣</span>"] --> B{"薬品曝露歴が<br>少しでも疑われるか"}
    B -->|"あり・不明確"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chemical eye injury'>化学眼外傷</span>として<br>ただちに洗眼・pH確認を優先"]
    B -->|"なし"| D["前日までの行動を具体的に聴取<br>(溶接・雪山/水面/砂浜・日焼けサロン・殺菌灯)"]
    D --> E{"症状発現までに<br>数時間の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Latency'>潜時</span>があったか"}
    E -->|"いいえ・曝露直後から症状"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ultraviolet keratitis'>紫外線角膜炎</span>以外の<br>原因を再検討"]
    E -->|"はい(6〜12時間程度)"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluorescein staining'>フルオレセイン染色</span>で<br>びまん性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='superficial punctate keratopathy'>点状表層角膜症</span>を確認"]
    G --> H{"所見が片眼性でないか"}
    H -->|"片眼性の所見が混じる"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subtarsal foreign body'>瞼板下異物</span>など<br>別の原因を追加で検索"]
    H -->|"びまん性・両眼性"| J{"溶接曝露でグラインダー・<br>ハンマー作業を伴ったか"}
    J -->|"あり"| K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraocular foreign body'>眼内異物</span>を除外する"]
    J -->|"なし"| L["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ultraviolet keratitis'>紫外線角膜炎</span>と判断し<br>支持療法へ"]
    K --> L
    I --> L

対応の考え方

そのものへの介入は乏しく、支持療法と良好な予後の説明が対応の中心になる。

  • 原因からの隔離と保護具の指導。 溶接ならUVカット面、雪山・水面・砂浜ならUVカット付きサングラスやゴーグルの着用を、再発予防として指導する。
  • と潤滑。 無添加のによる頻回の潤滑と、経口を組み合わせる2
  • 麻痺薬、眼帯装用は有効性が示されていない。 痙攣の緩和を期待して用いられることがあるが、いずれも治癒を早める効果は示されていない2
  • は診断時の一時的な評価にとどめる。 治療として処方・反復使用させない(前節参照)。
  • 予後の説明自体が治療の一部になる。 通常24〜72時間で瘢痕を残さず治癒するため3、原因と症状を結びつけられず不安が強い患者ほど、良好な経過の見通しを伝えることが安心につながる。

まとめ

  • )は、びまん性・両眼性のを来す代表的な急性原因で、曝露から6〜12時間のをおいて発症するため「昨日何をしていたか」を聞かなければ診断できない。
  • 機序はによるUVC域紫外線の吸収→遅延した上皮細胞死・脱落→上皮下神経叢の露出による激痛、という経路で説明でき、上皮の速い再生が24〜72時間という良好な治癒経過につながる。
  • 最優先の見逃しはの処方・持ち帰りによる治癒遅延で、次いでの除外(曝露が曖昧なら洗眼・pH確認を優先)、溶接作業歴でのの除外、反復曝露による・皮膚がんの長期リスクと続く。
  • 片眼性の所見はに合わず、など別の原因を優先して検索する。
  • 対応は原因からの隔離・保護具指導、/と経口による支持療法が中心で、・眼帯・の反復使用はいずれも根拠を欠く。

出典

  1. 1.Photokeratitis(American Academy of Ophthalmology (EyeWiki)・2026)紫外線角膜炎の症状が曝露から30分〜12時間の潜時を経て両眼性の眼痛・羞明・視力低下・流涙として出現すること、角膜上皮は24〜72時間で治癒すること、鑑別診断としてウイルス性結膜炎・コンタクトレンズ過装用・乾性角結膜炎・薬剤毒性・化学薬品曝露・上眼瞼異物が挙げられること、治療は眼軟膏と経口鎮痛薬が中心で眼帯装用・散瞳薬/毛様体筋麻痺薬はいずれも有効性が示されていないこと、生涯を通じた紫外線曝露の蓄積が翼状片や皮膚がんのリスクを高めることを確認した。閲覧 2026-08-03
  2. 2.Ultraviolet Keratitis(University of Iowa (EyeRounds.org, Department of Ophthalmology and Visual Sciences)・2020)紫外線角膜炎の症状が曝露から6〜12時間後に出現し36〜72時間で軽快すること、治療は防腐剤無添加人工涙液・局所NSAIDsまたは経口鎮痛薬が中心であること、局所麻酔薬は治癒を遅延・妨害しうるため決して治療として用いてはならないことを確認した。閲覧 2026-08-03
  3. 3.Chemical (Alkali and Acid) Injury of the Conjunctiva and Cornea(American Academy of Ophthalmology (EyeWiki)・2026)化学眼外傷が真の眼科緊急であり病歴聴取よりも洗眼を優先すべきこと、洗眼開始後少なくとも5分待ってからpHを確認し生理的pHへの回復を目標とすることを確認した。閲覧 2026-08-03
  4. 4.Intraocular Foreign Body(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)眼内異物の受傷機転はハンマー打撃が最多(43%)で金属切断(19%)、チゼル・ドリル作業(10%)と続くこと、些細な外傷歴は見過ごされやすく「何かが目に当たった」という病歴聴取そのものが診断の手がかりになることを確認した。閲覧 2026-08-03