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Disease Atlas · 腫瘍 · 腫瘍

髄膜腫

Meningioma

臓器系
腫瘍神経
科目
PathologyHistopathologyOncologyInternal MedicineENT
トピック
病理学 C/111:中枢・末梢神経系腫瘍病理学 A/17:異栄養性石灰化組織病理 H2-130:髄膜腫(危険因子と経過観察の判断)組織病理 H2-116B:髄膜腫組織病理 H2-124A:髄膜腫(発生部位・症候とSimpson分類編)組織病理 H2-138:髄膜腫(好発部位と画像所見)腫瘍学 II-32:中枢神経系腫瘍の疫学・病因・分類・症状・診断腫瘍学 II-34:中枢神経系腫瘍の外科治療と薬物療法内科学 S-07:下垂体機能低下症耳鼻咽喉科 14:中枢性・末梢性顔面神経麻痺の鑑別、末梢性麻痺の原因と鑑別診断
上位概念
中枢神経系腫瘍(成人・小児)
鑑別疾患
孤立性線維性腫瘍前庭神経鞘腫
合併症
てんかん
続発疾患
水頭症下垂体機能低下症
関連疾患
頭蓋底腫瘍乳癌
治療薬
デキサメタゾンレベチラセタム
原因薬剤
シプロテロン酢酸エステルメドロキシプロゲステロン酢酸エステル
症状
頭痛焦点性発作対麻痺視力低下乳頭浮腫嗅覚障害半側顔面痙攣
画像所見
石灰化
スコア
Simpson分類
元疾患
神経鞘腫症
原因となる疾患
神経線維腫症2型
禁忌薬
シプロテロン酢酸エステル

🧠 全体像は「くも膜のき状に増殖しを作る→硬膜にに付着して脳をするが浸潤はしない→大半はで無症候のまま偶発的に発見される→症候性・増大例や高grade例では手術(±放射線治療)が中心になる」という一本の流れで理解する。成人の原発性として最頻で、女性に多くを発現する点、というの代表例である点が、他のCNS腫瘍と対比する軸になる。

概要

はくも膜のに由来する腫瘍で、成人で最も頻度の高い原発性である。多くは硬膜にに付着する境界明瞭な腫瘤として脳表を外側からするが、への浸潤はまれで、この「性・」が浸潤性に発育するとの対比軸になる。内・脊髄硬膜内にも生じ、女性に多く、性差はとくに脊髄発生例・頭蓋底発生例で目立つ。

危険因子と発生機序

  • 曝露:小児期の頭部照射歴などは、数十年後の発生リスクを高める既知の危険因子である。
  • (NF2):両側性のとの合併はNF2を示唆し、例の多くもNF2遺伝子(産物)の不活化に関連する。NF2野生型の一部(頭蓋底発生例など)ではTRAF7KLF4AKT1SMO変異がみられる。
  • :多くの(PR)が発現し、妊娠中や中に増大速度が上がることがある。この共通の受容体生物学を背景に、乳癌の既往がある集団ではがやや高いという疫学的関連が報告されているが、乳癌のようにPRを治療標的・予後因子として使う検査ではない。
  • 高用量・長期の合成(1日25 mg以上・長期)や(とくに)はリスクを高め、長期使用例ではMRI経過観察を行い、既存のがあれば投与を中止する。
flowchart TD
    A["くも膜の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='meningothelial cell'>髄膜上皮細胞</span>"] --> B["*NF2*不活化などの遺伝子異常"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='whirl / whorl'>渦巻</span>き状に増殖"]
    C --> D["硬膜に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='wide-based (broad-based)'>広基性</span>に付着"]
    D --> E["脳を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mass effect'>圧排</span>するが浸潤しない境界明瞭な腫瘤"]
    E --> F["多くは<span class='jp-term jp-term-diagram' title='slowly progressive'>緩徐進行性</span>で無症候のまま経過"]

⭐ 妊娠中に増大が確認されたでも、多くは分娩後に増大速度が鈍化する。症状が乏しければ、妊娠中は直ちに手術を急がず経過観察を優先することがある。

病理形態

肉眼的には境界明瞭な様の腫瘤で、硬膜に付着して発育する。組織学的特徴は次の2点に集約される。

  • に取り巻く構築で、正常くも膜の配列を反映する。
  • に層状石灰化した小体で、の変性・石灰化を反映する。血清カルシウムは正常のまま壊死・変性巣に石灰が沈着するの代表例で、甲状腺・漿液性と同じ機序で形成される。
grade 1亜型 特徴
髄膜上皮性 に乏しくに増殖
線維性 に富むが束状に増殖
髄膜上皮性+線維性の混合、が目立つ
が密に分布
血管腫型・型・分泌型など いずれも良性の経過を示す形態亜型

WHO CNS分類とgrade(第5版、2021年)

WHO分類第5版(2021年)でははgrade 1〜3に分類され、形態基準に加えて分子基準がgradeを規定するようになった点が改訂の核心である。

grade 形態基準 分子基準
grade 1(典型的 10 HPFあたり4未満、脳浸潤なし。上表の亜型が該当 なし
grade 2(異型性 10 HPFあたり4〜19、または脳浸潤、または細胞密度増加・小型細胞化(核/細胞質比増大)・核小体明瞭・(無構築)増殖・自発壊死のうち3項目以上 明細胞型・様型は、上記の基準を満たさなくても形態亜型だけでgrade 2とする
grade 3( 10 HPFあたり20以上、または肉腫・悪性黒色腫様の明らかな TERTプロモーター変異またはCDKN2A/B欠失があれば、形態が軽度でもgrade 3とする

⚠️ 型・横紋筋様型は、WHO第4版までは組織亜型だけで自動的にgrade 3とされていたが、WHO第5版(2021年)ではこの基準は削除された。 組織亜型単独では生物学的悪性度を十分に予測できないためで、現行分類では型・横紋筋様型であっても、数・脳浸潤・・分子基準のいずれかを満たさない限りgrade 3へ引き上げない。

⭐ 「grade 1は必ず低リスク」と単純化しない。TERTプロモーター変異やCDKN2A/B欠失があれば、形態が典型的(grade 1様)でもgrade 3として扱う分子基準が、現行分類では形態基準と並列に働く。

臨床像

症候はで、発生部位によって規定される局在症候が中心になる。

発生部位 好発する症候
下肢優位の・痙攣(の運動野に近接)
頭痛
。大型化で同側・対側
上部 視交叉圧迫による視力障害、下垂体機能異常
視神経・眼窩への進展による視力障害・
脳室内 水頭症
脊髄 病変レベル以下の運動・感覚障害

⚠️ ・鞍上部のは下垂体・視床下部を圧迫し、を来しうる。の圧迫ではGH→ゴナドトロピン→TSH→ACTHの順に脱落しやすいが、進行すればACTH欠損によるにも注意する。

大型化・脳室内発生例では水頭症を、の皮質近傍病変では慢性のてんかんを来しうる。増大に伴う頭蓋内圧亢進では・頭痛・がみられる。

画像所見

造影CT/MRIで境界明瞭な硬膜性腫瘤として描出され、次の所見が特徴的である。

  • 均一に強く造影される腫瘤
  • :腫瘤に隣接する硬膜の造影増強
  • :隣接する頭蓋骨の反応性肥厚
  • 腫瘤内の石灰化(を反映)、の内方偏位(外病変を示唆)

⚠️ 硬膜に付着する境界明瞭な腫瘤という所見だけでと確定しない。非対称な硬膜肥厚やが目立つ場合は「鑑別」節の疾患を考える。

治療

flowchart TD
    A["画像で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Meningioma'>髄膜腫</span>を疑う所見"] --> B{"無症候・小型・増大乏しいか"}
    B -->|"はい"| C["定期画像による経過観察"]
    B -->|"いいえ(症候性・増大傾向・大型)"| D["外科的摘出を検討"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Simpson grading system'>Simpson分類</span>に基づく切除範囲の計画"]
    E --> F{"残存・再発・高gradeか"}
    F -->|"はい"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stereotactic radiotherapy, SRT'>定位放射線治療</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fractionated radiotherapy'>分割放射線治療</span>"]
    F -->|"いいえ"| H["定期画像による経過観察を継続"]

無症候の小さい病変は画像による経過観察が第一選択で、増大速度と症状の有無で手術の要否を判断する。症候性・増大例では外科的摘出を行い、切除範囲(Simpson grade)が再発リスクと相関するが、静脈・脳神経近接部位では機能温存を優先することがある。残存・再発例、高grade例にはを追加する。全身薬物療法は確立していない。周術期の症候性脳浮腫にはを、痙攣を伴う例にはなどのを用いるが、発作歴のない患者への長期予防投与はしない。

鑑別

疾患 鑑別のポイント
非対称な硬膜肥厚・、既知の原発癌の病歴を伴うことが多い
を含む) 画像だけでは類似しうるが免疫染色(STAT6陽性)で鑑別する
での鑑別。に沿う発育、S-100陽性
鞍上部での鑑別。中心の発育と内分泌症候で見分ける
硬膜性腫瘤として現れるが造影パターン・が異なる

まとめ

  • はくも膜のに由来し、硬膜にに付着して脳をするが浸潤しない、成人で最も頻度の高い原発性である。
  • 女性に多くを発現し、曝露とNF2が確立した危険因子である。高用量・長期の合成)もリスクをに高める。
  • 組織像はの代表例)が特徴。現行のではgrade 2の明細胞型・様型、grade 3のTERTプロモーター変異・CDKN2A/B欠失など分子基準が形態基準と並んでgradeを規定し、型・横紋筋様型を自動的にgrade 3とする旧基準はすでに削除されている。
  • 症候は発生部位に規定される局在症候(、嗅溝→→視力障害、)が中心で、画像では・均一な強い造影増強が特徴的である。
  • 治療は無症候のなら経過観察、症候性・増大例では外科的摘出(Simpson gradeが再発と相関)、残存・再発・高grade例には放射線治療を追加し、確立した全身薬物療法はない。