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眼外傷スコア

Ocular Trauma Score

別名
OTS
臓器系
眼科
科目
Neurology
トピック
神経内科 G1-01:瞳孔支配の障害
構成:症状
相対的瞳孔求心路障害
適用疾患
眼球破裂眼内異物

🧠 全体像:Ocular Trauma Score(OTS)は、の受傷直後の所見だけで6か月後の視力を確率として示す予測スコアである。初診時視力に応じた生点から、悪い所見の分だけ点を引く——という一方向の引き算で、点数を5段階のカテゴリーへ落とし込む1。⭐ 使い道は患者・家族への説明と期待値の調整、そして複雑で高価な介入へ進む前の判断材料であって、治療の可否を決めるではない。⚠️ 予測精度はおよそ80%——5回に1回は外れる。この不確かさゆえに、OTSを一次のに使うのは危険である1。

目的と適用場面

内容
目的 後6か月時点の視力カテゴリーの確率を予測する
開発 Ocular Trauma Classification Groupが米国・ハンガリーの登録の2,500眼超・100超を解析して同定した予測因子から構成1
対象 機械的。の標準用語体系BETTSと同様、・閉鎖性いずれの眼損傷も記述の対象とする1
評価する時点 受傷直後(一次手術前)のと所見2
使う場面 患者・家族への予後説明、介入方針の検討、外傷診療の監査・比較
評価しないもの 手術適応そのもの、の可否、化学・・熱傷、顔面・眼付属器損傷

のようにが特定された外傷でも、最終視力の予測にはこの6(初診時視力・の有無・・・・)が用いられる3。

構成要素と配点

⭐ 「初診時視力で生点を決め、悪い所見の分を引く」という一方向の計算である。 加点される項目は一つもない。

A. 初診時視力(生点の出発点。いずれか1つを選ぶ)

初診時視力 生点
(NPL) 60
(PL)または(HM) 70
1/200〜19/200 80
20/200〜20/50 90
20/40以上 100

B〜F. 減点項目(該当するものをすべて引く。該当しなければ0点)

項目 減点
B. −23
C. −17
D. (との両方があるもの) −14
E. −11
F. (RAPD) −10

12

⚠️ 「」はとの両方をもつを指すBETTSの用語である1。だけの穿損傷とは別物であり、の「穿孔」「穿通」の語感で取り違えると14点がまるごとずれる。

解釈とカットオフ

生点の合計を、次の5つのカテゴリーへ落とす。

生点合計 OTSカテゴリー
0〜44 1
45〜65 2
66〜80 3
81〜91 4
92〜100 5

カテゴリーごとに、受傷6か月後の視力カテゴリーの推定確率が与えられる1。

OTS NPL PL/HM 1/200〜19/200 20/200〜20/50 20/40以上
1 73% 17% 7% 2% 1%
2 28% 26% 18% 13% 15%
3 2% 11% 15% 28% 44%
4 1% 2% 2% 21% 74%
5 0% 1% 2% 5% 92%

💡 数字は「この目がこうなる」ではなく「同じ点数の集団がこう分布した」である。 OTS 1でも20/40以上に回復する目が1%あり、OTS 5でもに至る目がありうる。カテゴリー1と5の間で予後が連続的に良くなる、という読み方が実務的である。

計算例

原著が挙げる例では、のみ(70点)で(−23)・(−11)・(−10)を伴った症例の生点合計は26点、OTSカテゴリー1となる。この症例は・・タンポナーデを受け、最終視力は6/24と予測を上回った1。⭐ それでも初期のスコアは、術前の説明と厳しい予後の共有に役立ったと総括されている。

限界と使ってはいけない場面

  • ⚠️ 一次の根拠にしない。 予測精度はおよそ80%で、5回に1回は外れる。この不確かさのまま摘出をするのは危険であり、OTSは治療判断の指針の一つとして使う1。予後不良眼に対する受傷後2週間以内の・内容除去はの予防という別の論拠で語られるもので、の項に譲る。
  • ⚠️ 含まれていない損傷がある。 化学・・熱による眼損傷、顔面・眼付属器の重大な損傷はに入っていない1。これらを合併した症例の予後をOTSだけで語らない。
  • ⚠️ 画像所見が入っていない。 X線・・超音波の所見はに含まれない1。が透見できない症例では、これらの所見を臨床医が別途解釈して予後の見立てを補正する必要がある。実際、147眼の後ろ向き解析ではが障害された症例の術後視力が有意に不良で、損傷部位そのものが予後因子になっている2。
  • ⚠️ 測る時点を後ろへずらさない。 生点の出発点は受傷直後・一次手術前の視力である2。手術後や数日後の視力で計算し直すとスコアの意味が変わる。
  • ⚠️ の評価には限界がある。 は左右差のある障害を検出する所見であり、両眼が同程度に障害されていれば陽性にならない。が陰性でも、−10点を引かないことが「は無事」を意味するわけではない。

評価の流れ

flowchart TD
    A["機械的<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ocular trauma'>眼外傷</span>。受傷直後・一次手術前に評価"] --> B["初診時視力から生点を決める<br>NPL 60/PL・HM 70/1/200-19/200 80<br>20/200-20/50 90/20/40以上 100"]
    B --> C["該当する所見の分を引く<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='globe rupture'>眼球破裂</span> -23/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endophthalmitis'>眼内炎</span> -17<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='penetrating injury'>穿孔性損傷</span> -14/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retinal detachment'>網膜剥離</span> -11/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='relative afferent pupillary defect'>RAPD</span> -10"]
    C --> D["生点合計からOTSカテゴリー1〜5を決める"]
    D --> E["6か月後の視力カテゴリー別確率を読む"]
    E --> F["患者・家族への説明と期待値の調整<br>介入方針の検討材料にする"]
    F --> G["画像所見・損傷部位・合併損傷で見立てを補正する<br>OTS単独で摘出を決めない"]

まとめ

  • OTSは初診時視力の生点から、・・・・の分を引いて算出する、6のである。
  • 生点合計0〜44がカテゴリー1、45〜65が2、66〜80が3、81〜91が4、92〜100が5で、カテゴリーごとに6か月後の視力カテゴリーの確率が与えられる。
  • 「」はとの両方をもつ損傷を指すBETTSの用語で、のみの穿損傷とは別に扱う。
  • 予測精度はおよそ80%。個々の目の転帰を断定するものではなく、集団としての確率を示すである。
  • 化学・・熱傷、顔面・眼付属器損傷、画像所見はに含まれない。OTSを単独の根拠として一次を決めない。

出典

  1. 1.The Ocular Trauma Score(Community Eye Health(International Centre for Eye Health、Scott R)・2015)Europe PMC経由でPMC4790158の全文を取得した。Ocular Trauma Classification Groupが米国・ハンガリーの眼外傷登録に登録された2,500眼超・100変数超を解析して受傷6か月後の転帰の予測因子を同定しOTSを作ったこと、初診時視力の生点がNPL 60・PLまたはHM 70・1/200〜19/200 80・20/200〜20/50 90・20/40以上 100であること、そこから眼球破裂−23・眼内炎−17・穿孔性損傷−14・網膜剥離−11・相対的瞳孔求心路障害(RAPD)−10を減じること、生点合計0〜44がOTS 1、45〜65が2、66〜80が3、81〜91が4、92〜100が5であること、6か月後の視力カテゴリー別確率がOTS 1でNPL 73%・PL/HM 17%・1/200〜19/200 7%・20/200〜20/50 2%・20/40以上 1%、OTS 2で28/26/18/13/15%、OTS 3で2/11/15/28/44%、OTS 4で1/2/2/21/74%、OTS 5で0/1/2/5/92%であること、予測精度がおよそ80%(5回に1回は外れる)でありこれを一次眼球摘出の正当化に用いるのは危険であること、化学・電撃・熱による眼損傷や顔面・眼付属器の損傷、X線・CT・超音波Bスキャンの所見を含まないこと、BETTSと同様に開放性・閉鎖性いずれの眼外傷も記述の対象とすることを確認した。閲覧 2026-09-02
  2. 2.Open Globe Injuries: Classifications and Prognostic Factors for Functional Outcome(Diagnostics(Mayer CS, Reznicek L, Baur ID, Khoramnia R)・2021)Europe PMC経由でPMC8534971の全文を取得した。OTSが0〜100の数値であり術前・受傷直後の矯正視力と追加変数から算出されること、配点表が初診時視力20/40超100点・20/50〜20/200 90点・19/200〜1/100 80点・手動弁または光覚70点・光覚なし60点、変数が眼球破裂23点・RAPD 10点・眼内炎17点・網膜剥離11点・穿孔性眼球損傷14点(いずれも「あり」で減点)、カテゴリー1が45点未満・2が45〜65点・3が66〜80点・4が81〜91点・5が92〜100点であることを確認した。⚠️ 減点値5項目とカテゴリー境界5段階はScott 2015と一致するが、初診時視力の区分表記が2箇所で食い違う——Scottが「≥20/40=100点」「1/200〜19/200=80点」と書くのに対し、Mayerは「>20/40」「19/200〜1/100」と記載している。境界値ちょうど(20/40)と下限(1/200対1/100)が変わるMayer側の転記ずれと判断し、本ノートの配点表はScott 2015の原表に従った。開放性眼球損傷147眼の後ろ向き解析で、後眼部が障害された患者の術後矯正視力が障害されなかった患者より有意に不良であったこと(1.523対0.944 logMAR、P<0.01)、良好な視力転帰の予測因子が良好な初診時矯正視力とzone I・IIに限局した外傷であったことを確認した。閲覧 2026-09-02
  3. 3.Intraocular Foreign Body(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)Ocular Trauma Score(初診時視力・眼球破裂の有無・穿孔性損傷・網膜剥離・眼内炎・求心性瞳孔反応異常の6変数)が眼内異物症例の最終視力の予測に用いられることを確認した。閲覧 2026-09-02