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Microbe Atlas · 細菌

Pasteurella multocida

分類
G− 球桿菌 / Gram− coccobacilliPasteurella
性状
Gram陰性 (G−)球桿菌 Coccobacilli
科目
Medical Microbiology
トピック
2/23: Pasteurella multocida, Francisella tularensis, Bartonella species5/1: Bacteria causing skin and wound infections (list) and their diagnosis5/11: Zoonotic infections (list) and their prevention
自然耐性薬
クリンダマイシン
原因となる疾患
化膿性関節炎(敗血症性関節炎)化膿性屈筋腱鞘炎骨髄炎丹毒・蜂窩織炎

🧠 全体像:Pasteurella multocidaを覚える最短経路は「イヌ・ネコ咬傷を受けてから1日以内に赤く腫れる」というそのものである。ネコ・イヌの口腔・上気道の常在菌であるこの菌は、咬傷・引っかき傷を通じて受傷後24時間以内という他の菌より著しく早いタイミングで蜂窩織炎を起こす——このの速さこそが、咬傷後のを診た際にまずこの菌をさせる根拠になる。特にネコの咬傷は歯が細く鋭いため深部(関節・)まで達しやすく、より感染率が高い。

微生物学的な特徴

小型ので、・・。この属の中ではは高くなく、標準的な血液寒天培地で発育する。

項目 内容
形態
鏡検所見 ——などで両端がし「」の外観を呈する
生化学的性状 の大半は・・陽性1
莢膜 の違いで血清群A・B・D・E・Fの5群に分かれる。血清群Aの莢膜はでできており、貪食からの回避に働く。ヒトでは呼吸器の保菌・感染で血清群Aが優位とされる一方、動物咬傷からのは血清群A以外(血清群D)が多く、播種性の病像と関連していた1
培養 5%ヒツジ血液寒天培地がよく、マッコンキー寒天培地には発育しない1——Francisella tularensisやBordetella pertussisのような特殊培地を要さない

病原性の仕組み

(血清群Aでは)が補体・からの回避に働き、局所での急速な増殖を可能にする。咬傷・引っかき傷によるが主な侵入経路で、深く鋭い創(特にネコの牙による)では・・まで菌が直接到達し、蜂窩織炎にとどまらず・・骨髄炎へ進展しやすい。

感染経路と疫学

  • イヌ・ネコなど多くの動物の口腔・上気道に常在し、咬傷・引っかき傷を介して伝播する人獣共通感染症である。感染したからはの50%、ネコ咬傷の75%でパスツレラ属が分離される1(では近縁のP. canisのほうが多い可能性も指摘されている)
  • ネコ咬傷はより感染率が高い——ネコの歯は細く鋭いため皮下に深く達するになりやすく、洗浄・排膿が難しいまま菌を封じ込めてしまうため
  • 咬傷によらない感染は、皮膚病変や・上気道の粘膜が動物やその分泌物に触れて起こり、幼児・高齢者・妊婦・免疫不全者に多い。免疫不全につながる基礎疾患——肝硬変、透析やを要する腎不全、感染——を持つ人では、咬傷がなくても腹膜炎・・敗血症の危険が高まる(とくにペットとの接触歴がある場合)1
  • 呼吸器感染は比較的まれだが、のある患者では肺炎などを起こすことがある1

起こす疾患

疾患 特徴
蜂窩織炎 動物咬傷後、多くは24時間以内、早ければ8〜12時間で紅斑・腫脹・疼痛が現れる1——・蜂窩織炎の中でも受傷歴からしやすい病型
・ 手指の咬傷で関節・まで達した場合に多い
骨髄炎 咬傷が骨に波及した場合。骨髄炎における「イヌ・ネコ咬傷」の代表的起因菌
肺炎・腹膜炎・・敗血症 咬傷によらない感染。の患者の肺炎、肝硬変・腎不全・感染など免疫不全を伴う患者の腹膜炎・心内膜炎・敗血症

診断

  • 血液寒天培地での培養は容易——本属では特殊培地を要さない点がなど同じ人獣共通感染症の菌と異なる
  • グラム染色での()所見が同定の手がかりになる
  • 菌株の型別は、による血清群(A・B・D・E・F)と、による型の組み合わせで行う1

治療と予防

感染を防ぐための早期投与

イヌ・ネコ咬傷のうち、次のいずれかに当てはまる患者には、感染が出る前から3〜5日間の抗菌薬投与を勧める2。

対象 危険が高い理由(解説)
免疫不全、、進行した肝疾患 宿主の防御が弱く、菌血症へ進みやすい
患部に浮腫がある(もともと、または受傷による) 局所の血流・が悪い
中等度以上の損傷、特に手・顔 手は関節・が浅く、顔は整容上の影響が大きい
・に達した可能性がある損傷 骨髄炎・の危険

創処置と曝露後の評価

  • 創洗浄・を行う。は原則として勧めない——例外は顔面の創で、大量の洗浄・慎重な・先制的な抗菌薬投与を行ったうえで縫合する2
  • の接種歴確認、動物種によっては曝露評価も併せて行う

まとめ

  • イヌ・ネコの口腔・上気道の常在菌で、咬傷・引っかき傷後24時間以内(早ければ8〜12時間)という早い発症の蜂窩織炎が最大の特徴。
  • ネコ咬傷はより感染率が高く、鋭い歯による深いが関節・・骨まで菌を運びやすい。
  • 鏡検ではによる「」の外観を呈し、他の人獣共通感染症菌と異なり特殊培地を要さず標準培地で発育する。
  • 治療の標準はアモキシシリン・——クリンダマイシン・・などは本菌に効きにくく、単剤では使わない。
  • 免疫不全・・進行した肝疾患・手や顔の中等度以上の損傷などでは3〜5日の早期投与を行い、は顔面を除いて避ける。破傷風・の曝露評価も併せて行う。

出典

  1. 1.Pasteurella multocida: from zoonosis to cellular microbiology(Clinical Microbiology Reviews・2013)PMC全文(PMC3719492)で確認した。感染した咬傷創からはイヌ咬傷の50%・ネコ咬傷の75%でパスツレラ属が分離されること、咬傷感染の炎症・紅斑・腫脹・疼痛は多くが24時間以内、早ければ8〜12時間で現れること、咬傷によらない感染は皮膚病変や鼻咽頭・上気道粘膜が動物やその分泌物に触れて起こり、幼児・高齢者・妊婦・免疫不全者に多いこと、肝硬変・透析や留置カテーテルを要する腎不全・HIV感染など免疫不全をきたす基礎疾患を持つ人では腹膜炎・心内膜炎・敗血症の危険が高く、とくにペットとの接触歴があるときにそうであること、呼吸器感染は比較的まれだが慢性肺疾患の患者で起こりうること、莢膜多糖体により血清群A(ヒアルロン酸)・B・D(ヘパリン)・E・F(コンドロイチン)に分けられ、リポ多糖でさらに16の型に分けられること、血清群Aのヒアルロン酸莢膜が貪食に抵抗しヒトの呼吸器保菌・感染での優位に関わるとされる一方、動物咬傷由来の分離株の多くは血清群A以外(血清群D)で播種性疾患との関連がより強かったこと、大半の臨床分離株がカタラーゼ・オキシダーゼ・インドール陽性で、5%ヒツジ血液寒天培地が好ましくマッコンキー寒天培地には発育しないこと、パスツレラ属はエリスロマイシン・クリンダマイシンなどのリンコサミド系・ジクロキサシリンやセファレキシンなど一部のβラクタム系への感受性が低く、これらは動物咬傷の単剤治療に勧められないことを確認した。閲覧 2026-09-27
  2. 2.Practice Guidelines for the Diagnosis and Management of Skin and Soft Tissue Infections: 2014 Update by the Infectious Diseases Society of America(Infectious Diseases Society of America (IDSA)・2014)IDSAサイトの全文で動物咬傷の推奨XI・XII・XIVと根拠の節を確認した。イヌ・ネコ咬傷では、免疫不全・無脾・進行した肝疾患・患部の浮腫・中等度以上の損傷(特に手・顔)・骨膜や関節包に達した可能性のある損傷に3〜5日の先制的抗菌薬投与を勧めること(strong, low)、感染した咬傷創にはアモキシシリン・クラブラン酸のような好気性菌と嫌気性菌の両方に効く薬を用いること(strong, moderate)、代替として第2世代セファロスポリン(セフロキシムなど)に必要なら嫌気性菌カバー(クリンダマイシンまたはメトロニダゾール)を加える方法、カルバペネム、モキシフロキサシン、ドキシサイクリンがあり、ST合剤かレボフロキサシンを使うならクリンダマイシンかメトロニダゾールで嫌気性菌をカバーすること、マクロライドはPasteurella multocidaとフソバクテリウムへの活性が一定しないため他に選択肢が無い場合を除き避けること、パスツレラ属は非化膿性の創からも膿瘍からもよく分離されること、一次縫合は顔面の創(大量洗浄・慎重なデブリードマン・先制的抗菌薬を行う)を除いて勧めないこと(strong, low)を確認した。閲覧 2026-09-27