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Symptoms · Published

涙小管断裂

Canalicular laceration

別名
涙小管裂傷涙道断裂
臓器系
眼科
科目
Anatomy
トピック
解剖学 7.4:頭部:眼窩と眼

🧠 全体像は「瞼が切れた」というの一種ではない。瞼縁の創が閉じても、涙を運ぶ管のが絶たれたままなら涙は流れない——組織の見た目ではなく管腔がつながっているかを問う視点が要る。もう一つの核心はである。一次修復の機会は基本的に一度しかない——断端が・退縮してから作り直すのは、初回に比べて格段に難しい。だからこそ、内側のどんな小さなも、見た目だけで「は無事」と判断せず、必ずで確認する姿勢が要る。

定義と用語の整理

用語 意味 との関係
外傷によってが急性に絶たれた状態 主題そのもの
の一因) 炎症・瘢痕・薬剤性などで慢性にの内腔が狭窄・閉塞した状態 を見落として放置した後に瘢痕・狭窄を経て至りうる慢性の結果であり、急性のそのものとは別の病態
眼瞼という組織そのものが量的に不足した状態 瞼縁を含む欠損がを巻き込むことはあるが、が無い単純なでもしうる
単一 上下いずれか一方ののみが 対側が開通していれば排出機能がある程度代償される
上下両方の 代償する経路が無く、常に修復の適応となる

から(垂直部・水平部)、を経てへ排出される解剖学 7.4はこの経路のうち直後の区間が絶たれる病態である。

病態生理

  • は瞼板を欠きが弱いため、外側への牽がこの部位に集中し、付着部からが剥脱するようにする1
  • 原因はが代表的で、創全体に占める割合と比べてを伴うではの頻度が際立って高い。ほかに・指突き・)、鋭的外傷(ガラス・金属などによる)、に伴うものがある1
  • ⭐ 上下どちらもしうるが、下単独のが最も多い1

⚠️ 見逃してはいけないもの

危険度の高い順に並べる。

  • ⚠️ の合併を修復より優先する。 の評価に注意が向きがちだが、まず眼球と眼窩付属器を評価し、眼球損傷を除外することが常に先である1
  • ⚠️ の見落とし。 ではに異物が遺残していたり、を伴っていたりすることがある。画像診断はCTを優先し、が疑われる場合はMRIを用いない1
  • ⚠️ 損傷そのものの見落とし。 より内側のでは、見た目でが保たれているように見えても、や対側からの・空気注入での有無を必ず確認する。見落として放置すると瘢痕・狭窄を経て永続的なに至る1
  • ⚠️ は必ず修復を要する。 単一は対側の開通で症状が目立たず修復の要否が議論になることがあるが、両側には代償する経路が無く、常に修復の適応となる1
  • ⚠️ では創感染と破傷風の予防を怠らない。 ではPasteurella canis、猫咬傷ではPasteurella multocidaがそれぞれ起因菌の約半数を占めるが、Capnocytophaga canimorsusという常在菌も混在し、高齢者・免疫不全者(ステロイドなど免疫調整薬使用中を含む)・・β-患者・喫煙者などでは重症化しうる。第一選択はアモキシシリン配合剤を3〜5日間投与することで、直近10年以内にの接種歴が無ければ追加接種する1

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["瞼縁を含む<span class='jp-term jp-term-diagram' title='laceration'>裂創</span>を認める"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='globe rupture'>眼球破裂</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='penetrating trauma'>穿孔性外傷</span>はないか"}
    B -->|"あり"| C["眼球損傷の評価・処置を最優先"]
    B -->|"なし"| D{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='laceration'>裂創</span>は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal punctum'>涙点</span>より内側か"}
    D -->|"外側"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal canaliculus'>涙小管</span>損傷の可能性は低い<br>通常の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='palpebral fissure'>眼瞼裂</span>創として処置"]
    D -->|"内側"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='probing'>プロービング</span>と対側<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal punctum'>涙点</span>からの<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluorescein'>フルオレセイン</span>・空気注入で確認"]
    F --> G{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal canaliculus'>涙小管</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rupture (tear)'>断裂</span>を認めるか"}
    G -->|"なし"| E
    G -->|"あり"| H{"片側か両側か"}
    H -->|"片側"| I["単一<span class='jp-term jp-term-diagram' title='canalicular laceration'>涙小管断裂</span>として<br>修復の適応を検討"]
    H -->|"両側"| J["両<span class='jp-term jp-term-diagram' title='canalicular laceration'>涙小管断裂</span><br>修復は必須"]
    I --> K["断端を同定し<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='monocanalicular stent'>モノカナリキュラーステント</span>留置"]
    J --> K

対応の考え方

  • 所見そのものへの介入が確立している型で、留置が標準治療である1
  • は必ず修復するが、単一は対側が開通していれば症状が乏しいことも多く、修復するかどうかは施設・によって判断が分かれる1
  • 修復の成否を決めるのは、鼻側断端の確実な同定である。 内側の創面を清拭し、の中に白色円形の組織(断端)を探す。同定できなければ対側からの・空気注入や、による局所の血管・筋収縮を併用する1
  • 緊急手術は必須ではないが、時間が経つほど断端の同定は難しくなる。 受傷直後の手術が必須というわけではなく、受傷後72時間程度の遅延では転帰に差が無いとする報告や、5日後の修復がした報告もあるが、可能な範囲で早期に行うのが実際的である1
  • 修復が遅れて瘢痕性の閉塞に至った例や、修復がしなかった例は、の原因としてのに準じ、といった二次的な選択肢に進む。

まとめ

  • は瞼縁の創閉鎖ではなくという管のを問う病態で、一次修復の機会は基本的に一度しかない。
  • は瞼板を欠きが弱いため牽が集中し、・鈍的/鋭的外傷・する。下単独のが最も多い。
  • 最優先の見逃しはの合併で、の確認、損傷そのものの見落としが続く。
  • より内側のは見た目で判断せず、・空気注入で必ずを確認する。両は必ず修復し、では抗菌薬とを怠らない。
  • 修復は留置が標準治療で、断端の同定が成否を決める。緊急手術は必須ではないが、とともに同定は難しくなる。

出典

  1. 1.Canalicular Laceration (Trauma)(American Academy of Ophthalmology (EyeWiki)・2026)内眼角部が瞼板を欠き支持構造が弱いため外側への牽引力が集中し涙小管が剥脱するように断裂すること、犬咬傷が眼瞼裂創全体と比べ涙小管断裂を伴う裂創で頻度が高い代表的な原因であり下涙小管単独の断裂が最も多いこと、涙点内側の裂創ではプロービングや対側涙点からのフルオレセイン・空気注入で断端を同定すべきこと、涙小管修復に先立ち眼球破裂・穿孔性外傷や眼窩内異物・眼窩骨折の評価を優先すべきこと、両涙小管断裂は代償経路が無く必ず修復を要すること、修復はモノカナリキュラーステント留置が標準治療で緊急手術は必須ではなく受傷後72時間程度の遅延は転帰に影響しないとする報告や5日後の修復が奏効した報告があること、犬咬傷では*Pasteurella canis*、猫咬傷では*Pasteurella multocida*が起因菌の約半数を占め*Capnocytophaga canimorsus*という常在菌にも注意すべきこと、第一選択がアモキシシリン・クラブラン酸配合剤の3〜5日間投与であり直近10年以内に破傷風トキソイド接種歴が無ければ追加接種することを確認した。閲覧 2026-08-03