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Disease Atlas · 腫瘍 · 腫瘍

神経線維腫症2型

Neurofibromatosis type 2

別名
NF2MISME症候群
臓器系
腫瘍神経耳鼻咽喉科眼科
科目
PathologyPediatrics
トピック
病理学 C/111:中枢・末梢神経系腫瘍病理学 B/06:腫瘍抑制遺伝子の抑制機構と発癌における役割病理学 B/13:遺伝性腫瘍症候群(遺伝性がん症候群)小児科 3-61:単一遺伝子疾患の遺伝形式
鑑別疾患
神経鞘腫症神経線維腫症1型
続発疾患
前庭神経鞘腫神経鞘腫髄膜腫白内障
治療薬
ベバシズマブ
症状
難聴耳鳴めまい顔面神経麻痺

🧠 全体像(NF2)は、22番染色体にあるNF2によって起こる、の全身性疾患である。NF2がコードするmerlin(schwannomin)は・くも膜細胞・の増殖を抑える細胞骨格関連の腫瘍抑制蛋白で、体細胞での第二ヒットを経て機能を完全に失うと、両側性のを最も特徴的な所見として、が多発する。診断の核心は「両側性=NF2」と即断できる点にあり、(NF1)とは名前が似ているだけで、NF1のRas-GAPNF2のmerlin)も臨床像(のNF1に対し、両側のNF2)もまったく異なる別疾患である。

分子遺伝学・発生機序

merlinは・くも膜のなど特定の細胞系統に発現し、細胞膜と細胞骨格を連結してHippoを介した接触阻害(細胞密度が高くなると増殖を止める仕組み)を担う腫瘍抑制蛋白である1。生殖細胞系列で片方のアレルにを持つ細胞は、もう一方の正常アレルにも体の変異(Knudsonのにしたがう「第二ヒット」)が加わって初めてmerlinの機能を完全に失い、する。この機序はNF1の喪失と同じの枠組みに従うが、標的とする経路(NF1はRas-MAPK、NF2はHippo)と好発細胞系統(NF1は由来の多様な細胞、NF2は・くも膜細胞・)が異なるため、生じる腫瘍の顔ぶれも別物になる。

flowchart TD
    A["NF2遺伝子(22q12.2)の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='germline pathogenic variant'>生殖細胞系列病的バリアント</span>"] --> B["merlinの機能が半量に低下(片アレルのみ異常)"]
    B --> C["体細胞で残る正常アレルに第二の変異"]
    C --> D["merlinの機能が完全に喪失"]
    D --> E["Hippo経路による接触阻害が破綻"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Schwann cell'>Schwann細胞</span>・くも膜細胞・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ependymal cell'>上衣細胞</span>の腫瘍性増殖"]
    F --> G["両側性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vestibular schwannoma'>前庭神経鞘腫</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Meningioma'>髄膜腫</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spinal cord tumor'>脊髄腫瘍</span>など多発性腫瘍"]

NF2はで、罹患親から子への伝達リスクは50%だが、家族歴のない新生バリアントによる孤発例も一定数存在する1。推定頻度は2万5千〜4万人に1人で、NF1(2,000〜3,000人に1人)よりはるかにまれである1

臨床像

両側性のがNF2の最も特徴的な所見であり、患者の約90〜95%に存在する。 診断的価値がきわめて高く、両側性を確認した時点でNF2をほぼ確定できる1。症状は多くが20歳前後で出現し始め、片側または両側の難聴めまいから始まることが多い1

病変 頻度・特徴
両側性 約90〜95%。NF2の中核所見。詳細はノートに委ねる
約50%に合併。例より若年で発症し、小児のの約20%はNF2が背景にある
内に多発しうる
後嚢下型が典型で、無症候の若年患者でも眼科的スクリーニングの対象になる
皮膚病変 NF1より軽度で目立たない。最も特徴的なのは境界明瞭な隆起性局面で、のような派手さはない1
末梢神経障害 の形で、腫瘍による圧迫とは独立したを来すことがある

⚠️ NF2の皮膚所見は控えめで、を積極的に探してもほとんど見つからない。 NF1様の皮膚所見の派手さを期待してNF2を除外しないこと。

診断:Manchester基準

家族歴のない患者では、次のいずれかを満たせばNF2と診断する1

  • 70歳未満での両側性
  • 70歳未満での片側性+NF2の罹患
  • 次のうち2項目以上+NF2の罹患、脳内石灰化、
  • 生殖細胞系列または複数腫瘍に共通するモザイクのNF2

片側性のだけではNF2を否定できない。 家族歴があればを満たしうるし、家族歴がなくても将来対側に生じる可能性を念頭に置いた経過観察が必要になる。

flowchart TD
    A["若年での難聴・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tinnitus'>耳鳴</span>・めまい"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gadolinium'>ガドリニウム</span>造影MRI(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='internal auditory canal (IAC)'>内耳道</span>・脳・全脊髄)"]
    B --> C{"両側性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vestibular schwannoma'>前庭神経鞘腫</span>があるか"}
    C -->|"あり"| D["NF2と診断"]
    C -->|"なし・片側性のみ"| E{"家族歴・他の腫瘍所見はあるか"}
    E -->|"Manchester基準を満たす"| D
    E -->|"満たさない"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sporadic'>散発</span>性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vestibular schwannoma'>前庭神経鞘腫</span>として経過観察<br>対側の発生に注意"]
    D --> G["年1回の全身評価へ"]

鑑別診断

多発性のがあっても両側性を欠く場合は、schwannomatosisを考える。schwannomatosisのは「両側性不在」を要件とし、NF2とは相互排他的に定義される2。最多の初発症状は慢性の疼痛で、NF2のように聴覚症状から始まることは少ない2(NF1)とは・臨床像とも別物で、NF1で特徴的なはNF2では特徴的でなく、NF1で頻度の高いもNF2の中核所見ではない。

経過観察・治療

管理の軸は年1回の頭部MRIによる腫瘍のモニタリングである。 初回評価で明らかな腫瘍を認めなければ、間隔を2年に延ばしてよい1。全脊髄の画像評価と眼科的評価(のスクリーニング)を組み合わせる。

小さく無症候性のはMRI経過観察でよいが、大きく症候性の病変には手術が第一選択となる1。ただし両側性という特性上、手術で聴力を失うことは反対側の聴力にすべてを依存する事態を意味するため、NF2関連の例以上に慎重な個別化を要する。も手術が主体で、放射線治療は非手術適応例に温存される1

として、VEGFを標的とするモノクローナル抗体が、進行性のNF2関連に対するとして使われる。176例を対象にしたシステマティックレビューでは、聴力転帰が改善36%・安定46%・悪化18%、腫瘍体積は(20%以上縮小)40%・安定50%・進行10%と報告されており、Grade3/4の重篤な有害事象は13%に生じた3。手術で失われれば回復しない聴力を薬物療法で温存できる可能性がある点が、NF2診療における位置づけを特徴づける。

まとめ

  • NF2はNF2遺伝子(産物はHippo経路の腫瘍抑制蛋白merlin)のによる疾患で、体細胞での第二ヒットによりする。
  • 両側性のはNF2患者の約90〜95%に存在する最も特徴的な所見で、両側性を確認すればNF2をほぼ確定できる。
  • (約50%)、を合併し、皮膚所見はNF1より軽度で目立たない隆起性局面が典型。
  • 診断はManchester基準(両側性、または片側性+家族歴・他所見の組み合わせ)による。
  • NF1とは・臨床像とも別疾患であり、はNF2の特徴ではない。両側性を欠く多発性はschwannomatosisを考える。
  • 管理は年1回のMRI経過観察が軸で、大きく症候性の腫瘍には手術、進行性のにはによる聴力温存を狙ったが選択肢になる。

出典

  1. 1.Neurofibromatosis Type 2(StatPearls (NCBI Bookshelf)(Tiwari R, Singh AK)・2022)NF2遺伝子(22番染色体長腕22q12.2)がmerlinという腫瘍抑制蛋白をコードすること、常染色体顕性遺伝で罹患親からの伝達リスクが50%であり家族歴のない新生バリアント例も存在すること、NF2の推定頻度が2万5千〜4万人に1人であること、Manchester基準(70歳未満での両側性前庭神経鞘腫、または70歳未満の片側性前庭神経鞘腫+罹患第一度近親者、など)による診断、両側性前庭神経鞘腫がNF2患者の約90〜95%に存在する最も特徴的な所見であること、髄膜腫が約50%に合併しNF2患者ではより若年で発症し小児の髄膜腫の約20%はNF2を背景にもつこと、皮膚病変はNF1より軽度で目立たない隆起性局面が典型であること、脊髄腫瘍(シュワン細胞腫・髄膜腫・上衣腫)と白内障を合併しうること、症状出現の平均年齢が約20歳であること、小さな無症候性前庭神経鞘腫はMRI経過観察でよく大きな症候性病変には手術が第一選択であること、髄膜腫も手術が主体で放射線は非手術適応例に温存すること、VEGFを標的とするベバシズマブがNF2関連腫瘍の縮小・聴力改善を示す新しい全身療法であること、年1回の頭部MRIが推奨され初回で腫瘍陰性なら間隔を2年に延ばせることを確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.LZTR1- and SMARCB1-Related Schwannomatosis(GeneReviews(Dhamija R, Plotkin S, Gomes A, Babovic-Vuksanovic D)・2025)schwannomatosisの診断基準が「両側性前庭神経鞘腫の不在」を要件としNF2と相互排他的に定義されること、両者の鑑別点として最多の初発症状が慢性疼痛であることを確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.Bevacizumab for Vestibular Schwannomas in Neurofibromatosis Type 2: A Systematic Review of Tumor Control and Hearing Preservation(Journal of Clinical Medicine(Screnci M, Puechmaille M, Berton Q, Khalil T, Mom T, Coll G)・2024)NF2患者176例(9件の研究、平均年齢27.04歳)を対象としたベバシズマブ治療のシステマティックレビューで、聴力転帰が改善36%・安定46%・悪化18%、腫瘍体積が部分奏効(20%以上縮小)40%・安定50%・進行10%、Grade3/4の重篤な有害事象が13%であったことを確認した閲覧 2026-08-10