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Disease Atlas · 全身 · 先天性疾患

Goldenhar症候群

Goldenhar syndrome

別名
眼耳脊椎異形成症眼耳脊椎スペクトラム
臓器系
全身耳鼻咽喉科眼科運動器
科目
Microscopic Anatomy and Embryology (Embryology)
トピック
発生学 16.4:頭頸部の臨床相関発生学 16.1:頭頸部:咽頭(鰓)装置発生学 18.4:耳の臨床相関
鑑別疾患
CHARGE症候群Treacher Collins症候群
関連疾患
口唇裂・口蓋裂
症状
眼瞼欠損伝音難聴眼瞼下垂

🧠 全体像:は、第1・第2(およびその間の第1・第1)のという一本の機序で、耳・下顎・眼・脊椎の所見がまとめて説明できる疾患である1。⚠️ は左右で別々に発生するため、障害も片側に偏りやすい——だから所見は多くが片側性で、顔は非対称になる。ここが、同じ第1・第2由来でありながら左右対称に低形成するとの最大の対比になる。⚠️ 大半はで原因が特定できない2。そして⚠️ 耳と顔だけを見て終わらせない——他の合併奇形が69.5%、が27.8%にあり、全例で早期のが要る1。

名称:Goldenhar症候群と眼耳脊椎スペクトラム

という名は、眼科医 Maurice Goldenhar が・・・という組み合わせを記載したことに由来する3。その後、を含めた(OAVS)という呼称が加わり、歴史的にはを伴う型を指して「」と呼ぶ用法もあったが、⚠️ この狭義の用法を明示した査読済みの出典は当たらなかった。

ただし現在は、・・・・といった呼び名は、⭐ 軽症から重症まで幅のある同一の臨床スペクトラムの一部として扱うのが受け入れられた見方である1。近年の総説も両者を同義に扱う2。💡 用語を厳密に切り分けるより、「第1・第2のという一つの連続体を、どこを強調して呼ぶか」の違いと理解するほうが実務に合う。

機序:一つの発生単位が壊れる

flowchart TD
    A["第1・第2<span class='jp-term jp-term-diagram' title='branchial arch'>鰓弓</span>と<br>第1<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pharyngeal pouch'>咽頭嚢</span>・第1<span class='jp-term jp-term-diagram' title='branchial groove'>鰓溝</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Developmental Disorders'>発生障害</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mandibular ramus'>下顎枝</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='masticatory muscles'>咬筋群</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='zygomatic bone'>頬骨</span>の低形成"]
    A --> C["耳介・外耳道・耳小骨の形成異常"]
    A --> D["顔面軟部組織の量的不足"]
    B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemifacial microsomia'>半顔小体症</span>(顔面の非対称)"]
    D --> E
    C --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='microtia'>小耳症</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='preauricular skin tag'>耳前部皮膚附属器</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='aural atresia (atresia of the external auditory canal)'>外耳道閉鎖</span>・狭窄"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conductive hearing loss'>伝音難聴</span>"]
    A --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epibulbar dermoid'>眼球上皮様嚢腫</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='upper eyelid coloboma'>上眼瞼コロボーマ</span>"]
    A --> I["脊椎(とくに<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cervical vertebra'>頸椎</span>)の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='segmentation anomaly'>分節異常</span>"]

⭐ 「なぜ耳と顎と眼と脊椎が一緒に壊れるのか」への答えは、これらが同じ発生単位に属するからである——発生学 16.4が「同じ弓に由来する構造は一緒に障害されやすい」という原則として扱う内容そのものである。耳介と外耳道の発生は発生学 18.4、咽頭弓・嚢・溝の対応は発生学 16.1を参照。

⚠️ 原因は分かっていない。 遺伝要因と環境要因の双方が提唱され、少数の反復性と遺伝子が同定されているにすぎず、大半の患者では病因を特定できない2。臨床的・遺伝的に不均一で、と多様なを示すためも難しい2。通常はで、・潜性に合致するの報告はあるが、⭐ 経験的な再発率は2〜3%と低く、双胎での一致例が稀であることから、多くはと考えられている1。双胎・・母体のがリスク因子として確認されている1。

臨床像:耳から始まり、外へ広がる

⚠️ まれである。 ・耳の異常に加えてスペクトラムのを1つ以上もつものと定義したのは、出生10万あたり3.8(約26,000出生に1人)と報告されている1。

以下は欧州16か国34登録の1990〜2009年の355例のうち、詳細な臨床記載が得られた259例での頻度1。

所見 頻度
88.8%
49.0%
44.4%
外耳道の閉鎖・狭窄 25.1%
24.3%
眼の異常(全体) 24.3%
7.7%
3.9%
8.1%(単独 6.6%)

⚠️ 耳の所見が最も高頻度の入口である。 69.7%が出生時に診断され、出生前に関連する異常が検出されたのは18.9%にとどまる1。

眼科の視点からは像が変わる。上海の単一施設の眼科で診断された72例では、が94.44%、が50%に認められた3。⚠️ これは眼科を受診した患者に限った集団であり、頻度をそのまま一般の本症へ当てはめられない——登録ベースの259例では7.7%である1。それでも、病変の左右性についてはこの眼科コホートが具体的である。は片側性が63.89%と両側性36.11%より多く、片側例では右眼がやや多かった3。も88.89%が片側性であった3。

⭐ とは併存しやすく、重症度も相関する(p<0.05)3。💡 一方の所見を見つけたらもう一方を探す、という診察の順序がそのまま導かれる。輪部にある上皮様は全例が、にあるものはが最多(40%)で、⭐ 部位によって病理型が違う(p<0.001)3。

⚠️ 見逃してはいけないもの

  • ⚠️ 他の合併奇形。 頭蓋顔面と脊椎以外の合併奇形が69.5%と高率で、最多は27.8%である1。この高率さゆえに、本症で出生した全児に早期のを行うことが求められる1。
  • ⚠️ による。 欠損の大きさそのものより時に角膜が覆われるかどうかが問題で、があればを要する。詳細はに譲る。
  • ⚠️ と言語発達。 外耳道の閉鎖・狭窄が25.1%にあり1、聴力を早期に評価しないと言語発達の機会を失う。⚠️ 片側性でも見過ごさない。
  • ⚠️ による気道と、の。 は眼科コホートで27.78%に認められた3。気道確保が難しい可能性と異常の可能性は、麻酔・手術の前に必ず評価する。

鑑別

疾患 対比の軸
同じ第1・第2由来だが両側性・左右対称。TCOF1 を中心とするで、は下方傾斜し、は下眼瞼に生じる
片側性・非対称が多い。大半がで原因不明。は上眼瞼が主で、を伴う
・・・成長・耳の異常。眼の・が中核で、とは別
(単独) ・のであり、由来構造の低形成ではない。耳介・下顎の低形成を欠く

⭐ 上眼瞼か下眼瞼かという一点が、とを分ける実務的な手掛かりになる。

管理

根治的な治療はなく、器官系ごとに時期を分けた多職種管理になる。

  • :気道と哺乳の評価。心エコーを含む合併奇形の早期スクリーニング1。
  • 眼:があれば・で保護し、を遮る・上皮様はを防ぐために早期の対応を検討する。上皮様の切除は整容と・の観点から適応を判断する。
  • 耳と聴力:と以後の定期評価。にはを含む早期の聴覚補償を行い、・耳介形成は成長を待って計画する。
  • 顎顔面:下顎の延長やなど、成長の段階に合わせた顎顔面外科的介入。
  • 脊椎:を含む脊椎の画像評価。の進行を追う。
  • 遺伝カウンセリング:が大半で経験的再発率は2〜3%だが、の報告があるため両親の診察を含めた評価を行う1。

まとめ

  • は第1・第2(と第1・第1)ので、耳・下顎・眼・脊椎の所見が一本の機序で説明できる。
  • 多くは片側性・非対称で、両側対称に低形成すると対比される。は上眼瞼が主。
  • 大半はで病因が特定できない。経験的再発率は2〜3%でが想定され、双胎・・母体のがリスク因子。
  • 登録ベースの259例では88.8%・49.0%・44.4%・24.3%。眼科コホートでは94.44%・50%だが、これは眼科受診例に限った値である。
  • 他の合併奇形が69.5%、が27.8%と高率で、全例に早期のが要る。
  • 「」は・などと同一の連続体の一部として扱うのが受け入れられた見方である。は出生10万あたり3.8。

出典

  1. 1.Prevalence, prenatal diagnosis and clinical features of oculo-auriculo-vertebral spectrum: a registry-based study in Europe(European Journal of Human Genetics・2014)眼耳脊椎スペクトラムが第1・第2鰓弓とその間の第1咽頭嚢・第1鰓溝に由来する頭頸部構造を主に侵す複合的な発生障害であり、耳の異常・半顔小体症・眼球上皮様嚢腫・脊椎異常を特徴とすること、Goldenhar症候群・半顔小体症・第1第2鰓弓症候群などの別称が同じ臨床スペクトラムの一部として受け入れられていること、通常は孤発性に生じるが常染色体顕性・常染色体潜性に合致する家族例の報告があり、経験的な再発率2〜3%と双胎での一致例の稀少さが多因子遺伝を支持すること(Introduction節)、欧州16か国34登録から1990〜2009年に診断された355例のうち95.8%が出生し、69.7%が出生時に診断されたこと、詳細な臨床記載が得られた259例における頻度が小耳症88.8%・半顔小体症49.0%・耳前部皮膚附属器44.4%・外耳道閉鎖/狭窄25.1%・脊椎異常24.3%・眼の異常24.3%であり、眼球上皮様嚢腫7.7%・眼瞼コロボーマ3.9%・口唇口蓋裂8.1%・口蓋裂6.6%であったこと、頭蓋顔面と脊椎以外の他臓器系の合併奇形が69.5%と高率で最多が先天性心疾患27.8%であったこと、小耳症/耳の異常に加えスペクトラムの主要異常を1つ以上有するものと定義した有病率が出生10万あたり3.8であったこと、双胎・生殖補助医療・母体の妊娠前糖尿病がリスク因子として確認されたこと、合併奇形が高率であることから本症で出生した全児に早期の超音波スクリーニングを行う必要があること(Abstract・Results節)を確認した閲覧 2026-09-03
  2. 2.Oculo-auriculo-vertebral spectrum: new genes and literature review on a complex disease(Journal of Medical Genetics・2022)眼耳脊椎スペクトラム(Goldenhar症候群)が胚発生における第1・第2鰓弓由来構造の発生異常によって生じ、半顔小体症に耳・眼・脊椎の奇形を伴うことを特徴とすること、本スペクトラムの臨床的・遺伝的不均一性と不完全浸透・多様な表現度により分子診断が困難であること、原因として同定されている反復性のコピー数多型と遺伝子はごく少数にとどまること、出生前の環境要因も仮説として提唱されていること、それでも大半の患者では病因が特定できないままであることを抄録で確認した(抄録のみを閲覧しており全文は未取得)閲覧 2026-09-03
  3. 3.Ocular Manifestations and Pathological Features in Goldenhar Syndrome: A 10-Year Retrospective Study(Ophthalmology and Therapy・2025)2014〜2023年に上海の単一施設の眼科でGoldenhar症候群と診断された72例(罹患98眼)の後ろ向き研究で、全例に眼の異常があり眼病変は片側性63.89%が両側性36.11%より多く片側例では右眼が左眼より多かったこと、最も高頻度の眼所見が眼球上皮様嚢腫94.44%で上眼瞼コロボーマ50%が続き、眼瞼コロボーマは88.89%が片側性で軽度32.5%・中等度52.5%・高度15%であったこと、上眼瞼コロボーマと眼球上皮様嚢腫の併存と重症度に有意な関連があったこと(p<0.05)、輪部に位置する上皮様嚢腫は全例がデルモイドであり結膜に位置するものは脂肪皮様嚢腫が最多(40%)で部位により病理型が有意に異なったこと(p<0.001)、耳の異常が93.06%(耳前部皮膚附属器90.28%)・下顎低形成27.78%・横顔裂15.28%・口唇裂/口蓋裂8.33%に併存したこと、本症が通常は孤発性に生じるが家族例の報告があること、Goldenhar症候群の名称が眼科医Maurice Goldenharによる眼球上皮様嚢腫・耳前部皮膚附属器・耳前瘻孔・顎顔面変形の組み合わせの記載に由来し、現在は第1第2鰓弓症候群・半顔小体症・頭蓋顔面小体症・眼耳脊椎スペクトラムなど複数の用語が併用されていることを確認した(眼科受診例に限られたコホートである)閲覧 2026-09-03