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Disease Atlas · 眼科 · 外傷

眼内異物

Intraocular foreign body

別名
IOFB
臓器系
眼科
科目
Macroscopic Anatomy and Embryology (Macroscopic Anatomy)
トピック
解剖学 7.4:頭部:眼窩と眼
上位概念
眼球破裂
合併症
眼内炎白内障緑内障
症状
視力低下
スコア
眼外傷スコア

🧠 全体像:(IOFB)は、()という枠組みの中で、「創を触らない」だけでは終わらない特殊な一群である。が「疑ったら触診・を止めて保護し眼科へ送る」という初期対応の型を扱うのに対し、本ノートはその先——創が塞がっても眼内に残った異物が何をするか、とをどう使い分けるか、鉄・が何か月もかけて眼を壊していく過程にどう先回りするか——という、IOFBに固有の判断を扱う。核心は2つ。受傷歴が些細で症状に乏しいまま見逃されやすいこと、そして摘出が遅れるほど鉄・による遅発性毒性(siderosis/chalcosis)が進むことである。

見逃してはいけない受傷パターン

⚠️ ハンマー・金属切断・チゼル/ドリル作業という「金属同士の高速衝突」が最多ので、症状に乏しいまま見逃されやすい。 の内訳はハンマー43%、金属切断19%、チゼル/ドリル作業10%、園芸作業5%、高所からの5%、不明14%である1。些細な外傷は患者自身が過小評価しがちで、と軽いだけで無症状のこともある1。「何かが目に当たった」というそのものが診断の手がかりになる——やを疑う場面でも、溶接・研削作業歴があれば片眼性の異物を見逃さないよう注意する。

初期評価でしてはいけないこと(・・圧迫、を含む眼球への圧迫操作を中止し保護カップを当てる)はの項に譲る。IOFBを疑う場面での付加点は、が陰性でも(・異物残留を含む)を否定できないことである2。・形状変化・は、受傷直後に穿孔を疑う所見としてではなく、最終視力を予測するOcular Trauma Scoreの予後やの所見として扱われる(治療の項を参照)。

画像:CTが第一選択、磁性異物ではMRIを使わない

⚠️ が異物の数・大きさ・形状・位置を正確に検出できる第一選択の画像診断である。 は有機物やガラス片の検出感度でを上回るが、磁性のではが異物を動かし追加のを来しうるため禁忌である1。(ハンマー・金属切断など)からの可能性を評価し、疑いが残る限りへ進まない——この判断の型はと共通する。

flowchart TD
    A["高速飛来物による受傷歴<br>(症状が乏しくても否定しない)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='shallow anterior chamber'>前房浅化</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='iris'>虹彩</span>変形・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='relative afferent pupillary defect'>求心性瞳孔反応異常</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Seidel sign'>Seidel徴候</span>を確認"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='non-contrast CT'>非造影CT</span>で異物の数・大きさ・<br>形状・位置を評価"]
    C --> D{"磁性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='metallic foreign body'>金属異物</span>の可能性が<br>否定できるか"}
    D -->|"否定できない"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>は使わない"]
    D -->|"否定できる(ガラス・有機物疑い)"| F["必要に応じ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>を追加検討"]
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tetanus prophylaxis'>破傷風予防</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='broad-spectrum antibiotics'>広域抗菌薬</span><br>異物の材質に応じた摘出計画"]
    F --> G

眼内炎リスク

⭐ はIOFBの最も恐れられる急性合併症である。 頻度は原典内でも記載が割れており、7〜13%という報告と、別記載では平均6.8%という数字が併記されている——単一の確定値として覚えない。受傷から処置までの遅延が24時間を超えるとが上昇し、年齢が高いほどリスクも上がる1。有機物・土壌汚染を伴う異物(園芸作業由来など)は特に汚染度が高く警戒を要する。と予防目的のをあわせて考慮する1。

鉄・銅の遅発性毒性:siderosis bulbi と chalcosis

⚠️ 摘出が遅れるほど鉄・そのものが眼を壊していく。 ガラス・・ステンレス鋼・アルミニウムは比較的不活性でされやすい一方、鉄・は反応性が高く可及的速やかな摘出が必要である1。

機序 による形成(直接)、の(間接)で角膜・・・・網膜など上皮由来組織を傷害3 が眼内でし組織に沈着
最早期の徴候 。0.1%低濃度への過敏な3 含有率85%超で様の広範沈着、85%未満では限局した沈着(chalcosis bulbi)1
・ の緑褐色(可逆的)・、の暗褐色沈着()3 —
緑内障 頻度自体はまれ(5%)だがの線維化を来すと内科的コントロールが困難になる3 —
ERGの経過 早期は・振幅増大(過大反応)→振幅がしb/a比1未満→高度例で両波消失3 振幅低下にとどまり、同レベルで長期間(年単位)安定しうる1
症状 の・3 比較的軽症で経過することが多い

💡 含有率85%未満の合金による限局性のは、より軽症に経過しやすい——ERGの悪化が振幅の緩やかな低下にとどまり、のように過大反応から両波消失まで進むな経過を辿らない13。⚠️ 一方、含有率85%超では話が別で、様の広範な沈着を来し軽症とは言えない1。

⚠️ ・にある異物や、網膜にで存在する異物は速やかな摘出が強く推奨される。 手術が受傷後14日を超えて遅延すると、・のリスクが増す3。摘出後もERGによる経過観察を2〜3か月ごとに続ける3。

治療

  • 内異物はによる圧出()または()で摘出する1。
  • の異物は、創部からそのまま引き抜くのではなく別切開から摘出する1。
  • 大きな異物の摘出には大きなを要し、・・のリスクが高まる1。
  • 最終視力の予測には初診時視力・の有無・・・・の6からなるOcular Trauma Score(OTS)が用いられる1。

まとめ

  • IOFBはハンマー・金属切断・チゼル/ドリル作業という金属同士の高速衝突で最も多く生じ、症状に乏しいまま見逃されやすい。
  • 初期対応の型はと共通するが、IOFBではSeidel陰性でも穿孔・異物残留を否定できない点に注意する。
  • 画像はが第一選択で、磁性が否定できない限りは使わない。
  • は報告により7〜13%、原典内の別記載では平均6.8%と幅がある(単一の確定値として覚えない)。24時間を超える処置の遅延と高齢がリスクを高める。
  • 鉄・は反応性が高く速やかな摘出を要する。は・・ERG過大反応から両波消失まで進みうるな経過を、はより緩やかな経過をとる。
  • ・・の網膜異物は速やかに摘出する。14日を超える遅延は・のリスクを増す。

出典

  1. 1.Intraocular Foreign Body(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)眼内異物の受傷機転がハンマー打撃43%・金属切断19%・チゼル/ドリル作業10%・園芸作業5%・高所からの転落5%・不明14%の内訳であること、些細な外傷は見過ごされやすく結膜充血と霧視のみで無症状のこともあること、Seidel試験が角膜穿孔の有無を確認する検査であること、CTが異物の数・大きさ・形状・位置を正確に検出できること、MRIは有機物・ガラス片の検出感度がCTより高い一方で磁性異物では異物を動かし追加の損傷を来しうるため禁忌であること、眼内炎がIOFBの合併症であり、報告によって7〜13%・別記載では平均6.8%と幅があること、受傷から処置までの遅延が24時間を超えると発生率が上昇し高齢でもリスクが上がること、鉄は角膜・水晶体・線維柱帯・虹彩・網膜など上皮由来の組織に沈着し虹彩の緑褐色変色・異色症・瞳孔固定散大・続発性開放隅角緑内障・網膜変性を来すこと、ERG所見が早期はa波・b波振幅増大(過大反応)を示しその後b波振幅が漸減し末期には両波とも消失すること、銅含有率85%超では化膿性眼内炎様の広範な銅沈着、85%未満では限局した銅症(chalcosis bulbi)を呈しERGはb波振幅低下にとどまり同レベルで長期間安定しうること、破傷風トキソイド筋注と眼内炎予防目的の広域静注抗菌薬を考慮すべきこと、鉄・銅は反応性が高いため可及的速やかに摘出すべきである一方ステンレス鋼・アルミニウムは比較的忍容されること、前房内異物は粘弾性物質による圧出(ビスコエクスプレッション)または眼内磁石で摘出しうること、後眼部の異物は創部から直接ではなく別切開から摘出すべきこと、大きな異物の摘出には大きな毛様体扁平部切開を要し網膜嵌頓・硝子体脱出・網膜剥離のリスクが高まること、Ocular Trauma Score(初診時視力・眼球破裂の有無・穿孔性損傷・網膜剥離・眼内炎・求心性瞳孔反応異常の6変数)で最終視力を予測しうることを確認した。閲覧 2026-09-02
  2. 2.Globe Rupture(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)フルオレセイン染色によるSeidel徴候(創部からの透明な房水の流出)が陰性であっても開放性眼球損傷(穿孔・異物残留を含む)を否定できないこと、明らかな眼球破裂が疑われる場合はSeidel検査自体を含め眼圧測定・眼瞼翻転・眼球への圧迫を行わずFoxシールドなどの保護具で保護すべきことを確認した。閲覧 2026-09-02
  3. 3.Siderosis Bulbi(StatPearls(NCBI Bookshelf)(Acharya I, Raut AA)・2023)鉄症(siderosis bulbi)が鉄性眼内異物の残留に続発する慢性の色素変性過程であり角膜・虹彩・水晶体・線維柱帯・網膜など上皮由来組織に親和性を持つこと、直接毒性がFenton反応によるヒドロキシルラジカル形成を介して光受容体・網膜色素上皮を傷害し間接毒性が網膜血管の中毒性微小血管症を介して内層網膜を傷害すること、瞳孔固定散大が最も早期の徴候であり0.1%低濃度ピロカルピンへの過敏な縮瞳反応を示すこと、緑内障の合併頻度はむしろまれ(5%)だが線維柱帯の線維化により生じると内科的コントロールが困難になること、白内障は古典的に水晶体前嚢下の暗褐色沈着として現れること、初発症状が緩徐進行性の視力低下と夜盲であること、ERGが早期はa波・b波振幅増大(過大反応)を示しその後b波振幅が低下してb/a比が1未満となり高度例では反応が消失すること、前房・硝子体腔・網膜に非被包性で存在する異物は速やかな摘出が強く推奨されること、手術が受傷後14日を超えて遅延すると牽引性網膜剥離・増殖硝子体網膜症のリスクが増すこと、摘出後もERGによる経過観察を2〜3か月ごとに行うことを確認した。閲覧 2026-09-02