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Drug Atlas · B16 Sex hormones & modulators / 性ホルモン関連薬 · 必修

シプロテロン酢酸エステル

cyproterone acetate

分類
Sex hormones & modulators / 性ホルモン関連薬
商品名(EU)
AndrocurDiane-35(エチニルエストラジオール配合)
科目
Pharmacology
トピック
B16: Progestins and antiprogestins. Contraceptives
禁忌疾患
髄膜腫
副作用
倦怠感血栓塞栓症
監視検査値
ビリルビン
対象疾患
尋常性痤瘡前立腺癌
原因となる疾患
髄膜腫

🧠 全体像:は、を作動させながら(AR)を直接遮断するという二重機序を持つ唯一の古典的である。同じB16グループのもを併せ持つが、あちらは誘導体としての「ついで」の作用にすぎない。はAR遮断そのものが主作用であり、重症の高アンドロゲン症状・前立腺癌に使われてきた。ただし肝毒性とリスクという2つの重大な安全性シグナルにより、現在は用量・適応が厳しく絞り込まれている薬でもある。

薬効群の中での位置づけ

は「どこでアンドロゲン作用を止めるか」で分類される。

分類 代表薬 機序 位置づけ
ステロイド性抗アンドロゲン AR拮抗+PR作動(ゴナドトロピン抑制) 古典的だが肝毒性・リスクで用途縮小
非ステロイド性抗アンドロゲン ・ AR拮抗のみ(PR作動なし) 前立腺癌の現行標準はこちら側
薬の付随作用 抗MC作用にAR拮抗が付随 避妊が主目的、抗アンドロゲンは副次的
テストステロン→変換阻害 ・

⭐ 前立腺癌領域では、は既にレガシー薬になっている。 現行の標準治療はLHRHへなどの非ステロイド性を短期併用してを抑える方式、またはなどの(ARPI)であり、単剤で前立腺癌を治療する場面は現在ほとんどない。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cyproterone acetate'>シプロテロン酢酸エステル</span>を投与"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='androgen receptor'>アンドロゲン受容体</span>(AR)へ<br>テストステロン・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dihydrotestosterone'>DHT</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='competitive'>競合的</span>に結合"]
    B --> C["AR拮抗→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='target tissue'>標的組織</span>での<br>アンドロゲン作用が遮断される"]
    A --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='progesterone receptor (PgR/PR)'>プロゲステロン受容体</span>(PR)を作動"]
    D --> E["視床下部・下垂体で<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='LH/FSH'>ゴナドトロピン</span>分泌を抑制"]
    E --> F["精巣・卵巣でのテストステロン産生自体も低下"]
    C --> G["末梢でのアンドロゲン作用抑制"]
    F --> G

💡 末梢でのAR遮断(受容体レベル)と中枢でのゴナドトロピン抑制(産生レベル)の両方を同時に叩くのが、他のにはない特徴。などの非ステロイド性はAR拮抗のみでゴナドトロピン抑制作用を持たないため、単剤では血中テストステロンがむしろ上昇しうる(フィードバック解除のため)。はPR作動によるゴナドトロピン抑制でこれをできる分、単剤でも去勢に近い状態を作りやすい。

薬物動態

項目 値・特徴
分布 高い脂溶性、が高い
代謝 (を生じる)
半減期 約1.5〜2日
長期連日投与で組織に蓄積しやすい

適応

領域 使いどころ
婦人科・ 重症の、重症・(が無効な場合に限る、低用量配合剤の形が多い)
泌尿器・腫瘍 前立腺癌(レガシー適応。現行は・ARPIが中心)
性別移行医療 トランスジェンダー女性のにおけるとして、欧州で比較的よく用いられる

用法・用量

適応によって用量が桁違いに異なる。・では低用量(1日2 mg前後、配合剤の一成分として、または逆ハンマーシュタイン法で周期的に)を用いる。前立腺癌の既往適応では1日100〜300 mgの高用量を用いていた。10 mg/日以上の製剤は、リスクを理由にで「他の治療が無効な場合に限る」よう使用が制限されている。 実際の用量・投与法は適応・年齢・体重・肝機能で大きく変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • ⚠️ リスク()。 ⚠️ 「1日何mgから」と「どれだけ積み上がったか」を混同しない。 上の線引きは1日用量で引かれ、PRAC(2020年2月13日勧告・CMDh同年3月26日採択)は1日10 mg以上の製剤を「他の治療が無効な場合に限る」よう制限し、有効性が確認され次第最小までするよう求めている。低用量(1〜2 mg)の配合剤にも既往者への禁忌が新設された。⚠️ 前立腺癌での使用には変更が無い1。一方、量と危険の関係を測ったフランスの全国コホート(139,222例・対照群114,555例)が用いた物差しは1日用量ではなくである——曝露の定義が最初の6か月で3 g以上、の手術・放射線治療のは10万人年あたり23.8件対4.5件(補正6.6、95%CI 4.0〜11.1)で、60 g超では補正21.7(10.8〜43.5)まで上がる。中止1年後もリスクは対照群の1.8倍残る2。
  • ⚠️ による経過観察は、フランスで50 mg・100 mg製剤(Androcurとその)に課された運用である。 開始時に1回(既存のがないことを確かめるため)、継続するなら1回目から遅くとも5年後にもう1回、正常ならその後は2年ごと。が見つかれば治療は永久に中止し、クロルマジノン・ノも禁忌になる。⭐ 見つかっても直ちに手術ではない——中止すると多くが縮小・安定するため、侵襲の大きい摘出術を機械的には選ばない。同じ運用は・中等度の・閉経への使用、および小児と閉経後女性への使用を認めていない3。既存のは。
  • ⚠️ 肝毒性:重症肝炎・肝不全(死亡例を含む)の報告があり、日本では2000年に販売中止となった経緯を持つ。定期的な肝機能モニタリングが必要
  • 禁忌:妊娠、重度肝疾患・肝腫瘍の既往、(既往・現症)、血栓塞栓症の既往・高リスク状態、重度の(・糖尿病性血管障害など)
  • 高用量・長期使用ほどリスクが積み上がるため、臨床改善後は速やかに最小へ減量するのが現行の考え方

副作用

頻度 内容
高頻度 倦怠感、、体重変化
注意 ・(男性への投与時)、、
重篤・まれ 重症肝炎・肝不全、()、、(高用量長期)

まとめ

  • 作動+拮抗の二重機序を持つ、唯一の古典的ステロイド性。
  • AR遮断(受容体レベル)とゴナドトロピン抑制(産生レベル)を同時に叩くのが非ステロイド性との違い。
  • 適応は重症・、前立腺癌(レガシー)、トランスジェンダー女性の。
  • 前立腺癌領域では現行標準から外れ、などの非ステロイド性・ARPIに置き換わっている。
  • 最大の注意点はのリスクと重症肝毒性。⚠️ の線引きは1日用量(では10 mg以上の製剤を制限)、量と危険の関係を測った研究の物差しは(60 g超で補正21.7)で、両者は別の尺度である。 フランスでは50 mg・100 mg製剤に経過観察(開始時、遅くとも5年後、以後正常なら2年ごと)が課されている。
  • 日本では2000年に販売中止となり、現在は未承認(入手は個人輸入に限られる)。

出典

  1. 1.Cyproterone-containing medicinal products(European Medicines Agency(PRAC/CMDh)・2020)PRACが2020年2月13日に勧告しCMDhが同年3月26日に採択した措置として、1日10 mg以上の高用量シプロテロン酢酸エステル含有製剤を他の治療が無効な場合に限りアンドロゲン依存性疾患へ使用すること、有効性が確認され次第最小有効量まで漸減すること、シプロテロン(1-2 mg)とエチニルエストラジオール等を配合する低用量製剤には髄膜腫の既往がある人への禁忌を新設したこと、前立腺癌での使用には変更が無いことをEMAの文書で確認した。閲覧 2026-08-27
  2. 2.Use of high dose cyproterone acetate and risk of intracranial meningioma in women: cohort study(The BMJ・2021)フランスの全国データベースを用いた高用量シプロテロン酢酸エステル曝露群139,222例・対照群114,555例のコホート研究で、髄膜腫の手術/放射線治療の発生率が曝露群10万人年あたり23.8件、対照群4.5件(補正ハザード比6.6、95%信頼区間4.0-11.1)であり、累積投与量60 g超では補正ハザード比21.7(10.8-43.5)まで上昇したこと、中止1年後もリスクが対照群の1.8倍残っていたことを本文で確認した。閲覧 2026-08-27
  3. 3.Informations et recommandations d'utilisation et de suivi des personnes traitees par acetate de cyproterone(Agence nationale de securite du medicament et des produits de sante (ANSM, France)・2022)2022年12月2日更新。50 mgまたは100 mg製剤(Androcurと後発品)を対象とした仏国の運用として、逐語で次を確認した。IRMの周期は「Ce suivi consiste en la realisation d une premiere IRM en debut de traitement, puis une seconde dans les 5 ans, puis tous les 2 ans.」であり、正常だった場合の継続は「une nouvelle IRM au plus tard 5 ans apres la premiere, puis tous les 2 ans tant que l imagerie sera normale」。髄膜腫が検出された場合は「Votre traitement sera definitivement arrete」で、クロルマジノン酢酸エステル・ノメゲストロール酢酸エステルも禁忌になること、および「la majorite des meningiomes associes a l acetate de cyproterone regressent ou se stabilisent a l arret du traitement, c est pourquoi leur ablation systematique par une intervention chirurgicale lourde et a risque n est pas a privilegier」。使用してはならない場面は「pour le traitement de l acne, de l hirsutisme modere ou en cas de menopause, en cas d antecedent ou d existence d un meningiome, chez l enfant et la femme menopausee」。年1回の情報提供書面への医師・患者の連署と、その写しの薬局提示が調剤の条件であること。⚠️ これは仏国の50/100 mg製剤についての運用であり、他国・他用量に一般化しない閲覧 2026-09-14