組織病理学

組織病理学 · H2-116B

髄膜腫

Meningioma

描出疾患
中枢神経系腫瘍(成人・小児)
疾患
髄膜腫

🧠 全体像:はくも膜のに由来する、多くは良性の腫瘍である。脳表を外側からする境界明瞭な腫瘤として、あるいは内に発生し、浸潤ではなくによって症状を起こす点がとの対比で重要になる。

標本の所見

所見 解釈
に石灰化した小体。の変性・石灰化を反映し、型を含む複数の亜型でみられる
に富む間質で、線維性など間質成分が優位な亜型を示唆する
(whorled pattern) がに取り巻く構築で、正常くも膜の配列を反映するの
正常脳組織 にされた、あるいは境界を接する正常。浸潤ではなく性の境界であることの対比に用いる
flowchart TD
    A["くも膜の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='meningothelial cell'>髄膜上皮細胞</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neoplastic proliferation'>腫瘍性増殖</span>"]
    B --> C["脳表を外側から<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mass effect'>圧排</span>する境界明瞭な腫瘤"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ventricular system'>脳室系</span>内で発生"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='whorled arrangement'>渦巻き状配列</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='psammoma body'>砂粒体</span>などの形態亜型"]
    E --> F["サイズ・局在・手術到達性・組織学的gradeで予後が決まる"]

WHO CNS分類とgrade

出典テキストの「grade 1〜3」という枠組みは現行の分類第5版(2021年)でも維持されているが、形態基準に加えて分子基準が加わった点が更新点である。第5版はの役割を広げつつ従来の組織像・免疫染色も維持し、両者を束ねたとして報告する方式をとる1。

grade 形態基準(目安) 分子基準
grade 1(典型的) 少数、脳浸潤なし。髄膜上皮性・線維性・(き型)・型など多数の亜型 なし
grade 2() 核分裂数増加(目安として10 HPFあたり4以上)または脳浸潤、あるいは細胞密度増加・小型細胞・核小体明瞭・増殖・自発壊死のうち3項目以上2 明細胞型・様型は形態にかかわらずgrade 2
grade 3(性) 高い(目安として10 HPFあたり20以上)2、または肉腫・・悪性黒色腫様の明らかな TERTまたはCDKN2A/2B欠失があれば、形態が良性様でもgrade 3とする3

⚠️ 乳頭型・横紋筋様型を、その形態だけでgrade 3としない。 かつては構造や横紋筋様細胞質が見られれば他の悪性所見とにgrade 3とされていたが、現行分類ではこの規則が廃止され、他の亜型と同じくgrade 2・3の形態基準と分子基準に照らしてgrade 1〜3へ振り分ける。第5版は、grade 2・3を定義する基準を亜型によらず適用すべきだと明記したうえで、・横紋筋様の形態は他の悪性所見と併存することが多いものの、横紋筋様細胞質やだけを根拠にgradingしてはならないとしている1。根拠となったのは、所見を欠く横紋筋様44例の追跡で5年73.7%・86.7%と、当初の報告よりはるかに良好な経過が示された研究である(横紋筋様細胞の割合は再発と関連しなかった)4。

⚠️ 「grade 1は必ず低リスク」と単純化しない。TERT変異やCDKN2A/2B欠失があれば形態が典型的でもgrade 3として扱う分子基準が、現行分類では形態基準と並列に働く3。

💡 grade 1でも染色体異常があれば経過は良性でない。 1964例のコホートでは、 grade 1でも1p欠失があるとの中央値が34.54年から5.83年へ落ち、grade 2(4.48年)と同等になる。1p欠失に1q獲得が加わると、当初のgradeによらずgrade 3と同等(1.9〜2.3年)の経過をたどる。1p欠失をgrade 2の、1q獲得をgrade 3の基準へ加えるべきという提案が出ており、次の改訂で基準がさらに動きうる論点である3。「良性だから経過観察でよい」という通説は、この意味で grade 1 の全例には当てはまらない。

💡 grading基準は判定者によるばらつきを抱えている。 0539のとのは全体で87.2%(grade 1: 93.0%、grade 2: 87.8%、grade 3: 93.6%)で、脳浸潤・20個以上/10HPF・自然壊死は一致度が高い一方、小型細胞・増殖・4個以上/10HPFは一致度が低い2。grade 1と2を分ける基準ほど主観が入りやすい、と理解しておく。

散発性の多くはNF2遺伝子(産物merlin)の不活化に関連し、NF2野生型の一部(とくに頭蓋底発生例)ではTRAF7・KLF4・AKT1・SMOなどの変異がみられる。両側性の鞘腫と多発の組み合わせは(NF2関連症)を示唆する。

まとめ

出典

  1. 1.The 2021 WHO Classification of Tumors of the Central Nervous System: a summary(Neuro-Oncology・2021)全文の髄膜腫の節で、髄膜腫が第5版では15の亜型をもつ単一のtypeとして扱われ、grade 2・3(異型性・退形成性)を定義する基準は亜型によらず適用すべきだと強調されていること、および「歴史的には横紋筋様形態・乳頭状形態は他の悪性所見の有無と無関係にCNS WHO grade 3に該当したが、より新しい研究はこれらの腫瘍のgradingを横紋筋様細胞質や乳頭状構築だけを根拠に行うべきではないと示唆する」と明記されていることを確認した。あわせて明細胞型・脊索腫様型がgrade 2に割り当てられること、TERTプロモーター変異およびCDKN2A/Bホモ接合性欠失がCNS WHO grade 3に対応する分子指標として挙げられていることを確認した閲覧 2026-08-24
  2. 2.Pathology concordance levels for meningioma classification and grading in NRG Oncology RTOG Trial 0539(Neuro-Oncology(NRG Oncology RTOG 0539)・2016)抄録で、髄膜腫のgradingに用いる個別基準として脳浸潤・10 HPFあたり20個以上の核分裂像・自然壊死・10 HPFあたり4個以上の核分裂像などが列挙され、172例の中央判定との一致率が全体で87.2%(grade 1で93.0%、grade 2で87.8%、grade 3で93.6%)であること、一致度が高いのは脳浸潤・20個以上/10HPF・自然壊死で、低いのは小型細胞・シート状増殖・4個以上/10HPFであることを確認した閲覧 2026-08-24
  3. 3.Chromosome 1p Loss and 1q Gain for Grading of Meningioma(JAMA Oncology・2025)抄録で、髄膜腫のWHO grading が2021年に改訂されCDKN2AまたはCDKN2Bのホモ接合性欠失とTERTプロモーター変異という分子指標が組み込まれたこと、および1964例のコホートでWHO grade 1でも1p欠失があると無増悪生存期間の中央値が34.54年から5.83年へ短縮しgrade 2相当(4.48年)になること、1p欠失と1q獲得が併存すると当初のgradeによらずgrade 3相当(1.9〜2.3年)の経過をたどることを確認した閲覧 2026-08-24
  4. 4.Meningiomas With Rhabdoid Features Lacking Other Histologic Features of Malignancy: A Study of 44 Cases and Review of the Literature(Journal of Neuropathology and Experimental Neurology・2016)抄録で、従来報告された侵襲的な横紋筋様髄膜腫の多くは横紋筋様形態とは独立に退形成性の組織所見を伴っていたこと、退形成所見を欠く横紋筋様髄膜腫44例(他の基準ではWHO grade 1が22例・grade 2が22例)では追跡期間中央値5.0年で再発9例(5年無再発生存73.7%)・死亡6例(5年全生存86.7%)にとどまり、当初の報告よりはるかに低い死亡率だったこと、横紋筋様細胞の割合は再発と関連しなかったこと、著者らが横紋筋様髄膜腫を非横紋筋様腫瘍と同様にgradingすべきだと提案していることを確認した。WHO CNS5が横紋筋様・乳頭型の自動grade 3規則を外す根拠として引用している文献である閲覧 2026-08-24