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Symptoms · Published

眼瞼欠損

Eyelid defect

別名
眼瞼コロボーマ眼瞼組織欠損
臓器系
眼科
科目
DermatologyAnatomy
トピック
皮膚科 3-07:基底細胞癌解剖学 7.2:頭部:頭皮と顔面
関連疾患
Treacher Collins症候群

🧠 全体像は、とは異なる次元の異常である。が眼瞼縁の位置の異常であり組織を引き締めれば戻せるのに対し、は眼瞼という組織そのものが足りない量の不足であり、組織を足さなければ戻らない。この一点が再建の考え方を根本から分ける——位置異常は・牽引筋の再固定で対応できるが、欠損は・移植という「組織を運んでくる」発想が要る。臨床の核心は2つ——①瞼縁を含む全層欠損かどうかが再建方針と機能予後を決める最大の分岐であること(瞼縁は睫毛の向き・の分布・時の密着をすべて担うため)、②対応の優先順位は常に角膜保護が先、根治的な再建はその後であることである。

定義と用語の整理

「まぶたが足りない」という所見は、発生時期・欠損の深さ・瞼縁の関与という3つの軸で整理すると、再建方針にそのまま対応づけられる。

内容 なぜ重要か
発生時期 先天性()/後天性(腫瘍切除後・外傷・瘢痕性・医原性) 先天性は管理という独立した論点が加わり、手術時期の判断が変わる
欠損の深さ 欠損(皮膚・=前葉まで)/全層欠損(瞼板・まで及ぶ) 全層かどうかで、再建に前葉・それぞれの供給源が要るかが決まる
瞼縁の関与 瞼縁を含む欠損/含まない欠損 ⭐瞼縁は睫毛の向き・の分布・時の密着を担うため、含む欠損が術式選択の最大の分岐になる

💡 との対比が理解の軸になる。 位置異常は支持組織を引き締める・再固定することで戻せるが、は組織量そのものが不足しているため、引き締めるほど瞼縁が眼球側・外側へ余計に引かれてしまう。・移植で組織を足す以外に戻す方法が無い。

病態生理

の原因を機序で5群にまとめると、そのまま再建の・方針の整理になる。

  • 先天性(:瞼縁を含む全層欠損として生まれつき存在し、上眼瞼の内側1/3と中央1/3の境界に好発する。多くは・単独だが、Goldenhar症候群・・CHARGE症候群など顔面の発生異常に伴うことがある1
  • 腫瘍切除後などの眼瞼腫瘍は、部位別でも眼瞼・眼囲が(大きさを問わず高リスクとされる部位)に分類されるほど再発しやすく、切除は瞼縁を含む全層欠損を作る。
  • 外傷・咬傷・熱傷が瞼縁を含む全層欠損を作る。内眼角側のは瞼板を欠くの弱い部位のためを巻き込みやすい2
  • 瘢痕性・熱傷・後の瘢痕は前葉を短縮させ、牽引によって組織そのものが実質的に不足した状態に至る。
  • 医原性での皮膚切除過多は欠損として生じる。

💡 前葉の皮膚・は顔面神経()支配の運動要素を含む解剖学 7.2)。皮膚だけを移植しても、という運動に関わる筋のまでは再建できるとは限らない。

⚠️ 見逃してはいけないもの

危険度の高い順に並べる。

  • ⚠️ から角膜潰瘍・穿孔への進展。 欠損の大きさそのものより、時に角膜が覆われるかどうかが問題であり、放置すれば失明に至る。
  • ⚠️ 小児の先天性における によるは視覚発達のにかかるためが短く、全例でを想定して評価する1
  • ⚠️ 腫瘍切除後、再建を急ぐあまり断端の腫瘍遺残を確認しないこと。 悪性腫瘍の切除範囲確保・断端陰性の確認が再建に優先する。
  • ⚠️ 瞼縁を含む外傷でのの見落とし。 内眼角側のでは損傷を必ず確認する。見落とすと瘢痕・狭窄を経てが残る2

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["眼瞼に欠損を認める"] --> B{"先天性か後天性か"}
    B -->|"先天性"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='eyelid coloboma'>眼瞼コロボーマ</span>を疑う<br>顔面発生異常の合併を確認"]
    B -->|"後天性"| D{"原因は何か"}
    D -->|"腫瘍切除後"| E["断端の腫瘍遺残を確認"]
    D -->|"外傷"| F["瞼縁の関与と<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal canaliculus'>涙小管</span>損傷の有無を確認"]
    D -->|"瘢痕<span class='jp-term jp-term-diagram' title='contracture'>拘縮</span>"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chemical burn'>化学熱傷</span>・熱傷・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Stevens-Johnson syndrome'>Stevens-Johnson症候群</span>後を疑う"]
    D -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='eyelid surgery'>眼瞼手術</span>後"| H["皮膚切除過多を確認"]
    C --> I{"瞼縁を含む全層欠損か"}
    E --> I
    F --> I
    G --> I
    H --> I
    I --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='eyelid closure'>閉瞼</span>時に角膜が<br>覆われるかを評価"]
    J --> K["水平欠損幅が瞼縁全長に<br>占める割合を測定し術式を選ぶ"]

対応の考え方

角膜保護が常に先で、根治的な再建はその後——この順序は欠損の原因を問わず共通する。

  • 第一段階は・被覆で、が保てなければ一時的なを追加する。
  • 再建の適応は欠損の水平幅が瞼縁全長に占める割合で段階的に決まるが、上下眼瞼で術式の閾値・選択肢が異なる。25〜50%までの直接縫合(の追加を含む)と50〜75%の半円形)という段階は上下眼瞼に共通するが、75%を超える大欠損では上眼瞼は逆を欠損の最大2/3程度まで拡張して用いうる一方、下眼瞼はなど別系統の術式に分かれる3
  • 先天性に限ると、欠損を25%未満(小)・25〜50%(中等度)・50%超(大)に分類したうえで、上眼瞼では直接縫合・を、下眼瞼ではにHughes軟骨弁・前葉になどを用いるという、に特化した区分が示されている1
  • ⚠️ 前葉(皮膚・)と(瞼板・)は両方を補う必要がある。 どちらか一方は血流を保ったで再建し、もう一方だけを遊離移植で置き換えるのが原則で、両方を血流の無い遊離移植で同時に賄うと壊死する3
  • 先天性で欠損が小さく角膜露出・が無ければ、挙筋機能を正確に評価できる3〜4歳まで手術を延期できるが、角膜露出を伴う例はを要する1
  • 再建後もが不十分な例はとして持ち越されうるため、術後も曝露の評価を続ける。

まとめ

  • という「位置の異常」とは異なり「組織の量的不足」であり、組織を足さなければ戻らない。
  • 分類は先天性/後天性、/全層、瞼縁を含むか含まないかの3軸で整理し、瞼縁を含む全層欠損かどうかが術式選択の最大の分岐になる。
  • 原因は先天性()、腫瘍切除後、外傷、瘢痕性、医原性の5群に整理できる。
  • 最優先の見逃しはからの失明で、小児の、腫瘍断端の遺残、の見落としが続く。
  • 対応は角膜保護を最優先し、再建は欠損幅の割合に応じて直接縫合→半円形と段階的に進め、前葉・の両方を血流のある組織で補う。

出典

  1. 1.Eyelid Reconstruction(American Academy of Ophthalmology (EyeWiki)・2026)眼瞼再建の原則が前葉(皮膚)・後葉(粘膜)とその間の支持組織という3要素の再建であること(Mustardeの定義)、水平欠損幅が瞼縁全長の25〜50%までは直接縫合(外眥切開の追加を含む)、50〜75%は半円形皮弁(Tenzel皮弁)という段階分類が上下眼瞼に共通して用いられること、75%を超える大欠損では上眼瞼は逆Tenzel皮弁を欠損の最大2/3程度まで拡張して用いうる一方、下眼瞼はHughes結膜弁・Mustarde頬回転皮弁など別系統の術式に分かれること、前葉・後葉のうち一方は血流を保った皮弁で再建し他方だけを遊離移植で置き換えるのが原則で両層を同時に遊離移植で賄わないこと、瞼縁を含む欠損では睫毛ラインの正確な整列が機能・整容の両面で重要であることを確認した。閲覧 2026-08-03
  2. 2.Eyelid Coloboma(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)先天性眼瞼コロボーマが瞼縁を含む全層欠損で上眼瞼の内側1/3と中央1/3の境界に好発すること、Goldenhar症候群・Treacher Collins症候群・CHARGE症候群など顔面の発生異常を伴うことがあること、欠損により角膜が露出し曝露性角膜症をきたすこと、全例で弱視を想定して評価すべきであること、欠損が小さく角膜露出・視軸遮蔽が無ければ挙筋機能を正確に評価できる3〜4歳まで手術を延期できるが角膜露出を伴う例は早期介入を要すること、欠損の大きさを瞼縁全長の25%未満・25〜50%・50%超に分類し上眼瞼では直接縫合・Tenzel皮弁・Mustarde蓋スイッチ皮弁・Cutler-Beard法を、下眼瞼では後葉にHughes結膜軟骨弁、前葉にMustarde頬回転弁などを用いることを確認した。閲覧 2026-08-03
  3. 3.Canalicular Laceration (Trauma)(American Academy of Ophthalmology (EyeWiki)・2026)涙小管断裂が瞼板を欠き支持構造の弱い内眼角部に生じやすく犬咬傷が代表的な原因であること、涙点内側の裂創ではプロービングや対側涙点からのフルオレセイン・空気注入によって涙小管損傷を確認すべきこと、涙小管損傷を放置すると瘢痕・狭窄を経て流涙をきたすこと、修復はモノカナリキュラーステント留置が標準治療で両側涙小管損傷では必ず修復を要することを確認した。閲覧 2026-08-03