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Symptoms · Published

相対的瞳孔求心路障害

Relative afferent pupillary defect

別名
RAPDMarcus Gunn瞳孔
臓器系
眼科神経
科目
Neurology
トピック
神経内科 G1-01:瞳孔支配の障害神経内科 G2-01:視力低下の神経学的原因と視野欠損
関連疾患
圧迫性視神経症眼窩コンパートメント症候群後部虚血性視神経症前部虚血性視神経症網膜中心動脈閉塞症
スコア
眼外傷スコア

🧠 全体像:(、)は、swinging flashlight test で健常眼から患眼へ光を移した瞬間に患眼側の瞳孔がかえって開くという所見で、視神経・網膜などの左右差のある障害を検出する1。⚠️ 核心はこの「左右差のある」という限定にある。両眼が同程度に障害されていれば、たとえ両眼とも重症でもは出ない。 「陰性=視神経は無事」とは読めない——読み違えると、両眼性のを見逃す。

定義と用語の整理

は瞳孔の大きさの左右差()ではなく、光に対する反応の左右差を検出する検査である。安静時のは左右対称のまま、光を当てたときの収縮の強さだけが患眼側で弱い。

用語 何を評価するか 混同しやすい点
(本ノート) 光を当てたときのの左右差 安静時のは左右差が無いことが多い
安静時のそのものの左右差 (・交感神経)の障害で生じ、とは機序が異なる
一眼に光を当てたときのその眼の()と対側の() は片眼ずつの反射の強さではなく、左右を切り替えたときの相対差を見る

⭐ は「陽性所見」であって「診断名」ではない。 視神経・網膜のどちらが原因でも生じるため、他の所見(視力・・眼底・画像)と組み合わせて原因を絞り込む。

病態生理

のは、からの線維(視交叉で交叉)とからの線維(のまま)が合流し、交叉線維と非交叉線維の比率はおよそ53対47である1。左右いずれかの視神経・網膜が非対称に障害されると、健常眼から患眼へ光を移した瞬間に脳へ届くの総量が急に減り、両眼の瞳孔がそろって(健常眼側もつられて)する。

flowchart TD
    A["健常眼に光を当てる"] --> B["両眼が対称に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='miosis'>縮瞳</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='crossed'>交叉性</span>支配のため)"]
    B --> C["光を患眼へ素早く移す"]
    C --> D{"患眼の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='afferent pathway'>求心路</span>が<br>健常眼と同程度に機能しているか"}
    D -->|"はい(両眼対称に正常または対称に障害)"| E["両眼とも収縮を維持<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='relative afferent pupillary defect'>RAPD</span>陰性"]
    D -->|"いいえ(患眼側が相対的に弱い)"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='afferent input'>求心性入力</span>の総量が低下し<br>両眼とも相対的に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dilation (mydriasis)'>散大</span>"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='relative afferent pupillary defect'>RAPD</span>陽性として観察される"]

💡 「両眼を比較する検査」であることが、であり同時に限界でもある。 左右差さえあれば軽度の非対称でも検出できる鋭敏な検査だが、両眼が同じだけ障害されていれば比較の基準そのものが失われ、検出できない。

検査手技と定量

半暗室でにさせ、5〜10cm下方から光を左右に当てる(片眼あたり約3秒)。判定が曖昧なら、健常眼側に(0.3・0.6・0.9・1.2 log units)を重ね、左右差が消える濃度での大きさを定量する。検出可能な最小の差は0.3 log unitsとされる1。

見かけ上の(偽陽性) 原因
対側の緻密な 眼内での増加により対側に見かけ上の所見が出る
2mmを超える 判定を歪める
直前の・ 最大1.50 log unitsの偽陽性、30分で消退
単独 を生じさせない1

⚠️ 見逃してはいけないもの

危険度・緊急性の高い順に並べる。

  • ⚠️ 。 は本症を疑う中核所見の一つで、・・・と併せて評価する。画像検査の結果を待たず、臨床的に疑えば・を直ちに行うのである。
  • ⚠️ 。 はが正常に見える段階でも陽性になりうる、に先行しうる所見である。ただしによる本症では、患者の50〜70%が視力20/40以上を保ち、70%が両眼性でを欠く(当該総説が引用している別研究の数値)2。総説が論評している原著コホートでは、の診断能は感度80%・特異度77%と(感度46%・特異度10%)より優れるが、両眼が同程度に侵されるとその優位性ごと失われる——陰性を理由にを除外しない。
  • 両眼性・対称性の全般。 のように両眼がほぼ同時期に障害される病態では、に頼ると見逃す。視力・・眼底・画像など他の所見を必ず併用する。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='decreased visual acuity'>視力低下</span>・視野異常を疑う"] --> B["swinging flashlight testを施行"]
    B --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='relative afferent pupillary defect'>RAPD</span>陽性か"}
    C -->|"陽性"| D["片眼または左右非対称の<br>視神経・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retinal disease'>網膜疾患</span>を疑う"]
    D --> E{"眼窩の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tightness (tension sensation)'>緊満感</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='elevated intraocular pressure'>眼圧上昇</span>・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='exophthalmos'>眼球突出</span>を急速に伴うか"}
    E -->|"あり"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='orbital compartment syndrome'>眼窩コンパートメント症候群</span>として<br>緊急対応(画像を待たない)"]
    E -->|"なし"| G["視野・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='color vision'>色覚</span>・眼底・画像で<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='optic neuritis'>視神経炎</span>/圧迫性/虚血性を鑑別"]
    C -->|"陰性"| H{"両眼性の症状や<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='thyroid eye disease'>甲状腺眼症</span>の背景があるか"}
    H -->|"あり"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='relative afferent pupillary defect'>RAPD</span>陰性でも両眼性疾患を<br>除外しない。他の所見で評価継続"]
    H -->|"なし"| J["視神経・網膜以外の原因<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='refractive error'>屈折異常</span>・中枢性など)を検討"]

所見への対応の考え方

そのものは治療対象の症状ではなく、を判断する所見である。陽性がどの疾患を示すかによって対応のが大きく変わる——を示唆すれば直ちに・、を示唆すれば早期減圧が視力予後を左右する。自体を消す介入はなく、原因治療の緊急性を測るための指標として使う。

まとめ

  • はswinging flashlight testで検出する、視神経・網膜などの左右差のある障害を示す所見であり、(安静時のの左右差)とは評価対象が異なる。
  • ⚠️ 両眼が同程度に障害されていればは出ない。 「陰性=異常なし」ではなく、両眼性・対称性の疾患を除外できない限界として理解する。
  • ではが緊急処置の判断材料になり、ではに先行しうるが、による例では両眼性のため70%でを欠く。
  • ・・直前のなどは見かけ上のを生じさせるため、判定前に除外する。
  • 自体への介入はなく、示唆される原因疾患のに応じた対応(画像を待たないから経過観察まで)に委ねる。

出典

  1. 1.Marcus Gunn Pupil(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)瞳孔対光反射の求心路が鼻側網膜からの線維(視交叉で交叉)と耳側網膜からの線維(同側性、交叉と非交叉の比率がおよそ53:47)から成ること、健常眼から患眼へ光を移すと瞳孔運動性入力の総量が減り患眼側で相対的な散瞳が生じるのがMarcus Gunn瞳孔(RAPD)であること、swinging flashlight testの手技(半暗室で5〜10cm下方から光を当て3秒待って左右へ交互に移す)、中性濃度フィルター(0.3・0.6・0.9・1.2 log units)を健常眼側に置いて左右差が消える点を記録しRAPDの大きさを定量すること・検出可能な最小の差は0.3 log unitsであること、grade1(弱い初期収縮)からgrade5(光受容体漂白後も二次収縮のない即時散瞳)までの重症度分類があること、真のRAPDの原因が視神経炎(急性片眼発症例の90%超)・虚血性視神経症・緑内障(原発開放隅角緑内障の23%)・網膜中心動脈閉塞(最大90%)・黄斑を含む網膜剥離(50%超)・網膜中心静脈閉塞(虚血型の91%)・視索病変であること、緻密な白内障は対側に見かけ上のRAPDを生じさせうること・遮蔽/暗順応でも最大1.50 log unitsの偽陽性所見が生じ30分で消退すること・屈折異常単独では生じないこと、**両側性かつ左右対称な病変では左右差そのものが無いためRAPDが検出できない**こと、視神経圧迫(眼窩腫瘍・甲状腺眼症・外傷)の管理が外科的減圧・高用量ステロイド・経過観察に及ぶことを確認した閲覧 2026-09-01
  2. 2.Commentary: Dysthyroid optic neuropathy(Indian Journal of Ophthalmology・2022)甲状腺性視神経症患者の50〜70%が視力20/40以上を保ち70%が両眼性のためRAPDを欠くこと、同集団でのRAPDの診断能が感度80%・特異度77%であったのに対し色覚検査は感度46%・特異度10%にとどまり色覚検査に頼ると見落とすことを確認した閲覧 2026-09-01